しかし、佳奈の服に手を伸ばしたところで、暁の手はぴたりと止まった。家では恵美が待っている。その思いが頭に浮かんだ途端、まるで根を張るように心の中に広がっていった。恵美を裏切るわけにはいかない。甘い衝動はきれいに消え去った。暁は自分の上着を、薄着の佳奈にかけてやる。彼女がさっと青ざめるのを見て、重々しく口を開いた。「高木さん、すまない。恵美は俺の婚約者なんだ。最近、恵美は少しおかしいけれど、きっと何か思い違いをしているだけだ。明日帰ったら、ちゃんと時間をとって彼女と話すつもりだ。誤解が解けたら、恵美と結婚する」暁は、その気持ちを一度も変えたことがなかった。「結婚」という言葉を口にした瞬間、何度も思い描いた光景が再び脳裏に浮かんだ。それは、恵美が美しいウェディングドレスを着ている姿。幾重にも重なる純白のドレスが、彼女をさらに可憐に見せている。恵美は自分の腕を取り、その瞳には全身全霊の愛と信頼が溢れている。そして自分は、招待客全員の前で、恵美と生涯を共にすることを誓うんだ……それはきっと、人生で二番目に幸せな瞬間になるはずだ。一番目は、恵美が告白を受け入れてくれた時だった。思いがけず拒絶され、佳奈の顔からついに笑顔が消えた。彼女の目はみるみるうちに赤くなり、暁にキスをしようと顔を近づける。暁の体にしがみつくようにすり寄りながら、むせび泣いて懇願した。「院長、ずっと前から好きでした……恵美さんと結婚なさっても構いません。それでも、あなたを愛しています。日陰の存在でもいいんです。ほんの少しでもいいから、私のことも好きになってください……」「高木さん」暁の声が低くなった。彼が佳奈にこれほど厳しい態度をとるのは、滅多にないことだった。「俺はそんなこと、一度も考えたことはない。恵美にも、そして結婚というものにも、俺は誠実でなければならないんだ」佳奈に、特別な好意があったのは確かだ。でも、それだけだ。「どうしてですか?」佳奈には理解できなかった。暁は明らかに自分に欲情していたはずだ。なのにどうして、こんな甘い雰囲気の中で恵美のことを考えられるっていうの?「でも院長、恵美さんはあなたのその愛情に値しません!あんな自由な環境にいたのに、他の男の人と寝てないなんて言い切れるんですか?とっくに汚れているかもしれま
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