レティシアは窓の外を見つめながら、アレクシスに尋ねた。「公爵様、グラナート領について、もっと教えていただけますか?」アレクシスは静かに地図を広げた。「グラナート領は、肥沃な平野と森林に恵まれている。南部は農業地帯で、小麦や大麦、野菜が栽培されている。中部は森林地帯で、林業が盛んだ。そして北部には——」彼の指が、地図の北端をなぞった。「鉄鉱山がある。ここで採れる鉄鉱石は、王国でも最高品質だ」「それが、黒鷲家の軍事力の源……」「ああ。だが近年、採掘量が減っている。鉱脈が枯渇しつつあるのか、それとも——別の理由があるのか」レティシアは眉をひそめた。「別の理由……とは?」「妨害だ」アレクシスは真剣な眼差しで彼女を見つめた。「黒鷲家の力を削ぎたい者は、王都にも、大神殿にもいる。もし誰かが意図的に採掘を妨げているとしたら——」「それは、私たちへの攻撃……」「その通りだ。だからこそ、今回の視察は重要なんだ」レティシアは頷いた。「わかりました。私も、できる限り協力します」「君、には、領民と交流してほしい」アレクシスは続けた。「俺とハースが鉱山を調査している間、君、は村を回り、領民の声を聞いてくれ」「領民の声……」「ああ。エルヴィンの報告書は正確だが、それでもすべてを捉えきれているわけではない。領民が本当に何を思い、何を求めているのか——それは、直接会って話さなければわからない」レティシアは静かに微笑んだ。「わかりました。任せてください」山道を越え、深い森を抜けると——視界が開けた。そこには、広大な平野が広がっていた。黄金色の麦畑、点在する村々、そして遠くに見える石造りの館。「あれが……」「グラナート領主の館だ」館は、王都の公爵邸ほど豪華ではないが、堅牢で実用的な造りをしていた。高い石壁と、四隅に立つ見張り塔が、かつてこの地が戦場だったことを物語っている。馬車が館の正門に近づくと、既に多くの人々が集まっていた。使用人、農民、子供たち——皆、公爵様の帰還を待ちわびていた。馬車が止まり、扉が開かれ
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