玉木真吾(たまき しんご)と一緒に過ごした十年。私たちは、互いに苦しめ合い続けた十年でもあった。彼は愛人をよく替え、私はL市中から嘲笑される存在になる。一方の私は、毎日のように彼のカードを使い、彼の金を散財し、街中を騒がせながら浮気相手を叩きのめし、有名な悪妻と呼ばれるようになる。がんの診断書が下りたその日、もう何もかもが限界だと悟る。私は真吾に電話をかけた。「真吾、約束する。私たち、離婚しよう」電話の向こうで、彼は新しい女を腕に抱き、鼻で笑う。「沖田紗月(おきた さつき)、本気でその作り話を信じると思ってるのか?その手はもう何度目だ。つまらない」……その頃の私は、彼の愛人である白木瀬奈(しらき せな)の家に立っている。手にしたバットを強く握りしめ、胸が詰まるように苦しい。「今、愛人の家にいる。戻ってきて離婚の話をする気はないの」「紗月、冗談にも限度がある」「冗談かどうか、すぐ分かる」そう言って、私はバットを振り上げ、リビング中央のテーブルに叩きつける。激しい音が響き、ガラスのテーブルは真ん中から割れ、床一面に砕け散る。続いて、視線を壁の中央に掛けられたツーショット写真へ向ける。はは、甘いね。そう思った次の瞬間、私が容赦なくバットを振り下ろす。重い音とともに、写真は粉々になり、床に落ちる。同時に、電話から真吾の声が響く。「紗月、何をしている!」私は電話を手に取り、軽く答える。「もちろん、二人の部屋をリフォームしてあげてる。10分以内に戻ってきなさい。さもなければ、ここを全部壊してもいい」「紗月、やめろ」なぜやめる必要があるの。私にできないことなんてある。電話を切り、私はバットを手に家の中を歩き回り、壊せるものはすべて叩き壊す。瀬奈の寝室を開けようとした時、真吾が戻ってきた。後ろには、瀬奈もいる。「紗月、また何をやらかしてる!」彼は目を血走らせ、大股で近づいてくる。私はバットを床に突き立て、離婚協議書を取り出す。「無駄話はいい。早くサインして。終わったら、きれいに別れる」真吾は書類を見て一瞬固まり、すぐに嫌悪の色を浮かべる。「紗月、こんな手で俺を呼び戻して楽しいのか?」「騙してない。離婚したい。自由にしてあげる。不満でもある?」一番激しく喧嘩していたあの数年
続きを読む