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第5話

Penulis: ハリネズミちゃん
「あり得ない。ついこの前まで会っていたんだ。あんな自己中心的な女が、何かあるはずがないだろう」

真吾はなおも信じようとせず、取り乱したように食い下がる。

しかし返ってきたのは、冷え切った声だった。「その時点で、彼女はすでに末期でした。無理をして、あなたと離婚手続きをしに行ったのです。本来なら、抗がん剤治療を受けていれば、あと二か月ほどは生きられましたが……残念ですね。

結婚式の最中だとは思いますが、ご遺体の安置はあと三日が限界です。三日後には、こちらで処理します」

そう告げて、医師は電話を切った。

健人は状況が分からず、首をかしげる。「どうしたんだ?」

「紗月が……紗月が、死んだ」

真吾は胸元のコサージュを引きちぎり、式場を飛び出した。

知らせを聞いた瀬奈も慌てて追いかけ、彼の腕を掴む。「真吾、もうすぐ式が始まるのよ。どこへ行くの?」

「離せ」

真吾は車のドアを開ける。

「嫌、離さない」瀬奈は必死に縋りつく。「紗月のことでしょう。でも、もう離婚したじゃない。真吾、彼女はあなたを愛してない。分かってるでしょう。彼女が大事なのは、お金だけよ」

「黙れ」

真吾は彼女
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  • 紗月の遺書   第9話

    秋の墓地は、荒れ果てて、もの悲しい。枯れた木々には、数枚の葉だけが心細く残り、風に揺れている。冷たい風が唸るように吹き抜け、墓地を悲しみのオーラで包んでいるかのようだ。真吾は、私の墓碑の前に座ったまま、まるで時間に縛られたかのように動かない。ときおり、目だけがわずかに動くが、その表情は虚ろだ。朝から夜まで、夜からまた朝へ、墓地の職員が声をかけるまで動こうとしなかった。その声で、彼の意識は、遠くから風に乗って戻ってきたようだった。一晩過ぎ、瓶の酒はすっかり冷え切っている。それでも彼は迷いなく持ち上げ、一気に喉へ流し込む。そして、私の骨壺を抱え、ふらつきながら立ち上がった。背後で、墓地の職員が感慨深げに言う。「このご夫婦、本当に仲が良かったんですね。奥さんが亡くなって、丸一日一晩、墓前に座り続けるなんて」「ええ、こんなに真摯な愛情、今どき珍しいですよ」そうだろうか。残念だけれど、彼らは勘違いしている。人は慣れ合えば倦み、そばにいるときには大切にしない。死んでから、どれだけ装っても、何の意味があるというのだろう。その後、私の遺骨は真吾の手で海へ撒かれた。生前、私は彼に言っていた。自由に憧れている、死んだら必ず海に撒いてほしい、と。遠くの海鳥と一緒に、風に揺られたいのだと。遺骨が海へ消えたとき、私もまた消えた。死後とは、ただの虚無だ。すべてが終わる。この世に、もう紗月はいない。……【真吾・番外編】遺骨が撒かれ、想いも断たれた。あの日以来、真吾は大病を患った。顔色は青白く、体はさらに痩せ、まるで別人のようだ。かつての面影は、どこにもない。多くの人が、彼を見舞い、言葉をかけた。「真吾、もう手放したほうがいい。もしかしたら、紗月はもう生まれ変わって、幸せに暮らしているかもしれない」「そうだよ。出会いも別れも縁だ。縁が尽きたなら、前を向くべきだ」「君は彼女に十分尽くした。もう、何も負い目はない」真吾は答えない。ただ、黙って窓の外の木の梢を見つめている。L市の冬は、訪れるのも去るのも早い。厳しい冬が過ぎると、すぐに初春が来て、枝先には新しい芽が吹く。ときおり、小鳥が飛んできては、賑やかにさえずる。その音が、真吾を15年前の春へと連れ戻した。彼らは高校の教

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    家で一日中横になって過ごし、目を覚ました時には、すでに翌朝になっていた。真吾からの電話とメッセージは、夜通し途切れることがない。早く来て、離婚届の手続きをしろと催促する内容ばかり。私は医師から処方された鎮痛薬を手に取り、一気に十数錠飲み込む。必要な時だけ使うようにと念を押されていたが、役所で突然口から血を出すわけにはいかない。今日の役所は、やけに人が少ない。天気のせいだろうか。まだ九月の終わりだというのに、冷たい風が肌を刺す。「行こう」私は入口に立つ真吾に声をかける。彼は私をじっと見つめ、ふいに言った。「顔色がひどく悪いな」「あんたに関係ない」その一言で、真吾はようやく黙った。特に揉めることもなく、手続きはあっという間に終わる。私たちは前後して役所を出た。瀬奈が駆け寄り、真吾の腰に抱きつく。二人は再び役所の中へ入っていった。本当に、最低な男、待つ気すらないのね。朝から薬を飲みすぎたせいか、胸が重く、血が一気に込み上げる。私は突然、大量の血を吐いた。胸の奥が、焼けつくように痛む。そのまま地面に倒れ込むと、すぐに人だかりができる。誰かが叫ぶ。「応急処置できる人はいませんか」「救急車を呼んで」意識はどんどん遠のき、血は口と鼻から止めどなく溢れ出す。人は増え続ける。朦朧とする意識の中、人垣の隙間から真吾の姿が見えた。彼は何かを感じ取ったかのように、視線を越えて私を捉える。血は止まらない。遠くから、救急車のサイレンが近づいてくる。彼がこちらへ歩いてくるのが見えた。一歩、また一歩、もうすぐ人の輪を越える、その時。「真吾」瀬奈が後ろから現れ、彼の腕にすがる。「行こう」真吾は一度だけ私を見て、視線を逸らす。そして瀬奈と並んで、そのまま去っていった。背中は、どんどん遠ざかる。私の意識は薄れ、耳に届く音も消えていく。三日三晩の懸命な救命処置の末、私は助からなかった。医師は私の遺体を前に、深いため息をつく。「覆ってください」誰かの手が白い布を引き上げ、私の顔を覆う。魂は身体から抜け出し、自分の遺体が霊安室へ運ばれていくのを、ただ見つめていた。その頃、真吾は瀬奈と結婚式を挙げている。彼の顔には、結婚の喜びは一切ない。代わりに浮かぶのは、焦り。「どうだ。紗月

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