十一月に入り、九州大会準決勝で敗退した福丘高校野球部は、基礎メニュー中心の練習に戻っていた。春の甲子園出場校の発表が1月まで待たなければならない今、選手たちは「来年の夏」を見据えながら、日々の鍛錬を続けていた。グラウンドには、秋の冷たい風が吹き抜け、落ち葉が土の上を舞う。練習の合間に、選手たちの吐く息が白く染まる季節になっていた。 朝練はいつも通り、ランニングから始まった。選手たちは黙々と周回を重ねる。篠原涼は軽めのキャッチボールで肩を慣らし、ストレートはまだ140キロ台後半に抑えていた。肩の疲労は完全に抜けきっていない。監督の山田浩二はブルペンの端で腕組みをし、涼のフォームをじっと見つめていた。 「篠原。今日は120球までだ。無理はするな」 涼は静かに頷き、キャッチボールを続けた。球はまだ走っているが、夏の159キロのキレは少し鈍っていた。それでも、涼の目は鋭く、マウンドへの執着を失っていない。 一方、早乙女球太はファーストの守備練習に汗を流していた。右腕の包帯は外れ、軽いキャッチボールは再開できたが、公式戦での投球はまだ許可されていない。監督からは「12月以降に徐々に」との指示が出ていた。球太はグローブをはめ、藍沢拓巳や他の内野手たちとノックを受けていた。 「球太! もっと前!」 藍沢の声が飛ぶ。球太は素早く動き、ゴロをさばいて一塁へ送球。肘に負担をかけないよう、フォームを意識しながら投げる。送球はまだ硬いが、精度は徐々に戻りつつあった。 練習の合間、球太はベンチに座って水を飲んだ。隣に涼がやってきて、静かに言った。 「早乙女。守備、よくなってきたな」 球太は苦笑した。 「投げられない分、守備で取り返してるだけだよ。涼は……肩、どう?」 涼は肩を軽く回した。 「まだ重い。でも、投げられる。来年の夏まで……間に合わせる」 二人は無言でグラウンドを見つめた。チームは
Zuletzt aktualisiert : 2026-02-24 Mehr lesen