九月に入り、福丘高校野球部は完全に新チームへと移行していた。3年生の引退により、部室のロッカーは一気に空き、グラウンドの空気もどこか新鮮で、しかし重い。夏の準決勝敗退の傷はまだ癒えていない。特に球太にとっては、初めて味わった「本物の挫折」が、心の底に沈殿したままだった。朝練の集合時間。山田監督がグラウンド中央に全員を並べた。新チームのキャプテンは3年生から2年生の佐藤大輔(夏のエースだった左腕)が引き継ぎ、監督の横に立っている。「今日から正式に新チームだ。秋季大会まで、約一ヶ月。目標はもちろん、九州大会出場、そして甲子園予選突破。だが……それ以前に、俺たちは一つにならなきゃいけない」監督の視線が、新入生たちに向けられる。特に球太と涼の二人に止まった。「早乙女、篠原。お前たちは夏の準決勝で、チームを背負った。結果は負けだったが、あの投球は無駄じゃない。来年の夏、お前たちが中心になる」球太は地面を見つめたまま、黙って聞いていた。涼は静かに頷くだけ。監督が続けた。「背番号は、今日発表する。ピッチャー陣を中心に、序列を明確にする。エースナンバー……背番号1は、篠原涼だ」グラウンドに小さなどよめきが起きた。涼は表情を変えずに、ただ「はい」と答えた。球太は隣で、拳を強く握りしめた。胸の奥で、何かがチリチリと痛んだ。背番号発表のリストが部室の壁に貼り出された。- 背番号1:篠原涼(投手)- 背番号10:早乙女球太(投手)- 背番号11:佐藤大輔(投手/新キャプテン)- 背番号18:鈴木健(捕手)球太はリストの前で立ち尽くした。10番。エースナンバーから遠い番号。夏の背番号18から上がったとはいえ、涼の「1」と並ぶことはなかった。翔が近づいてきて、肩を叩いた。「10番か……悪くねえじゃん。来年は1番だろ?」球太は無理に笑った。「そうだな……」練習が始まった。新チーム初の紅白戦。新入生・2年生混成チーム
Zuletzt aktualisiert : 2026-02-11 Mehr lesen