エースナンバーは俺のもの

エースナンバーは俺のもの

last updateDernière mise à jour : 2026-02-26
Par:  ちばぢぃEn cours
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主人公・早乙女球太(さおとめきゅうた)が名門の市立福丘高校に入学し甲子園を目指す物語。 早乙女球太は一般入学で入るが、同学年で一目置かれるプロ注目のライバル・篠原涼(しのはらりょう)が同じポジションで特待生で入学してくる。球太がエースナンバーを取りに行く。

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Chapitre 1

第一話:入学と運命の出会い

春の風が桜の花びらを舞わせる中、市立福丘高校の校門は新入生たちで賑わっていた。福岡県の名門校として知られるこの高校は、野球部が全国的に有名だ。過去に何度も甲子園に出場し、プロ野球選手を何人も輩出している。早乙女球太は、そんな学校の門をくぐりながら、心の中で拳を握りしめた。

球太は身長180センチ、体重75キロのガッシリとした体格の少年だ。中学時代は地元の公立中でエースピッチャー兼4番打者を務め、県大会で優勝した実績を持つ。速球は140キロを超え、変化球も多彩。だが、彼は特別な推薦や特待生ではなく、一般入試でこの学校に合格した。理由はシンプルだ。甲子園に行きたい。プロ野球選手になりたい。その夢を叶えるために、最高の環境を選んだのだ。

「よし、今日から高校生活だ。野球部に入って、エースナンバーを取るぞ!」

球太は独り言を呟きながら、入学式の会場に向かった。式は厳粛に進み、校長の挨拶や生徒代表の言葉が続く。球太の隣に座ったのは、同じ中学出身の友人、田中健太だった。健太は野球部には入らないが、球太の夢を応援してくれている。

「球太、緊張してるか? あの福丘の野球部だぜ。特待生がいっぱい入ってくるらしいよ」

健太の言葉に、球太はニヤリと笑った。

「それがいいんだよ。強いヤツらと競ってこそ、強くなれるだろ」

入学式が終わると、新入生たちはそれぞれの教室へ。球太のクラスは1年A組。自己紹介の時間になると、球太は堂々と立ち上がった。

「早乙女球太です。中学では野球やってました。高校でも野球部に入って、甲子園目指します。よろしく!」

クラスメートから拍手が起きる中、一人の生徒が視線を送ってきた。黒髪を短く刈り上げ、鋭い目つきの少年だ。自己紹介で彼は言った。

「篠原涼です。野球部に入ります。ポジションはピッチャーです」

その瞬間、球太の胸にざわめきが走った。篠原涼――聞いたことがある名前だ。中学時代、全国大会で活躍したエースピッチャー。速球は150キロ近く出ると噂され、プロスカウトの注目を集めている。特待生で福丘に入学したという話だ。同じピッチャー、同じ学年。運命のライバルが、こんなに早く現れるとは。

放課後、球太はすぐに野球部のグラウンドへ向かった。新入生の入部説明会がある。福丘高校の野球部は、監督の山田浩二が率いる厳しいチームだ。山田監督は元プロ選手で、指導はスパルタだが、選手の才能を最大限に引き出すと評判だ。

グラウンドに着くと、すでに上級生たちが練習を始めていた。キャッチボールやバッティングの音が響く。球太は興奮を抑えきれず、深呼吸した。新入生は20人ほど集まっていた。その中に、篠原涼の姿もあった。涼はクールに立っており、周りの新入生たちから一目置かれている様子だ。

「ようこそ、福丘高校野球部へ。新入生諸君、まずは自己紹介からだ。ポジションとこれまでの実績を言え」

山田監督の声が響く。監督は50代半ばの男で、厳しい表情だが、目には情熱が宿っている。自己紹介が始まり、特待生の新入生たちが次々と名乗り出る。キャッチャー、ショート、外野手……そしてピッチャー志望が何人か。

球太の番が来た。

「早乙女球太です。中学ではエースで4番でした。速球は140キロ台、変化球はスライダーとフォーク。甲子園目指して頑張ります!」

監督は頷き、メモを取る。次は涼だ。

「篠原涼です。中学全国大会準優勝のエースで4番。ストレートは150キロ、変化球はカーブ、スライダー、チェンジアップ。プロを目指しています」

グラウンドにどよめきが起きた。150キロ――高校生レベルでは怪物だ。球太は内心で闘志を燃やした。「負けねえぞ。お前がエースだと思うなよ」

説明会が終わると、すぐに基礎練習が始まった。新入生たちは上級生に混じってランニングとストレッチ。福丘の練習はきついと聞いていたが、予想以上だった。監督の指示で、グラウンドを20周走らされる。汗だくになりながら、球太は歯を食いしばった。

「これくらいでへばるんじゃ、甲子園なんて夢のまた夢だぞ!」

監督の叱咤が飛ぶ。涼は涼しい顔で走っている。体力が違うのか、それとも精神力か。球太は悔しさをバネに、ペースを上げた。

ランニングの後、キャッチボール。球太は同じ新入生のキャッチャー志望の生徒とペアになった。ボールを投げると、いい音がする。自分の球のキレに自信を持った。

一方、涼は上級生のキャッチャーとペア。投げるたび、周りから感嘆の声が上がる。球太はチラチラと見ながら、自分の投球に集中した。

練習のハイライトはブルペンでの投球練習。新入生のピッチャー志望者たちが順番に投げる。監督と上級生のエース、3年生の佐藤大輔が見守る。佐藤は昨年の夏の甲子園で好投した本格派だ。

まず、他の新入生が投げた。球速は130キロ前後。監督は「まあまあだな」と評価。

球太の番。マウンドに立つと、緊張が走った。キャッチャーは上級生の正捕手、鈴木健。球太は深呼吸し、ストレートを投げた。パシュッ! ミットに収まる音が響く。球速は142キロ。続いてスライダー、フォーク。キレがいい。

「ほう、いい球投げるな。早乙女か。フォームが安定してる」

監督の言葉に、球太は内心でガッツポーズ。だが、次は涼だ。

涼がマウンドに上がる。静かな集中力。セットポジションから、ワインドアップ。ストレートが飛ぶ。バシュン! ミットが鳴る。球速152キロ。キャッチャーの鈴木が少し後ずさるほどだ。変化球も鋭く、監督の目が輝いた。

「篠原、噂通りだな。こりゃ楽しみだ」

練習後、球太はロッカールームで着替えながら、涼に声をかけた。ライバルとして、まずは挨拶だ。

「よお、篠原。いい球投げるな。俺も負けねえよ」

涼はクールに振り返った。

「早乙女か。君も悪くない。でも、エースは一人だ。競争だな」

二人の視線が交錯する。火花が散るような緊張感。球太は笑った。

「そうだな。甲子園まで、切磋琢磨しようぜ」

その夜、球太は寮に戻った。福丘の野球部員は全員寮生活だ。部屋は2人部屋で、球太のルームメイトは同じ新入生の外野手、伊藤翔だった。翔は明るい性格で、すぐに打ち解けた。

「球太、今日の投球よかったぜ。篠原はすげえけど、お前も負けてねえよ」

「ありがと。でも、まだ始まったばかりだ。エースナンバーを取るために、毎日全力でいく」

翌日から、本格的な練習が始まった。朝練は6時から。ランニング、筋トレ、素振り。球太は中学時代よりきついメニューに耐えながら、成長を実感した。ピッチャー陣は上級生中心だが、新入生の球太と涼はすぐに頭角を現した。

ある日、紅白戦が組まれた。新入生主体のチーム対上級生チーム。球太は新入生チームの先発ピッチャーに指名された。対する上級生の先発は佐藤だ。

マウンドに立つ球太。初回、ストレートで三振を奪う。2回にはスライダーで凡打。調子がいい。だが、3回に上級生の4番にホームランを打たれた。悔しい。

交代後、ベンチで監督が声をかけた。

「早乙女、球威はあるが、甘い球が多い。もっと制球を磨け」

球太は頷いた。次は涼のリリーフ。涼はマウンドで圧巻の投球。150キロのストレートで上級生をねじ伏せた。試合は上級生チームの勝利だったが、新入生のポテンシャルを示した。

紅白戦後、球太と涼はグラウンドで話し込んだ。

「今日の球、よかったぜ。俺の球より速いな」

球太の言葉に、涼は少し微笑んだ。

「でも、君のフォークは厄介だ。俺ももっと変化球を増やさないと」

二人はライバルだが、互いに敬意を持っていた。中学時代、球太は県大会で優勝したが、全国には行けなかった。一方、涼は全国準優勝。経験の差はあるが、球太の情熱は負けていない。

練習が続く中、チーム内のポジション争いが激化した。エースナンバー「1」は佐藤が背負っているが、来年は新エースが決まる。球太と涼は共に候補だ。他のピッチャー新入生もいるが、二人が抜きん出ている。

ある夕方、球太は個人練習でフォークの握りを調整していた。そこに涼が現れた。

「早乙女、一緒に投げてみないか? キャッチボール」

意外な誘い。球太は頷いた。二人はグラウンドでボールを投げ合う。球太の球を涼が受け、涼の球を球太が受ける。互いの球の感触を確かめ合う。

「君のストレート、キレがあるな。どうやって投げてる?」

涼の質問に、球太は自分のコツを教えた。涼も変化球のヒントをくれた。ライバルだが、仲間でもある。福丘の野球部は、そんな絆で強くなる。

夏の大会が近づく中、球太はさらに磨きをかけた。朝練後の自主トレ、夜の筋トレ。体が悲鳴を上げても、止まらない。甲子園の夢が、彼を駆り立てる。

一方、涼はクールだが、内面では熱い。特待生として期待されるプレッシャーを感じながら、練習に没頭する。二人は次第にチームの中心となり、上級生たちからも認められ始めた。

ある日、監督が二人を呼び出した。

「早乙女、篠原。お前たち、いいライバルだな。夏の大会では、二人を交互に使ってみる。どちらがエースになるか、勝負だ」

球太と涼は目を合わせ、頷いた。競争が始まる。甲子園への道は、厳しく長い。でも、二人は信じている。共に戦えば、必ず行ける。

球太の高校野球生活は、まだ始まったばかりだ。ライバルとの戦い、チームの絆、挫折と成長。すべてが彼を待っている。

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第一話:入学と運命の出会い
春の風が桜の花びらを舞わせる中、市立福丘高校の校門は新入生たちで賑わっていた。福岡県の名門校として知られるこの高校は、野球部が全国的に有名だ。過去に何度も甲子園に出場し、プロ野球選手を何人も輩出している。早乙女球太は、そんな学校の門をくぐりながら、心の中で拳を握りしめた。球太は身長180センチ、体重75キロのガッシリとした体格の少年だ。中学時代は地元の公立中でエースピッチャー兼4番打者を務め、県大会で優勝した実績を持つ。速球は140キロを超え、変化球も多彩。だが、彼は特別な推薦や特待生ではなく、一般入試でこの学校に合格した。理由はシンプルだ。甲子園に行きたい。プロ野球選手になりたい。その夢を叶えるために、最高の環境を選んだのだ。「よし、今日から高校生活だ。野球部に入って、エースナンバーを取るぞ!」球太は独り言を呟きながら、入学式の会場に向かった。式は厳粛に進み、校長の挨拶や生徒代表の言葉が続く。球太の隣に座ったのは、同じ中学出身の友人、田中健太だった。健太は野球部には入らないが、球太の夢を応援してくれている。「球太、緊張してるか? あの福丘の野球部だぜ。特待生がいっぱい入ってくるらしいよ」健太の言葉に、球太はニヤリと笑った。「それがいいんだよ。強いヤツらと競ってこそ、強くなれるだろ」入学式が終わると、新入生たちはそれぞれの教室へ。球太のクラスは1年A組。自己紹介の時間になると、球太は堂々と立ち上がった。「早乙女球太です。中学では野球やってました。高校でも野球部に入って、甲子園目指します。よろしく!」クラスメートから拍手が起きる中、一人の生徒が視線を送ってきた。黒髪を短く刈り上げ、鋭い目つきの少年だ。自己紹介で彼は言った。「篠原涼です。野球部に入ります。ポジションはピッチャーです」その瞬間、球太の胸にざわめきが走った。篠原涼――聞いたことがある名前だ。中学時代、全国大会で活躍したエースピッチャー。速球は150キロ近く出ると噂され、プロスカウトの注目を集めている。特待生で福丘に入学したという話だ。同じピッチャー、同じ学年。運命のライバルが
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第六話:3回戦のピンチ、涼のマウンドと球太の叫び
八月上旬。福岡大会はベスト16に突入していた。福丘高校は順調に勝ち上がり、3回戦の相手は強豪・東福岡高校。昨年ベスト8のチームで、ピッチャーは2年生の右腕・高木がエース。球速148キロ、鋭いスライダーとチェンジアップを武器に、福丘打線を苦しめる存在だ。 試合前日、部室で山田監督がメンバー表を貼り出した。 先発ピッチャー:篠原涼(1年・背番号11) 中継ぎ:早乙女球太(1年・背番号18) 球太はリストを見て、静かに息を吐いた。初戦・2回戦ではベンチのままだったが、今回は中継ぎ待機。ピンチが来れば、マウンドに立つ可能性がある。 「篠原が先発か……。涼の初の公式戦先発だな」 球太は涼の背中を見つめた。涼はいつも通り無表情で、グローブを磨いている。 試合当日、球場は熱気で満ちていた。スタンドは両校の応援団で割れんばかりの歓声。太鼓の音が響き、夏の陽射しがグラウンドを白く焼く。 1回表、福丘の攻撃。東福岡の高木が立ちはだかる。初球から148キロのストレート。福丘の1番が空振り三振。続く打者も凡打。3番の大石がようやくセンター前ヒットで出塁するが、後続が倒れ、無得点。 1回裏。福丘の守備。マウンドに立つ涼。 キャッチャーは西田。西田がミットを構え、低く言った。 「涼、いつも通りだ。俺が全部受け止める」 涼は頷き、セットポジション。 初球、ストレート。 バシュン!! 球速表示板:157キロ。 スタンドがどよめく。東福岡の1番打者が、タイミングを完全に外され、空振り三振。 続く2番も三振。3番に四球を与えるが、4番をチェンジアップで三振。 1回無失点。ベンチに戻った涼に、球太が声をかけた。 「す
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第七話:準々決勝の激闘、限界の向こう側
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第十話:夏の終わり、初めての挫折
八月最後の週。福岡大会準決勝で龍門高校に6-7で敗れた日から、一週間が過ぎていた。福丘高校野球部のグラウンドは、夏の残り香を残しながらも、どこか空虚な空気に包まれていた。3年生たちは引退試合を終え、部室のロッカーを片付け、静かに去っていった。新チームへの移行は決まっていたが、誰もがまだ「夏の敗北」を引きずっていた。朝練のランニング。いつもなら球太が一番前に出て、声を張り上げて仲間を引っ張っていた。だが今日は違う。球太は集団の後ろの方で、足取りが重く、息も荒い。汗は流れているのに、目は虚ろだ。「早乙女! 遅いぞ! 気合い入れろ!」コーチの声が飛ぶ。球太は小さく「はい」と返事したが、声に力がなかった。ランニングが終わると、すぐにグラウンドの隅に座り込み、水筒を握ったまま動かない。伊藤翔が近づいてきた。「球太……大丈夫か?」球太は地面を見つめたまま、ぼそっと言った。「大丈夫じゃ……ねえよ」翔は隣に座り、膝を抱えた。「俺も悔しいよ。準決勝のあの7回……俺がセンターでジャンプしたけど、届かなかった。あのホームランも、俺の守備範囲だったら……」球太は首を振った。「違う。お前のせいじゃねえ。俺だ。俺が7回で打ち込まれて、流れを崩した。涼の肩を、無理に投げさせて……結局、抑えきれなかった」翔は黙って聞いた。球太の声が震えた。「初めてだよ……こんなに、完璧に負けたの。甲子園、すぐそこだったのに。俺の球が……通用しなかった」涼が遠くから歩いてくる。右肩にテーピングを巻き、軽くストレッチをしながら近づいてきた。「早乙女」球太は顔を上げたが、目を合わせられなかった。涼は球太の隣にしゃがみ、静かに言った。「肩の検査、昨日行ってきた。軽い炎症。安静にすれば、秋には投げられる」球太は小さく頷いた。「……よかったな」涼は球太の肩を軽く叩いた。
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