一年前の「百鬼夜行」の日、冥界の門が破られ、溢れ出した妖怪たちが人間界を蹂躙し、大虐殺を行った。幸運にも生き残った者たちは皆、妖怪を退治する「異能」を覚醒した。私・川越竜美(かわごえ たつみ)に宿ったのは、命中すれば百発百中の必殺スキル。だが、その発動対象は「豚」限定だった。そのため私は「最弱の役立たず」と蔑まれ、食堂の裏方で家畜の解体係としてあてがわれた。そして一年後、妖気が最も強まる「百鬼夜行」の日が再び巡ってきた。基地は瞬く間に妖怪の群れに包囲される。逃げ道を作るため、恋人はあろうことか私の手足を拘束し、囮として妖怪の群れの中に放り込んだのだ。「竜美、俺たちを恨むなよ。お前の異能何の役にも立たないから、この大災害の世の中じゃ、無能は死ぬのがお似合いなんだよ!」彼は未亡人である義姉を大事そうに抱えて脱出用のバスに乗り込み、妖怪に喰らわれる私を見下ろした。「お前の命で、俺たちのようなS級異能者が助かるんだ。光栄に思え。これぞまさに名誉の戦死ってやつだ」彼は知らなかったのだ。私の「妄想症」が悪化していたことを。そして、目に映るすべての禍々しい化け物たちが、私にはただの「豚」に見えていたことを。……十万を超える妖怪の群れが、我々が暮らす「北部基地」を完全に包囲していた。あらゆる脱出ルートは封鎖され、司令官は苦渋の決断を下した。基地を放棄し、総員撤退すると。脱出用の大型装甲バスの出発準備完了まで、あと三十分。これに乗り遅れれば、基地に残るのは死ぬしかない!だが、発車まで残り十分を切っても、恋人の古賀怜治(こが れいじ)の姿が見当たらない。私は焦った。「竜美、古賀さんは基地最強の異能者だぞ。誰が置いて行かれても彼だけは助かるさ!それより、豚しか殺せない異能のお前が単独行動なんてしてみろ、妖怪に出くわしたら即死だぞ!」同僚の制止を振り切り、私はバスを飛び降りた。基地の最上層へ駆け上がり、あのVIPスイートのドアを叩く。「怜治!脱出バスがもう出るわよ、準備はできてるの!?」カチャリ。ドアが開いた。だが、そこから出てきたのは、ゆったりとしたシルクのパジャマを纏い、完璧なメイクを施した内海紗枝(うつみ さえ)だった。「あれ、義姉さん……どうして怜治の部屋に?」心臓をハンマーで殴られたような
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