婚約者・東山悠斗(とうやま ゆうと)の秘書・小林有紗(こばやし ありさ)が、つい音声付きのまま、ライブフォトをSNSにアップしてしまった。画面外の声で、彼女は彼の下の名前を呼んでいた。「悠斗さんも、彼女のあそこにキスするの?」悠斗の答えは、「しない」だった。「俺は年収千万だ。彼女は安っぽくて、なんとなく汚れて見える」私・浅倉美鈴(あさくら みすず)は苦笑いしながら手元のロレックスを放り投げ、父さんにメッセージを送った。【父さん、お見合い結婚、受けるわ。会社から悠斗をクビにして】それから、ブライダル会社に電話をかけた。「もしもし、十日後の結婚式なんだけど、新郎の名前を変更したい。ええ、相手が代わったの」「ええ、細かいことは直接あって相談しましょう」電話を切った直後、ちょうど悠斗が浴室から出てきた。髪は半乾きで、バスローブをまとい全身が湯気で湿っていた。普段ならシャワーは30分で済むのに、今日はまる1時間もかかっていた。彼は机の上に閉め忘れたノートパソコンに目をやり、さっと閉じてから、眉をひそめて私に聞いた。「今、誰に電話してたんだ?」私はありのままに、ブライダル会社の人だと伝えた。悠斗はほっとした。きっと自分と有紗のチャット記録を見ていなかったのだろう、と思ったらしい。さもないと、私の性格からして大騒ぎして、彼に有紗をクビにさせただろう。以前、そうやってことがあったから。有紗は、悠斗が一年前に新しく採用した秘書で、卒業したばかりの若い女の子だ。可愛くて活発で、悠斗は彼女を気に入り、残業や出張にもよく連れて行っていた。私はやきもちを焼き、そのことでよく悠斗と喧嘩になった。彼は仕方なく、私との結婚を承諾したのだった。「式までまだ十日もあるんだ。そんなに細かくやらなくていいよ」悠斗の声は淡々として、喜びの色は感じられない。私が式の詳細を確認する電話をしていたのだと思ったのだろう。だって、付き合って五年、どの祝日も記念日も、私は彼を喜ばせようと、こと細かく全て計画してきたのだから。「ええ」確かに、細かくやる必要はない。結婚する相手が、全て引き受けてくれるのだから。そう思うと、苦笑が唇に浮かんだ。悠斗はうんざりしたように私をせかした。「ご飯はできたのか?腹減った」「ご
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