All Chapters of オメガ騎士は王の閨に囚われる: Chapter 11 - Chapter 20

32 Chapters

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 アルトゥールが腰を打ちつけるたび、パーシヴァルの喉の奥から呻きがもれる。「う……ぐぅ……っ!」──傷つけたいわけでは……、ないのに! 脳の片隅に、そんな思いがかすめるが。 パーシヴァルのフェロモンに、理性的な思考はどんどん削られていく。「──ううっ!」 びくんっ! と、パーシヴァルの体が跳ねる。 だが、根本に嵌められた環によって、熱は解放されない。 見開かれた金茶の瞳から、涙が溢れ落ちる。 オメガという、どこにあっても必ず迫害される性を持つパーシヴァルだが──。 決して、折れて泣いたことなどない。 その彼が、呻きながら泣き、同時にアルトゥールによって体を暴かれる熱に、イキ狂っている。 抱きしめた腕が、パーシヴァルの背中の傷に触れた瞬間。 明らかに快感とは違う反応で、彼の体が震えた。──この傷が……。 アルトゥールがこよなく愛した高潔なる騎士を、隷奴に貶めた傷。 未だ癒えきっていないその傷の感触に、アルトゥールはギリと奥歯を噛み締める。 再びびくんっと、パーシヴァルの体が跳ねた。 背は仰け反り、縛られ固定された足のつま先だけで立ったまま、健を切られた利き腕だけが、シーツの上に落ちている。 全身を震わせるたびに、力の入らない右手が微かにシーツを掴むような動きを見せた。 アルトゥールは、その手を掴んだ。──こんなにも……。 幼少の頃。 護衛の目をかすめ、アルトゥールは街に出た。 皇太子とは気づかれなかったものの、身につけた高価な装飾や衣服から、暴漢に襲われ、誘拐されそうになった。 その時、スラムに連れ込まれたアルトゥールを助けたのが、当時まだ少年であったパーシヴァルだった。 幼少の自分が、暴漢の前に成すすべもなく衣服を剥ぎ取られ、暴力に晒された時。
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 翌朝、アルトゥールは冷えた空気で目が覚めた。  体を起こすと、戒められたままのパーシヴァルが、自分の下で、未だ意識を失い無惨な姿を晒していた。 耳に、肩に、鎖骨に──。  血が滲む噛み跡が、複数ついている。  萎えた自身が、まだパーシヴァルの中に残っていることに気づき、そっと引き抜くと──。  赤く腫れた孔から、アルトゥールの体液がどろりと溢れ出した。 アルトゥールは、右手を額に当てる。──これでは、本当の獣ではないか……。 乾いた涙のあとが残るパーシヴァルの顔に手を伸ばし、その轡を外そうとした時。「陛下」 ノックの音が響き、外からヴィの声がした。「お目覚めでいらっしゃいますでしょうか? 入室の許可をいただけますか?」 「入れ」 アルトゥールが答えると、静かに扉が開く。「湯屋の支度が出来ております」 ヴィは、アルトゥールが轡を外そうとしたことに、気付いている様子だったが──。  平素は無表情を貫いているその顔に、かすかな悲痛の色がにじんでいるのを察して、何も言わなかった。「今後、閨にメイドを入れることはないように」 「心得ております。既に、そのことは通達をいたしました」 ベッドを降りたアルトゥールの肩に、ヴィはガウンをはおらせた。  アルトゥールは、わざと顔をベッドから背け、肩のガウンをことさら強く掴み、つかつかと部屋を出ていく。  ヴィは、黙ってその後ろをついて行った。
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4:パーシヴァル

 パーシヴァルは、部屋に入ってきた他人の気配で意識を取り戻した。──誰だ? と声に出して問いかけようとしたが、轡によって呻きをもらしただけに終わる。「気付かれましたか?」 目を開けると、昨晩見た顔があった。 音もなく近づき、レイヴンはまず轡を外す。「レ……ヴン……?」 声は、掠れて言葉を成さなかった。 昨晩の責め苦に、轡をされながらも悲鳴を上げすぎて、喉を痛めてしまったのだろう。「戒めを外します。動かれませんように」 断りを入れてから、レイヴンは手首を解放し、更に腿に縛り付けられている足首の戒めを解いてくれる。 そして、柔らかな布を取り出すと、パーシヴァルの体を包んでくれた。「お部屋を移動いたします。触れますことをお許しください」 断りを入れてから、レイヴンはパーシヴァルの体を軽々と抱き上げる。「……っ!」 オメガ故に小柄ではあるが、騎士として鍛えたパーシヴァルの体は決して軽くはない。 そしてレイヴンの見た目は、まるで文官然とした細身なのだ。 やすやすと抱き上げられるとは想像出来ず、パーシヴァルはかなり驚いてしまった。 しかし、そんなパーシヴァルの驚きを余所に、レイヴンは姫抱きのままバランスも失わず、確かな足取りで部屋を出る。 だがどちらにせよ、一晩中同じ格好で固定されていた体は、強張って暴れることすら出来ない。 パーシヴァルは、そのままレイヴンの腕で、小さな扉の向こう側へと運ばれた。
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 そこは、狭いが設備の行き届いた小部屋であった。  兵舎で見たような、簡易ベッド。  物書き机と椅子。  そして、仕切りの向こうには猫足の付いたバスタブと、シャワーも備え付けられている。  レイヴンはパーシヴァルを、真っ直ぐそのバスタブへと運んだ。「失礼いたします」 未だ熱を持って堅くそそり立っている、パーシヴァルの中心に手が伸びる。「あ……っ!」 咄嗟に払おうとしたが、その手はあっさりと止められた。「このままでは、苦しいだけでございます」 「よせ……」 根本のリングに、レイヴンが持っていた指輪を近づける。  すると、仄かな光が輝いたあとに、カチリと音がしてリングが外れた。  レイヴンは、そそり立つそれに、手早く処置を施す。「あああっ!」 一晩中、押し込められていた熱が一気に解き放たれ、迸った白濁がパーシヴァルの下半身を汚した。  全身の震えが止まったあとも、それは溢れ続けている。「大丈夫ですか?」 「あ……っ、……はぁ……はぁ……」 バスタブの縁に掴まり、パーシヴァルは荒く息を吐く。「す……まない……、とり……乱した……」 返された答えに、レイヴンはなんとも言えない顔をする。 昨晩。  馬車の中でパーシヴァルが、暴かれる自分よりも、暴くアルトゥールを気遣った気持ちが。  今朝は粉微塵に吹き飛んで、どれほど嘆き悲しむかと思っていたのだが。 パーシヴァルは相変わらず、自身の痛みを遠ざけている。「今朝……、陛下……には?」 「無理にお話にならない方が、よろしいかと」 レイヴンは、シャワーから温水を出す。「私は、今朝はまだ主に会ってはおりません」 レイヴンは、温かな湯でパーシヴァルの体を濯ぐ。  パーシヴァルは黙ったまま、体を清められ、薄布のガウンを着せ掛けられ、小部屋のベッドへと導かれるまま従った。「この……、器具を外すことは出来ないのか?」 貞操帯の意味は理解しているが、ヒートもしていないのに孔を開かれ、そこに異物を入れられているのが、どうにも不快で仕方がない。「申し訳ございません。それは立会人の解呪を受けない限り、誰にも外すことは不可能でございます」 「……まぁ、射精させてもらえるだけ、マシ……か」 手足に枷はなく、服も普通に着ることが出来る。「お食事はいかがなさいますか?
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5:アルトゥール

 アルトゥールは、執務室でヴィと共に仕事をしていた。  そこに、静かなノックが響く。「入れ」 「失礼いたします」 一礼して入ってきたのは、文官の格好をしたレイヴン・クロウだ。  彼は、皇帝直属の暗部〝クロウ〟の長である。「陛下、こちらにサインをお願い致します」 差し出された書類には、気象情報が書かれている。  だが、それはパーシヴァルの状況を伝える〝暗号文〟であった。──そうか……、受け入れてくれたのか……。 昨晩、自分があの誇り高い騎士を穢した記憶が蘇る。  熱に浮かされ、泣いていたパーシヴァルの顔。  だが、アルトゥールは頭を振ることさえせず、無表情のままサインをし、書類をレイヴンに返す。「先日頼んだ、市場調査〟はどうなっている?」 アルトゥールの問いに、レイヴンは深々と頭を下げた。「申し訳ございません。近日中にご報告をいたします」 「わかった。できるだけ、急いでくれ」 「わかりました」 それからレイヴンは扉に向かい、一礼して去っていった。「なにか、吉報がございましたか?」 傍に控えていたヴィが問うた。「なぜ?」 「ご機嫌が戻ったようにお見受けしましたので」 「……ああ……。至宝の黒真珠を失わずに済んだ」 「ようございました」 「だが、丸く収まったわけではない」 「左様です」 アルトゥールの深いため息の意味を、ヴィは理解していた。  〝市場調査〟とは、パーシヴァルが出品された闇オークションの全容を指す。「レイヴンが洗い出せないとは……」 「仕方あるまい。我が国は人身売買を認めていないが、奴隷落ちの刑罰が存在する。人身売買のオークションを仕切っているのは、高位の貴族であろうからな」 それは、カレドヴールの膿の一部でしかない。「元を正せば、父上が周辺諸国と戦争をし続けていたことが原因だ。なんにせよ、余が負うべき負債であろう」 「御意……」 「捕虜を慰めるために、国民のオメガを奴隷に落とす……馬鹿げた話だ」 戦争捕虜のほとんどは、高位の貴族だ。  交渉に使える〝駒〟の彼らは、捕虜とも思えぬ待遇に置かれている。「しかし、国家の財産であるオメガ隷奴が、闇オークションで売買されるというのも、おかしな話です」 「捕虜にばかりいい思いをさせるのかと……、老獪なすけべジジイどもが不満を言上した
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 数日が過ぎた──。  その朝も、いつもと同じく執務室に、レイヴンが現れる。 夜毎、アルトゥールはパーシヴァルを抱く。  言葉は交わせない。  ただ、どちらも香によって獣のようにまぐあうだけだ。  それによって、アルトゥールの心が日々疲弊していくのが分かる。 ヴィは、表情一つ変えずに、しかし明らかに憔悴しているアルトゥールを、痛ましく感じていた。「なにか、ございましたか?」 レイヴンが部屋から出ていったところで、ヴィは訊ねた。「別に、なにも……。……ただ、部屋から出ることを禁じられているゆえ、好きな本を選ぶことも出来ぬだろうと思ってな……」 報告書に、パーシヴァルが日中、本を読んで過ごしているとあった。「陛下がお選びになられては? 以前、カナルディーレの戦いに関して、戦略で随分と白熱した論議を交わしておいででしたが」 「ははは……、そういえば、そんなこともあったか」 アルトゥールは、深々とため息を吐いた。「あれの考察は、いつでも真っ直ぐで……」 合理性で策を考えるアルトゥールに対し、パーシヴァルの意見は常にそこにいる〝民衆〟を考えていた。  戦略として、土地に塩をまき、畑を焼いて収穫をさせないことも考えるアルトゥールに、パーシヴァルは真っ向から反対意見をぶつけてくる。  真っ直ぐアルトゥールを見据え、民が飢えることを嘆き、皇帝に怨嗟が及ぶことを憂慮して、金茶の瞳が揺れていたことを思い出す。「では、午後に少々、書庫に赴かれる時間を作りましょうか……?」 ヴィがそう言った時、扉にノックの音がした。
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6:冤罪

「モルドレッドです。陛下にご報告がございます」 「入れ」 モルドレッド・クレイモアは、第一騎士団に所属している。  巻き癖のある黒髪を清潔に撫でつけ、ヘーゼルナッツの瞳には人懐こい光を湛える、長身の騎士。  今は亡きアルトゥールの兄、ユーウェインの近衛を勤めていたが、戦場でユーウェインが討ち死にしたことで、上級騎士として第一騎士団付きに所属が戻っていた。「本来ならば、上役へ報告を上げるべきですが……。陛下に直々、お話することをお許しください」 「なぜ、上役を通さない?」 「先日より探索のご命令をいただきました、オメガ隷奴の不正流出に関する調査結果なのですが。……調べてゆくうちに、ソーンウッド侯爵家の関与が疑われる証拠が見つかりました。ですが、私の上司は、ソーンウッド家の縁故の者。かの上司の誠実さを試すようなことをするよりは、陛下に直にご報告すべきかと……。差し出がましいとは存じておりますが……」 「ほう。では、その調査結果とやらを、見せてみろ」 モルドレッドは、持っていた書類を恭しく差し出した。  それをヴィが受け取り、アルトゥールへと渡す。  書類に数行、目を通したアルトゥールは、眉をピクリと動かした。「随分……、無茶をしたようだな」 「私は、パーシヴァルが敵に背を向け逃げるとは、思っておりません」 モルドレッドは、わざわざ直立不動の姿勢になり、はっきりとした口調で言った。「それが、この件とどう関係がある」 「そちらの報告書にございます通り、リオン・ソーンウッド侯爵様はパーシヴァルの腹違いの兄に当たります。……実は、パーシヴァルが騎士団員として所属しておりました頃から、リオン様はパーシヴァルに対し、執拗に嫌がらせをしておりました」 「証拠は?」 「あくまでも状況証拠のみにて、訴え出ることが出来ませんでした」 「具体的には?」 「パーシヴァルがオメガ性であることを揶揄し、騎士団内で、あたかもパーシヴァルが上層部を籠絡したような誹謗中傷の数々を流布する……と言ったものであります」 アルトゥールは、チラとヴィを見やった。  ヴィは、微かに頷く。「パーシヴァルの周りに、常にそうした誹謗中傷がついて回っていたことは、余も把握しておる。その吹聴元が、ソーンウッドだと?」 「はい」 「では、今回のパー
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 モルドレッドの報告を受けて、アルトゥールはレイヴンにソーンウッドの調査を命じた。  だが、手練のレイヴンと言えど、即座に調査結果が上がってくる訳では無い。  アルトゥールはじりじりと報告を待っていた。 数日したある日、扉の外で喚き声とガタガタと争うような音がする。「陛下、クリス・ブラッドレーがご面会をお願い致したく!」 不審に思ったヴィが動くより早く、執務室の扉が開き、護衛と数人の騎士が倒れ込んだ。「何事ですか?」 ピシャリとした、ヴィの声が響く。「陛下! 失礼を承知で御前にまかりこしました! 第一騎士団所属、クリス・ブラッドレーでございます!」 床に倒れ込み、護衛に抑えられている男が叫ぶ。「控えなさい!」 「いいえ! いいえ! これだけはお伝えしなければなりません! 陛下! パーシヴァル殿は冤罪にございます!」 そこまで叫んでから、ブラッドレーは激しく咳き込む。  よく見れば、ブラッドレーの服装はほぼ〝病衣〟であり、見える手足の皮膚には痛々しい傷があった。「ブラッドレー……? 撤退戦で、殿を申し出た騎士の一人か」 「はい、陛下!」 思い出したように呟いたアルトゥールに、必死の声で答えたものの、ブラッドレーは再び咳き込んだ。「皆、下がれ」 護衛たちは、顔を見合わせはしたが。  アルトゥールの本気を感じ取り、手を引いて部屋から出ていく。  執務机を回り込み、アルトゥールはヴィと共にブラッドレーに手を貸した。「詳しく、聞かせてもらおうか」 「ありがとうございます」 しかし、立ち上がったブラッドレーは足元も怪しくふらついている。「加減が悪いのではないか?」 「申し訳ありません、陛下。……ですが、一刻も早くお知らせしたいことがあるのです」 「ブラッドレー、着座を許す。そこに掛けて話をせい」 ヴィが用意した椅子に座り、ブラッドレーは息を吐いた。「貴殿は、意識のない状態で、王都に運ばれた……と記憶しておりますが?」 ヴィが問うた。「はい。昨晩、目覚めました。今朝、騎士団長様の見舞いを受けまして……。そこで、撤退戦後のあらましと、パーシヴァル殿がオメガ隷奴に処されたとの話を聞きました」 撤退戦──。  それは、調停に赴いたアルトゥールが、隣国の奸計に陥り、絶体絶命の危機に陥った時のことだ。
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6:雪冤

 パーシヴァルは──。  初めて、香の焚かれていない皇帝の閨へと案内された。「まだ、陽も高いのに……」 部屋に入ると、そこにはヴィとアルトゥールがいる。「帝国の太陽……」 「パーシヴァル、挨拶はいらぬ」 慌てて跪こうとしたパーシヴァルを、アルトゥールが制す。「パーシヴァル様、こちらへ」 寝室に置かれた豪奢な寝椅子に、レイヴンに導かれて座らされる。  すると足元にヴィが傅いた。「パーシヴァル殿、申し訳ありません。失礼します」 「えっ……? いや、あのっ……!」 ヴィは、パーシヴァルの着ている前合わせのゆったりとした服の前を開き、狼狽える様子も構わずに呪を解く術を掛けた。「では、陛下。御前、失礼させていただきます」 一礼すると、ヴィとレイヴンは部屋から出ていく。「陛下……?」 アルトゥールは傍に歩み寄ると、パーシヴァルの下半身に手を伸ばす。「あっ!」 「すまぬ」 伸ばした手は、パーシヴァルの前孔に嵌められたまま、ずっとそこを塞いでいた器具をつまみ、引き抜いた。「ああうっ!」 びくんっと、パーシヴァルの体が仰け反る。「痛みを与えたか?」 「いえ……、大丈夫で……ございます」 「パーシヴァル……」 アルトゥールの腕が、パーシヴァルの体を抱く。  かと思ったが──。  その手は、パーシヴァルの首元に伸ばされ、嵌められた枷を解いた。「あっ……」 「パーシヴァル。貴殿の冤罪は晴らされた」 「え……っ?」 アルトゥールは、ブラッドレーの証言によってパーシヴァルの〝反逆罪〟が消えたこと。  それにより、パーシヴァルの奪われた名も地位も、元通りとなったことを告げた。「すまない、パーシヴァル。……余が、もっと早くにその証拠を見つけておれば……」 アルトゥールの手が、パーシヴァルの肩を掴む。  皇帝として、感情を表に出すことを意識的に避けているアルトゥールが、双眸に涙を溢れさせ、唇を噛んでいる。「陛下、泣いてくださいますな。……私は、生きております」 「死よりも辛い、目に合わせた……。余は……、俺は……、自分の命の恩人の身を穢し、おめおめと……」 「命の……恩人?」 パーシヴァルはきょとんとした顔をしている。「覚えてなくとも、当然か……。俺は当時、まだ三歳だった」 それでもま
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 落ち着きを取り戻したアルトゥールは、部屋から出ていったヴィとレイヴンを呼び戻した。  二人は、パーシヴァルの体から器具を外す瞬間を──。  パーシヴァルの羞恥を慮って、座を外していただけだった。「では、こちらをお召しください」 レイヴンが、パーシヴァルの衣服を整えてくれる。「すまない、ありがとう」 身支度の手伝いをしてくれたレイヴンに礼を言い、パーシヴァルは改めてアルトゥールに顔を向ける。「では、私が掛けられたオークションの主催元は、ソーンウッド侯爵家だったのですか?」 「うむ。リオンは斬首、前侯爵も連座と決まった」 「義母う……、いえ、前侯爵夫人は?」 パーシヴァルの問いに、アルトゥールはチラとレイヴンに視線を送る。「パーシヴァル様。陛下は、前侯爵があなた様の実母・スーサン様を監禁し、あなた様を庶子としても認めずに放置されたこともご存知でございます」 「え……?」 驚いたパーシヴァルに、アルトゥールは頷いた。「全て、レイヴンからの報告で知っている。レイヴンは昔、侯爵家に盗みに入り、殺されかけたところをスーサン・シャヒーンに助けられたのだ」 「え……、ええっ!」 パーシヴァルは、改めてレイヴンの顔を見つめた。「母上が……、僕と大差のない年頃の子供の、傷の手当をしていたことがあるが……」 「はい。それは私でございます」 「しかし……。それでどうして、暗部に……?」 「スラムで盗賊の使い走りをしていたところ、陛下に身軽さを認めていただき、ご奉公しております」 「レイヴンが、ソーンウッド侯爵家の離れに心優しき母子がおったと、教えてくれてな。当時から慰問の管理も任されていた家だが、前侯爵がアルカディール連合の姫を幽閉し、妾にしているとは思わなかったぞ」 「確かに母は、ソーンウッド家の離れに幽閉されておりましたが。しかし、侯爵は人身売買はしていなかったと思いますが……?」 「うむ。闇オークションに手を出したのは、リオンの代になってからだな。リオンは妾を置かぬ代わりに、オメガ隷奴で気に入った者を連れ出しては、好きに嬲り、飽きたところで売却するのを繰り返していたようだ」 「ただ横流しをするより、オークション形式にしたほうが実入りが良いと思ったようです。かなりの人数が流れていたようですが……」 「オメガ隷奴のリストはない
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