All Chapters of オメガ騎士は王の閨に囚われる: Chapter 21 - Chapter 30

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7:予兆

 宮中伯となったパーシヴァルは、オメガの人権復権のために駆け回っていた。 だが、相変わらずパーシヴァルの発言力は、弱い。 それは、騎士団に所属していた頃から、状況は変わっていない。 アルファたちから向けられる、劣情。 ベータからは、煩わしげに避けられる。「苦戦をしているようだな」 執務室に書類を届けに行くと、アルトゥールがねぎらってくれる。「仕方ございません。オメガ性の者は、ヒートを抑える薬を服用していても、汗や体液にフェロモンが交じることがありますし。近衛の頃も〝体で近衛の地位を手に入れた〟と、散々後ろ指を刺されました」 笑うパーシヴァルに、アルトゥールは不愉快そうに眉根を寄せる。「ベータの女性が、丈の短いスカートを着用しているからといって、尻に触って良いわけではあるまい」「殿下の例えは、少々乱暴では?」 隣りにいたヴィが言った。「知性のある生き物として、理性を持てと言ってるだけだ」「ですが……。当時は、オメガ性の者が近衛であることを、|羨んで《・・・》いる者もおりましたから」「腹立たしい……」「そのための、新規法案でございましょう?」 ふうっと、パーシヴァル以上に疲れた顔でアルトゥールがため息を|吐《つ》く。「だが、兄上の子エドワードが皇帝になる前に、宮廷の膿は全て取り払っておいてやりたい。苦労を掛けるが、手伝ってくれ」「もちろんでございます」 一礼をして、執務室を出る。 とはいえ、パーシヴァルも疲れていることを否定出来なかった。──騎士だった頃よりも、状況は悪い。 ある意味、実力主義の騎士団では、拳で相手を黙られることも出来た。 だが、|政《まつりごと》となると、そうはいかない。 パーシヴァルもまた、気付かぬうちにため息を|吐《つ》いていた。
last updateLast Updated : 2026-02-16
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 数日が過ぎ、パーシヴァルはなおも忙しい日々を過ごしていた。「パーシー!」 宮中の廊下を歩くパーシヴァルの背に、聞き馴染んだ声が掛けられた。「モル! たった数ヶ月ぶりなのに、ひどく懐かしいぞ」 モルドレッドの笑顔に笑みを返し、肩を叩き合う。「破牢の咎が及ばなくて、良かった」「そちらこそ、なんの咎めがなくて安心した」 牢から逃げるための手引をしたモルドレッドだが──。 パーシヴァルは、公的な場で破牢の手引をした者の名を、決して言わなかった。 故にモルドレッドは、一切の咎めを受けずに済んでいるのだ。 最も、パーシヴァルの罪が〝冤罪〟であったと証明されたために、そこは容赦をされただけだろうが……。「パーシーが宮中伯か……。すっかり、遠い存在になったな」「状況は変わらん。撤退戦のお陰で、騎士団の連中は好意的に接してくれるようになったが……。今度は議会で貴族相手に、孤軍奮闘中だ」「オメガ隷奴の廃止……か。その法案が通ったところで、すぐには変わるまい」「アルファがみな、モルのような理性を持ってくれていればいいのだがな」「俺は……、アルファの中でも落ちこぼれさ」 中の廊下を抜けると、中庭が見える回廊に出る。 眩しさに、パーシヴァルは思わず手を上げて|陽《ひ》を遮ろうとし──。 持っていた書類を落とした。「おっと……」 モルドレッドは、書類を拾うのを手伝ってくれる。「やはり、右手は動かないのか?」「ああ。握ることが出来ない。だがまぁ、切り落とされるよりはマシだった」 集めた書類を受け取り、パーシヴァルは礼を述べる。「すまん。ありがとう」「構うものか。……俺は、騎士団棟に行くので、こっちだ。また今度、飯にでも行こう」「ああ、そう
last updateLast Updated : 2026-02-16
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 アルトゥールは、仕事の合間に立ち上がり、窓辺に立っていた。 視界に映ったのは、中庭の回廊を歩く、パーシヴァルとモルドレッドの姿。「オメガ隷奴の廃止に関して、議会はなんと?」 ヴィは顔を上げると、書類を手に取った。「かんばしい反応はありません。貴族議会はアルファも多く、オメガ隷奴を秘密裏に保有している者もおりますれば」「ソーンウッドが検挙され、人身売買のルートが潰されはしたが……。既に所有している者たちを取り締まるための法はなし。……まずは停戦を進め、人質同然の貴人たちを国元に返さねば……な」 扉にノックがある。「パーシヴァル・シャヒーンでございます」「入れ」 一礼をして部屋に入ったパーシヴァルは、書類をヴィに渡した。「現在、国家が所有しているオメガ隷奴のリストが完成いたしました。体に不調をきたしている者もおりますが、それ以上に……。心を閉じ、話も出来ない者が多数を占めております」 パーシヴァルの報告に、微かにアルトゥールの眉が動く。「おまえは……どうなんだ?」 アルトゥールの問いに、パーシヴァルは微かに微笑んだ。「|私《わたくし》は、陛下の駒でございます」「だが……!」 もしあの一件がなく、かつパーシヴァルを〝オメガの復権の旗頭〟として宮中伯を叙爵されたとしたら──。 |陽《ひ》の光の中、モルドレッドと語らうパーシヴァルの様子は、もっとはつらつとしていたのではなかろうか? だが、そう考えると、アルトゥールの胸に微かな痛みが走った。「陛下。|私《わたくし》がもし心を閉じて、誰の言葉も届かなくなることがあるとすれば……。|私《わたくし》が、陛下にとってなんの役にも立たなくなった時です。……むしろ、|私《わたくし》のために陛下の心が痛むことが、|私《わたくし》には、
last updateLast Updated : 2026-02-16
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8:モルドレッド

 夕方になり、パーシヴァルは自身の執務室で書類を前に、四苦八苦していた。 動かない利き手では、もうサイン一つもまともには書けない。 いくらかマシな左手は、使い慣れずにすぐに疲れてしまう。 座学が格別苦手なわけではないが、騎士になるべく体を鍛え、動く日常を過ごしてきた身には、書類仕事に明け暮れる文官じみた生活は堪える。 背もたれに背を預け、大きくため息を|吐《つ》いた。──僕の力で、本当にこんな改革が出来るんだろうか? 不安はある。 貴族たちの集まる議会に顔を出すたび、卑猥な意味を込めた蔑みの言葉を投げられる。 オメガ隷奴を所有しているアルファは、奴隷落ちの刑の廃止に否定的だ。 腹芸に、根回し、人脈と上下関係。 騎士の頃にもさんざんあった。 だが、アルトゥールの元でオメガ隷奴として夜伽をしていたことが〝公然の秘密〟状態の今は、もっと酷いことになっている。──僕以上に、陛下の心が傷つくのに……。なんであんなことが言えるのだろう? もっとも、政治を動かす貴族の全てが、本物の忠臣ではないこともわかってはいるが……。──こんな伏魔殿で、ずっと戦っておられるんだな、陛下は。 ほうっと息を|吐《つ》いた時。 扉にノックの音がした。「パーシー」 開いた扉から、モルドレッドの顔が覗く。「まだ、仕事か?」「ああ……、いや。そろそろ切り上げようとは思っていた。どうしたんだ?」「昼間、あまり疲れた顔をしていたから、飯でもどうかと思ってな」 椅子から立ち上がり、パーシヴァルは上着を手に取った。「友とは、ありがたいものだな」「今更、なんだ?」 呆れ顔のモルドレッドと共に、パーシヴァルは部屋を出た。
last updateLast Updated : 2026-02-17
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 騎士時代は、モルドレッドと二人で街の食堂で夕食を取り、エールを交わした。 と言っても、飲むのはもっぱらモルドレッドばかりで、パーシヴァルは果実水を飲んでいたが……。 アルコールは量を過ごせば、ヒートを抑えにくくなる。 オメガに生まれた者は、ヒートを抑えるために|己《おのれ》を律し、それでも本能的にやってくる衝動を、薬で抑える。 それを知るアルファの中には、パーシヴァルに無理矢理アルコールを飲ませようとする輩もいたが。 モルドレッドは、いつもそれを庇ってくれていた。「色々あって、疲れているだろう? だが、宮中伯にもなったパーシーを、以前のような食堂に連れていくわけにもいかないからな。屋台で食べるものを買って、俺の家で過ごすのはどうだ?」「ありがたいな。ではお言葉に甘えさせてもらおう」 近衛になってからは──。 特に、アルトゥールがパーシヴァルを重用したことと、モルドレッドがユーウェインの近衛であったことなどから、一緒に食事をする機会はほとんどなくなった。 ユーウェインの死後、モルドレッドは近衛から騎士に戻りはしたが。 アルトゥールとユーウェインの仲が良くとも、周囲は二人の王子を〝政敵〟と見做していた。 第一王子の近衛だったモルドレッドは、アルトゥールの元での出世が難しい。 オメガの近衛という、何もしなくてもおかしな噂が生まれやすいパーシヴァルは、モルドレッドと親しげに話をすることが憚られ──。 結局、友としての絆に関係なく、距離を取らざるを得なくなった。 それでも──。 再び友情をはぐくめる状況に戻った時に、こうしてモルドレッドが変わりなく接してくれるのが、嬉しい。「俺しかいない。遠慮はしないでくれ」「きみは……、屋敷を持ってるのか?」「実家の持ってる建物を、回してもらっただけだから。ナリはデカイが、中身はスカスカだ」「クレイモアは子爵だったな」「ああ、俺は三男だ。だが、幸いにして近衛になった時に、ユーウェイン様を守った功績で騎士爵を
last updateLast Updated : 2026-02-17
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 アルトゥールの執務室には、まだ明かりが灯っていた。「陛下、あまり根を詰めますと、お体に障ります」 温かい飲み物を差し出すヴィが、やんわりと嗜める。「パーシヴァルに無理をさせているのだ。余も怠けてはいられない」 返された答えに、ヴィはなんとも言えない顔になった。「それで体を壊されては、パーシヴァル殿が困ってしまわれるのでは?」「痛いところと突いてくるな」 アルトゥールは、微かに苦みの混じった笑みを返した。 そして、ため息と共に背中を椅子の背もたれへと倒す。「どうしたらいいのか、わからんのだ……」 口調が、皇帝然としたそれから、昔の……第二王子だった頃のものに戻っている。「|番《つがい》になさってしまえばいいのでは?」「俺は……、パーシヴァルを縛りたいわけではない」「ですが、目の届かない場所に行かれることを、恐れてらっしゃる」「……そうだな」 モルドレッドと回廊を歩いていたパーシヴァルの姿を思い出す。──分かっている。この感情は……嫉妬だ。 パーシヴァルに対する感情は、一言で言い表すならば〝独占欲〟だろう。 一途な忠誠心を向けられていることは、理解している。 その身を穢した自分に、今でも変わらず捧げられていることも──。──以前のように、ただパーシヴァルを愛で続けることが出来たならば……。 アルトゥールは、|頭《こうべ》を振る。 それはもう、どれほど望んでも叶わない。「どちらにせよ、陛下はお疲れです。今日はこの辺りで……」 ヴィが再び、休息を勧めようとした、その時──。 扉がノックされた。「こんな時間に?」 不審に思ったヴィが扉に歩み寄るより先に、開いたそこからレイヴンが入ってくる
last updateLast Updated : 2026-02-17
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 パーシヴァルは、むせ返るような香の匂いで目を覚ました。「なん……だ……?」 全身に、嫌な汗をかいている。 蘇る、アルトゥールの閨で縛られていた記憶……。 だが、今は怠いだけで、手足は動いた。「こ……こは……?」 咳き込みながら、体を起こそうとしたが──。 寝かされていた寝椅子から転がり落ち、床に肩を打つ。 だが、打った痛みより、全身に響いた衝撃のほうが強かった。「うあっ……あ……」 ぞくりと走る、快とも不快とも感じる感覚。 痛みすらも熱に変える、おぞましい|発情《ヒート》の兆候だ。「思ったより、早く目が覚めたな……」 うつ伏せたパーシヴァルの背中に、聞き慣れた声が落ちてきた。 だがそれは、パーシヴァルの知る優しい声音ではなく──。 聞いたこともない、冷ややかなものだ。「モル……?」「ああ、俺だ」 振り返ったパーシヴァルは、天井の明かりの下、逆光になった親友の顔を見てギョッとなった。「いや……まさか……」 戦場で、背中に衝撃を感じたあと。 記憶の中では、ちらと人影を見たような気がした……だけだった。「なんだ、今更、思い出したのか?」 にやりと笑って、モルドレッドが言った。「そうだ、パーシー。俺が、お前を斬った。幻術を使っていたから、ブラッドレーにはパロミデスに見えていたがな」 モルドレッドの言葉に、パーシヴァルは愕然となる。 あの時と同じような──。 地に伏した自分と、逆光で影になった顔の襲撃者。──そうだ。あの時、僕ははっきり相手の
last updateLast Updated : 2026-02-17
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「なぜ、ソーンウッドが加担を……?」「リオンは自滅したようなものさ。きみは気づいていなかったようだが、やつは子供の頃から、きみを欲しがっていた」「ありえない……」 子供の頃から、腹違いの兄からは罵倒と蔑みをされた記憶しか無い。「リオンは母親が怖くて……、いや、違うな。あれは〝母親に見捨てられるのが〟怖くて、逆らえなかったんだろう。前侯爵夫人は、半分とは言え血を分けた兄弟を妾にすることを許してくれず、やつは泣く泣くきみを手放したんだ」「|義母上《ははうえ》……は、僕を憎んでいた……」 侯爵の正妻といったら、パーシヴァルとその母を心底疎ましげに、憎しみの視線を向けてきた記憶しか無い。「当然だろう? 亭主と息子を狂わせる、傾城の母子だぞ? 屋敷に置くのが怖かったんだろう。スラムに捨てれば、すぐにも奴隷商に捕まるか、野垂れ死ぬかと思ったのかもしれないが……。その逆境を生き延びたきみは、美しさのみならず、その高潔な精神によってアルファの垂涎の的になってしまった」 じり……と、モルドレッドが歩み寄る。 それは、追い詰めた獲物を嬲る、獣のような動きだった。 肘をつき、パーシヴァルは後退る。「きみがオメガ隷奴に落とされると決まった時。リオンはいつもの横流しで、うまうまときみを手に入れようとしていたんだが……。俺に過去の悪事を暴露されそうになって、再び泣く泣くきみを諦めたのさ」「じゃあ……、僕を牢から逃がしたのは……」「オークションに掛けて、俺が手に入れるためだった。……まさかアルトゥールが、横からかっさらうとは思ってなかったよ。俺なら、近衛になった時点で、小姓にでもしたのにな」 手を伸ばし、モルドレッドはパーシヴァルの顎を掴む。「アルトゥールには、後ろばかり責められ
last updateLast Updated : 2026-02-17
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9:親友

 割れた窓から、レイヴンが飛び込んできた。「なんだっ?」 ほぼ同時に扉が開き、ヴィとアルトゥールが踏み込んでくる。「パーシヴァル!」 床に倒れ、衣服が乱れたパーシヴァルの姿と、部屋に立ち込める香の匂い。 アルトゥールは瞬時に状況を理解し、同時に怒りに全身が焼けるような感覚に襲われる。「陛下っ!」 ヴィの制止は、アルトゥールの耳に聞こえなかった。 そこで、レイヴンと切り合っているモルドレッドを、アルトゥールは無言のまま、その背に剣を打ち下ろす。「ぐあっ!」 振り返ったモルドレッドは、信じられないといった顔をした。 皇帝が、自らその剣で、賊を切ることなどあり得なかったからだ。 アルトゥールは、驚きに見開かれたモルドレッドの目を真っ直ぐに見据えながら、そのままモルドレッドの心臓を剣で刺し貫く。「あ……、が……」 モルドレッドの口から、赤い泡に続いて、液体が溢れ出た。「陛下……」「………………」 呼びかけるレイヴンに返事もせず、アルトゥールはモルドレッドを刺した剣をそのままにして、振り返った。「パーシヴァル殿、助けにきたのです。落ち着いて」「あ……、あ……っ!」 香に蝕まれ、ヒートが加速している。 だが、パーシヴァルは服の前を掴んで、身を縮こませ、手を差し伸べるヴィを拒絶するように壁に身を寄せ、首を振った。「パーシヴァル!」 歩み寄るアルトゥールが一喝すると、ハッとそちらを見たパーシヴァルは──。 相貌を崩し、まるで迎え入れるように手を伸ばす。「ある……」「そうだ、俺だ」 アルトゥールは、そのままパーシヴァルの体をグイと抱き上げた。
last updateLast Updated : 2026-02-18
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 アルトゥールの寝室で、パーシヴァルは横たわっていた。 ヴィの用意した抑制剤を飲ませ、息もだいぶ落ち着いている。 アルトゥールは黙って、パーシヴァルの顔を見つめていた。 様々な感情が胸のうちにある。 しかしどの感情にも、正しい答えは出せないまま──。 ただ、現実としてある結果を前に、アルトゥールは途方に暮れていた。「……へい……か?」「目覚めたか? 抑制剤で落ち着いたとは思うが、まだ休んでいたほうがいい」 目を開いたパーシヴァルは、半身を起こす。「ここは……、陛下の……」「済まない。|きみ《・・》には、いい気持ちのしない場所だが、他になくてな……」「陛下……?」「アルで、いい。スラムで俺を助けた時に、帰り道で肩車をして、そう呼んでくれただろう?」「申し訳ありません……、また陛下にご迷惑を……」「きみは、俺の光で、永遠の英雄だ。迷惑だと、思った事は一度もない」 そう言ってから、アルトゥールは深々と頭を下げる。「済まない、パーシヴァル。結局俺は、またきみを危険に晒した」「僕があなたの英雄なら、危険を引き受けるのが役目です」「俺は!」 アルトゥールは眉根を寄せ、苦しげな顔で俯いた。「俺は……、きみを得難い存在だと思っている。……あんな形できみを穢し、きみの矜持を奪い……。今は見世物のように扱って、政治利用している……」「光栄だと思ってます。陛下のお役に立てるなら、家臣としてどれほどの誉れかと」「だが、きみは傷ついている!」「それは……、僕が自分の……オメガ性に負けたような気がした
last updateLast Updated : 2026-02-18
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