宮中伯となったパーシヴァルは、オメガの人権復権のために駆け回っていた。 だが、相変わらずパーシヴァルの発言力は、弱い。 それは、騎士団に所属していた頃から、状況は変わっていない。 アルファたちから向けられる、劣情。 ベータからは、煩わしげに避けられる。「苦戦をしているようだな」 執務室に書類を届けに行くと、アルトゥールがねぎらってくれる。「仕方ございません。オメガ性の者は、ヒートを抑える薬を服用していても、汗や体液にフェロモンが交じることがありますし。近衛の頃も〝体で近衛の地位を手に入れた〟と、散々後ろ指を刺されました」 笑うパーシヴァルに、アルトゥールは不愉快そうに眉根を寄せる。「ベータの女性が、丈の短いスカートを着用しているからといって、尻に触って良いわけではあるまい」 「殿下の例えは、少々乱暴では?」 隣りにいたヴィが言った。「知性のある生き物として、理性を持てと言ってるだけだ」 「ですが……。当時は、オメガ性の者が近衛であることを、羨んでいる者もおりましたから」 「腹立たしい……」 「そのための、新規法案でございましょう?」 ふうっと、パーシヴァル以上に疲れた顔でアルトゥールがため息を吐く。「だが、兄上の子エドワードが皇帝になる前に、宮廷の膿は全て取り払っておいてやりたい。苦労を掛けるが、手伝ってくれ」 「もちろんでございます」 一礼をして、執務室を出る。 とはいえ、パーシヴァルも疲れていることを否定出来なかった。──騎士だった頃よりも、状況は悪い。 ある意味、実力主義の騎士団では、拳で相手を黙られることも出来た。 だが、政となると、そうはいかない。 パーシヴァルもまた、気付かぬうちにため息を吐いていた。
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