オメガ騎士は王の閨に囚われる

オメガ騎士は王の閨に囚われる

last updateLast Updated : 2026-02-19
By:  琉斗六Completed
Language: Japanese
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近衛の黒真珠と謳われるパーシヴァルは、無実の罪で投獄され、オメガ隷奴へと貶められようとしていた。 牢を破り、夜を駆け、身の潔白を示そうとするが、罠にはまり奴隷商人に捕まってしまう。 オメガ隷奴のオークション会場で、パーシヴァルを購入したのは、オメガ隷奴の制度を廃止しようと奔走しているはずの皇帝・アルトゥールであった。

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Chapter 1

登場人物と用語説明

・カレドヴール帝国

 大陸の覇者と呼ばれる侵略国家。

 戦争と拡大によって国力を増す一方で、国内は階級制度と差別が根強く、オメガに対する偏見・蔑視が公然と存在する。

 犯罪者や政治犯への処罰として〝奴隷落ち〟の制度が存在する。

・アルカディール連合

 砂漠地帯に点在する氏族の連合国家。

 オメガを希少な存在として保護対象と見なす文化を持っていたが、カレドヴールによる侵略で属国化。独自の価値観は徐々に失われつつある。

・アルトゥール・コンスタンティン・カレドヴール

 カレドヴールの皇帝。アルファ。金髪碧眼。

 冷静沈着で感情を外に出すことは少ないが、その内に複雑な葛藤を抱えている。

・パーシヴァル・シャヒーン

 アルトゥールの近衛。オメガ。黒髪にオリーブの肌、金茶の瞳。

 カレドヴールとアルカディールのハーフ。

・リオン・ソーンウッド

 カレドヴール帝国・ソーンウッド家の現侯爵。アルファ。

 パーシヴァルとは血縁を持つが、複雑な家族事情により、幼少期以降はほとんど接点を持たなかった。

・モルドレッド・クレイモア

 パーシヴァルの同僚の騎士。アルファ。

 オメガに偏見のあるカレドヴール帝国の騎士団において、唯一パーシヴァルを〝友〟と扱ってくれる。

・ヴィクトール・アッシュフォード

 アルトゥールの側近。ベータ。伯爵家次男。

 通称・ヴィ。有能な右腕であり、幼少の頃からアルトゥールの傍に仕えている。

・レイヴン・クロウ

 カレドヴールの暗部の長。

 アルトゥールの耳目・手足となって働く。

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登場人物と用語説明
・カレドヴール帝国  大陸の覇者と呼ばれる侵略国家。  戦争と拡大によって国力を増す一方で、国内は階級制度と差別が根強く、オメガに対する偏見・蔑視が公然と存在する。  犯罪者や政治犯への処罰として〝奴隷落ち〟の制度が存在する。・アルカディール連合  砂漠地帯に点在する氏族の連合国家。  オメガを希少な存在として保護対象と見なす文化を持っていたが、カレドヴールによる侵略で属国化。独自の価値観は徐々に失われつつある。・アルトゥール・コンスタンティン・カレドヴール  カレドヴールの皇帝。アルファ。金髪碧眼。  冷静沈着で感情を外に出すことは少ないが、その内に複雑な葛藤を抱えている。・パーシヴァル・シャヒーン  アルトゥールの近衛。オメガ。黒髪にオリーブの肌、金茶の瞳。  カレドヴールとアルカディールのハーフ。・リオン・ソーンウッド  カレドヴール帝国・ソーンウッド家の現侯爵。アルファ。  パーシヴァルとは血縁を持つが、複雑な家族事情により、幼少期以降はほとんど接点を持たなかった。・モルドレッド・クレイモア  パーシヴァルの同僚の騎士。アルファ。  オメガに偏見のあるカレドヴール帝国の騎士団において、唯一パーシヴァルを〝友〟と扱ってくれる。・ヴィクトール・アッシュフォード  アルトゥールの側近。ベータ。伯爵家次男。  通称・ヴィ。有能な右腕であり、幼少の頃からアルトゥールの傍に仕えている。・レイヴン・クロウ  カレドヴールの暗部の長。  アルトゥールの耳目・手足となって働く。
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1:破牢
 高い窓から差し込む、満月の光が石牢の中を冷たく照らしている。 暗闇の中、カチリと鍵が開く音がした。 個別に仕切られた石牢の並ぶ廊下に、魔道具の灯りがともる。 牢の中の囚人たちは、その仄かな灯りにすら怯えるように、影の中に身を潜めた。 深夜の出迎え。 それは、それぞれに下された刑が、翌朝に執行されることを意味する。 ローブを目深に被った男が、手に持った鍵束をカチャカチャ言わせながら、長い廊下を歩く。 硬質な足音が石造りの廊下を進む。 囚人たちは、それが自分の牢の前で立ち止まらないことを念じて、息を潜めている。 足音が止まった。「出ろ」 ローブの男の声が鋭く響く。 牢の奥、影になったベッドに座っていたパーシヴァルは、声に呼応するように立ち上がった。 鉄格子の扉が開かれる。 手枷足枷をそのままに、パーシヴァルは牢の外に出た。「………………」 会話はない。 ローブの男は促すような仕草をしただけで、パーシヴァルが歩き出すのを待っているようだった。 廊下を、扉に向かって歩き出す。 パーシヴァルが通り過ぎる様子を、影の中から窺い見る囚人たちが、安堵の息を吐いている。 入ってきた時と同じように、靴音を響かせて歩くローブの男に対し、パーシヴァルは裸足で進む。 やがて二人は扉に行き着き、そして重々しい音を立てて出ていくと、扉に再び施錠される音が響く。 そして、牢内には静寂が戻った。
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§
 牢の外に出たところに、牢番が倒れている。「殺したのか?」 床に伏している牢番を見て、パーシヴァルは問うた。「まさか! ちょっと昏倒してるだけだ。まぁ、数日体が痛むかもしれんがね」 ローブを脱いだモルドレッドは、牢番に見えるように掛けていた幻術を解き、パーシヴァルに茶目っ気のある笑みを向けながら肩を竦めた。「ひとつ、謝らなけりゃならん」 モルドレッドが言った。「なんだ?」 「その枷の鍵を入手できなかった」 「それは……困ったな」 手枷と足枷をしていては、動きがかなり制限される。  そもそも隷奴の腰巻き一枚のパーシヴァルは、枷が外せなければ満足に服も着られないのだ。「とにかく、これを」 モルドレッドは、自分が被っていたローブを掛けてくれた。  決して少なくない金の入った小袋、靴、それに街外れに騎竜が一頭。「俺が用意出来たのはここまでだ。それと、鍵は調達出来なかったが、その枷を外せる〝アテ〟を調べておいた」 「どういうことだ?」 「街を出て、街道を進むと森に入れる分かれ道があるだろう?」 「ああ」 「森をしばらく進むと、あまり性質のよくない連中のたまり場がある。あそこなら、その金で枷を外してくれる者がいるだろう。……もっとも交渉次第……だと思うので、お人好しのきみ一人を行かせるのが心配だが」 やや申し訳なさそうに、モルドレッドは一瞬視線を伏せた。「いや、これ以上きみの力を頼るわけにはいかない。ありがとう。……なんとか、自分の無実を証明してみせるよ」 「無理をするな」 モルドレッドに見送られて、パーシヴァルは騎竜にまたがると森を目指して走り出した。
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§
 パーシヴァル・シャヒーンは、カレドヴール帝国の近衛騎士だった。  金髪に大理石の肌の者が多いカレドヴールだが。  パーシヴァルは、黒髪にオリーブの肌、そして金茶の瞳と異国の佇まいを持つ。  それは彼が、砂漠の民・アルカディールの血を持っているからだ。──街道の分かれ道を森へ……。 騎竜を走らせながら、パーシヴァルは決意も新たに手綱を握る。  今のパーシヴァルは、牢破りの大罪を犯している。  だが、あのまま牢に囚われていては、自分は〝オメガ隷奴〟にされてしまった。──アルファの性欲処理に使い潰されてしまっては、冤罪は晴らせない。 自身が、本当に罪を犯し、その結果下された裁定ならば、パーシヴァルは内容がなんであっても受け入れただろう。──僕は、卑怯者じゃない。 近衛騎士として、守るべき主人を戦場から逃すために、パーシヴァルは殿を買って出た。──あの時……、僕を後ろから斬った奴を見つけ出さなきゃ。 味方がほぼ敵地を抜け、自身の隊の者たちも各々撤退させた時。  最後の最後まで残っていたパーシヴァルは、鬼神の如く敵を蹴散らし、自身もまた退こうとした、その瞬間──。  突如、何者かに後ろから斬られた。──気配に、全く気が付かなかった。 悔しさが、込み上げてくる。  ハッとした時には、背中に熱い衝撃を感じていた。  驚きで振り返ろうとしたが、力が入らず膝から崩れ──。  視界に映ったのは、逆光で顔が黒い影に覆われた男。  振りかぶった剣が打ち下ろされた時、利き手に鋭い痛みが走った。──あの黒い影の顔を……僕は見たはずだ……。 健を断たれた右手は、今も手綱をまともに握っていない。  足枷で、騎竜への騎乗も横乗りだ。  しかし、どんな困難があろうとも、自身の冤罪を晴らさねばならない。──僕を信じて、罪を犯してまで脱出を手助けしてくれたモルの友情にも、応えなければ……。 パーシヴァルは、ひたすらに暗闇を走った。
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§
 しばらく騎竜を走らせると、木陰の向こうにチラチラと灯りが見えてきた。 速度を落とし、パーシヴァルは騎竜を降りる。 横乗りの姿勢からの下馬は、さほどの衝撃もなかろうと思っていたが、意外にも背中の傷に響く。──じくじくと……いつまでも……。 パーシヴァルの刑が即座に執行されなかったのは、この傷が理由だった。 だが、身動きが可能と判断されて、近々石牢を出される情報を得たモルドレッドが、満月の今日を選んで脱獄の手引をしてくれた。 とはいえ、その弱った体に手枷足枷の重みも加わって、気力も体力もじわじわと削られている。 ローブの下、腰巻き一枚の肌に夜気が沁みる。──ここで、これを外すことが出来れば……。 はやる心を抑えつつ、パーシヴァルは手綱を引いて徒歩でそちらに向かった。「誰だ?」「……僕は……、噂を聞いてきた。ここに来れば、枷の鍵を外す方法がある……と」 目を引いたのは、妙に大きな幌付きの荷車。 それが数台、焚き火を囲むように停められている。 汚れた服を着た男たちは、顔もやたら汚れていた。 なにより奇妙なのは、彼らは森から唐突に現れたパーシヴァルを、少しも訝しむ気配がなかったことだ。「あんた、逃亡オメガかい?」 まるで確認するかのように、にやりと笑って男が言った。「僕の素性を打ち明けなきゃ、枷は外せないのか?」「いや。交渉次第だな」 焚き火の傍に来るように招かれたが、パーシヴァルは途中で足を止める。──これは……ヒートの香……?! 気付いた時は、足の力が抜けている。「ようこそ、パーシヴァル護衛隊長」「貴様……ら……、僕の……素性を
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2:オークション
 パーシヴァルは、檻の中で気を失って倒れていた。  焚き火で嗅がされたヒートの香の影響で、意識を失っていたのだ。  どれだけ時間が経ったのか分からない。  ツンと鼻を突く匂いに、意識が引き戻された。「……うっ……」 「ようやくお目覚めか?」 先程の男たちとは違って、妙に身なりの綺麗な男が覗き込んでいる。  パーシヴァルが意識を取り戻したことを確認したところで、男は轡を噛ましてきた。「さて、お楽しみの競りだ。頑張れよ」 男が持っている鎖を引くと、気を失っている間に加えられたらしい首枷が引っ張られる。  ヒートの香は、嗅げば嗅ぐほど効果が増すが、どうやら少し嗅がされただけだったらしい。  パーシヴァルの体は、ただ力が入らないだけでヒートを起こしてはいなかった。  引かれるままに、パーシヴァルは男の意のままに歩かされる。「ほら、しっかりしな。近衛の黒真珠……、いや、今は奴隷のブラックパールちゃんだったか」──頭が、クラクラする……。 ゲラゲラ笑う男の声が、頭の中でガンガン響く。  香の匂いが鼻の奥に残っているような気がする。  長い通路を歩かされたような気がするが、実際は数歩しか歩いていないような気もした。 ぐいと両手の鎖が引かれ、両手を頭の上にまとめられる。「……つぅ……っ!」 引き攣れた背中の傷に響き、パーシヴァルは思わず声を漏らした。  だが、そんなことに微塵も気を払ってもらえることはなく、上に釣られた腕が前方へと引っ張られる。  つま先立ちで引かれるままに前に出ると、暗闇の中に沢山の人間がいるような気配を感じる。「おまたせを致しました! 本日の目玉商品! 金茶の瞳にオリーブの肌、異国情緒溢れる、商品名〝ブラックパール〟でございます!」 場にそぐわぬ明るい声が響いたかと思ったところで、パーシヴァルはスポットライを当てられた。  眩しくて、目を眇める。  数秒して少し目が慣れてくると、自分がどこかのステージの上に立たされていることが分かった。  腕の鎖は、頭上のレールに繋がれている。「ほら、もっと皆さんに全部よく見てもらうんだよ」 司会の男は、つかつかとパーシヴァルに近づくと、腰巻きに手を掛けた。「う……うっ!」 抗議の声は、轡に阻まれ、何の抵抗もできないままに腰巻きが取り去られる。  手枷で吊るされ、
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§
「開始価格は、金貨500枚から!」 ざわめきが大きくなり、暗闇の中に白い札がパタパタと上がった。「600、700! はい、千が出ました」 競りが白熱し、客は札ではなく直に値段を口にし始める。「二千!」 「三千!」 声が、次々に上がる。──こいつら……、僕を金で取引しようとしてるのか? ようやく、意識がはっきりしてきて、パーシヴァルは状況が飲み込めた。「五千!」──よせ……っ! やめろっ!「一万」 白熱して叫ぶ客に混じって、いやに冷静な声が上がった。「一万! 一万が出ました!」 「一万五千だ!」 会場の反対側から、感情的な声が上がる。「二万」 「二万五千!」 さすがに桁が変わってきたせいか、他の者たちは押し黙った。「……五万」 冷静な声が、一段と高値をつけて、城内は一瞬、静寂に包まれた。「……っ、七万だ!」 舌打ちのあと、さらなる高額が提示される。  会場は、行方を固唾をのんで見守っていた。「十万」 その一言に、会場内にどよめきが起きる。「十万が、出ました!」 司会が促すが、反対側からは声が上がらない。「カレドヴールの至宝、ブラックパールは十万にて304番様に落札です!」──金貨十万枚? なにが? 意味がわからず、パーシヴァルの心の中はひたすら混乱している。  だが、スポットライトが消えると、再び鎖が引かれ、舞台裏へと引っ張り込まれた。「さあ、御主人様が決まったぞ、ブラックパール。たっぷり、可愛がってもらうといい」 奴隷商人は、ニヤニヤしながら言った。──誰が……僕を……? その問いは、轡によって問うことも許されない。  分かっているのは、自分はもう、誰かの所有物──つまりヒトではなく、モノになったということだけだった。
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§
 ステージで引き剥がされた腰巻きを返してもらったパーシヴァルは、再び檻に入れられた。  オークションは〝目玉〟と言っていただけあって、パーシヴァルの落札が決まったところで終了となったらしい。  さほども待たされずに、顔を仮面で隠した男を連れて、奴隷商人が戻ってきた。「こちらが、ブラックパールでございます」 「金貨だ」 金を渡されると、奴隷商人は恭しくそれを受け取った。「では……」 長い棒状の魔道具を取り出し、商人はそれをパーシヴァルに向けようとしたが──。「必要ない」 「ですが、暴れると厄介ですよ?」 「手負いで、枷もついている。ここで暴れるほど、彼は愚かではない」 それは、牛追い棒のようなショックを与える魔道具だったらしい。  商人は、パーシヴァルが苦痛に顔を歪めることを期待していたのを遮られた……とでも言いたげに不快の念を顔に浮かべたが──。  既に所有権が買い手に移っていることも理解していたので、それ以上は何も言わなかった。「鍵を」 「へえ……」 商人が、檻の鍵を開く。  仮面の男は、自ら檻の中に進み出ると、パーシヴァルの肩にローブを掛けた。「では、行きましょう」 未だ、手足と首に枷がついたまま。  相手の正体もわからない。  だが、仮面の男の言う通り、ここで暴れたからといって、表には商人の護衛や使用人などもいるだろう。  パーシヴァルは、ここは大人しくするべきと判断し、仮面の男に従った。
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§
 仮面の男は、パーシヴァルを黒尽くめの立派な馬車へと案内した。  窓は小さく、紋章もないが、内装は豪華で座席は革張りだ。  向かい合って座ったところで、男は仮面を外した。「私めのことは、レイヴンとお呼びください」 「僕は……今はオメガ隷奴だ。へりくだる必要はないのでは?」 「いえ、あなた様をお買い上げになったのは、私の主人。主人の持ち物を蔑ろに扱うわけにはまいりません」 「その……、あなたの主人とは、誰なんですか?」 「私の主は、あなた様もご存知の、アルトゥール・コンスタンティン・カレドヴール陛下でございます」 その名に、パーシヴァルは飛び上がるほど驚いた。「あ……アルトゥール陛下? 陛下が、僕を買ったのか?! そんな、まさか……」 パーシヴァルは混乱した。  アルトゥールは、カレドヴール帝国の皇帝であり、パーシヴァルが護衛をしていた主である。「陛下は、オメガ隷奴の刑罰を廃止にするために、奔走されていたはずだ。その陛下が、隷奴を横流ししている闇オークションで、僕を買った?!」 「左様でございます。陛下は、先の裁判であなた様に〝高貴なアルファを慰問する社会奉仕の刑〟、すなわちオメガ隷奴へ貶められたことを知り、なんとか刑罰の執行を引き伸ばして、あなた様の無実を証明しようとしておられました」 「だが、僕の傷が癒えて、僕の刑は執行されそうになってたはずだ」 「いえ、陛下はそれでもなんとか、あなた様への執行を引き延ばそうとしていらっしゃいました。ですが、あなた様は脱獄をしてしまった」 その指摘に、パーシヴァルは言葉に詰まる。「陛下はあなた様の脱獄の報を聞き、行く先を探すように私に指示を出しました。ですが、一歩遅くあなた様は奴隷商人に捕まり、今夜のオークションに出されてしまったのです」 「僕の感覚だと、脱獄したのは2〜3時間前なんだが」 「既に、2日経っております。おかげで、あなた様が出品される闇オークションの開催場所を調べることが出来、陛下に言付かって私があなた様を落札いたしました」 レイヴンは、パーシヴァルの手枷と足枷を外し、更に首の枷をも外してから、柔らかな衣服を着せかけてくれた。「しかし……、脱獄犯の僕を匿ったら、陛下の御名に傷がつく」 「パーシヴァル様は、未だ逃亡中の脱獄犯です」 「
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3:王の閨
 部屋には、香の匂いが立ち込めていた。  ベッドの上には、秘部を晒し、足首を腿に固定され、左腕をベッドの上に縛られたオメガ隷奴。  天蓋付きのベッドには、幾重ものシフォンが垂れ下がり、その隙間から、隷奴の下半身だけが覗いていた。  香の効果で強制的に引き起こされた発情により、オリーブの肌にはうっすらと汗が滲み、アルファであるアルトゥールの情欲を刺激する芳香を全身から放っている。──パーシヴァル……。 アルトゥールは、声に出さずにその名を呼んだ。  この部屋で、彼の名を呼ぶことは出来ない。  ましてや、今は傍に数人の立会人もいる。  名を呼べば、それがパーシヴァルであると公的に認めたことになり、たちまち立会人たちに通報され、法の裁きを受けることになる。「では、陛下」 側近のヴィが、セレモニアルピローに乗せられた器具を差し出す。「うむ」 アルトゥールは感情を抑えて、表情を変えずにその器具を手に取った。「ヴィ、これで中を傷つける恐れはないのか?」 「それはあくまで、陛下の御身を守る道具。陛下の玩具に傷一つつけることはございません」 「そうか」 男性オメガは、ヒートを起こした時にだけ開かれる孔を持っている。  そこに精を注がれれば子を為すこともあり得るために、オメガのフェロモンで獣と化したアルトゥールが、間違いを起こさないために小ぶりの張形で塞ぐのだ。 開かれた孔は、既に滴るほどに蜜を湛えている。  そこにアルトゥールは、張形を押し込んだ。「……ふっ! ううっ!」 轡により、悲鳴は封じられている。  あの誇り高い騎士が、隷奴に貶められ、器具に苛まれている姿に、アルトゥールは胸が傷んだ。  だが最後に、器具に備わった環を、そそり立つ熱の根本へ装着させねば、立会人たちは部屋から出ていかない。  アルトゥールは、淡々とその作業を終えた。「ヴィ」 「御前を失礼させていただきます」 ヴィは、後ろに立つ立会人に見えるように、魔道具の呪を起動した。  仄かな光が灯り、カチリと締まる音が響く。「ふ……うっ……!」 締め付けられた苦しさに、隷奴が呻いた。「これにて、確かに儀式は終了いたしました」 ヴィが一礼すると、こちらをジッと見つめていた立会人たちは、静かに寝室から出ていった。「……パーシー……」 「陛下、その
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