そして遥の名前が再び現れたのは、国連難民高等弁務官事務所が発表した、医療援助リストの隅だった。勲はその一行をじっと見つめた。【駐在記者兼医療ボランティア:石田遥】写真はなかった。この5年、勲は世界中の「石田遥」という名前の人物を、2300人も調べてきた。年老いた人もいれば、まだ赤ん坊もいた。でも、そのどれもが遥ではなかった。その瞬間哲也は、驚くほど輝きを取り戻した勲の目を見ていた。しかし、また期待しては裏切られるだけではないかと、心配でもあった。「チケットを手配しろ」勲の声はかすれていた。「社長、西アフロテラ共同体では紛争が起きています。それに、デング熱も……」「手配しろと言っているんだ!」48時間後、勲は西アフロテラ共同体の炎天下に立っていた。黄砂が舞い、熱風は腐敗臭を運んでくる。勲は後方支援のボランティアを装い、誓約書にサインした。そして、7時間も揺られたあと彼はキャンプに到着したが、車を降りたとたん、吐いてしまったのだ。「新入り?吐くならもっとあっちでやって」氷のように冷たい声が、耳を突き刺した。勲は全身をこわばらせ、ゆっくりと顔を上げた。すると、5メートル先、トラックのそばに遥が立っていた。カーキ色の作業着に、すっきりとしたショートヘア。腕には薄い傷跡と、日に焼けた小麦色の肌の遥は無線機を手にこっちに目をやったが、その表情は微動だにしなかった。それはまるで、見ず知らずの他人を見るような目だった。一方、彼女の姿を見た勲の目から、不意に大粒の涙がこぼれ落ち、乾いた土に吸い込まれていった。5年だ。2000もの昼と夜をかけて探し続け、夢の中では数え切れないほど再会した。今、遥は目の前にいるのに、こちらを一瞥しようとすらしないのだ。「遥……」「物資はあそこ。3号テントに運んで」遥は勲の言葉を遮り、事務的な口調で言った。「急いで。負傷者が待ってる」そう言うと、遥は背を向けて歩き去った。憎しみも、恨みもない。ただ、そこにはとことん無関心な感情しかないのだ。そう言われ勲は顔を拭うと、上着を脱いで物資の箱へと向かった。気温45度の下、勲は上半身裸で運んだ。手のひらには血豆ができ、汗と血が滴り落ちる。それでも何も言わず、ただ機械のように運び続けた。まるで、体の痛みが胸の痛
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