理人は宣言した通り、次の日からきちんと管理を再開した。 朝の迎え、昼の弁当、水曜の夕飯、週末の買い物と作り置き。すべてが元に戻った。 けれど、完全に元通りではなかった。理人の目つきは以前より硬く、ふたりの間の距離がほんのわずか遠くなった気がした。肩は触れない。目は合わせるが、長くは見ない。管理は戻ったが、なにかが変わっていた。 それでも、理人が隣にいるだけで直はほっとした。あの数日間の空白が、まだ身体の中に残っている。隣に誰もいない朝がどれだけ心細かったか。もう二度とあんな思いはしたくなかった。 そして、元カノのことがあった日の帰り道のことも思い出した。「連絡先消してください」。あの声。「管理者として終わります」。あの目。管理じゃないなにかが理人の中にある。それがなんなのかはわからなかったが、あの日以来、直は理人を見るたびに少しだけ緊張するようになっていた。 水曜日は、いつもなら理人と一緒に帰って夕飯を共にする日だ。夕飯を共にする日だ。けれど直には午後から打ち合わせが入っていた。「今日、フィールクラフトで打ち合わせだ。長引いたら直帰するかも。先に帰っててくれるか」「わかりました」 理人は短く返事をした。表情に変化はなかった。「相沢さんと倉庫と店舗を回る予定だ」「……そうですか」 相沢の名前を出した瞬間、理人の声がわずかに硬くなった。前にもこうだった。相沢の名前を聞くと、理人の空気が変わる。 先に帰っててくれ、と言ったとき、理人の箸が一瞬止まった気がした。けれどすぐに弁当に目を落とした。気のせいだったかもしれない。 ――先に帰ってて、なんて恋人に言うみたいだな。 直は苦笑いした。「どうしたんです?」「いや、なんでもねえ」 屋上には梅雨前の湿った風が吹いていた。◆ 午後。相沢と一緒に倉庫と店舗を回った。 倉庫では在庫管理の現状を確認し、実店舗では接客の流れと売り場のレイアウトを見せてもらった。
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