Lahat ng Kabanata ng 轢き逃げされたら猫に転生。美人妻が心配で成仏できません! : Kabanata 31 - Kabanata 40

45 Kabanata

第三十一話 坊ちゃんの恋

「無事で何よりでしたわ……」「本当ご迷惑をおかけしました」 三葉は病院の入り口で看護師の前で頭を下げる。「よかったよ……もし僕が戻ってなかったら」 と隣にいたのは倫典であった。彼は食事会がお開きになったあと、車の鍵が見当たらず倉田を見送った後に三葉の元に戻ったのだ。 スケキヨもなんとかして倫典を部屋に入らせて、倒れた三葉を助けて欲しかった。 唯一できるのは壁際のインターフォンのみ。スケキヨの体を信じた。猫の身体能力と言うものを。うまく椅子を使ってそれでも高さが足りないが思いっきりジャンプをしてマンション入口と部屋の鍵を開けることに成功した。 2回ほどジャンプしてその2回で2個のボタンを押した。 大島はかつて鍵は鍵で開けるものだ、電子制御……パネルで入り口はいいとして玄関の鍵が開くのはおかしいと思っていたものだが三葉に説得されてオプションとして取り付けた。もちろんその分お金は取られるためそれも悩んだが快諾した自分と決めた三葉に大感謝するしかなかった。「ほんとう、そうね。ありがとう倫典くん」 三葉は警察からの手紙で大島を轢いた犯人が捕まった知らせを知ってショックか何かで倒れてしまったのだ。 だが実際は睡眠不足と貧血であった。「心当たりはありました。ここ最近忙しかったのと寝不足で……気をつけます」「そうよ、無理もしちゃダメよ……あ、坊ちゃん」 と倫典をそう呼ぶ看護師。三葉を連れて行ったのは倫典の家族が経営する病院。どの人も医者ではない倫典のことも坊ちゃんととりあえず呼ぶのだ。「お連れの猫、看守さんの部屋にいますからね」 そう、スケキヨは三葉が心配であった。なんとかして助けに入った倫典だが入ると倒れている三葉を発見したのだが狼狽すぎてるうちに三葉が目を覚ましたのだ。 そのあと2人で車で病院に向かうと言うのもありスケキヨはなんとかして倫典の体にしがみつき車に乗ったものの、やはり病院には猫を連れて行かなかったため倫典は面識のあったベテラン看護師に声をかけてスケキヨを預けたのであった。「すいません、勝手についてきちゃって……車の中には置いていけなかったから。じゃあ三葉さん、僕がスケキヨ取りに行きます」「私も行くわ」「いや、車で先に待っててください。鍵、わたしますね」 とダッシュでスケキヨを迎えに行った。 三葉は看護師にまた頭を下げると
last updateHuling Na-update : 2026-03-26
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第三十二話 寄り添いたいのに

 三葉が病院に行ってる間に世間では大島が轢き逃げされた事件の真相が瞬く間に広まった。 三葉と大島が通っていた不妊治療の病院の医師・濱野《はまの》が、大島の命を奪った轢き逃げ犯だったのはあまりにも衝撃的であった。 ネットニュースではまだその関係性は載っていない。だがどこかしらすぐに大事にするだろう。 濱野という医師は、まだ30後半、特に悪評があるわけでもなく、ただ黙々と実績を積んでいる若手の医師で、三葉も不妊治療に携わってくれた人物だっただけに、その事実が信じがたかった。 倫典もまた、自分の親族が連携している病院で、しかも薬品の納品なども行っていたため、事件の真相を知ったとき、驚きが隠せなかった。「……あの先生が、濱野先生がどうして」 三葉は自分が濱野にどれだけ助けを求め、信頼してきたかを思い出し、深い失望を感じた。 大島も当初は不妊治療には難色を示していたが、濱野が親身になって接してくれる姿に、同性として理解しやすい部分もあって安心して通院できた。「和樹さんも知ったらショックだろうな……」 三葉は信じていた医師が夫を轢き、そのまま逃げ去ったことが、まるで悪夢のように感じられ、静かにうつむいた。 倫典も複雑な表情を浮かべ、ネットニュースで事件の報道を見たが、あちこちで事実以上のことが書かれているのを目にし、心が重くなっていた。「ニュース、見たくないですよね」 と倫典がそっと聞いたが、三葉は首を縦に振って応えた。「……夫の死を思い出したくないの。あの時のことを」 その答えに、倫典は「ごめんなさい」 とつぶやいたが、三葉は力なく笑い「どうせ知ることだから」 と、彼を責める気などないと首を振った。 その言葉に倫典はほっとしながらも、やりきれなさが胸を締めつけた。 すると三葉のスマホが震え、画面には北海道に住む大島の妹からのメッセージが表示された。「明日の朝、そちらに夫と向かいます」 とのことだ。「三葉さん、あんまり無理しないでくださいね。貧血で倒れたばかりですし」「ありがとう、倫典くん。でも、明日は警察に行かなければならないし……大丈夫よ」 そう言いながらも、三葉の瞳にはどこか不安が浮かんでいる。 それを感じ取ったスケキヨも、なんとか三葉を励ましたい気持ちでいっぱいだった。 だが、猫の身体では何もできず、ただ傍らで見守
last updateHuling Na-update : 2026-03-27
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第三十三話 フェア?

 倉田が三葉の部屋に入ると、買い込んできた食べ物や飲み物の袋を手に持ち、手際よく片付け始めた。 それを見ていた倫典は、不思議そうに首を傾げる。「……なんで一度しか来てないのに、置き場所がわかるんですか?」「どうしました?」「いや、その……」 倉田は袋から物を取り出しながら淡々と答えた。「私、初めて伺う家でもその家の構造や収納場所を覚えるのが得意なんですよ。癖みたいなものでしてね」 その言葉に倫典は驚きの表情を浮かべた。横でスケキヨも、心の中で叫ぶ。『……倉田、お前なんなんだ? 気味悪いわ』 倉田の人物像が少し怪しく思えてきた倫典だったが、スケキヨ用の餌やケアグッズまで用意されているのを見て、「そこは助かるけどなぁ」と複雑な心境になった。 倉田が収納を終えた頃、彼は三葉をじっと見て言った。「にしても、顔色が本当に良くないですね」 三葉は気まずそうに苦笑し、机の上に置かれた薬の袋に視線をやった。「睡眠不足と貧血だったんです」 倉田は納得したように頷きながら続ける。「そうでしたか。倒れたときに頭を打つ人もいますが、それがなかったのは幸いですね。しかも倫典くんが病院に連れて行ってくれたとか。ファインプレーですね」 倫典は照れくさそうに視線をそらしながら答えた。「いや、たまたま車の鍵を取りに三葉さんの部屋に戻っただけで……」 倉田は感心した様子で頷きながら、ふと尋ねた。「倫典くん、このあとはどうするんですか?」 その質問に、一瞬考え込んだ倫典だったが、突然きっぱりと言い切った。「今日はここに泊まります!」 三葉は驚き、スケキヨも思わず飛び上がるような勢いで倫典を見た。倉田も意外そうな顔を浮かべている。「えっ……いや、三葉さんが心配なのは分かりますけど、まだお付き合いもしてないでしょう?」 倉田は冷静にたしなめる。 倫典は軽く拳を握りながら、視線を倉田に向けた。「それでも、ここにいるべきだと思うんです」 その様子を見て、スケキヨは心の中で叫んだ。『馬鹿かお前は! 泊まるなんて100億光年早いわ!』 倫典の行動の裏にある倉田への警戒心を察しながらも、スケキヨは呆れ果てていた。「私は仕事があるので戻りますが……三葉さん、倫典くんが泊まってもいいんですか?」 倉田がそう言うと、三葉は少し考えてから苦笑いを浮かべた。「…
last updateHuling Na-update : 2026-03-27
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第三十四話 自分がいなくても

「お、おかえりなさい、三葉さん!大丈夫ですか?」 倫典が慌てて声をかけ、顔を真っ赤にしながら心配そうに近寄った。 倉田も少し視線をそらし、咳払いをしながらも「リラックスできましたか?」 と、声をかけた。 三葉はにっこりと微笑んだ。「ありがとう、ふらっとすることもなかったしゆっくりできました」 と、感謝を伝えた。しかしその無防備な微笑みがさらに二人の心を揺さぶる。 スケキヨはそっと三葉のそばに寄り添った。 倫典が台所に行きお茶を持ってきた。「お風呂上がりはちゃんと水分取らないと」「ありがとう」 と微笑んだ。その姿にスケキヨは『……三葉、姫扱いだな』 とその様子を見ている。こんなにも周囲の男性たちから尽くされているのを見ていると、彼女がいかに二人から愛されているかを改めて感じさせられる。少し悔しさがある、スケキヨ。「今日はゆっくり寝てください。朝、迎えに来ますから。それとスケキヨの水もセットしておきますね」「本当に色々とありがとう、助かるわ。倉田さんも来てくださって、心強かったです」 と三葉が感謝すると、倉田はスケキヨを撫でながら「いえいえ、明日は色々と大変でしょうから、また何かあれば夜でも駆けつけますよ。明日の朝はこの倫典くんに託しておきますから」 と軽く倫典の背中を叩いた。 そんな二人が帰った後、ようやく三葉と二人きりになったスケキヨ。三葉はため息をつきながら、「もう、二人して過保護すぎるのよ」 と笑い、ふと視線をスケキヨに。「まぁ、和樹さんもいたらもーっと過保護だったかなぁ。ねぇ、スケキヨ」 スケキヨはニャーと返事をした。『俺だって心配だよ』と。「さてさて、早く寝ないと、またあの二人が心配するわね」 と、三葉がベッドへと向かい、スケキヨも布団の中に入る。 三葉がすぐ寝てしまったのだがスケキヨはなかなか眠れなかった。 貧血で倒れたばかりの三葉に、事件のことや今後の流れを話すことが負担になるのではないかと気になってしまう。 さらには、遠く北海道からやってくる大島の妹・ナミのことも心配だった。体調が安定しないナミと彼女の夫がどんな状況でここまで来るのか、無理をしていないかがスケキヨは心配していたのだ。『三葉、こんなことになるとは思わなかったな……でも周りの人たちがいい人たちでよかったよ。俺が何もできないか
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第三十五話 味方

 三葉と倫典が部屋を出て、再び静寂が戻った空間で、スケキヨはただじっと待っていた。しかし、待つ間にふと、気になることが頭をよぎる。『そういえば最近、三葉はパソコンに向かうことが多かったなー』 以前の三葉は、パソコンどころかスマホさえほとんど見ない人だった。 連絡も最低限で、仕事を家に持ち帰ることはほぼなく、料理や家事をこなしながら二人の時間を大切にしていた。そんな彼女が、何かに取り憑かれたようにパソコンの画面に向かう姿を思い出した。『まぁ、気のせいかもしれないな』 と自分に言い聞かせるように、スケキヨは気持ちを切り替え、置いてあった爪研ぎへと向かう。まずは両前足を伸ばして軽く背伸びをし、爪をぎゅっと立てて引っ掻き始めた。カリカリと心地よい音が部屋に響き、少し気持ちが落ち着く。 続いて、ふさふさの尻尾を軽く揺らしながら周囲をぐるりと見渡し、三葉の帰宅を待ちながらいつでも飛びつけるように身構えている。やがてソファの端に飛び乗り、そこに丸くなって寝転がると、しばらくそのまま目を閉じ、音に敏感に耳を立てつつ、彼女が帰ってくる気配を待ち続けた。 倫典に警察署まで送ってもらった三葉は、彼の「今日は仕事で営業中だから、何かあったらすぐ連絡して。駆けつけますから」 という言葉に軽くうなずき、彼を見送った。周囲を見渡すと、別の入り口には報道陣がカメラを構えて待ち構えている。意識しないよう努めつつ、三葉は入り口へと向かった。 警察署内に入ると、待ち受けていたのは刑事の茜部だった。 三葉は一瞬彼を見て驚いた。なぜなら夫の体格に似て筋肉質だった。 だがそれは夫ではない……。 彼の案内で進むと、すでに部屋の中には大島の妹・ナミとその夫・大聖が来ていた。三葉が姿を見せるやいなや、ナミは立ち上がり、大聖に支えられながらも歩き、そして三葉に抱きついた。「三葉さん!」 三葉も優しく彼女を抱きしめ、「よく来てくれたわ」 と応じる。大聖も深々と頭を下げ、ナミの肩を優しく支えている。「僕自身もよく分からないことが多いのですが、茜部さんがいろいろと教えてくれるそうです」「ええ、私も……。でもナミさんと大聖さんがいるだけで本当に心強いです」 しばらくして、茜部が穏やかな口調で説明を始めた。 轢き逃げから約一年が経ち、ようやく犯人が捕まった状況について、これまでの捜査
last updateHuling Na-update : 2026-03-28
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第三十六話 献花

 ナミと大聖夫婦が一週間ほど近くのホテルで過ごすことになり、今日はホテルでナミが静養する予定だという。「後輩と連絡が取れたら、明日以降お会いしたいと伝えてください」「分かったわ。明日なら休みだから……それ以降は夜でいいかしら」 三葉はそう返し、ナミと大聖夫婦を先に見送り、警察署を出ようとしたとき、ちょうど茜部刑事が声をかけてきた。「三葉さん、実は…最近、三葉さんの住んでいる地域で窃盗や強盗事件が増えているんです。念のため注意をお伝えしにきました。犯人はまだ捕まっていないので、くれぐれもお気をつけください」「そうなんですね…気をつけます。ありがとうございます」 三葉は不安を覚えつつも、気を引き締める必要があると思い、署を出て外に出ると、営業帰りらしい倫典が車で迎えに来ていた。「三葉さん」 倫典がにこやかに声をかけ、その笑顔に三葉はほっとした気持ちになった。「じゃあ、まっすぐ帰りましょう。遅くなると倉田さんにまた『フェアじゃない』って言われますからね」と、冗談めかして倫典が笑う。 だが、三葉は少し考えた後、「実は行きたいところがあるの」と話し、倫典も快く引き受けることに。 まず自宅に寄り、再び戻ってきた三葉の腕には愛猫のスケキヨがいた。スケキヨはキョトンとした顔で周囲を見回しつつも、倫典の車に乗り込んだ。「スケキヨ、体調が悪いんですか?」「いいえ。ただ、和樹さんの高校に行こうと思って…ついでに、この子をもらったところに行きたいの」「了解です! 実は僕も行きたかったんですよ……湊音もいるし。多分この時間だと部活動の時間かなぁ?」 倫典は車を走らせた。道中、スケキヨは『三葉、倫典を少し使い過ぎかも』 と思ったものの……これをきっかけに色々と問題を抱えた高校にも行けるしいいか、と。 高校の近くに差し掛かると、ちょうど事故現場の前の道路にたくさんの花が供えられているのが見えた。信号で車が止まったため、自然と目がそこに向く。「やっぱり、犯人が捕まったからいつもよりたくさん花が供えられているのね……」 と三葉がポツリと漏らす。「事故現場の献花は、剣道部の方々や高校が月に一度管理してくれてるわ。私も時々行っているの」 スケキヨも顔を上げ、その多くの花に驚いた様子で、倫典もそれを見て目頭を熱くしていた。「事故現場に花が供えられているの
last updateHuling Na-update : 2026-03-29
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第三十七話 ショック二連発

 集まった供物を前に川本の奥さん房江が目を細め、 「毎回ね、処分しているのよね……本当に勿体ないけど」  と呟くと、隣の川本が 「酒は飲みたいなぁ」  と箱の中にあるビールや焼酎を見ながらぼやいた。房江はすかさず 「バカ!」  と一喝し気まずそうに謝る。なんとなくこの夫婦の力関係が見て取れる。  そんな場の中、三葉の前には、かつて大島と親しかった女性、館彩子が立っていた。彩子は少し緊張している。 「彩子先生もいつもありがとうございます……」  という三葉の挨拶に応え、 「いえ、大島先生にはいつもお世話になってましたし」  と微笑む。  どうやら三葉と彩子は以前から交流があったらしい。  スケキヨは、 『な、な、なっ……なんで彩子先生がここに?』 といますぐにでも逃げたい気持ちだが猫で良かったというのもある。  隣にいる噂話を耳にした湊音や、倫典の微妙な表情に気づく。震えながらもスケキヨは 『……お前ら、あれは誤解なんだ……てか彩子先生が三葉は以前どんなふうにあったことがあったのか??』  と内心で焦り始める。  その時、彩子がスケキヨに目を留めて、 「あ、この猫ちゃんが大島先生が助けた猫なんですね。可愛い、パンダさん」  と微笑む。三葉が 「パンダに見える? スケキヨっていうのよ、わかる? ミステリー映画のキャラなんだけど」  と説明すると、彩子は 「んー、わからないです」  と首をかしげる。 「そうよね、世代が違いすぎますもの、ほほほ」  と三葉が笑うと、二人の間に微妙な空気が流れ、スケキヨはますます震え上がる。  誤解を解かねばと思いつつも、彼は身動きできずにその場にいることしかできなかった。  三葉は倫典にいったんスケキヨを預けた。段ボールに入った花束やお酒などを一つ一つ見る。 「念のため三葉さん、手袋を」  と湊音がゴム手袋を三葉に渡した。  色んな花、お酒、お菓子、タバコ。三葉は一眼見ただけでこれらは大島が好んでいたものではない。だがそれを正直には言えない。 「先生ありがとう」  などと手紙が書いてあるものもあった。三葉は一つ一つ目を通した。  三葉は手を止めた。 「……」  三葉は絶句した。 「どうしたんだい……三葉さん」  倫典に抱かれたスケキヨも気になる。  倫典が手前に
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第三十八話 彩子先生の過去

 これは、大島が亡くなる一年前の出来事だった。大島が三葉と結婚したばかりであった。  ある日、学園長室から校長、教頭、生徒指導主任が揃って出てくるのを見た大島は、その異様な雰囲気に興味を惹かれ、授業を終えた湊音を喫煙所に呼び出した。 「今、教頭たちが学園長の部屋に集まってたが、何か知ってるか?」  と大島が切り出す。  湊音は少し驚いた様子で、 「えっ……新しい先生が来るって聞きましたけど、それも噂レベルで」  と、曖昧に答えた。 「又聞きでもいい。知ってることは全部話せ」  湊音はため息をつき、 「なんで僕が、地位が上のあなたが知らないことを知ってるんですかね……」  と半ば呆れたように返しながら、口に挟んだ次のタバコに火をつけた。  大島は生徒や保護者からの評判は良いものの、職員室の上層部である校長や教頭とはあまり折り合いが良くなかった。  授業と剣道に情熱を注ぐ一方で、職員同士の関わりに興味が薄く、特に上層部の人間とは距離を置いていた。そんな大島にとって、唯一気軽に話せる相手が湊音だった。 「校長や教頭、生徒指導長が同時に学園長室に集まってるのは珍しいだろ?」  と、大島は煙草を指で弾きながら視線を外に向けた。  湊音はしばらく沈黙した後、 「どうやら若い美術教師が赴任するらしいんですが、少し訳ありのようで」  と言葉を選びながら答えた。 「若い女教師? 訳あり?」  と大島は声を上げ、湊音が「シーッ」と慌てて指を立てた。 「県外の高校で働いていたらしいんですが、数人の男性教師との間で問題があったみたいで、その共通点がその教師だとか」 「まじか……穴兄弟の教師同士で揉め事か」 「言い方なんとかしてください……まぁ、そんな感じらしいですけど。どうやら彼女の父親が有名な芸術家らしく、学園長の家族とも親しい間柄だとか。そんな縁もあって、ここに赴任することになったみたいです」  コネが絡む話に眉をひそめる大島に、湊音は 「彼女自身も美術展で何度も賞を取ってるらしいです。美術教師としては腕が良いらしく、評価も高いようです」  と、スマホで彼女の作品を見せた。かなり抽象的であるが色使いの絵や作品が。大島と湊音には細かいことは上手く言えないがある意味素晴らしい作品であると言うのはわかるようだ。 「意外と詳しいんだな」 「
last updateHuling Na-update : 2026-03-29
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第三十九話 相談

 しかし、湊音の動揺はどこかおかしな感じがした。タバコを出そうとする手が震えて、何度も上手く出せない。その様子を見て、大島は眉をひそめた。理由は、きっと彩子のことを話題にしたからだろう。 元々この二人は教師と生徒、今では上司と部下の関係にある。「お前……ちゃんと目を見て話せ」 大島が湊音を覗き込むと湊音はどこか無理に顔を上げ、息をついてから言った。「すいません、彩子先生としました」「は?」「やりました、はい」 大島は呆れた。実際、当時の湊音は前妻と離婚したばかりで、大島と婚活パーティーに行き女の子とマッチングしたものの振られて次は同性……今の彼のパートナーと付き合い始めたが初めて同性との交際で心の中でモヤモヤしている最中だった。「……近くのコンビニでばったり会って、二人ともご飯食べてなくて……それで近くの立ち飲み居酒屋でちょっと飲んで、んで……ホテル行きました」 大島は思わず頭を抱えた。「……お前、バカかよ」「だって学校にいる時と違って、食事を一緒にして、面白い話もしてくれて、かと思ったら、こっちの話も聞いてくれて……それに、最近女とやってなかったから……」 湊音は顔をうつむかせ、少し反省している様子で言った。「それで朝になったら、科学の梅本や英語の松尾、まさかの高橋とも……関係を持ったこと、ベラベラ喋ってて……」「高橋って、あの高橋?!」 大島が驚き、喫煙所から1番下っ端のヒョロヒョロした数学の高橋がぼーっとして欠伸をしている姿を見つけた。「簡単にやりやすいヤツを狙って、既婚者は狙わず、今は品定めしてるみたいですよ……」「うわ、それ言うのかよ」 大島は呆れ果てた表情を隠せない。「彩子先生、学校では良い子してますけど、普段は毒舌ですね。あれは……。僕のことも独りよがりって言ってたし」 湊音はうつむきながら、情けない表情を浮かべた。大島はその独りよがりと言われた湊音を見てつい笑ってはしまったが。「湊音、お前は付き合ってるやつもいるのに他の女にも手を出すお前も悪い……」「もう懲りました」 湊音は素直に反省している様子だったが、大島はしばらく無言でいた。 その後、大島は少しホッとした気持ちもあった。彩子が既婚者には手を出さない、ということだった。「にしても、独りよがりか」 また思い出し大島は鼻で笑った。 一方で、彩子
last updateHuling Na-update : 2026-03-29
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第四十話 夜に2人きり

「彩子先生……? 何してんだよ、こんな時間に……」 大島は動揺を隠せず、思わず眉をひそめた。 彼女は社員寮でなく近くのマンションから通っているのを知っている。父親名義の。「ちょっとお話がしたくて……ついでにこれ、差し入れです」 彩子は、手に持っていた小さな袋を差し出した。中には、缶ビールとおつまみらしいものが入っている。「いや、ここは職員寮だぞ。差し入れとかそういうのは……それに……てかどうやって入ってきたんだ?」独身寮にはそう簡単には出入りはできない。ここは男性教諭のみの棟であり、入口には看守はいるのだが正直セキュリティは女子寮のみ厳しくて男子寮はそうでもないのが暗黙の了解で女性を連れ込む(彼女とは限らない……)男性教諭も多いのは正直事実である。(女性教諭は大抵連れ込まず相手の方に行くことが多いとか)「普通に誰でも入れましたし。とりあえず……今日話を聞いてくれたお礼です」 彩子はそう言って微笑み、買い物袋をさらに差し出した。 大島は、彼女のその笑顔を見ながら一瞬躊躇したが、廊下でのやり取りを長引かせるのもまずいと思い、「まあ、少しだけな」 と言って彼女を部屋に入れることにした。「ここで話すのもなんだしな」 彩子は「失礼します」 と言いながら部屋に入った。 質素で実用的な独身寮の一室に、彩子の雰囲気はどこか場違いに見えた。それよりも妻でさえもあげたことがない……この部屋にと大島は思ったが……。「お礼って言っても、ただ話を聞いただけだろ?」 大島が椅子を勧めながら言うと、彩子は袋から缶ビールを取り出して笑った。「そうなんですけど、私、あまりああいう風に真剣に聞いてもらうことってなくて……本当に嬉しかったんです」 その言葉には大島はどこか腑に落ちないものを感じる。「でもな、俺は明日試合があるんだ。ビールはちょっと……」 そう言いかけると、彩子は待ってましたと言わんばかりに、袋の底からノンアルコールの缶
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