「おう、可愛い……可愛い」 声が聞こえた。大島は突然の意識の途切れから目覚め、ぼんやりとその声に耳を澄ました。「房江さん、早くタオル持ってきてくれ!」 次に聞こえたのは、どこか聞き覚えのある男性の声だと。『この声は!!!』「ニャーニャー」 と周りからか細い鳴き声が響いている。生臭い匂いが鼻を突き、大島はますます不安になる。何も見えない。視界が真っ暗だ。『ああ、そうだ……俺、車に轢かれたんだ……』 ぼんやりとした記憶が甦る。車が突っ込んできた瞬間、そして血がじわりと流れ出る感触――剣道の道場で、子どもの頃に階段から転げ落ちた時の出血を思い出させるような感覚であった。 だが今は、それ以上に混乱していた。『周りの猫の鳴き声、鼻をつく血や肉の匂い――これが一体、何なんだ? たく、なんだよ……全然見えねぇし、クセェし。なんで俺の周りに猫が集まってるんだ?』 大島は体を動かそうとするが、思うように動かない。ねちゃねちゃした感触に包まれ、どこか狭く、湿っぽい。何かがおかしい。 すると突然、体が軽くなり、ふわっと宙に浮いたような感覚がした。「この子、真っ白で目の周りが黒いわね。まるで……パンダみたい」 女性の声がそう言いながら、大島は何かに持ち上げられていた。『え? なんだ、浮いてる!?』 大島は焦り、ますます混乱する。視界は真っ暗で、耳だけがやけに敏感に反応する。 そして聞こえてくるのは、「この子」という言葉……まさか、自分のことを言っているのか?「目の周り、拭いてあげましょうね」 そう言うと、突然大きな布で顔をグリグリと拭かれた。布がざらついていて、少し痛い。『ああっ、苦しい! 加減してくれよ! ……って、川本さん!? さっき猫引き取った川本さんか!?』 しかし、彼がそう叫んでも、口から出てくるのは「ふギャァッ」「ふにゃあ」といった情けない声だけだった。『声が……声が……なんでだ!?』 パニックになる大島。 そして、彼はついに気づいてしまった。『……この体、俺じゃない……!』 大島は絶望と混乱の中で思わず叫んだ。 しかし、何も見えないまま、時間だけが過ぎていった。 視界は暗く、ただ生臭さと小さな猫たちの鳴き声に囲まれながら、彼は自分が自分ではない何かになってしまったことを否応なしに受け入れざるを得なかった。 なにか
Last Updated : 2026-03-01 Read more