「はい、ロールケーキ。」 湊音が持ってきたロールケーキだ。綺麗にカットされている。「ありがとうございます。でも、倫典が来るって聞いてなかったから、ごめんなさい」「いいのよー。急でも大丈夫。ただ、私たちの分が少し減っちゃうけどね」 そう言いながら、三葉は仏壇にもロールケーキを供えた。スケキヨはそれをじっと見つめ、心の中で『それ、俺にくれ……』 とつぶやくものの、どうにもできない。 その時、三葉がいつもスケキヨ用に使っている餌皿を出してきた。そこには、見たことのない鮮やかな色のゼリーが輝いている。食欲をそそる色と香りで、スケキヨの口からは思わずよだれが垂れた。「スケキヨにはこの『ねこねこゼリープレミアム』よ。湊音くんが持ってきてくれたの」「猫に何が良いのか分からなくて……猫も飼ってないし。でも、CMでよく見る『ねこねこゼリー』なら間違いないかと」 そう言いながら、湊音は眼鏡を指で押し上げた。その左手の薬指には、結婚指輪が光っている。『……お前、結婚したんだな。本当に』 スケキヨは心の中でそう呟きながら、出された『ねこねこゼリープレミアム』を無心で食べ始めた。「それにしても、倫典くんは偶然だったの?」 と三葉が聞くと、スケキヨもまだ皿に残ったゼリーを舐めながら同じことを思った。「いや、推しのアイドルのライブが中止になっちゃって暇だったんです。そしたら、湊音がガラにも合わずシャレオツなケーキ屋のショーウインドーを見てたから声かけたんですよ」「ガラにも合わずって……僕だって本当は婚約者と行きたかったんです。でも彼、忙しくてね。ちょうど倫典と会って、三葉先生のところに行くって言ったら、尻尾振って喜んで」 横でニコニコと微笑む倫典。それを見て三葉は微笑み返す。 この二人の共通点は、あの教育実習のとき。彼らは生徒。担当は美帆子だったが、三葉とも面識があった。そして何を隠そう、倫典は三葉に片思いしていた。スケキヨもそれを見ていたが、三葉はうまくかわしていた。 その後は特に交流がなく、倫典と三葉が再会したのは、皮肉にも大島と三葉の結婚式だった。「大島先生……なんだかまだこの家にいるみたいですね」「えっ?」 倫典のその言葉に、三葉だけでなく大島も驚いた。それと同時に、スケキヨの体がビクッと動くと、3人はその様子を見て笑った。「なんでスケキヨ
最終更新日 : 2026-03-21 続きを読む