All Chapters of 轢き逃げされたら猫に転生。美人妻が心配で成仏できません! : Chapter 41 - Chapter 50

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第四十一話 大島という男

スケキヨは目の前の修羅場に呆然としながら、ふと過去の出来事を思い出していた。 あの時、彼の理性が挫けなかったのは、彼が教師としての使命感を持っていたからだ。 さらに三葉という存在が心の支えになっていたことも大きい。ここで手を出したら教師生命どころか彼女からの信頼もなくなり、夫婦の関係も破綻するというまともな考えが大島にはあったのだ。 そして……目の前にいる彩子に対しても 「彼女をなんとかしなければいけない」 その思いが、彩子に手を出させなかったのかもしれない。 だが、そこからの経緯を知る者は、大島と彩子の二人だけだった。 だからこそ、事実は簡単に歪められ、噂話となって広がってしまう。 現在の修羅場の中で、彩子が口を開いた。 「……大島先生だけは、私の誘惑に乗らなかった」 その一言で場が静まり返る。重い沈黙の中、彩子がさらに語り始めた。 「先生はずっと私の話を聞いてくれた。そして……私の異変に気づいて、病院に行くように言われたんです」 彩子の声は震えていた。 「子供の頃から、私はずっと父から……暴力を受けていました。母も同じでした。母もまた、暴力と暴言を父から受けて、そのストレスを私に向けていたんです……私にはあの家にいて逃げ場はなかった」 場の空気が一層重くなる中、彩子は自分の腕をギュッと掴みながら続けた。 「作品を作っている間だけが、無心になれる唯一の時間でした。作品を作って賞を取れば親は喜ぶ。さすがあの芸術家の娘と。でも……気に入らないとすぐ……」 涙を堪えながら語る彩子に、周囲は何も言えなかった。 彼女の言葉の裏にある長年の苦しみを、誰も軽々しく口にすることはできなかったからだ。 彩子は深く息を吸い、絞り出すように言った。 「でも……大島先生のおかげで気づけたんです。実家からは出ましたが……あの人たちはもう変わらない。変えれない。病院に通って、私はうつ病やいろんな精神病、そしてセックス依存症ってわかって治療も初めて……少しずつですけど、自分を取り戻せてきました」 スケキヨは彩子がそう語ってくれたことにほっとした。 「大島先生は私を救ってくれた。……高校生でないのに、大の大人がこんなんでアレですけど……あ、今度両親は離婚しますし……かと言って私はどちらの元に行くわけでもありません
last updateLast Updated : 2026-03-30
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第四十二話 ちょうど良いところに

 数日後、昼下がりの静かな喫茶店。倉田と倫典が喫茶店で向かい合って座っていた。 目が細いウエイターがメニューと水、おしぼりを置いて、にっこり微笑んだ。どうやらウェイターは倉田を知っているようで深く会釈した。「今限定で里芋のグラタンを出しておりますので、よろしければどうぞ」 ウェイターは去って行った。 二人の話題はすぐに倫典が切り出した内容へと戻る。「……そりゃ三葉さんが信じられないのも無理はないですよね。普通、夜に男女が二人きりで部屋にいて、何もなかったって言われても……」 倉田は彼から全ての経緯を聞いた上で、ため息をついた。「そうだな。普通は、そう思われるだろう」「倉田さんもそう思いますよね?」 倫典が同意を求める。倉田は水を一口含んだ。「……まあ、一般的な男性なら、そうかもしれない。私自身はどうか分からないが……。ただ、三葉さんから連絡がないというのも気になるな」 倫典は頷く。「僕のところにも全然連絡ないんですよ。あの夜、家まで送って行ってから……まったく」 倫典はしょんぼりと肩を落とした。 その後、二人は里芋のグラタンを頼み、フーフーと冷ましながら一口ずつ食べる。倫典は熱々のグラタンを口に運ぶ。「三葉さん、しばらく体調悪かったし……仕事は行ってるみたいだけど大丈夫かなぁ。もう僕、有給も使い切っちゃいましたよ」 倫典がため息をつきながら続ける。「実は……三葉さんのことが心配で、有給使って無理やり時間を作ってたんです。それでも、気に入ってもらいたくて」 その言葉を聞いた倉田は、思わず吹き出して笑ってしまった。「何笑ってるんですかぁ、倉田さん!」 倫典が少し怒ったように言うが、倉田は笑いながら首を横に振った。「いや、君には敵わないなと思っただけだ。そこまで熱意を持てるのはすごい」「……バカだと思いますよね。自分ながらも……付き合える保証なんてないのに」 倫典が自嘲気味に言うと、倉田は真剣な表情で言った。「いや、そうじゃない。君のその熱意には負けた。それだけ、三葉さんのことが好きなんだろう?」 倫典は少し赤くなりながら、グラタンをつついた。「……ん、てことは」 倉田は優しい目で倫典を見つめ、静かに言った。「いやー私もあと少し若かったらグイグイいけたけどなかなかです」「て、ちゃんと言ってください。三葉さんのこと
last updateLast Updated : 2026-04-01
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第四十三話 みえる子

 夕方、美帆子が三葉のマンションのインターフォンを押す。何度か押しても反応がない。美守はその間、周囲にある他のインターフォンが気になるのか、ぐるぐると回りながら時折ポーズを取って遊んでいた。「……出ないなぁ」 美帆子が呟くと、美守の奇妙な動きを目に留めて注意を促す。「美守、そんな変なことしてたら、お巡りさんが来ちゃうわよ」「来ない来ない~」 美守は悪びれる様子もなく、ふざけた笑みを浮かべながらさらに回り続ける。 仕方なく二人は倫典たちが待機している車に戻ることにした。車のドアを開け、美帆子が首を横に振る。「出なかったわ。もうこの時間には帰っているはずなのに。居留守かしら、私でさえも出ないのは相当なことね」 それを聞いた倉田がまず車から降り、続いて倫典も降りる。焦りの表情を浮かべた倫典は落ち着きなく言った。「やっぱり、強行突破するしかないですよ。スケキヨがどうしてるかも気になるし……」 倉田は冷静に倫典を制止する。「倫典くん、もう帰ろう。無理に動くのはよくない」 だが、倫典は「でも……このままだと、何も分からないじゃないですか……」と言うが倉田は首を横に張る。 美帆子がふと、視線を美守に向ける。彼女は車の近くで遊び続け、何かをじっと観察しているようだった。 「……待ちましょう。この子を連れてきた意味があるんだから」「美守くんを連れてきた意味って……一体どういうことですか?」 倫典が聞く。すると美帆子が「実は、美守には霊感があるの」「霊感……?」 倫典はポカンとした表情を浮かべ、苦笑いをする。「え、いやいや、冗談ですよね? そんなアニメや漫画みたいな話……」 美帆子は険しい表情で倫典を見つめた。「冗談じゃないわよ。まぁ誰も最初は信じないけど」 倫典は戸惑いを隠せないまま、美守をちらりと見る。無邪気に遊び回っているその姿から、霊感などという言葉が全く結びつかなかった。「まぁ、信じれないよね。慣れてるから大丈夫」 その言葉に、美守がぴたりと動きを止め、倫典の方を振り向いた。「……」美守はじっと倫典を見ている。正確には倫典の目で無く後ろのあたり。「え? なに?」 倫典が眉をひそめながらも後ろが気になる要で振り返る。そして美守はにこりと笑って話し始めた。「この間、三葉さんの部屋に行った時だよ。猫の近くにおじさんが
last updateLast Updated : 2026-04-02
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第四十四話 猫はおっさん?

『数日ぶりに三葉以外の人が来た!』 とスケキヨはホッとした。メールや電話の着信、インターフォンで誰か来ていたのはわかっていたスケキヨだが三葉があの日から体調を崩し一度は仕事にも行ったが早退をし、あとは1人療養していたのだ。その様子をただ見ているだけしかなかった。寄り添い、彼女のぬくもり……申し訳ない気持ちでしかなかった。「男性陣は一旦玄関で待ってて」 と美帆子がそう言って男たちは外に。美守は入った。美守を見たスケキヨはぎくっとした。2回目だが初めて会ったときのことを思い出すとひやっとする。『またこの子きたのか』 美帆子が部屋のこもった空気を出すため窓を全開にした。一気に空気が抜けていった。  そこにスケキヨの元に美守がやってきた。「こんにちは、おじさん」 と前みたいに目をじっと見られたスケキヨ言われた時は目を逸らすが目を合わせてくる美守。『こんにちは、と言われても……』 とどう返事をすればいいかわからないようである。「ママ、おじ……スケキヨもちょっと顔色悪いよ」 顔色なんてわかるわけないだろ、と思いつつもスケキヨはあまりろくにご飯を食べていない事実はあった。彩子と三葉の間の修羅場、それを思うと気持ち的に喉が通らなかったのもある。「どれどれーって顔色なんてわかるわけないわよ……」確かにそうではある。「少し食が細いみたい。ねこまんま作ってあげれば良くなるかも」と三葉が立ちあがろうとすると美帆子は座らせた。「ねこまんまくらい私作れるから三葉は座ってなさい!」 美帆子はスケキヨの世話もして部屋もある程度片付け三葉の身なりを整えたあと外にいる2人を入れた。30分ほどかかった。 スケキヨは『待ってたぞ』 と言わんばかりに二人を出迎えた。 おのおの大島の仏壇に手を合わせた。 だが大島の遺影が伏せられている。あの日からそうである。こんなふうになるのもしょうがない、スケキヨは座ってるだけである。「三葉さん、大島さんのことは……その……」 倫典がそういうと三葉は首を横に振る。「大丈夫、あ……写真戻さないと」 と、彼女は大島の遺影を戻した。そして手を合わせた。「和樹さんは本当に……何もしてなかった」「えっ」 リビングの机の上にたくさんのノートや本が置いてあった。スケキヨが三葉に見せるために頑張って引っ張り出した甲斐があった。
last updateLast Updated : 2026-04-03
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第四十五話 対話

「えっ、何言ってるのよ……美守くん。スケキヨはスケキヨよ。……その、私の夫の和樹さんはもう亡くなったの。お骨はまだ仏壇にあるけど……生まれ変わるだなんて」 三葉は信じられないようだ。もちろん倫典もだが、倉田の方を三葉は見た。やはりそっち専門の人に答えを求めてしまうのであろう。やや困った顔をしつつも倉田は答えた。「……一般論からしましても生まれ変わりだなんて本当在りえない世界かと思いますけどね、信じるか信じないかといえばわたしも白黒はつけられないんです」 と断言をしない倉田。それを聞いた三葉はますます混乱する。「美帆子、どういうことなの」「……この子は誰も信じてくれないけど霊が、みえる子なのよ」 もちろんそんなこと言っても誰も信じないだろう。三葉も参っている。「ありえない……ありえない! 美帆子まで私を騙そうとしてるの?」「騙してないわ……」『これはだめだな』 完全に人間不信になっている三葉。スケキヨは美守に近づいた。 試しに声を出してみることにした。いつも喋るとニャーとしか声が変換されない。『三葉ー!』 ととりあえず叫ぶ大島。「みつはーって呼んでるよ」 スケキヨは美守と話す。生きている人間と話せるのか、と不思議な気持ちでもある。『なんで前の時……話さなかった。君とこう話せたのならもっと色々とやれたこともあった、、って子供利用するのは心許ないが』「……だってここにあまり来ないし」『そうだよな、前が初めてだもんな。どうすれば三葉たち……みんなを信じらせることができるんだろう」 美守はそう言われて悩む。まだ小学生、しかも低学年の子には難しい問題だろう。「和樹さんと三葉さんしか知らない秘密を、言うとか?」 と小声で美守が言った。『……秘密?!』 大島は過去の記憶を掘り返して『これだ!』 と思い出した。『……あったぞ。絶対に俺と三葉しか知らないことが』 美守は期待に満ちた目でスケキヨを見つめる。「どんな秘密?」『三葉の、ブラのホックの位置にほくろがあるんだ……』 その瞬間スケキヨは美守の純真な顔を見て、『しまった』 と思った。美守はぽかんと口を開け、困惑気味にスケキヨを見つめている。「……これはみんなには言えないなぁ」 スケキヨは反省した。『これは君に言うべき話じゃなかった……!』「でも、それを三葉
last updateLast Updated : 2026-04-06
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第四十六話 天国と地獄

 静まり返った部屋。ソファーには三葉が座り、彼女の腿の上にはスケキヨが丸くなっていた。三葉の手は優しく猫の頭を撫でている。その仕草を見ていると、スケキヨは少しほっとしたような気分になる。『よしよし……今日は三葉も少し元気そうだな。倫典も役に立つ時が来たかもな』 スケキヨは微睡みながらも、耳をピクピク動かして気配を探っていると、倫典が台所から戻ってきた。二人分のコーヒーを持って、そっと三葉に声をかける。「三葉さん、今日はお疲れさまでした。コーヒー、どうぞ」「ありがとう……」 三葉は受け取ったカップを両手で包み、コーヒーの香りを吸い込んだ。倫典は隣に腰を下ろし、彼女の様子を伺うようにちらりと横顔を見た。「三葉さん……和樹さんのこと、少し信じられましたか?」 三葉は少し考え込み、スケキヨの背を撫でながら答えた。「信じたいと思う気持ちはあるわ。でも、聞いて思ったの。もし和樹さんが本当にスケキヨの中にいるのなら……もっと話したいこと、聞きたいことが山ほどあるのに」 倫典は真剣な表情で頷きながら、彼女の言葉に耳を傾けた。「そうですよね。でも、今日みたいに話せる時間がまたあったらなぁって」「でも美守くんも大変よね……まだ小学生なのに酷なことしたわ」「そうですね……そう思うともういいかなぁって」 三葉と頷く。スケキヨはそれを聞いてぴくっと動いた。優しく頭を撫でる。「スケキヨ……和樹さんいるのかなぁ」「いた方がいいです?」「んー、正直言ってあまり信じないけどね」 と笑った。倫典もだ。『え、信じてたんじゃ?』「にしても今日もまた戻ってくるとは思ったわ。忘れ物か何かで」「忘れ物はしませんでしたよ。ただ二人きりになりたくて……戻ってきました」 倫典はどことなく真剣な眼差しで三葉を見てる。「あら、倫典くん……どことなくすごく真剣」「僕だって時には真剣になります」「そうね、真剣な時もないと」 という2人の取り止めのない会話を聞かされてスケキヨはこの場から立ち去るかどうか悩んでいる。『倫典、いい加減に言っちゃいなよ。倉田いないんだからグイグイいけよ』 とジッと倫典を見ると一瞬彼と目が合った。そして倫典はまた三葉を見た。「三葉さん。倉田さんと僕、どっちがいいですか?」『よし来た!』 突然の質問に、三葉は驚いたように彼を見た。「どっちっ
last updateLast Updated : 2026-04-07
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第四十七話 つけ

 それから二ヶ月後。 三葉の家に足繁く倫典は泊まっている。翌週にはここに引っ越すという。荷物も来るたび置かれてすっかりここの住人になっている倫典。 三葉と和樹がいた寝室は物置になり、仏壇のある和室に布団を敷いて寝る形になった。 スケキヨは自分の遺骨のある仏壇のある部屋でよくもまぁいちゃつくなぁと思いつつ。 二人は着実に愛を育んでいた。大島とは違って積極的に家事をする倫典。スケキヨの世話もしっかりしてくれて感心するばかりだ。「スケキヨ……また残したのかい」 以前から食べていた病院推奨のキャットフードは喉が通らない。下痢も酷くしんどい。その世話も倫典がしてくれる。 それはさておきベタベタに愛し合ってる二人はつい先日スケキヨに大島がいるということをすっかりなかったかのようであった。 しかも三葉は「あのすけべさんが彩子さんと何もなかったなんて絶対ないわ。私は下手に騒がないだけよ」 と倫典と話をしていてひどく項垂れた。やはり女の勘は怖い……もう弁明することもできないものだろうか。『ああ、しましたよ。そのツケが来てるんだな』 彩子との関係を認めざるおえなかったがそれは伝えられないが。 どうやら美帆子から連絡あったみたいで美守があれからかなり体力を使ったようで熱が出てしまったようである。 なのでやはりしばらくはやめよう、と三葉は思ったらしい。 これは申し訳ない……スケキヨはそう思うが連日寝不足のスケキヨも昼寝ばかりしている。食欲もない。調子が悪い。 二人がそのような関係になる前から実は調子良くなかった。 キャットフードが受け付けられなかったときに選り好みをしていた際に栄養失調になったことも影響があるのかもしれない、なんて思っていた。 まぁまだスケキヨは若い、また治療すればよくなるだろうなんて思っていたのだが。「やっぱり調子悪いのかなぁ……」 と三葉がつぶやき、スケキヨを抱きかかえながら病院へ向かう。もう慣れたかのように倫典の車に乗り込む三葉。 倫典はその横で、「食欲が落ちてきて、ちょっと元気がないって言ってましたもんね。心配ですね」 と心配そうに言った。 三葉はスケキヨをしっかりと抱えながら、顔を覗き込む。「スケキヨ、また元気ないの? どうしちゃったんだろうね……」 スケキヨは少ししょんぼりとした様子で、小さく「ニャー」 
last updateLast Updated : 2026-04-08
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第四十八話 誰だ!

 この音に気づいたのはまずスケキヨだった。『ん、なんだ……』 他の二人は全く気づかない。『まだ聞こえる。おれには聞こえるぞ』 スケキヨは耳をピンと立て、小さな唸り声をあげる。スケキヨとして転生したおかげで耳が人間の時よりも良いことに気づいた。 三葉、隣の布団でぐっすりと寝ている倫典もまた、日頃の疲れから深い眠りに落ちていた。 スケキヨは寒い中暖かい布団から出て忍び足で立ち上がり、今いる和室の襖を開けて音のする台所に向かった。 そこで耳を澄ませると冷蔵庫を開ける音。そして食べ物を下品に音を立てて食べている音。 スケキヨが低い声で威嚇するように唸り始めたその瞬間、三葉が目を覚まして襖が開いていることに気づいて部屋から出てきたのだ。「スケキヨ、どうしたの?」 『三葉、なんで起きてきた! 倫典は?!』 もちろんその言葉は届かない。スケキヨが真夜中のひんやりとした中で立ち尽くしていることに違和感を感じていたところに台所からまた音が。「……何?」 台所の奥に進んでいく。スケキヨは『やめろ!』 と止めにはいるが遅かった。 そこで三葉が見たのは、暗闇の中で動く人影だった。 背は低いが体格の良いスキンヘッドの男が、冷蔵庫の中身を取り出してむしゃむしゃと食べていたのだ。 三葉は息を呑んだ。「……誰……?」 その声にスキンヘッドの男がピタリと動きを止め、三葉を睨みつけた。「黙っていろ。騒ぐとどうなるかわかってるだろうな」 三葉はその時、先日警察署に行った際にマンション強盗に気をつけるようにと言われたことを思い出した。 まさか自分の部屋にも……と。 スケキヨが男の足元に飛びかかろうとするが、三葉はすぐにそれを制止する。「スケキヨ、だめ!」 だが男は気にする様子もなく、部屋を物色し始める。引き出しを開け、棚を漁る音が響く。「金目の物はどこだ?」 男が荒々しい声で問いかけるが、三葉は震えながら首を横に振る。「……そんなもの、ない……」 事実、大島の遺品でかろうじて価値がついたものは売って借金の足しにした。 男の目が鋭く光った。「お金ないならおまえさんの体、いいなぁ……胸も大きい……やばい」 三葉は胸の辺りを両手で隠す。 泥棒が三葉に向かって一歩踏み出したその時、布団がガサリと音を立てた。そして襖越しから「……三葉?」 倫
last updateLast Updated : 2026-04-09
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第四十九話 さいご

 警察が到着した頃、部屋の中は異様な雰囲気に包まれていた。三葉は毛布で包まれ、倫典に抱きしめられている。その腕の中にはスケキヨ。「……なんだ、こりゃ……」 警察官が呆然と声を漏らす。部屋中の引き出しが開けられ、物が散乱しているが、特に異様なのは和室だ。 そこには大きい体に亀甲縛りで仰向けにぎっちぎちに縛られた泥棒が、泡を吹きながら失神している。「泥棒が暴れたので……彼女が縛ってくれました」 倫典が困惑気味に説明する。 彼自身も三葉が強盗をいとも簡単に亀甲縛りにしてしまうとは想像しておらず、その技量に驚いていた。 三葉は疲弊した表情をしているが、縛っていた時の彼女の顔は、倫典やスケキヨが愕然とするほど狂気に満ちており、どこか艶かしい雰囲気さえ漂わせていた。『三葉……なんでそんな縛り方を知ってるんだよ……』 スケキヨがそう思った時には、すでに泥棒は気絶し、微動だにしていなかった。「それよりも、倫典くん、病院に行かないと……さっき泥棒にやられてたじゃない!」 三葉が心配そうに言う。「これくらい、平気だ……うっ……」 倫典の右腕が鋭く痛み、そばにいた警察官が慌てて支えた。「三葉さんのほうを先に見てやってください! 彼女は……」 スケキヨが三葉に寄り添いながら訴えるが、そこで倫典が口を開いた。「彼女、妊娠してるんです」『……えっ!?』 スケキヨが驚き、三葉も静かに頷く。「ここでは冷えるし、体を休めないと……どこか具合が悪いところはありませんか?」 警察官も気遣いの声をかけるが、三葉はスケキヨを抱いたまま動こうとしない。「吐き気と眩暈が少し……でも……スケキヨを……この子、もともと持病もあってなおかつ泥棒に蹴られて……」 三葉が腕の中のスケキヨを見下ろした。その瞬間、彼女の顔が青ざめた。「……スケキヨ……?」 何かがおかしい。スケキヨの体は微動だにせず、その胸も上下していなかった。「スケキヨがおかしいの……!」 三葉の声が震え、倫典もスケキヨの体に手を伸ばす。『……妊娠してたんだな、三葉』「嘘だろ……スケキヨ……」 倫典が低く呟いた時、三葉の手からスケキヨの体温が急速に失われていくのがわかった。「お願い……目を開けて……スケキヨ……!」 三葉は震える手でスケキヨを揺さぶったが……返答はなかった。 その後、それぞれ
last updateLast Updated : 2026-04-10
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第五十話 倉田という男

『……?』 スケキヨは再び目を開けると目の前には横たわるスケキヨがいた。『え? どういうことだ? ……す、スケキヨ!!! 起きろ!!!!』 だが声をかけても聞こえていないようだ。 次の瞬間「大丈夫です、まだ生きていますから」 と後ろから聞こえたのは倉田。黒いスーツを着て歩いてきた。 それと同時にスケキヨは大きな欠伸をしてまた寝た。 そう、寝ているだけである。『これはどういうことだ! 倉田さん』 スケキヨ、でなく大島は倉田を見るとしっかりと倉田は目を合わせてきた。  少し恐ろしさを感じる瞳だ。『ここはどこだ。病院……か。三葉たちは?』「三葉さん、またショックで倒れて……切迫流産しかけててすぐ近くの産婦人科に運ばれて。みんなあっちへ」 『三葉……三葉……流産……』 実のところ一度三葉は流産したことがあったのだ。「多分安静にしていれば良いでしょう……心配なさらず」 と倉田は寝ているスケキヨを撫でた。「あなたはスケキヨに転生しましたが……適応せず……このままでは栄養失調で死ぬところでした。だからあなたをスケキヨから抜きました。あ、怪我は関係ないので……少しずつ治るでしょう」『抜く? え? てか生まれ変わりならこれは俺だろ?』「ですけども生まれ変わりというよりもスケキヨに乗り移った、と言った方が早いでしょう」『……どういうことだよ。もし可能な限りスケキヨとして三葉たちのそばにいたいのに』「……未練たらたらだな」『中にいるのは俺じゃなくてなんなんだよ』「奥に眠っていたスケキヨです。彼も記憶を共有していますのでしばらくしたら慣れるでしょう」『……まじかよ、これは俺じゃなかった……?』 大島は今の自分の体を確かめようとしたがそれができない。ただ存在自体はあり見える、聞こえる、話せるくらいである。『じゃあこれはいったい……』「人魂の状態ですね。私とだからこうして話すのとかできる。美守くんもね」『人魂……』「私がいるから喋られると思ってください。喋るというか念という概念ですが」 その言葉はとても不気味さを感じられる。がそれよりも……。「あなたは一体……ただの社長じゃない……あっ」 言ってるうちに思い出したのだ。 美守が倉田を見て怯えていたことを。『……』「あまり詮索するとダメですよ。こうして私と話せてる、とい
last updateLast Updated : 2026-04-11
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