セリーナがベッドに入って、しばらく―― ランプの明かりが、ゆらゆらと壁に影を描いていた。 外では虫の声と、かすかな夜風が草を揺らしている。 「ガット。明日は予定通り?」 「ああ。川のほうは堰き止めてある。縄を引っ張れば外れる仕組みだ。馬の上からでもわかるようにしてある。」 ガットが身振り手振りを交えながら、地図を指でなぞる。 彼の指先は、まるで長年の経験を刻んだように迷いがなかった。 「うん。わかった。追っ手は来るだろうからね。」 「ああ。だから川を氾濫させて行く手を阻む。」 「橋も近くにないから分断できる。そしてその先は……僕たちの庭だからね。」 コビーが淡く笑う。 火の粉がはらりと舞い、二人の顔を赤く照らした。 その笑みに、静かな自信と、どこか寂しげな響きが混じっていた。 「コーデの森は入り組んでるから、慣れてないと絶対に迷う。」 「だな。王都の兵士は森には入ったことがないはずだ。」 短く交わされる言葉の奥に、張り詰めた緊張が漂う。 波の音だけが、時間を刻むように遠くで響いていた。 「そうだね。最悪を考えて煙幕は入口で出すよ。匂い袋もあと一つあるから。」 「ああ。頼む。」 「小屋のほうは?」 「そっちも昨日見てきたが、静かなもんだ。」 「見張りは明日付くだろうね。」 「でも見張れる場所は決まってるから、すべてこっちの手の内なんだよね。」 「まぁな。だからあの小屋を選んだ。」 「ガットのほうは?」 「ああ……ちょっといいか?」 ガットが外を指差した。 夜風が冷たく、星の光が微かに地面を照らす。 コビーはセリーナのいるほうを一瞬だけ確認し、静かにうな
Baca selengkapnya