私の名前は吉野遥(よしの はるか)。深夜、彼氏の榊涼介(さかき りょうすけ)と冷戦状態のまま眠れずにいた私は、スマホをスクロールしていた。そのとき、トレンドに上がっている話題が目に入った。【恋人の異性関係、どこまでなら許せる?】思わず、私も同じことを問い返したくなった。なにしろ、彼の「許容範囲」はゼロに等しい。男性の同僚と仕事の打ち合わせをしただけで、三日間も不機嫌になる。それが彼だ。コメント欄には、こんな意見があった。【愛って独占欲でしょ。本気で好きなら、許せる範囲なんてどんどん狭くなるよ】けれど、すぐに別のコメントがついた。【それは一概に言えないよ。私はね、すべての男に「帰る場所」を用意してあげる主義なの。3人目のパパにバレて修羅場ったときも、向こうが「別れないで」って必死にすがってきたし。今も普通に毎月一百万円、生活費として振り込んでくれてるけど。「君の飼い犬でいい。俺のこと、ほんの少しでも想ってくれてるならそれでいい。そばに置いてほしい」って】そう書き込むと、彼女は何枚も送金履歴のスクリーンショットを投稿した。添えられていた振込画面のアイコンは、あの彼のアイコンとまったく同じだった――幼なじみが私に「誕生日おめでとう」と声をかけただけで、怒ってドアを叩きつけて出ていったあの彼。私は手が震えて、スマホを持つのもやっとだった。ありえない。涼介は潔癖症だ。生活面でも、感情面でも。幼なじみと私が話すだけで怒る彼が、まさか、誰かの「飼い犬」になるつもり?絶対に偶然に違いない。世界には同じアイコンを使う人なんていくらでもいる。私はなんとか息を整え、ページを閉じようとした。だが、指先がまるで勝手に動くかのように、この「甘々バービー」というニックネームの人のプロフィールを開いてしまった。一番上に表示されている投稿――それは、10分前にアップされたものだった。【3人目のパパからもらった限定時計。値段だけで言えば一番じゃないけど、何より扱いやすいのが最高】添付された写真には、細い手首にダイヤ入りの女性用時計が光っていた。その時計……昨日、涼介が自分のSNSに投稿したばかりのものだ。添えられた言葉は――【頑張った自分へのご褒美。そして、一番大切な人へ】私は当時、それが自
続きを読む