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第2話

Auteur: コーラ
開けると、ヴァンクリーフ&アーペルのネックレス。

確かにずっと欲しかったデザインだった。

でも、あの時計じゃない。

あの時計は今、あの「甘々バービー」の手首に輝き、戦利品として自慢されている。

「ありがとう。すごく気に入った」

私は素直なふりをして、彼にネックレスをつけさせた。

冷たい金属が肌に触れる。それはまるで皮肉の烙印のようだった。

「俺、風呂入ってくる。全身酒臭くてさ」

涼介は私の額にキスして、バスルームに入っていった。

水の音が響いた瞬間。

私の笑顔は消えた。

裸足でベッドを飛び降り、彼のクローゼットへ駆け寄る。

さっき脱いだばかりのスーツジャケットがハンガーにかかっていた。

私は近づいて香りを嗅ぐ。

酒の匂いに混ざり、甘ったるくも秘めやかな香りがした。

私の香水じゃない。

こんな安っぽく誘惑的な香水は使わない。

すぐにスマホを取り出し、「甘々バービー」のページを開く。

指が震えるように素早くスクロール。

あった。

三日前、彼女は香水を投稿していた。

ピンクのボトル、甘ったるいキャプション。

【今日のフレグランス効きすぎる!3番目のパパに試してみたら、離してくれなくなった。「俺の甘えんぼちゃん」だって】

時間も、匂いも、全てが一致する。

そのとき、スマホが震えた。

親友からのメッセージ。

【遥、これ見て!この女マジで図々しい!】

リンクのタイトルは――

【本命の彼女がいるパパをどう手玉に取るか】。

投稿者は、まさに「甘々バービー」。

開くと、文字の一つ一つが鋭い針のように心に刺さる。

【ポイントは、彼に罪悪感を抱かせること。

例えば、あなたのために彼女に「残業」と嘘をつかせる。

あるいは、あなたをなだめるために大事な記念日をキャンセルさせる。

これを彼にやらせると、罪悪感が癖になって、どんどん沼落ちしていくんだよ】

握りしめたスマホで指の関節が白くなる。

先月。

私たちの七周年記念日。

私はレストランを予約し、服も着替えた。

だが、彼は最後の瞬間に電話してきた。焦った声で。

「遥、会社で緊急会議が入った。徹夜だ。もう食事に行けない」

その夜、私は一人でキャンドルディナーに向かい、灯が尽きるまで待った。

そうか。

あの「仕事が忙しい」だの、「緊急会議」だの、すべては、あの女が仕組んだ「調教プログラム」だった。

バスルームの水音が止む。

涼介がタオルを巻いて出てきた。

私がスマホを握りしめ、呆然としているのを見て。

「どうした?まだ寝ないのか?」

彼は近づいてきて、当然のように私を抱きしめようとした。

私は無意識に、一歩後ろに下がっていた。

「涼介……」

私は顔を上げ、七年間、誰よりも近くにいたこの人を見つめた。

「どうした?」

彼の目が一瞬揺れる。

「……なんでもない」

私はスマホをロックし、冷たい笑みを浮かべた。

「ただ、涼介の体からするボディソープの匂いが、変わった気がする」

涼介の顔色が微かに変わるが、すぐに隠す。

「そうか?ブランドを変えただけかもな」

彼にはわからない。

これはボディソープの匂いの問題じゃない。

この七年間の私たちの関係そのものが、もう変わってしまったのだ。

……

翌朝。

涼介は鏡の前でネクタイを締めていた。

今日はやけにきちんとした格好だ。「大事なクライアントに会う」と言っていた。

私は食卓につき、ゆっくりと朝ご飯を食べている。

「そういえば、あの私の幼なじみ――来月結婚するんだって」

何気ないふうを装って切り出す。

「お祝いに食事しようって。婚約者も紹介したいらしいよ」

涼介がネクタイを整える手が、ぴたりと止まった。

鏡越しに私を見る。その目が、すっと冷たく沈む。

「行かない」

彼は冷たく、一言で断った。

「遥、何度言えばわかるんだ。あいつと関わるなって。

結婚するってのに、なんで遥と飯なんか食うんだ。あいつ、何考えてるかわからないぞ。

行くなら、別れる」

また、それ。

昔の私は、それを「愛されている証」だと勘違いしていた。彼を安心させるために、何度も約束を断ってきた。

「わかった。行かないよ」

私はスプーンを置き、素直に頷く。

「やっぱり遥はいい子だな」
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