丸山浩(まるやま ひろし)の足が不自由になって、3年が経った。私、木村真由(きむら まゆ)の人生も、同じように止まってしまった。ウェディングドレスをキャンセルし、仕事も辞めた。両親がくれた金も、すべて浩の治療費につぎ込んだ。花嫁になるはずが、ただの介護する人になった。親友には「あなたって、お人よしすぎるよ。何が目的なの?」って呆れられたことがある。でも、私にはうまく説明できなかった。だって親友は、19歳のころの浩を知らないから。あの年、私の両親が交通事故で急逝し、親戚たちは遺産をめぐって醜い争いをした。斎場でひざまずいた私は、立ち上がる力もないくらい泣き崩れていた。そんなとき、浩が人垣をかき分けて、私を抱きしめてくれたんだ。そして、目を真っ赤にして、みんなの前で誓ってくれた。「これからは俺が真由のそばにいる。彼女に帰る家がないなら、俺が新しい家をつくる。一生、俺が面倒をみる」って。この3年、浩が怒りを募らせて熱い料理を投げつけてきても、私は顔をぬぐって、また新しいのを用意した。浩がよく眠れないとき、「薬を塗り替える手が冷たい」って怒鳴られた。だから私は、お湯で真っ赤になるまで手を温めてから、また薬を塗り直した。夜勤明けに体がクタクタになって帰宅しても、ドアの音で浩を起こすのが怖くて、よく廊下の壁にもたれて眠ることがあった。目が覚めるともう空は明るくて。それから部屋に入って、手を洗って、料理を作り始める毎日。病院へ検査結果を受け取りに行く日までは、私はそう信じていた。二人の生活を支えているのは私なんだと。廊下の角を曲がったところで、私は足を止めた。浩が、こちらに横顔を向けて立っていた。窓際にすっと背筋を伸ばして、指にはタバコがはさまれている。3年前、医者に「一生、立ち上がれない」と告げられたはずの彼の足が、しっかりと床を踏みしめていた。浩はタバコの灰を指で弾くと、電話の向こうに笑いかけた。「真由ってさ、悪い子じゃないんだけど、思い込みが激しすぎるんだよ。この3年、あきらめてくれたら、俺も少しは見直したのにさ。必死に食らいついてきて、こっちも可哀想に思うくらいだよ」電話の相手はすこし戸惑ったみたい。「浩、それはひどいよ。3年も……真由さん、もう骨と皮みたいに痩せ細ってるじゃないか。お前自
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