《再会した幼馴染は狂犬極道若頭になっていた上、なぜか私を飼い主と呼んで逃がさないのですが?~契約結婚から始まる極上溺愛~》全部章節:第 41 章 - 第 50 章

56 章節

立ち込める暗雲

私は、そっと俊くんの腕に寄りかかった。組員さんたちの視線が少し気になったけど、最近はだいぶ慣れてきた。この人が私の旦那さんだってことは、みんな知ってるから。さっき胸ぐらを掴まれていた若い組員さんが、俊くんに怒鳴られて縮こまってるのを見て、私は小さく息を吐いた。あの子、絶対にわさびなんか入れてないよね。顔を見ればわかるもの。「俊くん、ちょっとやりすぎじゃない? あの子、ほんとに知らないみたいよ……」「知らねえって言う奴が一番怪しいんだよ。まあいい、今日はこれで勘弁してやる」俊くんは私の肩に手を回して、組員さんたちに顎で指示を出した。若い子が慌てて「お、おうっす!」と返事して飛び出していく。残った人たちは「さすが若頭!」「姉御の茶は死んでも飲みます!」とか言って、なんだか妙に盛り上がってる。なんだか馬鹿馬鹿しいけど……。でも、俊くんの横顔を見上げると、胸の奥がじんわり温かくなった。そのあと、事務所の奥のソファに移動して、少し落ち着いたところで、俊くんは私の腰を引き寄せて隣に座らせた。「え、俊くん……まだみんな向こうにいるのに」「いいだろ。俺の女なんだから、堂々としていい」大きな手が背中を優しく撫でる。熱くて、ちょっとドキドキした。「変な騒ぎを起こしちゃってごめんね」「お前のせいじゃないだろ。わさびとお茶は流石に間違えねえと思うし」「うん、ホントそうだよ。なんでそんなことになってたのか私もわからないけど……」「まあ、誰かうっかりしたやつのせいだろうさ。それか、お前に恨みがある奴か」「う、恨み」心当たりは、まあ、ある。聡美さんだ。……でも、そんなこと言ったら悪いよね。何も証拠はないんだし。「ま、気にするなよ。お前は俺が守ってやるから」俊くんがそっと私の頬にキスをする。「く、くすぐったいよ」私は小さく笑いながら、俊くんの胸を軽く指で突いた。俊くんもニヤニヤしながら、私の髪を優しくくしゃくしゃにした。「でも、あそこで自分がやったって言いだすなんて偉いな」「そう? 大したことじゃないよ」実際、お茶を入れたのは私なんだし……。わさびはもちろん、いれてないけど。あのまま、あの子がひどい目に遭っていたら可哀想だったからそうしたんだだ。でも、俊くんに言うとまた怒り出しそうだから、黙っておいた。◇◆◇その夜、俊くんは約束
last update最後更新 : 2026-04-28
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あるはずのない偶然

それからはしばらくの間、私は平和に過ごすことができた。組員さんたちが私たちを生ぬるく見守ってくれていたのもある。ありがたい話だった。でもある夜――すべてが変わった。その日、俊くんはいなかった。どうしても外せない仕事がある、とかで。私はタクシーで帰るように言われていた。心配性だなとは思ったけど、極道の妻が公共交通機関を使うのは確かに、ちょっとイメージが違うというのも分かる。だから私は言われたとおりにタクシーを使った。でもそれが――始まりだった。「あの……、なんだか、違う方向に走っていないですか?」気が付いたのは、周りの景色が違っていたことがきっかけだった。普段なら見慣れた住宅街に向かうはずなのに、今日は違っていた。「気のせいじゃないですか?」「そんなこと……」あるはずがない。少なくとも、組の事務所から自宅までの景色は、うっすらと覚えている。俊くんの運転する車で助手席に乗って、何度も通った道だった。「ほら、裏道ってあるでしょう? 運転手って、そういうのに詳しいんですよ」「そういうものですか?」なんだか、だからってここまで違うのかという気はしたけど――確かに私も、普段、あまり他のルートを通りはしない。そういわれると、実際、このルートが違うと断言できるわけではなかった。それならと思って少し、そのまま乗っていると、でもやはり、いつまでも見慣れた景色にたどりつかない。それどころか、だんだんと郊外に向かっているような気がする。「……本当に、こっちでいいんですか?」「うるせえ女だな」運転手が舌打ちした。私は混乱してしまう。どういうこと???「黙って乗ってろ」「どういうことですか? 場合によっては警察……」「呼べるのか? お前、角鵜野組の若頭のオンナだろ?」言い当てられてハッとした。もしかしてこの人――ただのタクシー運転手じゃなくて、ヤクザなの?「甘い女だな。やっと気づいたのか?」「そんな……、タクシーの運転手にヤクザがいるなんて……」「はっはっは、馬鹿だな! ヤクザなんて、今時どこにだっているんだよ!」確かにそれもそうだった。ヤクザというのは、それを仕事にして生活している人もいれば、そうでない人もいる。下っ端の構成員だと、普通の仕事をしながら実は組員みたいなことも珍しくはないのだ。それを私は、俊くんに
last update最後更新 : 2026-04-29
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山の中で…

私が連れていかれた先は、どこか山の中だった。ここがどこかもわからない。ただ、簡単には助けが来ないことはわかる。携帯電話は完全に圏外だった。「私をどうするつもり?」「どうだと思う?」返してくる男の笑みは邪悪だった。絶対にろくでもないことを考えている顔だ。男は私の腕を掴んだまま、車から少し離れた木の根元まで引きずっていった。地面は落ち葉と湿った土でぐちゃぐちゃで、膝をついた瞬間、冷たさがスカートを通してじわっと染みてきた。ヘッドライトの光が遠くから木々をぼんやり照らしているだけで、周囲は真っ暗。風が木の葉をざわめかせて、まるで私を嘲笑っているみたいだった。「俊くん……」思わず名前を呟いてしまった。男はそれを聞いて、大きく喉を鳴らして笑った。「ははっ、若頭様のお名前呼びか。かわいいじゃねえか」その笑い声に、私はますます身体を縮こまらせた。どうしたらこの状況から逃れられるのかわからない。「でもよお、角鵜野の若頭ってのは、そんな可愛い女一人満足に守れねえ男なんだよなあ?」男はニヤつきながら私を舐めまわすように見ていた。視線がとにかく気持ち悪くて、吐き気がする。えづきそうになった私を、男がぐっと持ち上げた。「おい、何か言いやがれよ」「何かって、何を言えばいいんです?」「ずいぶんと強気じゃねえか」「弱気になっても、いいことはないですから」虚勢だった。男はそれを見抜いているのか、げらげらと笑った。「お前がどんな態度だって、意味なんかねえんだ。女房一人守れねえヤツなんて、組の信用もガタ落ちだろ?」――そういうことか。やっと、男の目的が理解できた。俊くんの評判を落とすため……。ただのイタズラや脅しじゃなくて、そんな狙いだったなんて。「私を、どうするの……?」声が震えてしまう。男はしゃがみ込んで、私の顔を覗き込んだ。息が酒とタバコの匂い。顔が近くて気持ち悪い。「そうだなあ、置き去りにするだけじゃ、つまらねえだろ?」「こんな夜中に置き去りにされたら、すごく怖いと思うけど」「ふん、お前みたいな可愛い女を山ん中にポイって置いてくだけじゃ、俺の気が済まねえよ」男が下卑た笑みを見せた。「……なぁ、幸子さんよ。俺の言うこと、ちょっと聞いてくれたら、助けてやらんこともねえぜ?」「言うこと……って、何?」私は体を縮こめ
last update最後更新 : 2026-04-29
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ハーブティー

事務所で、私は聡美さんからもらった瓶を手に取っていた。透明で少し緑がかった液体が、午後の柔らかい光にきらきらと反射している。ほのかにハーブのいい香りがして、なんだか体の中から温かくなるような気がした。「身体にいいハーブティーだって……聡美さん、わざわざ作ってきてくれたんだよね」思わぬところから向けられた優しさが、胸にじんわり染みる。私はマグカップにハーブティーを注いだ。「温めたほうがいいかな……とりあえず先に味見してみよう」カップを口元に近づけ、一口飲もうとしたその瞬間――「幸子!」後ろから俊くんの鋭い声が飛んできた。次の瞬間、大きな手が私の手首を強く掴み、カップごと瓶を勢いよく横に叩き落とした。ガシャンッ!床に落ちた瓶が派手な音を立てて割れ、緑色の液体が床に飛び散った。甘いハーブの香りが一気に広がり、事務所の空気を染める。「え……!?」私は呆然として、床に散らばったガラスの破片と液体を見つめた。せっかくの聡美さんの気持ちが……台無し。「俊くん……なんで!?」振り返ると、俊くんは険しい顔で私を見下ろしていた。さっきまで大型犬みたいに甘えていた目が、今は完全に狂犬モード。組員さんたちが遠巻きにこちらを窺っているのが気まずい。「飲むんじゃねえ」低い声で一言。俊くんは私の手首をまだ掴んだまま、床の液体を鋭く睨みつけている。「どうして……? 聡美さんが、身体にいいって作ってきてくれたのに……。私、最近元気がないからって、心配してくれたんだよ? せっかくの好意を、そんな風に……」声が少し震えてしまう。俊くんはため息をつきながら、私の手首を離してくれたけど、表情は緩まない。「好意? あのお嬢が本気で心配して作ったなんて、俺は思えねえよ。絶対に何か入ってる」「入ってるって……何が?」「知らねえけど……、絶対、何か入ってる。いつもそうなんだよ!」俊くんの声が少し大きくなった。私は思わず唇を噛んだ。「俊くん、声が大きいよ……。証拠もないのに、聡美さんのことそんな風に疑うなんて、ひどいよ」しゃがみ込んで、床の破片を片付けようとすると、俊くんが慌てて私の肩を掴んで止めた。「触るな! 危ねえだろ!」「危ないのは俊くんの態度の方だよ……。私、極道の妻として頑張ろうって思ってるのに、こんなことで組長さんの娘さんと揉めるなんて…
last update最後更新 : 2026-04-30
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きっと考え過ぎだったんだよ

事務所では、少し気まずい空気が残っていた。床に散らばったカップの破片と緑色の液体を、組員さんの一人が素早く片付けてくれた。俊くんはまだ私の肩を抱いたまま、眉を寄せている。私は彼の胸を軽く押し返して、ため息をついた。「もう……俊くん、落ち着いて。聡美さんは本当に悪気なかったと思うよ」「幸子……」俊くんはまだ納得いかない顔をしていたけど、私は無理に笑顔を作った。組の中に波風を立てたくない。この世界に適応しようと決めていたばかりなのに、こんなことで揉めるのは嫌だった。ちょうどその時、入り口から若い組員さんが顔を出した。「姉御~、お茶もらっていいっすか? 喉渇いちゃって……」組員さんはきょろきょろしながら、ガラスのビンに目を付ける。「あっ! これ! 最近はやってるやつ!」「え?」「なんか、こういうビンに入れてサラダとか飲み物とか出すの、はやってるらしいですよね~。さすが姐御、おしゃれ!」褒めながら、瓶を手に取った。そしてそのまま口をつける。「あっ!」私は思わず声を上げた。組員さんは嬉しそうに、一気にゴクゴクと飲んだ。瞬間、彼の顔が強ばる。「うっ……!?」喉を押さえて、目を見開いた。体が少し前屈みになって、苦しそうな表情を浮かべる。事務所にいた他の組員さんたちも「どうした!?」と慌てて寄ってくる。「え、ええ!? 大丈夫!?」私は慌てて彼の背中をさすった。心臓がどきっと鳴る。まさか……?組員さんは顔を真っ赤にして、しばらくもがいたあと、ようやく息を吐いた。「……げほっ。す、すみません。めっちゃ苦い……」「苦い?」「はい……なんか、えぐ味がすごくて……胃にくるっていうか……」その言葉に、周りの組員さんたちが一瞬沈黙したあと、どっと笑い出した。「はははっ! お前、勝手に飲むからだろ!」「苦いって、お前普段から砂糖入れすぎなんだろ!」「お嬢の持ってきたお茶、今日は特別に渋めだったみたいだな!」みんなが大笑いして、場が一気に和やかになる。私はほっと胸をなでおろした。「ほら、俊くん! 見て。やっぱりただのハーブティーだったでしょ? 聡美さんが心配してくれただけ。俊くんの考え過ぎだよ」私は得意げに俊くんを見上げた。俊くんはまだ少し疑わしげな顔をしていたけど、組員さんたちの笑い声に押されて、肩の力を抜いた。「……
last update最後更新 : 2026-04-30
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飼い犬の独占欲

事務所の午後は、いつも賑やかだった。私がお茶を淹れてテーブルに並べると、組員さんたちが次々と集まってくる。「姉御~! 今日もありがとうございます!」「この間のお茶、めっちゃ美味かったです! 姉御の淹れるお茶が一番好きです!」若い組員の二人組が目を輝かせて頭を下げる。私は照れくさくて頰を掻いた。「そんな大げさな……ただのほうじ茶だよ」「いやいや、姉御が入れてくれると味が違うんですよね。心が落ち着くっていうか」「姉御がいると事務所が明るくなります!」他の先輩組員さんたちも笑顔で口を揃える。山の事件から少し時間が経って、みんなが私を「姉御」としてちゃんと慕ってくれるようになっていた。最初はただの「若頭の女」だったのに、今では自然と声をかけてもらえる。普通のフリーターだった私には、なんだか不思議で嬉しい気持ちだった。「みんな、ありがとう。今日も頑張ってね」私が微笑むと、組員さんたちが「はいっ!」と元気よく返事をする。その様子を、奥のソファから俊くんがじっと見ていた。「……おい、お前ら」低くて、少し不機嫌な声。俊くんがゆっくり立ち上がって、私の後ろに回り込んでくる。大きな手が私の腰に回されて、ぐっと引き寄せられた。「え、俊くん……?」「幸子に手を出すなよ。お前ら調子に乗ってんじゃねえぞ」俊くんは冗談めかして言ったけど、目は本気で笑っていない。組員さんたちが一瞬びくりとしてから、すぐに笑い出す。「若頭、嫉妬ですか!?」「かわいいですね~!」「姉御は若頭のものだって、みんな知ってますよ!」からかう声が飛ぶと、俊くんは私の腰を抱く腕に力を込めた。完全に離す気がない。「知ってるならいいけどな。幸子は俺の女だ。勝手に慕うのも大概にしろ」「俊く
last update最後更新 : 2026-04-30
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女たちからの嫉妬

角鵜野組の組長邸、奥にあるガラス張りのサロンルームは午後の柔らかな陽光に包まれていた。白いレースのカーテンが静かに揺れ、テーブルの上には上等な英国紅茶と季節のフルーツタルト、繊細な洋菓子たちが並んでいる。聡美は優雅に微笑みながら、今日のために招いた女性たちを見回した。組員の妻や愛人たちばかりを集めた、完全なる「女たちの茶会」だった。「今日はみんな、よく来てくれたわね」聡美が穏やかな声で言うと、女性たちが一斉に頭を下げた。「聡美様、ありがとうございます」「こんな素敵なお茶会、久しぶりです」「あの……幸子さんは?」一人が遠慮がちに尋ねると、聡美は小さくため息をついた。「幸子さんは来られないの。忙しいからって断られちゃったわ」「ええ? 聡美様が誘ったのに?」「あの人、最近忙しいんですか?」女性たちの間に小さなざわめきが広がった。聡美は寂しげに微笑みながら、カップを優しく傾けた。「ええ。『今は事務所が大変だから』って。女同士で親睦を深めるより、組員さんたちと一緒にいたいのかしら」「それって……少し失礼じゃない?」女の一人が眉を寄せた。聡美は肩を軽くすくめた。「まあ、いいのよ。でも最近、幸子さん、組員さんたちにずいぶん慕われてるみたいね。茶を配ったり、笑顔で話しかけたり……みんなの人気者みたい」「へえ……」「媚びを売ってるってこと?」噂好きそうな派手な女が身を乗り出した。聡美は目を伏せて、ため息をもう一つ。「私、近づくと少し冷たい目で見られるのよね。『聡美さんはお嬢様だから』みたいな……。私、ただ俊のことを心配してるだけなのに」「それ、ひどくない?」「元々ただのフリーターだったくせに、急に姉御面してるわよね」聡美は慌てたように手を振ったが、口元には微かな笑みが浮かんでいた。「そんな言い方は……。でも、組員さんたちに『姉御、姉御』って囲まれて笑ってるの見ると、なんだか寂しくて」「若頭の女ってだけのくせに、調子に乗ってるんじゃないの?」「あの人、組員たちに媚び売って立場を利用してるだけよ」「私たちみたいに、ちゃんと夫を支えて苦労してるわけじゃないのに」女性たちの声が、次第に尖っていく。聡美は静かに紅茶を注ぎ足しながら、さりげなく火に油を注いだ。「幸子さん、若頭を独占してるみたいで……。私、最近はあまり話せなくな
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