私は、そっと俊くんの腕に寄りかかった。組員さんたちの視線が少し気になったけど、最近はだいぶ慣れてきた。この人が私の旦那さんだってことは、みんな知ってるから。さっき胸ぐらを掴まれていた若い組員さんが、俊くんに怒鳴られて縮こまってるのを見て、私は小さく息を吐いた。あの子、絶対にわさびなんか入れてないよね。顔を見ればわかるもの。「俊くん、ちょっとやりすぎじゃない? あの子、ほんとに知らないみたいよ……」「知らねえって言う奴が一番怪しいんだよ。まあいい、今日はこれで勘弁してやる」俊くんは私の肩に手を回して、組員さんたちに顎で指示を出した。若い子が慌てて「お、おうっす!」と返事して飛び出していく。残った人たちは「さすが若頭!」「姉御の茶は死んでも飲みます!」とか言って、なんだか妙に盛り上がってる。なんだか馬鹿馬鹿しいけど……。でも、俊くんの横顔を見上げると、胸の奥がじんわり温かくなった。そのあと、事務所の奥のソファに移動して、少し落ち着いたところで、俊くんは私の腰を引き寄せて隣に座らせた。「え、俊くん……まだみんな向こうにいるのに」「いいだろ。俺の女なんだから、堂々としていい」大きな手が背中を優しく撫でる。熱くて、ちょっとドキドキした。「変な騒ぎを起こしちゃってごめんね」「お前のせいじゃないだろ。わさびとお茶は流石に間違えねえと思うし」「うん、ホントそうだよ。なんでそんなことになってたのか私もわからないけど……」「まあ、誰かうっかりしたやつのせいだろうさ。それか、お前に恨みがある奴か」「う、恨み」心当たりは、まあ、ある。聡美さんだ。……でも、そんなこと言ったら悪いよね。何も証拠はないんだし。「ま、気にするなよ。お前は俺が守ってやるから」俊くんがそっと私の頬にキスをする。「く、くすぐったいよ」私は小さく笑いながら、俊くんの胸を軽く指で突いた。俊くんもニヤニヤしながら、私の髪を優しくくしゃくしゃにした。「でも、あそこで自分がやったって言いだすなんて偉いな」「そう? 大したことじゃないよ」実際、お茶を入れたのは私なんだし……。わさびはもちろん、いれてないけど。あのまま、あの子がひどい目に遭っていたら可哀想だったからそうしたんだだ。でも、俊くんに言うとまた怒り出しそうだから、黙っておいた。◇◆◇その夜、俊くんは約束
最後更新 : 2026-04-28 閱讀更多