「幸子! 幸子ーっ!」お母さんが男の人たちから取り押さえられようとしながら、必死に私の名前を叫んでいた。私はどうしていいのかわからず、その場に立ち尽くした。「あの人って」俊くんも気づいたみたいだった。私はうなずく。「私のお母さん……」「どうして、ここに」「わからないけど……」どうしたらいいんだろう。私はすっかり怯え切っていた。こんなところにお母さんが来るなんてありえない。しかも、なんで男の人たちの間で暴れてるの……!?「放して! 放してください!! 娘に会わせて!!」お母さんはそういいながら、手足をめちゃくちゃに振り回して暴れている。体格のいい男の人たちだったけど、どうしていいのか迷っているようだった。確かに、どう見ても一般人、ごく普通の女の人にしか見えない母だ。いくら暴れているからと言って、簡単に暴力に訴えられるわけがない。仕方なく私は母の前に出て行くことにした。「お母さん」「幸子!」お母さんは私のスカートにすがって、そのままわぁわぁと声を上げて泣き出してしまった。どうしたらいいのかわからず、私はお母さんに手を伸ばしたまま固まってしまう。「どうして、どうしてなの……。やくざと結婚だなんて、そんなの絶対に幸せになれっこないのに!」それは私も薄々思っていたことだった。改めて母から言葉にされると、正直、辛い。「脅されてるの? ねえ、そうなんでしょお!?」パニックになった声が私に突き刺さった。俊くんは私を脅してなんかいない。でも、傍から見たらそういう関係に見えちゃう……。それは、私が普通の、弱い女である限りずっとそうなのかもしれない。だとしたら、私にできることはなんだろう?「幸子、お願いだから考え直して、まだ間に合うから、幸子!」「お母さん」「誰がお母さんだ! お前なんか! この! この!!」鬼のような形相で、お母さんが俊くんにつかみかかった。俊くんは困ったような顔をしながらも、お母さんの好きにさせていた。「若頭……」近くの男の人が、小さく声をかける。お母さんを引きはがそうかとジェスチャーして、俊くんに断られていた。「あらやだ、可哀想に……」そこに現れたのは、真っ白なワンピース姿の聡美さんだった。ウエディングドレスではさすがにないけれど、レースでできた丈の長いワンピースはどう見てもこの場にふ
最終更新日 : 2026-04-06 続きを読む