บททั้งหมดของ 澪尽しーTwin Sisters, One Forbidden Loveー双子の奪われた恋ー: บทที่ 11 - บทที่ 20

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11話 優しい人の隣

 莉央は、昔から人に好かれる。 それは顔が同じだからじゃない。 たぶん――近づいた人の“温度”を、少しだけ上げることができるからだ。   大学の中庭。 昼休みのざわめきの中で、莉央は自然と輪の中心にいた。   「それでね、その教授がさ――」   楽しそうに話す声。 周りも笑っている。   私は少し離れた場所から、それを見ていた。   昔から、そうだ。 私は外側で、莉央は内側。   「澪さん!」   呼ばれて、顔を上げる。   真央だった。   手を振りながら、こちらへ歩いてくる。   「こっち来ないんすか?」   「いい。そっちでやってて」   軽く返すと、真央は少しだけ困った顔をした。   「いや、でも……莉央も呼んでるし」   視線の先を見る。 莉央がこちらに気づいて、小さく手を振っていた。   ――ああ、ほんとに。   そういうところだ。   「……わかった」   立ち上がると、真央がほっとしたように笑う。   その表情が、少しだけ無防備で。   不意に、胸の奥がざわつく。   「どうかしました?」   「別に」   すぐに視線を逸らす。   気のせいだと思った。   たぶん、この距離のせいだ。 近くで見ると、少しだけ印象が変わる。   それだけ。   「澪、こっち!」   莉央の声に呼ばれて、輪の中に入る。   自然とスペースが空く。 それが当たり前みたいに。   「ちょうどよかった。今ね、真央くんが――」   「やめてよ、恥ずかしいから」   莉央の言葉を遮って、真央が笑う。   そのやり取りが、やけに自然で。   ――ああ、と思う。   この二人は、きっと。   「ほら、澪も何か話して」   「急に振るな」   軽く返しながら、二人を見る。   視線が、ほんの一瞬だけ重なる。   そのとき。   真央が、少しだけ照れたように笑った。   「……なんすか」   「いや、別に」   また同じやり取り。   なのに、さっきとは少しだけ違う。   自分の中で、何かが引っかかったまま、ほどけない。   「澪?」   莉央の声に、はっとする。   「何でもない」   そう言って、いつもの顔を作る。   強くて、平気で、何も抱えていないみたいな顔。
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12話 姉でいること

 気づいていた。 ずっと前から、たぶん。   莉央が笑うと、空気が柔らかくなる。 真央がそこにいると、安心したようにその笑顔が続く。   自然だった。 誰も無理をしていない形。   だから――   「いいなって思ってるでしょ」   不意に、声が落ちた。   振り返ると、莉央がいた。   少しだけ真剣な顔。 でも、どこか優しい目。   「何が」   とぼけると、莉央は小さく笑った。   「真央くん」   その名前が、胸の奥に落ちる。   「……別に」   いつものように返す。 軽く、何もないみたいに。   けれど、莉央は首を振る。   「澪って、そういう顔する」   逃げ場がなくなる。   言い返そうとして、言葉が出ない。   沈黙が、少しだけ長く続く。   「……ちょっとだけ、だよ」   結局、そう言った。   嘘じゃない。 でも、全部でもない。   莉央は、それ以上聞かなかった。   ただ、少しだけ視線を落としてから、また私を見る。   「そっか」   それだけ。   それだけなのに、なぜか責められている気がした。   「でもね」   莉央が続ける。   「好きって、選べるものじゃないよ」   静かな声。   その言葉は、やけに真っ直ぐだった。   「……わかってる」   答えながら、視線を逸らす。   わかっている。 だから困っている。   選べないから、どうしようもない。   でも――   「だからこそ、どうするかは選べるよ」   莉央の言葉が、追いかけてくる。   「澪は、どうする?」   問いかけ。   まるで、答えを知っているみたいな聞き方。   私は、少しだけ考えた。   ほんの短い時間。 でも、たぶんずっと前から決まっていた答え。   「……何もしない」   言葉にすると、あっさりしている。   「言わないし、動かない」   それが一番、きれいに収まる。   誰も傷つかない形。   「そっか」   莉央は、また頷いた。   少しだけ、安心したように。   「ありがとう」   その一言に、胸が少しだけ痛む。   「別に、お礼言われることじゃない」   そう返すと、莉央は笑った。   「うん。でも、言いたかった」   その笑
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13話 選ばれる側

 選ばないと決めたはずなのに、 なぜか、少しだけ楽になった。   何も言わないと決めたことで、 ようやく呼吸ができる気がした。   それでも。   胸の奥に残ったものは、消えなかった。   消さなかったのかもしれない。   ――どちらでもいい。   そう思うことにした。   講義が終わったあと、 廊下の窓際でひとり立っていると、   「また逃げてる」   後ろから声がした。   振り返らなくてもわかる。   「別に」   そう返すと、   「その顔、別にじゃないだろ」   すぐ隣に、怜央が立つ。   距離が近い。   わざとだ。   「……何」   少しだけ顔を背ける。   視線を合わせると、 何か見透かされそうだった。   「お前さ」   怜央は、少しだけ考えるように間を置いてから言った。   「自分で決めてるくせに、納得してない顔してる」   図星だった。   だから、何も言えない。   沈黙が、そのまま答えになる。   「……別に、納得する必要ないでしょ」   やっとそれだけ返す。   怜央は、少しだけ笑った。   「あるだろ」   短く言い切る。   「自分で選んだなら、責任持てよ」   軽い言い方なのに、 言葉だけが妙に重く残る。   選ぶ。   その言葉が、胸の奥で引っかかる。   「……選んでない」   小さく言う。   「何も選んでないよ、私は」   それが本音だった。   言わないだけ。 動かないだけ。   それは、選んでいることになるのか。   わからなかった。   「じゃあ俺が選ぶ」   唐突に言われて、 思わず顔を上げる。   怜央は、まっすぐこちらを見ていた。   ふざけた様子は、ない。   「は?」   間の抜けた声が出る。   「お前、何も選ばないんだろ」   「……だからって」   言葉が続かない。   怜央は、一歩だけ近づいた。   逃げ場がなくなる。   「じゃあ、俺が選ぶ」   もう一度、同じ言葉。   今度は、さっきよりも静かに。   「澪」   名前を呼ばれる。   それだけで、何かが揺れる。   「俺は、お前がいい」   はっきりとした声だった。   曖昧なところが、ひとつもない。 
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第14話 行ってきます。

 その朝は、少しだけ静かだった。   特別な日じゃないはずなのに、 空気だけが、どこか遠い。   台所から、味噌汁の匂いがする。 母の足音。 包丁がまな板に触れる、乾いた音。   いつもと同じ、はずなのに。   「澪、起きてる?」   母の声がする。   「起きてる」   短く返すと、 「そう」とだけ答えが返ってきた。   それだけのやり取りが、 やけに長く感じる。   リビングに入ると、 父が新聞を読んでいた。   「おはよう」   「おはよう」   顔も上げずに返す。   その声が、少しだけ軽い。   「今日、出かけるんだろ」   何気ない調子で言う。   「うん」   母が答える。   「例の村。少しだけ見てくるって」   “例の村”。   その言い方に、 わずかな違和感が残る。   「すぐ帰るよ」   父が笑う。   その笑い方は、いつもと同じだった。   ――同じ、はずだった。   「気をつけてね」   莉央が言う。   明るい声。 何も知らない声。   「大げさだな」   父が肩をすくめる。   「ただの取材だよ」   軽く言う。   その言葉の軽さが、 なぜか引っかかる。   私は何も言わなかった。   言えば、何かが変わる気がしたから。   でも、それが何なのかは分からなかった。   食卓の端に、白いものがあった。   「……また」   小さく呟く。   羽だった。   真っ白で、やわらかいはずのもの。   なのに、 なぜか冷たく見える。   母がそれに気づく。   ほんの一瞬だけ、手が止まる。   けれどすぐに、何事もなかったように笑った。   「風で入ったのかな」   そう言って、指先で摘む。   その動きが、少しだけぎこちない。   「捨てとくね」   軽く言って、ゴミ箱へ向かう。   その背中を、父が見ていた。   何も言わずに。   ただ、静かに。   「行ってくる」   玄関で、母が振り返る。   「いってらっしゃい」   莉央が笑う。   真央も軽く手を上げる。   怜央は、何も言わずに壁にもたれていた。   私は――   何も言えなかった。   言葉にすると、 引き止めてしまいそうだったから
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第15話 解けない 気配

 あの頃の私たちは、 どこまでも普通だった。   朝が来て、学校へ行って、 帰ってきて、同じ時間を過ごす。   それが当たり前で、 疑う理由なんてなかった。   「ねえ、今度さ」   莉央が言う。   「みんなでどこか行かない?」   軽い声。   真央が笑う。   「いいね。どこでも行くよ」   怜央は少し遅れて、 「まあ、いいんじゃね」と答えた。   いつもと同じ会話。   いつもと同じ距離。   何も変わらない、はずなのに。   「澪は?」   莉央が聞く。   「……どこでもいい」   そう答えると、 なぜか少しだけ静かになった。   ほんの一瞬だけ。   気のせいだと思った。   そういうことにした。   風が吹く。   白い羽が、ひとつだけ舞い上がる。   それは落ちずに、 空の中でほどけるように消えた。   「最近、多いね」   莉央が呟く。   「そうだな」   真央が軽く返す。   誰も、深く考えない。   ただの風景として、 そこにあるものとして。   でも。   私は、その羽から目を離せなかった。   なぜか、 見ていないといけない気がした。   理由は、分からない。   ただ、 何かが少しずつ、 ずれている気がした。   「澪」   名前を呼ばれる。   振り返ると、 少し離れた場所に、まひろが立っていた。   いつの間にいたのか、 分からなかった。   「……なに」   そう聞くと、 まひろは少しだけ笑った。   「いや」   軽い声。   でも、目はまっすぐだった。   「間に合うかなって思って」   「……何が?」   聞き返すと、 まひろは少しだけ首を傾げる。   「さあ」   そう言って、 視線を空へ向けた。   白い羽が、またひとつ舞う。   「選ぶの、遅い人いるじゃないですか」   ぽつりと落ちる言葉。   「気づいたときには、もう遅いってやつ」   軽い口調。   なのに、 妙に耳に残る。   「……意味わかんない」   そう返すと、 まひろは少しだけ笑った。   「そうっすよね」   それ以上は何も言わない。   ただ、 こちらを一度だけ見て、   「まあ、まだ大丈夫か」
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第16話 届かない声

 最初は、ほんの小さな違和感だった。   「……まだ、連絡ない?」   莉央の声に、首を振る。   昨日の夜に送ったメッセージは、 既読がつかないまま止まっていた。   ――すぐ帰るよ。   そう言って出ていったのに。   「電波悪いのかな」   莉央が言う。   自分に言い聞かせるみたいな声だった。   「山だし」   私も同じように返す。   理由を探す。 納得できる形にする。   それが一番、楽だった。   「電話してみる?」   「もうした」   短く答える。   呼び出し音だけが続いて、 最後まで繋がらなかった。   「……そっか」   莉央はそれ以上何も言わない。   沈黙が、少しだけ長くなる。   「大丈夫だよ」   真央が言う。   「ちょっと長引いてるだけでしょ」   軽い口調。   でも、その言葉に少しだけ救われる。   「そうだな」   怜央も短く頷く。   「連絡取れないくらいで騒ぎすぎ」   いつも通りの言い方。   少しだけ、安心する。   ――大丈夫。   そう思うことにする。   それでいい。   そのはずだった。   風が吹く。   カーテンが揺れる。   窓は閉まっているのに、 どこからか冷たい空気が入り込む。   「……寒くない?」   莉央が腕をさする。   「気のせい」   そう言いながら、 自分の腕にも鳥肌が立っているのに気づく。   理由は、分からない。   ただ、 何かが少しずつ、 ずれている気がした。   机の上に、白いものがあった。   「……また」   小さく呟く。   白い羽。   昨日も見た。 その前も。   回数が、増えている。   「こんなにあったっけ」   莉央が手を伸ばす。   「触らないほうがいい」   思わず、声が出た。   自分でも驚くくらい強い声だった。   「……澪?」   莉央が少しだけ戸惑う。   「ごめん」   すぐに言い直す。   理由は、説明できない。   ただ、 触れてはいけない気がした。   なぜかは、分からない。   「変だよね、最近」   莉央が小さく言う。   「羽もそうだし……なんか、空気も」   その言葉に、何も返せなかっ
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第17話 静かすぎる日

音が、少ない。   朝からずっと、そう感じていた。   窓を開けても、風の音しかしない。 鳥の声も、遠くの車の音も、どこか薄い。   「……こんなだっけ」   小さく呟く。   答えは返ってこない。   当然だ。 ただの独り言。   けれど、 自分の声だけが妙に浮いて聞こえた。   リビングに降りると、 莉央がソファに座っていた。   スマホを見つめたまま、動かない。   「……連絡、きた?」   聞くと、 ゆっくり首を振る。   「既読もつかない」   それだけ。   声が少しだけかすれている。   「もう一回かけてみたら」   「……さっき、かけた」   短く答える。   同じやり取り。   昨日もした。   さっきもした。   何も変わらないまま、 繰り返している。   「……おかしいよね」   莉央が呟く。   「うん」   否定しなかった。   もう、できなかった。   昨日までは、 “たまたま”だと思えた。   でも、 今日になって、 その言い訳は薄くなっていた。   「ちょっと調べてみる」   スマホを取り出す。   村の名前を入力する。   表示された記事は、 どれも古いものばかりだった。   観光情報。 昔話。 曖昧な記録。   「……あれ」   指が止まる。   ひとつだけ、 少し違う記事があった。   “行方不明者の記録”   クリックする。   ページは、すぐに消えた。   「……え?」   もう一度開こうとする。   出てこない。   検索結果からも、消えている。   「何それ」   莉央がのぞき込む。   「今、あったのに」   「バグじゃない?」   軽く言う。   でも、 その声に少しだけ揺れがあった。   「……そう、かもね」   そう答えながら、 納得はしていなかった。   画面を閉じる。   指先が、少し冷たい。   「澪」   莉央が呼ぶ。   「なに」   振り返ると、   「窓……開いてた?」   と言う。   視線の先を見る。   窓が、少しだけ開いている。   さっきは閉めたはずだった。   「……風で?」   自分で言って、 違うと分かる。   そんな強い
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第18話 外の気配

外に出れば、何か分かると思った。   部屋の中だけがおかしい。   そういうことにしたかった。   「ちょっと、外行ってくる」   靴を履きながら言うと、 莉央が顔を上げた。   「一人で?」   「すぐ戻る」   それだけ言って、ドアを開ける。   外の空気は、 思ったよりも普通だった。   空は晴れている。 風もある。   人も、いる。   「……ほら」   小さく息をつく。   考えすぎだ。   そう思いかけた、そのとき。   通り過ぎる人の声が、妙に遠かった。   口は動いているのに、 言葉がうまく聞こえない。   音だけが、少し遅れて届く。   「……え」   足を止める。   周りを見る。   誰も気にしていない。   普通に歩いている。   笑っている。   なのに、   その“普通”だけが、 どこか薄く見えた。   色が、少しだけ足りない。   そんな感じだった。   「澪さん」   名前を呼ばれる。   振り返ると、 まひろが立っていた。   いつの間にいたのか、 分からない距離。   「……何」   少しだけ警戒する。   まひろは、いつも通りの顔で笑った。   「外、出たんですね」   「それが何」   「どうです?」   軽い口調。   でも、 問いの意味が分からない。   「何が」   そう返すと、 まひろは少しだけ首を傾げる。   「違和感、ないですか」   その言葉に、 息が止まる。   「……あるけど」   認めてしまった。   もう隠せなかった。   まひろは、小さく頷く。   「ですよね」   それだけ。   驚きもしない。   当然みたいに。   「何なのこれ」   思わず聞く。   答えを求めるみたいに。   まひろは少しだけ空を見る。   白い羽が、 ひとつ、ゆっくりと落ちてくる。   それを目で追いながら、   「まだ、外なんですよ」   ぽつりと言う。   「……は?」   意味が分からない。   「境目って、だいたい気づかないで越えるんです」   続ける。   「気づいたときには、もう戻れない位置にいる」   その言い方が、 やけに静かだった。   「戻れるでしょ
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第19話 認めたくないこと

 戻った瞬間、分かった。   さっきまでとは、違う。   空気が、重い。   ただの部屋のはずなのに、 呼吸が少しだけ浅くなる。   「……莉央?」   名前を呼ぶ。   返事がない。   リビングへ足を進める。   床に、白いものが散らばっていた。   羽だった。   数えられないくらい。   「……なんで」   声が、うまく出ない。   踏み込む。   羽が、かすかに沈む。   まるで雪みたいに。   「澪……?」   奥から声がする。   莉央だった。   ソファの近くで立ち尽くしている。   顔色が、少しだけ白い。   「見てたの?」   聞くと、ゆっくり頷く。   「増えたの、急に」   それだけ。   声が震えている。   「さっきまで、こんなになかったよね」   「なかった」   即答だった。   迷いがない分、 余計に現実味が増す。   「……全部、外から入ったのかな」   無理に理由を探す。   でも、   窓は閉まっている。   鍵も、かかっている。   「澪」   莉央が、少しだけ近づいてくる。   「これ……触っても大丈夫かな」   足元を見る。   白い羽。   ひとつ、手を伸ばす。   「やめて」   強く言ってしまった。   自分でも驚くくらいの声。   莉央が、びくっと肩を震わせる。   「……ごめん」   すぐに謝る。   でも、 止めた理由は分からない。   ただ、   触れたら、戻れなくなる気がした。   その感覚だけが、はっきりしていた。   「……ねえ」   莉央が、小さく言う。   「これ、普通じゃないよね」   その言葉に、   何も返せなかった。   返せなかった時点で、 答えは出ていた。   普通じゃない。   もう、とっくに。   「……うん」   やっと、それだけ言う。   声が、少しだけかすれる。   「どうする?」   莉央が聞く。   その問いは、 思ったよりも重かった。   どうする。   何を。   どこから。   分からないことばかりなのに、   選ばなければいけない気がした。   「……怜央たち呼ぶ」   それが一番現実的だった。   ひとりじゃ
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第20話 影の形

 影は、確かにそこにあった。   廊下の奥。 光の届かない場所に、濃く沈んでいる。   ただの暗がり―― そう言い切れればよかった。   でも、   それは“形”を持っていた。   「……誰?」   もう一度、声をかける。   喉が、少しだけ乾く。   返事はない。   代わりに、 羽がひとつ、ふわりと浮かび上がった。   落ちない。   空気に溶けるみたいに、 その場で揺れている。   「澪……やめよ」   莉央が袖を引く。   その手が、震えている。   「近づかないほうがいい」   そう言われて、 足が止まる。   でも、   視線は外せなかった。   見てはいけないものほど、 目が離せなくなる。   「……あれ」   小さく呟く。   影の中に、 何かが混ざっている。   白いもの。   羽じゃない。   もっと細い、 線のような――   「……髪?」   言葉にした瞬間、   影が、わずかに揺れた。   まるで、 気づかれたことに反応するみたいに。   「っ……」   息を飲む。   莉央の指が、 ぎゅっと強くなる。   「澪、戻ろ」   小さな声。   でも、   その言葉は、届かなかった。   影の奥で、 何かがゆっくりと持ち上がる。   形が、変わる。   人のように。   でも、   どこか歪んでいる。   輪郭が、はっきりしない。   顔が、見えない。   「……来る」   誰の声か分からなかった。   ただ、   そう思った瞬間、   影が、一歩、前に出た。   音はしない。   床も軋まない。   なのに、   距離だけが、確実に縮まる。   「澪!」   莉央が引く。   その力で、ようやく体が動く。   後ろへ下がる。   心臓の音が、やけに大きい。   「何なのこれ……」   言葉にすると、 余計に現実になる。   影が、また一歩進む。   そのたびに、 周りの羽が浮かび上がる。   集まる。   まとわりつく。   まるで、 それを形作っているみたいに。   「……やめて」   思わず言う。   何に対してかも分からないまま。   そのとき。   「それ以上、近づかない
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