莉央は、昔から人に好かれる。 それは顔が同じだからじゃない。 たぶん――近づいた人の“温度”を、少しだけ上げることができるからだ。 大学の中庭。 昼休みのざわめきの中で、莉央は自然と輪の中心にいた。 「それでね、その教授がさ――」 楽しそうに話す声。 周りも笑っている。 私は少し離れた場所から、それを見ていた。 昔から、そうだ。 私は外側で、莉央は内側。 「澪さん!」 呼ばれて、顔を上げる。 真央だった。 手を振りながら、こちらへ歩いてくる。 「こっち来ないんすか?」 「いい。そっちでやってて」 軽く返すと、真央は少しだけ困った顔をした。 「いや、でも……莉央も呼んでるし」 視線の先を見る。 莉央がこちらに気づいて、小さく手を振っていた。 ――ああ、ほんとに。 そういうところだ。 「……わかった」 立ち上がると、真央がほっとしたように笑う。 その表情が、少しだけ無防備で。 不意に、胸の奥がざわつく。 「どうかしました?」 「別に」 すぐに視線を逸らす。 気のせいだと思った。 たぶん、この距離のせいだ。 近くで見ると、少しだけ印象が変わる。 それだけ。 「澪、こっち!」 莉央の声に呼ばれて、輪の中に入る。 自然とスペースが空く。 それが当たり前みたいに。 「ちょうどよかった。今ね、真央くんが――」 「やめてよ、恥ずかしいから」 莉央の言葉を遮って、真央が笑う。 そのやり取りが、やけに自然で。 ――ああ、と思う。 この二人は、きっと。 「ほら、澪も何か話して」 「急に振るな」 軽く返しながら、二人を見る。 視線が、ほんの一瞬だけ重なる。 そのとき。 真央が、少しだけ照れたように笑った。 「……なんすか」 「いや、別に」 また同じやり取り。 なのに、さっきとは少しだけ違う。 自分の中で、何かが引っかかったまま、ほどけない。 「澪?」 莉央の声に、はっとする。 「何でもない」 そう言って、いつもの顔を作る。 強くて、平気で、何も抱えていないみたいな顔。
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-05-01 อ่านเพิ่มเติม