彼女は歩み寄ると私を抱きしめ、いじらしい声で言った。「美希、随分と痩せたわね」私は苦笑しながら理恵を押し返し、からかうように返した。「もともと太ってなんていないわよ?」法律事務所を出たあと、私はあてもなく街をぶらついた。偶然なのか、それとも浩は私をコントロールしやすいと考えているのか。顔を上げると、少し先に浩と瞳の姿があった。二人の会話が、はっきりと耳に入ってくる。「もうこれ以上、美希に連絡するのはやめろ。俺は離婚なんてする気はない!」「浩、あなたのことが大好きだから、こうするのよ」「計画がバレたんだ。子供はおろしてくれ。俺はその子を残すつもりはないんだ。美希を傷つけるわけにはいかない」言い争う二人を眺め、私は口元をゆがめた。ほら、言ったでしょ。きっぱり関係を断てるはずがないのだ。結局、浩は私を放っておいても帰ってくるチョロい存在だと甘く見ている。愛を語る浩の姿を見て、急に笑いが込み上げてきた。浩の口から出る「愛」なんて、所詮その程度の安物だ。二人を視界から消すと、私は背を向けて家路についた。浩の帰りも早かった。私が家に着くと、彼はすでにソファに座っていた。「美希。遅かったね、家で退屈しちゃったよ!」スマホをいじりながらいい加減な返事をする浩に、私は持参した書類を突きつけた。「新しいプロジェクトの話があるの。署名して」中身も見ず、ペンを受け取った浩は流れるように署名した。「ああ、いいよ。お前のやりたいことは全部サポートするからさ」私が口を開く前に、浩のスマホが鳴り響く。ためらうような浩の視線に、私は殊勝なふりをして促した。「出たら?急用かもしれないでしょ」浩は促されるように、電話に出た。「なんだって?瞳、自決するって言ってるのか!?今どこだ?待っていろ、すぐに行く!」電話を切った浩に、私は先手を打って告げた。「杉本さん、近くに友達なんていないでしょ。元上司として行くのは当然よ。急いで、時間がないんでしょ?」私の言葉に感謝の眼差しを向けると、浩は慌ただしく服を掴んで飛び出していった。それと入れ違いに、私は自分の荷物をまとめ始めた。浩から貰ったものを、ゴミ箱へ。浩に繋がるあらゆる痕跡は、処分する。一通り終えてみて、気づけばここに住んで10年も経つのに、持ってい
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