不安を抱えたまま、当日を迎えた。 朝から、メイド数人がかりで準備をさせられている。お父様の命令だった。 ドレスもお父様が選んだ。リボンやレースも使われていないスッキリとしたデザインだが、光沢のあるシャンパンゴールドの生地が、それだけで美しい。胸元や腰のあたりにドレープがあり、華やかさも感じられた。 アーティファクトは指輪と腕輪なので、手袋の下につけられる。 ウーテから「ツェーザル殿には内緒にしてほしい」と言って渡されたネックレスがある。小さな透明の石がキラキラと輝くデザインで、ちょうど、今日のドレスに合っていた。 ウーテがこのネックレスの存在をツェーザルに秘密にした理由は、生活魔法とそう変わらない魔力で、弱めの攻撃魔法を連続で打ち続けるアーティファクトだからだ。 わたくしも、マクシミリアンを相手に、攻撃魔法を使う気はない。ただ、身につけるだけで、いくらか心を強く保てる気がしていた。 皇室から迎えの馬車が来た。 一度目の人生で、何度となく使った純白の馬車だ。これだけ準備をしても、不安しかなかった。 時間は残酷なもので、すぐに皇太子宮に到着した。 馬車から降りながら、白亜の大理石で建てられた宮殿を、わたくしは憂鬱な面持ちで見上げた。 建国当時の皇室の力を象徴する、巨大で美しい宮殿だ。 執事長が、迎えに出て来た。マクシミリアンは、また何かと理由をつけてわたくしを待たせたあげく帰るころに現れて、上辺だけの謝罪をするつもりなのだろう。 わたくしにとっても、顔を合わせる時間が短い方がありがたい。 そう思ったのに、通された応接室には、マクシミリアンの姿があった。 「アナスタシア嬢、どうしたのだ?」 わたくしは驚きのあまり挨拶が遅れてしまった。慌てて、皇太子に向けての最上のお辞儀をした。 「私が、この場にいないと思っていたのだろう?」 細めた瞼の隙間から、真っ赤な瞳が覗いている。 「そのようなことは……」と、否定した。 「そなたには訊ねたいことがたくさんある故、こうして待っていたのだ」 わたくしは促され、精巧な象嵌が施された肘掛け椅子に腰掛けた。 皇室を象徴する、白と金で統一された空間から、逃げ出したい衝動に駆られていた。 皇太子妃としてここに住んでいたころ、この応接室を幾度となく使った。白
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