ツェーザルが帰ったあとも、わたくしは結局眠れなかった。ツェーザルの表情や声を思い出しただけで胸が高鳴ってしまう。 しかし、名前を呟いてしまうと、またツェーザルを呼び出すことになる。気をつけなければならない。 今日は、ウーテとの約束があった。 ウーテには、魔法についていろいろ訊きたいことがある。 帝都でも有名なケーキ店に行く約束になっている。いつもよりリボンのついた可愛らしいデザインの服を選んだ。気づいてもらえる程度に顔の隠れる帽子も用意した。密会を演出するためだ。 お兄様の選んだ騎士をひとり、護衛として連れて行く。公爵家の馬車が屋敷の外で待っていたので、一緒に乗り込んだ。 一目で、ローゼンフェルト家の騎士とわかる濃紺の騎士服を着ている。マントには聖杯を模したローゼンフェルトの紋章が刺繍されている。 護衛は焼きたてのパンのような髪色をしている。顔が幼く見えるがお兄様が選んだのだから腕はたつはずだ。 真面目な性格なのがすぐわかった。常に周囲に気を配り、護衛の役目を果たそうとしているのが見て取れる。ベイゼルが公爵家の騎士団に入ったときには、教育係を任せられそうだ。 「お名前をお伺いしても?」「ジェラルド卿から名乗らぬよう言われています」 お兄様も騎士団に所属しているから、上司と部下になるのかもしれない。「なぜですか?」「アナスタシア様から名前を尋ねられたからといって決して勘違いするなと念を押されました」 わたくしは、呆れてしまった。 「お兄様が失礼なことを言ったようで、ごめんなさいね。お兄様との関係もあるでしょうから、これ以上は訊きませんわ。今日は、よろしくお願いいたします。騎士様」 護衛騎士の頬がほんのり赤くなった。「はい、しっかりと護衛を務めます。とくにとある方が来た時には命に変えてもお守りするようにと仰せつかっております」
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