3日後、凜のもとに一通の宅配便が届いた。封筒はひどく薄い。開封すると、中から一枚のブラックカードが滑り落ちた。あの日、彼が一夏に手渡したものだ。凜はカードを手に取り、長い間見つめていた。それからスマホを取り出し、銀行へ電話をかけた。「このカードの利用履歴を調べてくれ」「......こちらのカードには最近の利用履歴は一切ございません」凜は電話を切った。彼女は一銭も使っていなかった。試すことすら、しなかった。彼はオフィスチェアに深く腰掛け、窓外のどんよりとした空を眺めた。急に、言いようのない苛立ちが込み上げてきた。だが、彼は何もせず、ただ車のキーを掴むと、再びあの古い家へと向かった。今回は階段を上がらなかった。そのまま管理事務所へ行き、責任者に告げた。「302号室を、買い戻したい」責任者は困惑した表情を浮かべた。「伊礼様、あの部屋は昨日名義変更が終わったばかりでして......」「十倍出す」責任者は言葉を失った。30分後、契約書が凜の前に置かれた。彼は署名し、鍵を受け取った。再びあのドアを開けた時、部屋の中はすでにもぬけの殻だった。あの若いカップルは立ち去り、一夏が残していった物もすべて片付けられていた。部屋は磨き上げられたように清潔で、まるで最初から誰も住んでいなかったかのようだった。凜は中へ入り、リビングの中央に立った。窓から差し込む陽光が、床の上に四角い光の斑点を落としている。さまざまな記憶が、濁流のように押し寄せた。3年前、ここに引っ越してきた日のことを思い出した。狭くて古く、壁紙も剥がれかけていた。それなのに一夏は、はしゃいで彼の手を掴んで言ったのだ。「凜、ここが、私たちの家だよ!」その夜、二人は床に直接寝そべり、あの古い毛布を被った。彼女は彼の胸の中で丸くなり、小さな声で囁いた。「これからの生活が、もっと良くなりますように」「ああ、きっとな」その後、生活は本当にどんどん良くなっていった。初めてまとまった金を手にした時、彼は彼女をもっと良い場所へ連れて行こうとした。けれど彼女は首を振った。「ここがいいの。ここには、私たちの思い出がたくさん詰まっているから」彼は彼女をバカだと言って笑ったが、結局は彼女
続きを読む