木村大輔(きむら だいすけ)と結婚して2年、彼は元カノを家に連れてきて、一緒に暮らすと言い出した。周りの友達は、あの遊び人も昔の縁を大事にできるんだね、なんて言ってるけど。「大輔、ちゃんと説明してくれるよね」二人の仲睦まじい写真を突きつけながら問い詰めたけど、私の声は情けないくらい小さかった。大輔は、鼻で笑った。「美穗(みほ)。人の男を奪う手口なんて、君がいちばん詳しいだろ?」他人の男を奪う女、ね。私が大輔と付き合うようになってから、彼の元カノは私のことを周りの人にそう言って回っていた。しかし、大輔はそんな噂が立つたびに、何度も繰り返して周りの人に、それは違うと説明してくれていた。そして、私の前では、まるで暗黙の了解のように、その言葉を口にすることは絶対に無かった。私と大輔の出会いは、オンラインゲームだった。驚いたことに、お互いは同じ大学の、同じ学部だと分かった。まあ、大輔の方が二つ先輩だったけどね。どの授業が楽だとか、あの先生は面白いとか、キャンパスにいる猫のこととか、いろんな話をした。【ふふっ、葛城先生って相変わらず面白いんだな】【そうそう!昔、教室にハトが飛び込んできたことがあって、その時の葛城先生、なんと素手で捕まえようとしたんだから!】そんな他愛もないやりとりを毎日続けるうちに、私たちの距離感はどんどん縮まっていった。ある日のこと。図書館を出たら、近くの広場に猫が何匹、気持ちよさそうに寝そべっていた。私は急いでそれをカメラに収めて、何気なく写真を大輔に送っていた。【ねえ、猫が全部で何匹いるか当ててみて!】その時、私はふと気づいたんだ。私たちは、他愛のない日常の瞬間を、もう数えきれないくらい共有してるんだって。大輔が写真の猫の数を数えているとき、柔らかな風が通り過ぎて、さわやかな草の香りがした。少しだけ間が空いて、私たちはほとんど同時にメッセージを送信した。【一回、会ってみない?】この1か月のうちに、ゲーム仲間だった私たちは、いつの間にか恋人になった。ある日、いい雰囲気になって、私はある冗談をふざけて大輔に聞かせた。「大人は回りくどいことはしないで、積極的にアピールしなきゃ。時には猫みたいに賢く、時には雨に濡れた子犬みたいにかわいらしく、ってね」
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