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第2話

Penulis: ちょうどいい
私が別れを切り出した時、大輔はようやく、すべての真相を打ち明けた。

「1か月前、俺たちは喧嘩の真っ最中だった。

あの晩は気分が落ち込んでてさ。たまたまゲームを開いたら、君とマッチングしたんだ。

君は面白かったから、いい暇つぶしになるって、そう思ってた」

そう言うと大輔は、私をいきなり抱きしめた。

「美穗、昨日の夜、元カノとはきっぱり別れたんだ。

これで、俺は正真正銘、君だけのものだ」

昨日の夜のことを思い出して、思わずシーツを握りしめ、吐き気をこらえた。

「彼女と別れたその日の夜に、すぐ私のところに来たってこと?」

それから、私は大輔と別れるために、一方的に彼との距離を取り始めた。

別れを告げても、大輔は毎日のように、飽きもせず連絡してきた。

最初のうちは着信を拒否し続けたけれど、だんだん無視できなくなっていった。

短い挨拶から始まり、それが数分間になって、私たちは再び話すようになった。

そんな関係が、しばらく続いた。

また、雨の降る夜だった。大輔が私の部屋のドアをノックした。

かつてと同じ光景の中で、大輔の目は、充血していた。

「美穗、君と別れたくない」

大輔を受け入れると決めた日、私は近くの公園で一晩、ただ座っていた。

夜空の星が、だんだんと姿を消していって、雲の隙間から朝日が差し込んできくるのを静かに眺めた。

私は、大輔を許したのだ。

私はズルい人間だ。私は、大輔と一緒になることだけ考えた。

大輔との未来を、どうしても手に入れたかったんだ。

……

そんな昔のことを思い出しながら、私は震える声で言った。

「あの時、あなたは言ったわよね。仮に私と出会わなくても、元カノとは別れるつもりだったって」

大輔はタバコに火をつけ、指の間に挟んだ。

白い煙が、ゆらゆらと立ち上る。

「美穗、他人を騙すのは勝手だけどさ」

大輔は低く笑った。「まさか、自分まで騙そうとしてるわけじゃないよな?」

大輔は、私をじっと見つめた。

「なんだよ。俺に近づこうとしてた時のこと、もう忘れちまったのか?

思い出させてやろうか?」

大輔は立ち上がり、静かに私を見下ろした。

「日常の出来事を語り合ったり?親が亡くなった辛い過去とか、昔の酷い恋愛経験を打ち明けたりとか?

美穗、そんな手口、見抜けないとでも思ったか」

大輔は身をかがめ、その両腕で、私を強く抱きしめた。

「ただ、あの時は、そんなふうに男を惑わそうとする君が、可愛いって思っちまったんだよ」

同じ文句を、彼といちゃつく時にも、喧嘩の最中にも、聞いたことがあった。

そして私が大輔を怒らせた時は、甘えながら許しを請うと、彼はいつも仕方なさそうに折れるのだ。

「もう、君にはかなわないな」

私は目の前の男を見つめた。

喉を締め付けられているみたいに、息が苦しかった。

奥歯を噛みしめて、唇が震えていた。

そしてやっと、私は自分の声を取り戻した。

「大輔、でも、私たちはもう結婚してるのよ」

大輔は目を伏せ、感情の読めない声で言った。

「美穗、これは俺たちが、凛にしたことへの償いなんだ。

返さなくちゃいけないんだよ」

……

陣内凛(じんない りん)が家に来た時、ひどく顔色が悪かった。

大輔と別れてから、凛は食欲はなく、眠れない日々が続き、うつ病だと診断されたらしい。

大輔は、自分を責め続けた。

彼が凛のそばに屈み込み、辛そうな顔で彼女を見つめる姿を、私は何度も目にした。

凛はいつも、彼の髪を優しく撫でながら、穏やかな声で言った。

「大丈夫よ。

もう、ずいぶん元気になったから」

「こんなことになるって分かってたら、あの時、俺は……」大輔は言葉を濁した。

私は背を向けて、キッチンへ向かった。

なにも、私に隠す必要なんてないのに。

この2年間、大輔が深夜にこっそり電話をしていたことなんて、とっくに気づいている。

私たちが付き合い始めた最初の年。

毎晩、夜中になると、決まって彼の電話が鳴っていた。

大輔は、最初のうちは電話を切っていた。

しかしある時から、彼に長文のメッセージが届くようになった。

差出人は、凛という女性の名前だった。

凛は大輔を許せなかった。

お互いに距離を置いてみると決めた途中、大輔が心変わりしたこと、そして、私が大輔と一線を超えたことを恨んだ。

私たちを、浮気と裏切りだと非難した。

「大輔、本気で愛しているのは私だけだって言ったじゃない!

今は一体、なにをしてるの?どうして、そんなことができるのよ!」

大輔は、彼女の話に耳を貸さなかった。

しかし、凛が泣きじゃくりながら何度も彼を問い詰めるようになってからは、大輔の態度が変わった。

大輔は私をちらりと見ると、慣れた手つきで私を抱き寄せた。

「美穗、余計なこと考えるなよ。

凛も辛いんだ。

これで最後にするから」

そして私の目の前で、スマホを取り出して、凛を慰め、彼女のメッセージに応えるのだ。

大輔は凛の喜怒哀楽に、丁寧に優しく対応した。

しかしすぐそばにいる私の心は、どんなに苦しくなっても、気づいてもらえなかった。

やがて、二人のやり取りは当たり前の日常の一部となった。

夜中から明け方まで、大輔はまるで、私と結婚していることを忘れたようだった。

どんな日も、凛との連絡を欠かすことはなかった。

残業で遅くなった日ですら、決まった時間に同じ番号に電話をかける。

凛と一緒に映画を見て、楽しそうにゲームをやる。

毎日のできごとを語り合い、他愛もない話をする。

そんな二人を見て、既視感を覚えないわけにはいかなかった。
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