御堂宗介(みどう そうすけ)が私をこのタワーマンションの最上階に押し込んだ時、彼はただ一言だけ言い放った。「大人しくしていろ」ドアを乱暴に閉めて出て行く彼の背中を見送った後、私はきびすを返してパソコンを立ち上げた。【新作連載開始『飼われ籠の鳥の心得』】プロの小説家として、たとえ飼われようとも、常にプロ意識を保たなければならない。傲慢CEOの決め台詞?小説のネタにする。セレブ一族のドロドロの人間関係?小説のネタにする。ドラ息子たちの日常的な嫌味?小説のネタにする。宗介は、大金をはたいて美しい「籠の鳥」を飼ったつもりでいる。だが彼は知らない。自分が24時間体制で最前線に立つルポライターを雇い入れてしまったということを。……ホテルのような高級感あふれる内装に、控えめだが高価な調度品の数々。このマンションは、宗介の「傲慢CEO」という肩書きに全く恥じないものだった。そして、この高級な鳥かごに飼われることになった囲われ女本人である私は、ここに入居した初日で素早く間取りを把握した。広さ三百平米のワンフロア。キッチン、バスルーム、書斎、そして広大なベッドルームが完備されている。最も特筆すべきは、宗介がご丁寧にすべての部屋の隅に監視カメラを設置していることだ。「柚木さん、社長からこちらを遵守するようにとのことです」宗介の秘書が私にリストを差し出した。礼儀正しく受け取ったものの、そこにびっしりと書かれた条項を見て、私はすぐに頭が痛くなった。【マンション入居規則】【一、夜十時以降はマンション内に滞在すること】【二、外出時は事前に報告すること】【三、携帯電話は常に通じる状態にし、いつでも電話に出ること】【四、マンションに何人も連れ込まないこと】【……】【二十五、見知らぬ男と口を利かないこと】【甲 御堂宗介】【乙 柚木紬(ゆずき つむぎ)】【乙が上記条項のいずれかに違反した場合、その結果は自ら負うものとする】ルール系ホラーの契約書バージョンだろうか。なかなか面白い。私は素直に頷いて承諾し、振り返るやいなやスマートフォンを取り出してリストの内容を撮影し、ネタ帳のフォルダに保存した。なんて素晴らしいネタだろう。私は心の中で感嘆した。秘書が私の署名を最後まで見届
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