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飼われ籠の鳥の心得
飼われ籠の鳥の心得
Auteur: 桜の道

第1話

Auteur: 桜の道
御堂宗介(みどう そうすけ)が私をこのタワーマンションの最上階に押し込んだ時、彼はただ一言だけ言い放った。

「大人しくしていろ」

ドアを乱暴に閉めて出て行く彼の背中を見送った後、私はきびすを返してパソコンを立ち上げた。

【新作連載開始『飼われ籠の鳥の心得』】

プロの小説家として、たとえ飼われようとも、常にプロ意識を保たなければならない。

傲慢CEOの決め台詞?小説のネタにする。

セレブ一族のドロドロの人間関係?小説のネタにする。

ドラ息子たちの日常的な嫌味?小説のネタにする。

宗介は、大金をはたいて美しい「籠の鳥」を飼ったつもりでいる。

だが彼は知らない。自分が24時間体制で最前線に立つルポライターを雇い入れてしまったということを。

……

ホテルのような高級感あふれる内装に、控えめだが高価な調度品の数々。

このマンションは、宗介の「傲慢CEO」という肩書きに全く恥じないものだった。

そして、この高級な鳥かごに飼われることになった囲われ女本人である私は、ここに入居した初日で素早く間取りを把握した。

広さ三百平米のワンフロア。キッチン、バスルーム、書斎、そして広大なベッドルームが完備されている。

最も特筆すべきは、宗介がご丁寧にすべての部屋の隅に監視カメラを設置していることだ。

「柚木さん、社長からこちらを遵守するようにとのことです」

宗介の秘書が私にリストを差し出した。

礼儀正しく受け取ったものの、そこにびっしりと書かれた条項を見て、私はすぐに頭が痛くなった。

【マンション入居規則】

【一、夜十時以降はマンション内に滞在すること】

【二、外出時は事前に報告すること】

【三、携帯電話は常に通じる状態にし、いつでも電話に出ること】

【四、マンションに何人も連れ込まないこと】

【……】

【二十五、見知らぬ男と口を利かないこと】

【甲 御堂宗介】

【乙 柚木紬(ゆずき つむぎ)】

【乙が上記条項のいずれかに違反した場合、その結果は自ら負うものとする】

ルール系ホラーの契約書バージョンだろうか。

なかなか面白い。

私は素直に頷いて承諾し、振り返るやいなやスマートフォンを取り出してリストの内容を撮影し、ネタ帳のフォルダに保存した。

なんて素晴らしいネタだろう。

私は心の中で感嘆した。

秘書が私の署名を最後まで見届けるのを見て、私は好奇心から尋ねた。

「秘書さん、ここには以前誰か住んでいたんですか?」

「いいえ、柚木さんが初めてです」

秘書は礼儀正しく微笑んだ。

「じゃあ、このマンションは建ってから長いんですか?」

「それなりに経っております」

なんて中身のない会話だろう。

私は愛想笑いを浮かべ、きっちりとした足取りで帰っていく秘書を見送った。

その後、猛スピードでパソコンを開いてタイピングを始めた。

こんなに新鮮なインスピレーションを無駄にするわけにはいかない。

もうすぐ夜の八時になろうとしているのを見て、私は執筆の手を止め、規則に従ってダイニングに向かった。

【十、甲が帰宅しないと明言しない限り、夕食は共にすること】

今夜、宗介は明らかにここへ来るつもりだ。

私はダイニングテーブルに並べられた十五品もの料理を見つめ、宗介のCEOとしての生活がこれほどまでに贅沢なのだと感慨にふけった。

もちろん、記録は欠かせない。

スマートフォンのフラッシュを焚き、綺麗に盛り付けられた高級料理の数々を写真に収めた。

「何をしている?」

背後から宗介の声が聞こえ、私は手慣れた手つきで写真をネタ帳に転送してから、笑顔を作って振り向いた。

「あなたを待っていたの」

宗介は傲慢CEOの面目躍如といった様子で、私の媚びるような言葉には一切取り合わなかった。

「明日はオークションに付き合え」

宗介は腕時計を外しながら、さらにぞんざいな口調で言った。

「昨日届けさせた白いドレスを着てこい」

「わかったわ」

私は甘い笑顔を浮かべ、甲斐甲斐しく歩み寄って彼のネクタイを外しながら、心の中ではすでに新しいストーリーの展開を構想し始めていた。

「また何か企んでいるのか?」

宗介が私の顎を掴み、少し力を込めて持ち上げた。

不意に彼の冷たい瞳と視線がぶつかったが、私はプロ意識を全開にして口角を上げた。

「考えていたの……」

私はわざと、目が三日月になるほど満面の笑みを作った。

「宗介と一緒にオークションに行けるなんて、すごく嬉しいなって」

宗介は、引きつりそうになっている私の顔をじっと見つめ、冷笑して手を離した。

「そうであることを願うよ」

宗介は背を向け、書斎へと入っていった。

チェッ。

「宗介」

私は彼を呼び止め、彼が立ち止まって振り向いたところで、傍らのダイニングテーブルを指差した。

「ご飯、食べないの?」

「一人で食え」

宗介は躊躇いなくその言葉を投げ捨て、残された私一人は心の中で小躍りして喜んだ。

三つ星シェフが腕を振るった傑作を心ゆくまで堪能しながらも、私は自分の本業を忘れてはいなかった。

【傲慢CEOの疑心暗鬼の症状その十三、顎をクイッと持ち上げて見つめる】

【キャラクター設定の肉付けその七、ヤンデレ系。顎に触れる指先は少し冷たく、鳥肌が立ちやすい】

「何をしている?」

宗介が二度目の同じ質問をしてきたが、私は相変わらず手慣れた様子で画面を切り替え、彼に見せた。

「宗介の写真を見ていたの」

私の笑顔は甘く、その口角の上がり具合は完璧だった。

宗介はやはり何も気付かなかったようで、しばらく沈黙した後、突然尋ねてきた。

「来月はお前の誕生日だな。何が欲しい?」

そりゃあお金に決まっている。

私は喉まで出かかった答えをぐっと飲み込み、口元の笑みをさらに深め、目を輝かせた。

「宗介がくれるものなら、何でも嬉しい!」

自分でも感心してしまうほど、完璧な回答だった。

しかし、宗介はさすが傲慢CEOである。

彼の表情は一瞬で険しくなり、その後は一言も発さずに背を向け、書斎へと向かっていった。

はぁ。

私は軽くため息をつき、再びスマートフォンを取り出して、ネタ帳の一番上の項目を開いた。

【傲慢CEOの最も重要な特徴 気分屋であること】

手慣れた様子で一文字付け加え、私は満足げに頷いた。

【傲慢CEOの超最も重要な特徴 気分屋であること】

完璧に把握した。

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  • 飼われ籠の鳥の心得   第2話

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