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第2話

Author: 桜の道
今日のノルマである一万文字の執筆を終えた後、宗介が手配したメイクアップアーティストがマンションに到着した。

一時間以上かけてメイクを施した後、私は白いドレスを着て鏡の前に立った。

「天使のように美しいです」

メイクアップアーティストは惜しみなく賛辞を贈った。

彼女に微笑みかけた途端、メイクアップアーティストが恐る恐る探りを入れてくるのが聞こえた。

「今夜は、白鳥麗奈(しらとり れいな)様も出席されると伺っておりますが」

私はわざと不思議そうな顔でメイクアップアーティストを見つめ、腰のあたりのドレスの生地を撫でながら、手慣れた様子で話題を変えた。

「そうなんですか?

そういえば、先ほどこの服の素材は何だとおっしゃっていましたか?」

「シルクタフタでございます」

メイクアップアーティストは空気を読んで話を合わせた。

私は頷き、この高級ドレスの生地の名前をスムーズにネタ帳に追加しつつ、さらにメイクアップアーティストの知識量を試し続けた。

結果として、彼女のプロ意識は私に勝るとも劣らないことが証明された。

私はセレブのファッションに関する素材を心ゆくまで収集した。

そのおかげで、気分はとても晴れやかだった。

オークション会場に到着するまでは。

宗介の腕に絡みつく、赤いドレスの女を見るまでは。

「柚木さん。お噂はかねがね」

女は私より先に口を開き、その後、親しげな視線を宗介に向けた。

「私には全然似ていないわね」

私は深呼吸をした。これが彼の忘れられない初恋の相手である白鳥麗奈からの、最初の警告であることは痛いほどわかっていた。

「白鳥様と比べるなど、おこがましいです」

私は揉め事を避けることを選んだが、宗介からは不満げな視線を向けられた。

私のへりくだり方が足りないとお気に召さないのだろうか。

私が歯を食いしばり、お金のために何の価値もないプライドを捨て去ろうと決心したちょうどその時、オークショニアが壇上に上がった。

神様、ありがとう。

私は逸る気持ちを抑え、宗介の横に大人しく座り、麗奈のけたたましいおしゃべりを背景音にしながら、知識の吸収に集中した。

役に立つ情報が満載だ!

私の目はますます輝き、本日の目玉である出品物「オーシャン・タイド」が展示される頃には、私の学習意欲も最高潮に達していた。

「こちらは、ヨーロッパのある国の国王が王妃のために心を込めて作らせた……」

メモメモ。

「流線型のチェーンに沿ってメレダイヤが配置され……」

メモメモ。

「満ち引きを繰り返す潮のように、絶え間ない愛を象徴しており……」

メモメモ。

「スタート価格は、六億円からとなります」

オークショニアの声が落ちるや否や、すぐに値上げの声が響いた。

「欲しいのか?」

宗介が突然声をかけてきた。

私はネタの大収穫に興奮していた気持ちを鎮め、心にもない首の振り方をした。

「宗介、私のために無駄遣いしないで」

私は殊勝に答えた。

宗介は鼻で笑ったように見えたが、その後、パドルを高く掲げた。

「十六億」

先ほどまでの白熱した入札は瞬時に止み、オークショニアがハンマーを叩いた。

「お前にやる」

宗介の冷淡な一言で、私は涙ぐみながら頷いた。

しかし、麗奈の優しい声が絶妙なタイミングで響き、超高額なネックレスを手にするという私の甘い夢は打ち砕かれた。

「宗介、私、あれが欲しいわ」

なんて残酷な言葉だろう。私は心の中でため息をついたが、それでもお金のために一度だけ勇気を出すことにした。

そして、宗介が麗奈の方を見た隙に、私は彼の袖を引っ張り、声を和らげて言った。

「宗介、私、これが欲しいな。誕生日プレゼントとして、ダメかしら?」

宗介は沈黙し、麗奈の目は瞬時に涙でいっぱいになった。

「いいわ、柚木さんにあげてちょうだい」

しまった。

私は痛ましい思いで目を閉じ、再び目を開けると、案の定、宗介があっさりと前言を撤回する声が聞こえた。

「お前が持っていけ」

麗奈のために大金を投じた後、宗介は私を慰めるように手を伸ばし、私の髪を整えてくれた。

「少しは物分かり良くしろ」

【籠の鳥の心得その一、パトロンを困らせないこと】

そこで私は素直に頷き、爪が手のひらに深く食い込むのを感じながらも、彼の指示通りに出口のところで、彼が他の人との社交を終えるのを大人しく待った。

少しの間姿を消していた麗奈が、キラキラと輝くネックレスをつけて現れたのはその時だった。

「柚木さん」

彼女の笑顔は穏やかで、ダイヤモンドは照明を受けてまばゆい光を放っていた。

「賢明な方なら、早く宗介のそばから離れることね」

私が首を振るや否や、麗奈の顔に値踏みするような表情が浮かんだ。

「四億円。これで彼から離れて」

私は首を振った。

「六億円」

私は再び首を振った。

すると麗奈は痺れを切らし、キツイ口調で言った。

「いい度胸ね。後悔させてやるわ。

次も同じように突っぱねられるかしらね」

私は目を伏せて従順なフリをし、捨て台詞を吐いて颯爽と去っていく麗奈を黙って見送った。

固く握りしめていた拳をゆっくりと開く。

はぁ。

このお嬢様は市場相場をご存知ないようだ。乙である私が契約違反をした場合、違約金として十六億円も支払わなければならないのだ。

ネックレス一本分の価値しかないとはいえ。

私は深いため息をついた。

こういう金持ちの生活が羨ましい。

それから黙々とネタ帳を開き、彼女の捨て台詞を漏らさず静かに記録した。

なかなか良い。

今夜は収穫がなかったわけではない。少なくとも、山ほどの捨て台詞と大量のネタが手に入ったのだから。

私はもう一度ため息をつき、顔いっぱいに笑みを浮かべて、こちらへ歩いてくる宗介を出迎えた。

【籠の鳥の心得その二、パトロンには常に笑顔で接すること】

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