代わり映えのない日々が過ぎていく。 あれから半年。新しい出会いもなく、それを求めようともしていない。 自分自身が枯れているのではないかと感じてしまう。 今月の新刊の棚の前で小さく息を吐いて、柊真尋はワゴンに載せた本を平積みしていった。紙とインクの匂いが鼻をくすぐる。この匂いだけは、何年働いても飽きない。 真尋の勤めている「栞堂」は中規模の独立系書店で、駅前という好条件の立地にある。とはいえ、昨今の書店業界に余裕のある店など存在しない。売上は決して悪くないが、数字を見れば安泰とも言い切れなかった。 毎日毎日、何百冊という本が世に出ている。けれど、その運命を左右するのは最初の一週間と言っても過言ではない。それまでに売れなければ、その本はどんどんと隅に追いやられていく。 だから真尋はPOPに力を入れる。手書きの文字と短い紹介文で、通りすがりの客の目をとめること。それが書店員としての真尋にできる、数少ない仕事のひとつだった。 新刊を並べ終えてPOPを立てかける。指先がインクでわずかに汚れていた。 真尋自身もまるで、棚に埋もれた一冊のように感じることがある。 半年前、三年間付き合っていた高城響から「お前は重すぎる」という理由で別れを告げられた。悲しくて悔しくて、眠れない日々が続いた。 けれど人間というのは単純なもので、ひと月もすればすっかり元の生活に戻れた。朝起きて、本を並べて、POPを書いて、帰って寝る。そのくり返し。だが、心の中の傷はなかなか癒えない。自分の好意が重すぎるとわかってからは、それを抑え込むようになってしまった。 もちろん、響のことを忘れたわけではなかった。耳元で囁いてくれた愛の言葉、唇の感触、やさしい手つき。真尋の敏感なところを、強すぎず弱すぎない力で攻めてくれるのが好きだった。それを思い出しては自分で慰めた。 別れて半年も経っているのだから、そろそろ新しい出会いを求めないと。 そう思っているものの、響のことが忘れられずにいた。 今日も仕事を終えたら、あの味気ない1Kの部屋に帰
Last Updated : 2026-04-01 Read more