11月の販売ランキングが出て、俺はホッと胸を撫でおろした。なんだかんだで、3年連続のトップセールスの成績だ。勤続年数も実績も「従業員インセンティブ規定」で定められた報酬――30坪のマンションの贈呈条件を完全に満たしている。大きく深呼吸をしてから、大切にまとめてきた実績報告書と月別販売ランキング表、それに今月の分も持って、軽い足取りで上司である山口翔(やまぐち しょう)の部屋のドアを叩いた。部屋に入った途端、鼓動が激しくなり、俺は慎重に申請書類を翔のデスクへ置いた。「支店長、マンション贈呈の申請に来ました。こちらが3年間の実績報告書と、月別販売ランキング表です。ご確認をお願いします」俺は落ち着こうと、頭の中で言葉を噛みしめた。翔は目を細めて書類に目を通し、3分以上経ってからようやく顔を上げた。その後、何度も頷きながら、深いため息をついてまた書類を見始めた。翔の背後から差し込む日差しの中、俺は棒立ちのまま、どうしていいか分からずにいた。彼の忙しそうな様子に、俺は汗ばんだ手のひらを握りしめ、もう一度口を開いた。「支店長、マンション贈呈を申請したくて……こちらが必要書類です」俺の静かな声は湖に投げた石のように、重苦しい空気に飲み込まれてしまった。翔はこめかみを押さえ、顔を上げたまま面倒そうに言った。「誰だ?」「後藤勲(ごとう いさお)です」と正直に答えた。翔はため息をつくと資料を置き、横にあった金のフレームの眼鏡をかけ、俺を値踏みするように見た。「ああ、後藤か。営業部の不動のトップだな」彼は眉をひそめて資料をめくった。めくるたび、その顔が険しくなっていく。やがて資料を閉じ、横の湯のみを手に取った。普段の穏やかな態度はどこへやら、よそよそしく冷たい視線だった。「この規定はもう廃止されたぞ」翔は冷ややかな目で俺を見て、お茶をすすりながら口を開いた。「聞こえなかったのか?『従業員インセンティブ規定』の最新版では、この報酬規定は取り消されたんだよ」耳鳴りがして、俺は指先でシャツの裾をぎゅっと握った。唇を噛みしめ、スマホの「従業員インセンティブ規定」を開き、落ち着いて言い返した。「いいえ。社内ネットワーク上には何の告知もありません。規定に基づき、正当な権利を求めているだけです」翔は俺の言葉を馬
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