Lahat ng Kabanata ng 『息をするように浮気を繰り返す夫を捨てることにしました』─ 醒めない夢 ─: Kabanata 31 - Kabanata 40

53 Kabanata

31 ◇その場凌ぎ

  あれから私は一度も店に行ってないので、仲間友紀と夫の関係がどうなってるのか正直分からなかったし、もう分かりたくもなかった。 夫は別れると言ってたけれど、あれだ……やはり続いていたのか? ふたりの関係は。 そんなことを少しばかりもやもやっと考えていたら店に着いた。 軽食なんかがあって飲み物があって……みたいなどんなカテゴリに属しているのか良く分からない店だ。 やはり昔で言うところの喫茶店になるのだろうか。 揉め事を持って来たとかじゃないよねぇ、もうほんと勘弁してほしいんだから、やめてよね。 椅子に座りながら私はそんなことを思った。 ─そんな果歩をよそに、バッチリメイクでミニスカにブーツ、ジャケットには兎の耳がついたフードとお尻付近に兎の尻尾が付いている可愛いぶりっ子ファッションで、果歩に会いに来た仲間が挑戦的な目で果歩を見ていた─      ◇ ◇ ◇ ◇ 果歩が青白い顔をして俺に仲間と別れてくれと言い俺もそれに対して別れると答えた。 そんな風に答えたけれど自分の中では本当に別れるところまで考えて妻にそう約束したわけではなく、所詮その場凌ぎの言い訳だった。 失くすもののない俺にとって果歩ひとりくらい、やいのやいのほざいてても、軽ぅ~くいなせると思ってたしな。 なんだかんだ言ったって子供がいなけりゃぁまた事情も違っただろうけど、子供を抱えた果歩が浮気ぐらいで俺と別れるとは考えにくかったし。 切るのはいつだってできるっていうのもあって折角楽しくやれる相棒《仲間》がいるのに、別れるにしても今じゃないって俺は心ではそう考えてた。 だけど妻の果歩に仲間と別れてほしいと言われてからほどなくして仲間がとんでもないことを言い出した。
last updateHuling Na-update : 2026-05-02
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32 ◇本気なんだから

   「ねえ、もうすぐ菅田《すだ》くん辞めちゃうでしょ?」 「あぁ。  大学の勉強が忙しくなるとか言ってたな。  けど、たぶんそういう理由じゃないわな。  ははっ。 あいつは真面目なヤツだからな、きっと俺たちのやってる ことを知っててヤ《嫌》になったんだろうよ。 俺がアイツの立場でもヤだね」 「そんなこと言ってぇ~。 そしたらまた私たち当分できないんだよ?  オーナーは私と仲良しできなくてもいいの? 」「いいことなくたって、店閉めて一日中盛ってる わけにもいかないだろうよ。 しばらく我慢しれっ!  次の人材をまた捜すから」 なんてことを仲間に言いながら、いくらなんでもなぁ、もういい加減 遊びもほどほどにして、少しは仕事に身を入れないとなぁ~などと、流石に 俺もちょっと店のことが気になりだしていた。  潰してしまっては、大変なことになる。  俺の未来は閉ざされたも同然だ。 踏ん張り時としては遅いくらいだが、なんとか今まだ店は持ちこたえて るのだし、ここは一念発起頑張らないとな。 そして、なんでここで? と思ったが果歩の顔が一瞬頭の中を 過《よ》ぎった。 ホントに不思議だった。  果歩が俺と別れられるはずがないと高を括っている俺だが、 その俺こそが果歩とはどんなことがあっても別れるという選択肢を 持ってないのかもしれないな、とそんなこともふと頭に浮かび、 そんなことが浮かんだことに妙に驚いた。  な……なんでこんな時にこんな事考えてるんだ? 俺は。  俺と仲間は品出しして棚に陳列しながら話していた。  「ねっ、さっきから何考えんの?  オーナーでも深刻に何かを考えることあるンだ?」「俺だってたまにはなぁ……って、大人をからかうんじゃない」「何よぉ~、私だって大人なんだからね。フン」「そだな、婚約者もいるんだもんな。  もう結婚もぼちぼちなんじゃないのか? バイトばっかしてていいのか?  そろそろ準備もあるだろう?」 「何で今そんな話すんの?  私はこんなにオーナーとのこと、考えてるのにぃ。  ねっ、私ねオーナーとこれからもずっと一緒にいたい」「う~んっン……俺もぉ~」 「ちゃかさないでっ! 本気なんだから」
last updateHuling Na-update : 2026-05-03
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33 ◇首が回らなくなる

  「何々、本気ってさぁ。結婚して……してしてって、言うんじゃないだろうな。ヤメテっ、オレッちには妻も子もいるんだよぉ? 」 「オーナー、今言ったこと本気? 私のこと好きじゃないんだ? 」  ヤバイと思った。  完璧彼女、スイッチ入っちまってる。「好きに決まってるだろ? じゃなきゃ、あんなにたくさん愛し合ったりできないじゃん。 変な方向に本気になるなよ。 今までどおり仲良くしようぜ。 次のバイトが見つかったら、また今まで通りだから少し我慢しよう、な? 」「ごまかさないで! 」 そう言って彼女は引かなかった。 俺のやさしい説得も徒労に終わりそうな気配。 次の手はどうすべっかな。「遊びじゃないって言うんなら、私と結婚してよ。 婚約者は捨てる、私、彼を捨てる。 捨ててオーナーと一緒になる」 流石の俺も不味いと思った。 彼女がただの独身者ならまだしも、結納も済ませた婚約者のいる身だぜ。  幼友達ってんだから親同士だって、普通の関係より長い年月をかけた深い付き合いに違いない。 そんな相手を他に男ができたからって今更約束事を反故にしてみろよ。 それがどういうことを招くのかこの女は全く分かってないのだろう。  俺だって相手に訴えられる可能性が大いにある。 この店が上手くいってない上に、法外な慰謝料なんて請求された日にゃ、俺の首が回らなくなる。 何の冗談だよ。 それにだ、婚約者がいるのにホイホイ他の男と遊べる女なんかと結婚できるかよ。 遊びが好きなクセになんで結婚持ち出すんだよまったく、意味不明だぜ。 結婚相手に頭の悪い女は絶対イ・ヤ・だっ。 仲間は自分が俺の妻から慰謝料請求されるなんて……そういう対象になるってことも全然分かってないのだろう。 遊ぶには可愛くて良かったが、結婚となると話は別だ。 康文は物腰は柔らかだったが、結局店の売り上げと彼女に婚約者がいることを理由に、仕事もろとも冷たくばっさりと彼女を打ち捨てた。 仲間友紀は毎日Love Love だった相手からこうも簡単に切り捨てられるとは夢にも思ってなかったようで、帰り際、涙を一杯溜めた目で康文を睨み付けバタバタと駆けて店を出て行った。 果歩が彼らの関係を心配しなくとも、あっさりとふたりの関係は終わっていたのだ。     
last updateHuling Na-update : 2026-05-04
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34 ◇妊娠したみたいなんですぅ

  遊ぶ相手なぞ、すぐに見付かるさ。 無意識に康文はそんな考えを持っていた。 なのであまり仲間に執着することもなかった。          ◇ ◇ ◇ ◇ 仲間の様子から見て、あまり良い話でないことだけは確かだ。 はて? 私に聞いてほしいという話とは一体どんな話なのだろう。 夫と別れてほしいとか? そして離婚してくれだとか? いろいろ想像逞しくしていた私に放った彼女の言葉は私の想像を遥かに超えていた。           ◇ ◇ ◇ ◇ 「どうしよう……あたし」 「……」  何さ、勿体つけて。  早く話なさいよ、私は元々あなたの話を聞きたくて ここへ来たわけじゃなし、勿体ぶんじゃないわよ。 こっちは暇じゃないのよ? イライラしちゃう!!  もじもじして悩む振りをしている仲間は次の言葉を放った。「あたしぃ~、妊娠したみたいなんですぅ。 生理不順だから気付くのが遅れてしまってぇ~。  実は私、近々婚約者との挙式を控えているので早くどうにかしないと。 万が一彼にバレたら、私お終いだわぁ」 メソメソした風を装いながらチラチラと私を見つつ絶望感漂わせて話す女。 ひっ、なにぃ~、何言ってるのこの子。 げっ……妊娠ってニンシンって今言いました?「病院へはひとりで行きますから、同意書にサインしてくれませんか? それに私お金がないので費用のほうもできればお願いしたいんです」「ちょっ……ちょっと待って。 それって、妊娠してるって確かなの?」 「病院で1度診てもらってますから100%確実です。 婚約者とは一度も婚前交渉してないから絶対オーナーとの子です」           ◇ ◇ ◇ ◇ いや、何と私の呑気なことよ。 普通は旦那が浮気をしたら一番に気になるところだったのかもしれないというのに、私の頭には全く一度も、浮かんだことがなかったのだ。 既婚者相手に浮気できるような女は皆チキン……もとい、鶏頭をつけているに違いないと思ってきたが、私の頭も大して変わりなかったかもしれない。 おお、私の鶏頭よ、驚くことなかれ……今更だ。
last updateHuling Na-update : 2026-05-05
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35 ◇信じられないわ

「そんなこと急に言われても、はいそうですかって信じられないわ。 いくら何でも夫があなたとの子供を迂闊に作るなんて」  そこまで夫の頭のネジが緩んでるって思いたくない。 子供なんてできちゃったら、それこそ……それこそが、浮気のれっきとした動かしようのない証拠になるのよ? そんな事夫がするはず……ない……と思いたかった。 私はこの時かなり狼狽してしまったようで、後で考えるとどうしてあんなことを口走ってしまったのだろうというようなことを彼女に言ってしまったのだった。「ね、どうして私にそんなこと話すの? まずは夫に話すべきよね? 一体全体何考えてるの? 人の心を弄んで何がそんなに面白いの? 」「わっかりましたぁ~。 じゃっ、オーナーに言います。 きっとオーナー、子供のために私と結婚するって言うんじゃないかなぁ。 ……だと奥さんが気の毒だと思って奥さんへ先にお話持ってきたのに、奥さんったら私のこと悪く悪くとっちゃうんだものぉ、参るわぁ……ふふん~」 やっぱりね、妻というものは夫が外で子供を作るっていうのは、相当ダメージを受けるものなんだと目の前のオーナーの妻の様子を目の当たりにして仲間は強く実感した。 予想外にうろたえている果歩の姿を見て溜飲を下げつつある仲間は、もっと苛めたくなり、予定していなかった次の台詞を紡ぎ出した。 何だかあんな女垂らし野郎のことを、どこかで信じてる風なアイツの妻にすごく腹が立ったのだ。「えぇ、面白いですよ。 私を好きになってしまった旦那さんにずっと縋り付いてて哀れなもんよ! プライドってもんがない人間見てると虫唾が走るんです、私。 他の女を好きになって子作りまでしちゃった旦那と元サヤに納まって幸せごっこしてそれでほんとに幸せって言えるんですか? 旦那の嘘にまんまと乗せられて……あっ、違いました? ほんとは信じてないけど信じてる振りをして、きれいに元サヤに戻りたいのかしら? どっちにしても私、奥さん見てるとムカムカするんですよね」
last updateHuling Na-update : 2026-05-06
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36 ◇地獄にお・ち・ろ

 悪さをしておきながらこの女はどうして私をなじってんのよ。 自分のしてることを棚に上げてよく言うわよ。 しかし、どうして仲間はこんな話を夫にではなく私にしているのか。   普通はまず付き合っている男に話すもんじゃないだろうか。 腑に落ちない。 どうして、どうして? 考えたけれど、答えは出なかった。  「あなたちょっと調子に乗りすぎなんじゃないの? あなたの婚約者に全部ぶちまけてもいいのよ? 」「いいですよぉ~~!じゃぁ私、婚約者との結婚止・め・て、あなたの旦那さんとヨリ戻して結婚するからン」「なっ……」「ほらっ、グーの音も出ない。 できもしないこと、言わないほうがいいですよ。 私がちょっと可愛く擦り寄ったらオーナーの気持ちなんてすぐ私の方に向くんだから。 私に無事結婚してもらわないと困るのは奥さんのほうでしょ? 」* 何を好き勝手言ってるのだろう、目の前の人でなしは。 私はもう何も聞きたくなかった。「あんたなんか、地獄に落ちればいいのよ。 地獄にお・ち・ろ。 バカ女! 」 考えてもなかった呪詛の言葉を女に吐き、私は店を出た。 何か後の方であのバカ女が叫んでたけど知ったこっちゃない……だわさ。 私は急ぎ足で家に向かった。 ははっ、お茶代も出さずに帰ってきちゃったよ。 いい気味。 夫の本心はどうであれ、あの日……私が仲間と別れてほしいと言った日、夫は別れると言った。 心はやさぐれていたものの、 信じたい信じようそしてやり直せるものなら心機一転やり直そうやり直してみたいという気持ちも少しばかり芽生えていたのに。 そんな小さな芽、気持ちが一辺で吹き飛んでしまった。 他所に……娘に異母兄弟ができるかもしれない? いや、あの女は産むなんて言ってなかったじゃない。 だけど夫ともし結婚するのなら、産むのかもしれない。 私の頭は混乱と怒りとで爆発しそうだった。 帰って来る夫に何と問い詰めようか。 子供のことを夫は知っているのか、まだ知らないのかさえも分からない現状でどんな風に話し合いをすればいいのか、更に私の混乱は広がった。 私をこんなにも苦しめる夫に嫌悪感が走る。 気持ち悪かった。 ただただ、気持ち悪かった。
last updateHuling Na-update : 2026-05-07
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37 ◇何かが足りない

 気がつくともう夕暮れ時になっていて、母のところでいい子にして私を待っている娘のことに思いを馳せた。 迎えに行かなくちゃ。 夜風に当たったら気持ちも少しは落ち着くかもしれない。 そんな私に娘のお迎えは、ちょうどいい気分転換になりそうだ。 迎えに行くと娘はうれしそうに私の側まで駆けて来た。「おかあしゃん、ばぁばンにコレ買ってもらった」 そう言って可愛いくまのプーさんを見せてきた。*「お母さん、ありがと」「こんなに喜んで貰えて私のほうがお礼言いたいくらいよっ」「ン、いつも碧のことありがと。じゃっ、また。帰るわ」 母の家を後にして、私は碧をバギーに乗せて帳の降りそうな空気の中を、歩いた。 風が冷たくて気持ち良かった。 遊び疲れたのか碧は寝てしまった。 気がつくと私はとぼとぼと歩を進め、近所の我が家の店とは違うコンビニに来ていた。 私はあれから一旦自宅に戻り、娘を迎えに家を出る際に、当座のお金や通帳など他にも家を出て行く場合に必要なものを鞄に入れていた。 夫が仲間と浮気していることを知った頃から、まさかに備えて家を出るとなった時には必要なものをいつでも持ち出せるよう、ひとつの袋にまとめていたのだ。 そんなだったから店に入ってからも、どうしようかどうしようかと、呪文のように心の中で知らず知らずのうちに呟いていた。 あまりに悲しくて理不尽なことをされる自分にも嫌気がさし、このまま家に帰らなくて済む方法はないだろうかなんて思い浮かべていた。  コンビニで娘にりんごジュースとプリンを、自分にも水分補給をとお茶を買ってレジに並んだ。 3番目だった。 私はぼーっと立ってたみたいで、どうぞ次の方という店員の声で我に返った。 娘はバギーの中で寝ていた。  レジを通って店の外に出た。 もうそこまで春が来そうな季節なのに夜風が冷たかった。 私は目の前の信号が青になったのを見ると何故か急いで渡らないとと思ってしまい、小走りにコンビニの敷地を走り横断歩道に出た。 歩き始めてすぐに何かが足りない、と思った。
last updateHuling Na-update : 2026-05-08
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38 ◇救急車のち病院

38 ◇救急車のち病院 えっ、うそぉ~っ。 私ったら……。 娘の碧を連れてないことに気付いた。  連れてた娘を忘れて横断歩道を渡るなんて、自分が……自分の行動が信じられなかった。   私は歩を止めていきなり向きを変えて駆け出した。 向きを変えた時、ずっと遠くに知らない女性がバギーの中の娘を覗き込んでいるのが視界に入った。 ……と瞬間私の身体はポーンと高く宙に浮いていた。 私はもうすっかり暗くなった夜空を見ていた。  その時空を見ながら、あぁ私は地面にたたき付けられるんだなぁと思った。 娘を置き去りにしたまま、どうしよう。 娘は無事夫の手に渡されるだろうか? 誰か悪いヤツに連れて行かれはしまいか、それだけが気掛かりだった。 私はどうやらあまり大きく飛ばされなかったようで、コンビニの駐車場沿いに植えられているツツジの植木の上に落下したのだった。 次に気がついたのは病院の上だった。 視線の先に見知らぬ女性に抱かれている娘が目に入った。 あぁ、良かった……ほんとに。 自動車事故に遭って病院に運ばれた自分の側に娘がいて一緒にいられるなんて、なんて自分は運がいいのだろうと思った。 他のことでは散々なのにね。 目覚めたことに気付いた看護師が先生を呼んだ。 先生からの質問が始まった。 そして側にいた娘を抱いている女性とも話すことになった。 その女性は既婚者で3人の子の母親だということだった。 とても子供好きな人のようで私がコンビニで買い物をしている時から可愛い娘が気になって、ずっと私たちの様子を見てたらしい。  私の後から店を出たその女性は、バギーの中の娘を置いたまま私がいきなり小走りに走り出したので娘のことが気になって一緒にいてくれたのだとか。 そして私のあの事故。 救急車を呼んでくれたのも彼女だった。 名を浅田美世子さんと言う。 救急車に娘を連れて私と一緒に乗って病院まで付き添ってくれたのだとか。 その一連の話を聞いて涙が零れた。「本当になんて言ったらいいのか。 私たちのことを……娘のことをずっと見守ってくださってありがとうございました。  車に当たって宙に浮いた瞬間、実はあなたと娘が見えてました。 その時に娘を置いたまま死んでしまったら、もしくは私だけが病院に運ばれて娘がひとり
last updateHuling Na-update : 2026-05-10
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39 ◇警察と病院

  渡っていたのにいきなり踵を返した私が全面的に悪いはずだ。 彼は私がそのまま走り抜けるのを見ながら右折しようとしていた。 右折車のことなんて何も見ていなかった。 頭にあったのは置き去りにした娘のことだけだった。  翌日警察が取り調べに来た時、そのように本当のことを話した。 男性は無罪放免になり、ほっとしたようで私に礼を言ってきた。 私は、わたしのほうこそご迷惑をおかけしてすみませんでしたと謝った。 その彼の名は溝口啓太という。 記憶喪失ということで警察がいろいろと私の身元を調べたようだが分からなかったようだ。 私は自宅の最寄の病院からは搬入を許可されず3院たらいまわしにされ、自宅区内よりかなり離れた病院に収容されたのだった。 このことが幸いしたのかもしれない。 私の記憶喪失は疑われることなく周りに受け入れられた。 どうしても……どうにもならなくなったら記憶が戻ったことにして自宅に帰るつもりだ。 記憶のない私たち親子をどうするか病院と警察が話し合ってなんとかしようと頑張っていた。 えっ、嘘でしょ? 私の身元って私が記憶を失くしたら調べても分からないもんなの? こうなったらえーいっ、ままよっ。 いけるところまでいってみよう! 私はそう思った。 周りの人たちの心配をよそに、私は記憶が戻らないという風に装い続けた。  数日後、病院、役所や警察が連携して再度調べるということになったとその話を耳にした時、困ったことになったなぁ~と思った。  警察だって忙しいだろうに徹底的に私の身元を調べるの? いくらなんでも人手を増やして徹底的に捜査されるとまずい。 身元がバレるのも時間の問題だなぁと思い焦った 私は、その日も私たち親子を気にかけて病院に見舞ってくれていた溝口さんに本当の気持ちと自分の状況を話してしまおうかと思うほどで、とても切羽詰っていた。
last updateHuling Na-update : 2026-05-10
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40 ◇共犯者にはできない

 いや駄目だわ、そんなの。 自分の気持ちがしんどいからって彼を共犯者にしようなんて、私ったら。 ここで最後の最後まで記憶を失くしたってことにすると決めたのなら、自分ひとりでこの問題を抱えていかなきゃ。 彼を罪人《つみびと》にはできない。  目の前に飛び出して散々驚かせて、警察にも取り調べられるような目に遭わせた上に、実は私が本当は記憶なんて失くしてないのに、自分の都合で記憶失くしたことにしてることを知らせて──その上周りには内緒にしておいて下さいなんて、医師や警察官へ嘘を付かせることになるようなこと──駄目駄目っ、果歩、駄目だよ。 よしっ、ばれたらしようがないじゃないの、一旦家に帰ればいい。 奇跡的にこのまま身元がばれなければ、娘とふたり生きていけるように対策をたてて、なんとか切り抜けよう。 私は気持ちを固めた。 気持ちが揺れている間、なんか……ずっといやぁ~な気持ちだった。 けれど迷いがふっきれたからか、今は気持ちが落ち着いてきたのが分かる。           ◇ ◇ ◇ ◇── 溝口さんの家に初めてお邪魔した日 ──「お邪魔します」「遠慮しないで! ささっ、碧ちゃんと果歩さん疲れたでしょ? こちらへどうぞ。 何か飲み物いれますね。 あっ、果歩さん碧ちゃんにはりんごジュースにしましょうか?  僕、結構ジュース系に拘りがあって果汁100%のものしか、買わないんですよ。小さい子にちょうどいいでしょ? 」「すみません、運転してたから私なんかよりずっと溝口さんのほうがお疲れでしょうに。ありがとうございます。それと碧にまで。 でもすごいですね。 果汁100%だなんて、子供を持つ母親から絶賛信頼度高くなりますよ? 健康に気をつけられてるんですね? 」「ええ、そりゃうもう……なんて言ったら少し引かれそうですけど、正直その通りなんです。すごく気をつけてます。 ここ数年のうちに学生時代の友人、会社の上司、同僚と驚くぐらい次から次へと難しい病気で亡くなってましてね。 自ずと自分の身体に気を遣うようになりました」          ◇ ◇ ◇ ◇ 溝口さんにコーヒーを淹れてもらってほっとさせてもらった。 碧は出してもらったりんごジュースで ごきげんだ。 溝口さんが『碧ちゃんの玩具になるものがないか
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