Alle Kapitel von 光煌の逆転姫~その女、追い詰められるほど煌めき輝く~: Kapitel 91 – Kapitel 100

122 Kapitel

皇国へ

「………………く…………う、あ…………こ、ここは?俺、は…………」 目を覚ました|lol《ロル》は、自分が置かれている状況がすぐに理解出来ていないようだった。目を覚ましたと言っても、完全に怪我が治っているわけではなく、全身の痛みはかなり酷い。どうやらかろうじて一命を取り留めたといった程度の状態であることは、段々と理解出来た。  ハッとして隣を見ると、少し緊張した面持ちの少女――ジーナがいた。怪我を治してくれたのは彼女のようだが、その後ろには凄まじい殺気を放つジャンヌとアーデの姿も見える。ここでようやく、|lol《ロル》は自分が捕虜として生かされているのだという事を理解したのだった。「目が覚めた?あんたなんか助ける義理はなかったんだけど、こっちもソロの命がかかってるんでね。一応言っとくけど、質問に答えなかったり、まだ抵抗するようなら今度は容赦しないわよ」「…………よく、言う。……さっきも、容赦などしていなかった、だろうに…………だが、解った。捕虜として、応えて、やろう………………」 |lol《ロル》は痛む身体を起こして、苦笑しながらそう呟いた。捕虜になったという事は、自分はジャンヌに敗北し、またメイヴァに見捨てられたということである。|lol《ロル》の知る限り、皇国の刃のリーダーであるメイヴァという男は冷徹な男だ。彼はきっと任務に失敗した自分を見捨てる事に躊躇などしなかっただろう。こうして捕虜になるくらいなら自決しろ、と言ってもおかしくないのがメイヴァだ。ならば、|lol《ロル》はもう皇国の刃に、いや、エンデュミオン皇国に居場所はないのかもしれない。そんな気がした。 だとしたら、わざわざ彼らに義理立てて自分の身を危うくしようとは思えないのが、|lol《ロル》という人間だ。彼にしてみれば、皇国の刃はメイヴァにスカウトされて入っただけの集団であり、今まで命令に従ってきたのも、その他に生き方を知らなかっただけである。エンデュミオン皇国はもちろん、現在の女帝イェルダにも特に忠誠心というものを持ったことはなく、命を賭して従おうというつもりもない。  強いて言うならば、強い相手と戦いたいというのが願いだ。そう、ジャンヌのような強敵と戦い、殺すか、或いは死にたいと|lol《ロル
Mehr lesen

呉越同舟

「………………」「…………………………」「………………………………」 無言の、気まずい空気が張り詰める車内に、三人の男女の姿があった。三人というのはもちろん、ジャンヌとジーナ、そして運転席に座る|lol《ロル》のことだ。ジーナの膝の上にはいつもの大きさになったアーデがちょこんと座っていて、じっとジーナの顔を見つめている。ジーナは微笑みながら、その背中を撫でていた。「ああ、もう。気まずいったらないわね。……まったくもう、どうしてこんなことに」 小さく呟いたジャンヌだったが、こればかりはどうしようもない。女帝に囚われたソロを助ける為には、少しの油断やミスがあってはならないからだ。そうして、一週間前の事を思い出す。   ――|lol《ロル》から自分達を襲った経緯を聞きだしたジャンヌ達は、ソロを助ける為にエンデュミオン皇国へ向かうことにしたのだが、問題はそこからである。敵は女帝イェルダであり、彼女と戦うということは、エンデュミオン皇国の全てを敵に回すのと同じ事だ。|lol《ロル》の話によると、皇国の刃にはまだあと数人のメンバーがいるらしいし、彼らは|lol《ロル》と同等の腕前を持つ戦士だという。それに加えて魔法師団や騎士団といった、いずれも強力な力を持つ軍団がいるのだから、真っ正面からぶつかっても太刀打ちできるはずもない。  なので、出来るだけ隠密的に、それもソロを奪還して即トンボ返りするくらいがベストである。だが、魔法の使えないジャンヌと未熟なジーナだけでは、そのミッションを完遂するのは難しいだろう。 当初はシーザーを頼ることも頭に過ったが、仮にも相手は女帝だ。彼女を相手にするのに、バスカヴィル王国の王子であるシーザーを頼れば、下手をするとバスカヴィル王国とエンデュミオン皇国の戦争になってしまいかねない。今でこそ、各国はそれぞれ大人しくしているものの、どこかで戦端が開けば、現状のバランスを大きく崩そうとする国が出て来てもおかしくないだろう。人は、現状で満足をするという事をしない生き物だ。何を求めるかは人それぞれだが、より強く、より豊かに、或いはより賢く、より大きくなろうとする者もいるはずだ。  
Mehr lesen

失われた公爵家

「ちょ、ちょっと待ってよ。アクシア公爵家?そんなの聞いた事ないんだけど、それが亡びたって……どういうこと?」「……俺、も、20年前は子供だった、しな……あとで、調べたことしか解らないが…………アクシア公爵家、はエンデュミオン皇国に、実在した公爵だ」 運転しながらポツポツとライナスが語り始めたのはこうだ。かつて、エンデュミオン皇国内には皇国十三貴族と呼ばれる十三の貴族家が存在していた。その内の一つが、アクシア公爵家だ。アクシア公爵家は非常に魔力に優れた家系の人々で、強力な加護を持つ者も多く、古くは魔法兵の祖とも呼ばれた人物を輩出したこともあったらしい。事実、ソロが魔法師団長となるまで、歴代の魔法師団長のほとんどはアクシア公爵家の当主が務めていたようだ。  そうした傑物の多い家系であったからか、皇国十三貴族の中でも特に皇帝一族との関りは深く、帝位に着けなかった嫡子を降嫁される事もあったらしい。つまり、血はだいぶ薄まっているが、アクシア公爵家は皇帝の血族だったのだ。  そんな歴史もあって、アクシア公爵家は皇国内でもかなりの地位を持っていた。しかし、時が経つにつれ、皇族とアクシア家の関係も変わっていく。ちょうど彼らが皇国の歴史から姿を消した20年程前には、アクシア公爵家と皇族は他の貴族と同じ程度の関係に落ち着いていたようだ。    そして、今から20年前に事件が起きた。 その日は、酷い大雨の降る日で、視界は悪く物音さえもほとんど聞こえないような夜だったらしい。そんな時、アクシア公爵家はたった一晩のうちに、使用人から当主一族に至るまでの全てが忽然と姿を消してしまったのだ。それは翌日、たまたま公爵家に用があって訪れた者達によって事件が明らかとなった。彼らによると、まるで直前まで人が生活していた痕跡が残されていて、|喪月《そうげつ》(※この|星《せかい》でいう神隠しのこと。月を神の如く信仰する所からそう呼ばれる)が起きたのではないか?と噂されたらしい。    当時、既に皇帝だった先帝バーンは事態の調査を試みたものの、結果は芳しくなく、相当に困り果てて頭を抱えたようだ。何しろ、公爵家の一族が理由も解らず消えてしまうというのは、大スキャンダルである。国の内外へ向けての状況
Mehr lesen

新たなる狂王

「どうやら、貴様らの加護で僕を外部から途絶させたという事らしいな。それで?僕に何の用だ。見ての通り僕はとても忙しい。謁見を求めるなら、所定の手続きを踏んでから……」「そんな事をする必要はない。君は僕の質問に答えてくれるだけでいいんだよ。それに、君の方が僕に会いたがっていたはずだよ」「なに?貴様のことなど僕は知らん。知らん相手に会いたいなどと思うはずがあるか!」 シーザーは激しい剣幕でエルドレッドを喝破した。彼は流石に王子だけあって、こうした状況でも己の強さを失っていないようだ。だが、そんな自信に満ちたシーザーの態度にも、エルドレッドは全く動じていなかった。それどころか、煽るような口振りである事実を口にする。   「何を言っているんだい?君や君の部下達は、散々僕らを探し回っていたじゃないか。僕達『メタノイア』のことをね」「なにっ!?」 勢いよくシーザーが立ち上がると、堆く積まれていた書類の山が一気に崩れた。エルドレッドはその様を、楽しそうに見て笑っている。「あははっ、急に立ち上がるから、君の大事にしている仕事が大変なことになっているよ?そんなことをして大丈夫なのかい?父君に怒られてしまうんじゃないかな」「ふざけるなっ!貴様が本当にメタノイアの一員であるなら話は別だ!ここで会ったが百年目!ひっ捕らえて組織のすべてを吐かせてくれるっ!」 そう言って、背後に立てかけてあった長剣と盾に手を伸ばす。既にムラクモを持って立っているエルドレッドは、それを止めるのも容易だったはずだが、彼はニヤニヤと笑みを浮かべるばかりで、シーザーが剣を取るのを黙ってみているだけだった。  そして、剣を取ったシーザーは間髪入れず、必殺の三連撃を放った。「てぃっ!せいっ!はあっ!」「フフフ……」    ライトニングエッジとシーザーが名付けたその技は、エルドレッドを捉えたかに見えたが、それらは全て空を切っていた。落ちた書類の何枚かは切断され、後で支障が出るのは明らかだ。しかし、それを気にしている余裕は、シーザーにはないようである。「退屈な技だね。奇声を張り上げて敵の注意を逸らし
Mehr lesen

炎のジェスター

「…………もうすぐ、エンデュミオン皇国に、入る、ぞ…………あの森……からだ」 ライナスはそう言うと、|魔力車《クルルス》のアクセルを踏み、視界の端に見えている森へと車を走らせた。 ジャンヌ達がソロの行方を追って出発してから、数えて8日目。ようやく、エンデュミオン皇国へ入る道に到着した。|魔力車《クルルス》を使ってもこれほど時間がかかったのは、国境警備隊に気付かれないよう皇国内へ忍び込む為である。 エンデュミオン皇国とノルディール共和国を結ぶ主要なルートには、当然ながら不法な入国者を取り締まる為の国境警備隊が配備されており、そのままではジャンヌ達が皇国内に入った事が女帝に気付かれてしまう。それを避けるために、わざと大きく遠回りをして、警備隊がいないルートを進むことにしたのだ。 これは皇国の刃達だけが知る秘密のルートであり、一般人は魔法によって弾かれる為に通る事が出来ない道らしい。かつての狂王アグリッパとエンデュミオン皇国が戦争をしていた頃の名残らしく、実は現ノルディール共和国の政権すら知らないというのだから、中々に恐ろしい道である。これがバスカヴィル王国のようなまともな国なら、とっくにバレて外交問題に発展していることだろう。長い間、政府がまともに機能していないノルディール共和国だから残っているルートだ。「この辺から入ると、エンデュミオン皇国のどこに出るわけ?どうも私、エンデュミオン皇国の地理に疎いのよね」「…………このルートの先、は、ちょうどかつての、アクシア公爵家、が領地として……持っていた土地にあたる……今は、皇国預かり……の土地で、特にこの辺り、は、ほとんど無人……のはずだ……」 またも出てきたアクシア公爵家の名に、ジャンヌは因縁めいたものを感じ、顔をしかめていた。今まで知りもしなかった公爵家が、どうしてここへ来て自分の前に現れるのか?簡単に運命という言葉で片付けるのはあまり好きではないが、不思議な縁を感じるのも事実だ。そんな、言葉にし難い感覚がジャンヌの胸に影を落としている。  そんなジャンヌの思いを少しだけ察して、ジーナはわざと明るい声で問いかけた。   「その、アクシア公爵家だった場所から、ソロさんがいそうな首
Mehr lesen

柔らかい怪物

 巻き起こる炎が周囲の空気を熱し、高温の風が巻き起こった。ハドリーはその中心で不自然に左肩ごと手を上げ、首を右に傾けつつライナスへと視線を向けた。対するライナスは不愉快そうに眉を顰めて、鞘から剣を抜き放つ。先程からのやり取りから察するに、ライナスはハドリーの事をあまりよく思っていないようである。「ろ、ロロロロ……ルールルールやぶやぶやぶぶぶ、殺す」「ふざけた、奴だ……!ちょうど、いい、前……からお前の事は、気に入ら、なかった。こ、こで……ケリをつけて、やるっ!」 ライナスはそう叫ぶと、地面を強く踏み込み弾けるような勢いでハドリーへ襲い掛かった。その動きに対応してハドリーの左手から炎の弾丸が放たれる。だが、先見の加護によって相手の動きが先んじて|視《・》|え《・》|る《・》ライナスは、それが発射される直前に軌道を呼んで身体を逸らし、炎を躱してみせた。「……食ら、えっ!」 そのままあっという間に肉迫したライナスが、ハドリーの喉を切り裂き、すれ違うようにして距離を取る。本来なら致命傷となるはずだが、ハドリーの首からは血が一滴も流れ出ていなかった。それどころか、傷が立ちどころに塞がっていく……結局、喉を斬られてもハドリーは全くダメージを受けていないようだった。人間離れした再生力を持つジャンヌでさえ、剣で斬られてノーダメージではいられない。ジャンヌは思わず息を飲んで、その光景を見つめていた。「ロロロ、ロルロルゥ……!行くな、行くな行くな行くなあああああぁぁぁっ」「ちっ……化け物、め……!」 ハドリーの加護がもたらす不死身さに、苛立ちを覚えたライナスが舌打ちをした。実の所、ハドリーの加護を目の当たりにするのはライナスも初めてだ。同僚として、何度か顔を合わせたことはあるものの、二人が同じ任務に就いたことは今までになく、戦っている姿を見るのもこれが初めてである。  ハドリーがどれだけ常軌を逸した人物なのか、噂では聞いていたが、こうも化け物染みた存在だとは思ってもみなかったらしい。それでも、ライナスの目には諦めの色は浮かんでおらず、既に次の手を思いついているようだ。 ハドリーがライナスへ手を伸ばすと、そこから|三度《みたび》、
Mehr lesen

追い付いた真実

「ああ、どうしよう……火傷が、火傷が全然治らない!」 どうにかハドリーを倒したライナスだったが、その代償は大きかった。ライナスの全身には、広範囲に渡って酷い火傷が広がっていて、ジーナの使える治癒魔法では回復が追い付かない有り様だ。しかも、うまく治療が出来ない事に焦りを感じているせいか、余計に魔法への集中が出来ず、効果が弱まってしまっている。せめて、加護を発動させられればいいのだが、ジーナの加護はまだその正体がハッキリしていないので、自分の意思で使う事が出来ない。このままではライナスの命が危ういのは火を見るよりも明らかだった。「大丈夫よ、ジーナ、落ち着いて。私が魔法を使えれば……ちょっと、ライナスしっかりしなさい!こんな所で死ぬんじゃないわよ!」「お、俺の、ことなど……放って、おけ。……お前達、の目的を果たしに、行くべき……だ。ハドリー、と戦った、のは、俺が……勝手にやったこと……だろう」「何言ってんの!死にそうな人を放っておけるわけないでしょう?!」 まだ彼を仲間と呼ぶには、いささか関係性を築けていない気もするが、自分の代わりにかつての同僚と戦い、これほどの大怪我をしてまで勝利をしたライナスを見捨てられるほど、ジャンヌは薄情な人間ではない。しかし、ジャンヌ自身が魔法を使えない以上、ジーナの治癒魔法が効かないのでは打つ手がないのも事実だ。ライナス曰く、この辺りには人もいない無人のエリアであるらしい。となれば、助けを呼ぶことも期待出来そうにない。更に、誰か助けてくれそうな人がいる場所へ行こうにも、|魔力車《クルルス》は大破してしまった。もはや、万事休すだ。「おい!お前達、そこで何してる?」「えっ!?」 突然の呼びかけに驚いてジャンヌが声のした方を見ると、そこには白髪の混じった初老の男が立っていた。どことなくソロに似た服装で、まとっている気配も似ている気がする。無人であるはずの場所で出会ったということもあってジャンヌの心に警戒心が生まれたが、その男はそれに気付いていないのか、倒れているライナスを見て状況を察しジャンヌ達の元へと近づいてきた。「……怪我人か?あまりいい状態ではなさそうだな。どれ、見てやろう」「え
Mehr lesen

すり替えられた運命

「あれは、今から二十年程前の事になります……当時、ここは月光教の教会であると同時に、貴族向けの産院としても機能しておりました。このアクシア公爵領は他領よりも自然が豊かで、大地の魔力に満ち溢れておりまして、古来からこの地で産まれた子供は強くなり、また出産の際の負担も減ると言われておったのです。ですので、多くの貴族の奥方様が、ここを利用しておられました。そう、あの時までは」 涙が落ち着いたラントは、ゆっくりと話を始めた。それでもまだ目に涙が浮かんでいるが、話をするだけなら問題なさそうだ。ジャンヌとジーナは、ここからどんな話へ繋がっていくのか、固唾を呑んで聞き入っている。「あの頃、私はここで働く産科医の一人でした。私の他には、5人ほどの産科医が勤めていて、我々は三人ずつの交代制で仕事をしておったのです。……そしてあれは、酷く雨の降る、少し物悲しい日でございました。私は当日が休みで、自宅で家族と共に過ごしておったのを覚えております。そしてあの日は、たまたま二人の奥方様が出産の為に滞在しておられました。一人は、我がアクシア公爵家のご当主、ジュリア様。そして、もう|御一方《おひとかた》が……パルテレミー家のアメーリア様でした」「えっ!?お、お母様が、ここに?」「はい。お二人は出産の予定日も近く、お子が産まれるのを大層楽しみにしておられました。そしてあの時、先に出産されたのはジュリア様でございました。ジュリア様は産まれてきた我が子を大変慈しんでおられて……その様子に、お子を取り上げた私でさえも、とても誇らしく思ったのを覚えております。ですが、その翌日、最悪の事態が起こりました」 ラントは深く息を吐き、そのまま押し黙ってしまった。ここから先はよほど話したくないのか、或いは話すのに勇気がいるという感じだ。そのまま数分間の沈黙の後、話は再開された。「あの時、アメーリア様は酷い難産で、出産後、一時的に昏睡状態になってしまったと聞いております。そして、ああ……私の同僚達はミスを犯したのです。産まれたばかりの、パルテレミー家の赤ん坊を死なせてしまったと、私の元に連絡が来たのはその夜のことでした」   「し、死なせた?ウソ……だって、でも、私はここに。……じゃあ、私は、私は
Mehr lesen

遠き母の呼び声

 ジャンヌの話が終わると、部屋の中は静寂に包まれた。ジーナは既に知っている話ではあるが、聞く度にジャンヌの幼少期を思って涙が出そうになる。そして、ラント老人は身体を震わせて言葉を絞り出していた。「なんということだ……私の、私の仲間達の行いで、貴女様にそんな過酷な人生を歩ませてしまっていたとは……!曲がりなりにも伯爵家であるパルテレミー家であれば、苦労などないと思い込んでいた我々は、何と愚かだったのか……申し訳ございません。本当に、本当に……」 ラントの言葉に深い悔恨が含まれているのは、謝罪されているジャンヌ当人にも痛いほどよく解った。実の所、いくら謝られても、まだ自分がアクシア公爵家の娘だったという実感がないので何とも言えない気持ちになるだけだ。ただ、ここまでの話を聞いて生まれた違和感が、かねてから考えていた自分の疑問の答えになりそうで、それは悪くない事であると思える。ジャンヌは、少し明るい声色で自分の素直な気持ちを述べた。「ラントさん、そんなに謝らないで。さっきも言ったけれど、私がアクシア家の人間だって実感は、まだ無いし。でも、私自身、ずっと感じていたことではあったの。どうして私には、伝わるはずの銀の髪が受け継がれなかったのかって。……正直に言えば、私なんて生まれてこない方が良かったんじゃないかって思ったことは、何度もあったわ。でも、もし、ラントさんの話が本当だったのなら……私が産まれて喜んでくれた人がいたのね。それは、すごく嬉しいわ」「当然でございます!ジュリア様は、産まれたばかりの貴女様を誰よりも愛し、慈しんでおりました!それだけは、間違いございません!」 ジャンヌの手を強く握ったラントは、ここまでで一番強い感情を込めてそう言った。そんなラントの言葉に嘘はないと思えるくらいには、ジャンヌは現実を受け止め始めているようだ。そんな中、腕を組んで黙って聞いていたダルクが、呟くように言った。「…………しかし、そうなると、ここで悠長に話をしている暇はないかもしれんな」「え?それって、どういう……?」「話を聞くに、お前さん達が倒したハドリーという男は、あのライナスってのが生きて戻って来るかを確認する為に配置されていたんだろう。もしもそうなら
Mehr lesen

妹との再会

 帝都・フォルトゥナ。ここは、代々エンデュミオン皇国の皇帝が住まう皇国最大の都市であり、多くの臣民達がこの都市を支え暮らしている場所だ。また、各地に散らばっている魔法兵や騎士達を統率する騎士団長や魔法師団長もこの都市に居を構えている。皇帝やその側近達が住む大きな城とその城下町は、何とも言えない重厚な威圧感を持っているようだ。 ジャンヌ達は、ダルクの運転する|魔力車《クルルス》を使い、半日ほどかけてここまでやって来た。法律上、都市の中では|魔力車《クルルス》を使えない為、近くの森に車を停めて、徒歩でフォルトゥナへ入る所だ。 フォルトゥナは都市全体が巨大な防壁で囲われていて、有事には都市そのものが非常に強固な城として機能するよう設計された街である。もっとも、建国以来、フォルトゥナが攻め込まれた事など一度もなく、ダンジョンが健在であった頃から優秀な魔法兵達によって安全を確保されてきた為、有事が起きたことなど一度も無いのだが。    そんなフォルトゥナへの出入りは、本来自由であり、特に見張りの警備兵などは配置されていないのが常だ。しかし、ジャンヌ達が到着した時、フォルトゥナの門は固く閉じられていて、街へ入ろうとする者達には厳重なチェックが行われていた。  ジャンヌ達は到着から3時間ほども手続きに待たされ、疲労の色が見えるようであった。   「……ふぅ、ようやく入れたわね。ジーナ、大丈夫?疲れたら、ちゃんと言うのよ」「ありがとうございます。でも、大丈夫です。……それにしても、大きなお城ですね」 城門から少し進んだ所にある、テラス席のあるカフェで飲み物を頼み、ジャンヌとジーナは一息ついていた。すっかり怪我の治ったライナスとダルクは、情報収集の為に別行動中だ。ソロが連れ去られた目的からみて、彼の居場所は城の内部に間違いないだろうが、酷く警備が厳重な事が引っかかる。そう言って、ダルクとライナスは先に情報収集を提案したのだった。 ジーナが城を見上げて呟くと、ジャンヌもそれに倣って城を見上げる。ジーナの言う通り、フォルトゥナの中心にそびえたつ城は巨大で、真下からでは頂点が見えないほどだ。街の外縁に位置するここからなら全貌を見る事が可能だが、それでも見上
Mehr lesen
ZURÜCK
1
...
8910111213
CODE SCANNEN, UM IN DER APP ZU LESEN
DMCA.com Protection Status