All Chapters of 光煌の逆転姫~その女、追い詰められるほど煌めき輝く~: Chapter 71 - Chapter 76

76 Chapters

戦いに持ち込むもの

「ありがとう。では、仕切り直しと行こう!おおおっ!」「また来るっ、今度は!」 ジャンヌは冷静にシーザーの動きを見極め、迎え撃つことにした。先程の三連撃は、予想外のタイミングだった事もあってジャンヌは服を斬られてしまったが、きちんと冷静に対処するならば、そう後れを取る攻撃ではない。「てぃっ!せいっ!はあっ!」「また三連撃……けどっ!」 三連撃の最中に反撃する隙は無いが、それらの動作が終わった後ならば話は別だ。生物は無限に動き続けることなど出来はしない。特に渾身の力を込めた攻撃ならば、尚更その直後には動きが止まるか、隙が出来るものである。だが、シーザーはその隙を、左手の盾を巧みに使う事で完璧に隠していた。ここでも、ジャンヌの反撃をシーザーは盾で防ぎきったのだ。これには、傍で見ていたソロも瞠目していた。「……大したもんだな」「え?ジャンヌさんがですか?」「いや、シーザーが今の反撃を防いだことさ。ジャンヌの攻撃はああ見えて、かなり重い。にもかかわらず、シーザーはさっきも今も、しっかりと盾で防いでいただろう?自分の攻撃直後で、防御にまで力が入りきらないはずなのに、あれを受けてもビクともしてないというのは、相当な鍛錬を積んで体幹がしっかりしている証拠だよ。だから、大したもんだって言ったのさ。普段の様子から見てもう少し頼りないと思っていたが、そんな事もなさそうだな」「あ、あはは……」 (王子様なのに、評価が低いなぁ……) ジーナにしてみれば、シーザーは自分の国の王子である。本人曰く、次期国王だと豪語しているのだが、ジャンヌ達からは頼りなく思われていたというのは、何とも切ない話だ。そうは言っても、ジーナ自身、シーザーの事をそこまで高く買っていた訳でもないので文句は言えない。  そもそも、ジャンヌは昨晩のようにハバキリの力をほとんど解放していない。いわば、片手落ちの状態だ。もしも、ジャンヌがシーザーを殺すつもりで本気を出していたならば、あの盾ごと腕や胴を斬り捨てられていたに違いない。それを考えれば、評価が難しいのも事実だった。「鬱陶しいわね、その盾……!」「ふっ!
last updateLast Updated : 2026-05-06
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ジーナの心境

 ジャンヌとシーザーの勝負を終えたその夜。未明から|し《・》|と《・》|し《・》|と《・》と降り出した雨は、翌朝には本降りとなっていた。アーデの予想通りなら、この雨は数日間続き、森はかなり足場が悪くなることだろう。無理に出発しなくて正解である。 それからの数日間、ジャンヌ達はめいめいに時を過ごしていた。ソロは魔法の創作と研究に没頭し、ジャンヌとジーナは揃って雨の中でも街を散策しては、食事を楽しんだり本を買って読んだりしている。ちなみにシーザーは、自分で取ったスイートルームで一人全身の痛みに悶絶していた。  ジャンヌが危惧していた通り、ソロの身代わり魔法には欠陥があって、一定以上のダメージは人形へ移し替えることが出来なかったらしい。ジャンヌが放ったドロップキックはその限界を超えており、シーザーは激痛に苛まれることになってしまったのだ。もしもあの時、ジャンヌがハバキリの力をフルに使っていたら、シーザーは確実に死んでいただろう。それがソロのプライドを刺激した為に、彼は魔法の研究に勤しんでいるのである。 そんな日が続いたある日の事、すっかり雨も上がって旅を再開するにはいい頃合いになってきた。ただ、この先は森林地帯を抜ける必要がある為、雨上がりの今すぐに出発するのは危険である。明日あたりには出発しようかと話をしていた時のことだった。「なんやかんやで、この街には長居したわねー。そんなに大きな街じゃなかったけど、ゆっくりできてよかったわ」 ジャンヌとジーナが二人で昼食に行った帰り道、青空を見上げつつジャンヌはそう呟いた。隣を歩いていたジーナも慣れない旅の中で、久々に腰を落ち着けることが出来たらしく、笑顔でそれに同意していた。「本当ですね。ご飯も美味しかったし、景色もよくて楽しかったです。また来たいなぁ」「レガリアに着いたら、その後また来ればいいわ。だいぶ先になっちゃうけどね」「ふふ、そうですね」 ジーナはそう言って、コロコロと笑ってみせた。やはり、ここへ来るまでに心も体も疲れが溜まっていたのだろう。数日前に比べるとすっかり顔色も良くなって、よく笑うようになっていた。先の事を考えられる余裕が出来たのも一安心である。ジーナの加護がどんなものな
last updateLast Updated : 2026-05-07
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危険な偵察

「ふーん、そんな事があったのか。それで、どうなったんだ?」 その夜、ソロと合流して夕食の際、ジャンヌ達はデックの話をすることにした。デックの話によると、彼の店は元々、旅人達の旅装を仕立てる|仕立て屋《テーラー》だったらしい。この近くには、厳しい山岳地帯にのみ生息するハイラントという生物がいて、そのハイラントの毛皮はヴィキュニアと呼ばれ、王家に献上されることもあったほどとても上質な毛皮なのだそうだ。デックの店では、そのヴィキュニアを使った携帯毛布や、マントなどが主力商品だったという。ジャンヌが見た上等な生地の普段着は、その余った素材を再利用して作ったものだったようだ。 しかし、最近、領内の別の街からやってきた商人がいた、それがポンザだ。 ポンザは領主ルドマンに繋がる遠縁の男らしく、彼は領主の印が記された書類を持っていた。そこには、近在に生息するハイラントと、その毛皮から作られるヴィキュニアの全ての商品を独占して管理し、販売する旨の許可が記されていたのだ。この書類がある以上、ポンザを除いた誰もがヴィキュニア製品を取り扱って商売をすることが出来ない。もちろん、ハイラントを捕まえることもだ。  これにより、デックの店では全ての商品を販売する事が出来なくなってしまった。あまりに突然の宣告に、デックはポンザに何度も抗議したが、ポンザは売り上げの70%を支払わない限り許可を出さないと突っぱねたようだ。しかし、当然ながら70%ものロイヤルティを支払っては生活など立ち行かない。そんな事があって、店をたたもうとした所へジャンヌ達が通りがかり、昼間のやり取りへと繋がったのだった。「――ってわけ、それでどうにか出来ないかと思ったのよ」   「なるほどな。しかし、相手にその書面がある以上、正当性はあちらにあるからどうする事も出来ない、という訳か」「そうなんだけど……私、どうも納得いかないのよね」   「どういうことだ?」「だって、そうでしょう?それまで皆のものとして分け合ってきたものを、ある日突然個人が独占して管理するなんておかしいじゃない。何か裏があるに決まってるわよ!」「……まぁ、確かにな」 ソロ
last updateLast Updated : 2026-05-08
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加護の発露

「あ、アーデ……!ちょっとソロ、どういうこと!?アーデが怪我を!」 フラフラと飛びながら戻って来たアーデの身体には、ナイフによる傷跡が複数残っていた。純白の毛皮は所々が血で赤く汚れていて、非常に痛々しい。これまで、一度たりともアーデがダメージを負った姿など見たことがないジャンヌは、あまりのショックでソロに噛みついている。ソロもまた、唇の端を噛み締めながらジャンヌに応えた。「落ち着け、ジャンヌ。大丈夫だ。魔力を供給しているから、もう傷口は塞がっている。俺の傍にいて少し休めば……」「わ、解ったわよ……けど、一体何があったの?」 ジャンヌがそう尋ねると、ソロは弱ったアーデを優しく抱きかかえて答えた。「あのポンザという男の屋敷に、様子を見に行かせたんだ。何か、秘密があるんじゃないかと思ってな。そうして、窓から屋敷の中を確認していたら突然……」「そんな……ごめん。私達の為に」「別にそれはいい、気にするな。だが、あの男には間違いなく何かあるぞ。アーデの闇を抜けて攻撃出来るなんて、たかが商人が雇うレベルの護衛じゃない。それに奴が崇めていた、あのオブジェ……あれは一体」「オブジェ?」 アーデが見たものを見ていないジャンヌには、ソロが何を言っているのか解らないようだ。ソロ自身、あれが何だったのかは断言が出来ないため、ひとまずその説明を避けて話を続けることにした。事実として、ポンザに強力な護衛がついているのは間違いなく、敵はそれほどの護衛を必要とする状況にあるのは間違いない。その理由が何なのか、ソロには一つ思い当たる答えがあった。「アーデを通して聞こえた奴の言葉からすると、奴は自らの加護を使って何か良からぬことをしているようだ。デックさんの名も呟いていたし、件の書面に関係があるのかもしれない」「ちょ、ちょっと待ってよ……それって」「ああ、この推測が正しいなら、奴が過剰とも言える護衛を雇っている理由も納得がいく。しかしこれは、ハッキリ言って……」 ソロとジャンヌが言葉を濁したのは、それが重大犯罪に繋がる可能性があるからだ。特にここ、バスカヴィル王国においては、加護を悪用して違法
last updateLast Updated : 2026-05-09
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因縁の足音

 精霊樹のブレスレットから生まれた種子は、とにかく途轍もない代物であった。 種そのものから滔々と魔力が溢れ出し、一目見ただけでそれが尋常のものではないと察したジャンヌ達は、すぐにデックの店を出て近くの森へと飛び込んだ。そして、適当な場所にその種を植えたところ、種はあっという間に芽を出し、立ちどころに周辺の草木を巻き込んでノーツの群生へと生え変わったのだ。これにはジャンヌもデックも、ジーナまでもが驚き、開いた口が塞がらなかった。 しかも、そのノーツの群生は、一定の範囲に生え変わった後は広がるのを自動的に止めた。その代わりというべきか、いくらノーツの草花を摘んでも、即座に再生して元の群生に戻ってしまう。はっきり言って、異常としか言えない有り様だ。 これが精霊の力によるものなのかとジャンヌは腹の中で唸ってしまったが、この状態が続くのならデックの危機的状況は一気に改善されることだろう。ノーツがいくら収穫しても尽きないのならば、デックの祖父が作っていたノーツ生地の服を作る事も容易いはずだ。ちなみに、ノーツはまさに麻と綿双方のいいとこどりをしたような植物で、綿のように花からも糸が作れるし、麻のように茎からも糸が作れるようだ。  その元によってそれぞれ出来る糸に個性があって、それら二つを掛け合わせて布を作れば、ヴィキュニア以上に優れた布を作る事が出来るという。これで後は、デックのテーラーとしての腕さえあれば、商売は成り立つことだろう。「ありがとう、ありがとう!何と礼を言ったらいいのか……!お嬢ちゃん、あんた、素晴らしい加護を持ってるな。植物を育てる加護なのか!?」「い、いや、私の力じゃ……」 デックに両手を握られ、感謝の言葉を繰り返されたジーナはとても照れ臭そうだが、その顔には大輪の花のような笑みが浮かんでいる。父の姿を重ねたデックの力になれたことで、彼女の心にあった後悔が少し薄れたのだろう。その笑顔こそ、ジャンヌが何よりも欲しかったものだ。  とはいえ、加護ではなく精霊樹の力によるものだと説明した所でデックが理解できるかは謎だし、仮に精霊樹の力だと明かすとなると、幽霊らしきジンロ爺さんと出会った時の話までする事になる。ジャンヌにしてみればあの村での出来事は色
last updateLast Updated : 2026-05-10
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銀の襲撃者

「それじゃ、私達はこれで。デックさん、頑張ってね。行きましょ、ジーナ」 一頻りの歓待を受けたジャンヌは、段々と困り顔になり始めたジーナを促して店の外へ出た。それだけ追い詰められていたということなのだろう、デックの感謝感激っぷりはとどまる事を知らず、あのまま放っておくと陽が落ちて夜が明けても帰らせてくれないかもしれない。流石にそれでは困るので、夜になる前に宿へ帰らなければならないと考えたのだ。「二人共、旅を終えたらまたいつでも家へ来てくれ。その時は商売も軌道に乗せて、もっともっと礼をするからな!待ってるぞ!」「あ、あはは。ありがとうございます、デックさんもお身体に気を付けて下さいね」 ジーナが丁寧に頭を下げてジャンヌの後に続き店の外へ出ると、辺りは既に暗くなり始めていた。散々、色々なものをご馳走になったので、戻っても夕飯は食べられないかもしれないが、ソロと合流して話の顛末を聞かせる必要はあるだろう。どう考えても、このままポンザが引き下がるとは思えないからだ。「街を出る前に、ポンザのことをソロと相談しないと……ん?」 デックの店を出てすぐに、ジャンヌは違和感を覚えていた。周囲が暗いのは陽が落ちたせいかと思っていたが、あまりにも人の気配が無さすぎるし、静かすぎる。デックの店の前は元々人の往来がそこそこある通りだったはずで、夜でもここまで静かなのは異常だ。まるで、二人のいる場所だけ切り取られたかのようだった。「ジャンヌさん、これ……」「嫌な予感がするわね。ジーナ、気を付けて。私から離れちゃダメよ」 ジャンヌ達と行動を共にするうちに何度も危険を乗り越えてきたジーナも、今の状況が異常だと気付いたらしい。ジャンヌの指示を受けて、即座に彼女へ寄り添い、緊張した面持ちで前を向く。その直後、ジャンヌの正面から何かが飛来した。「っと!……これ、ナイフ?」 飛んできたのは鋭く研ぎ澄まされた数本のナイフだった。ジャンヌはそれらをハバキリで斬り払い、地面へ落ちたナイフに首をかしげている。昨夜、ポンザの屋敷を偵察していたアーデに手傷を負わせたという相手も、ナイフを使っていたのではなかったか?だとすると、これはポンザが
last updateLast Updated : 2026-05-11
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