Alle Kapitel von 光煌の逆転姫~その女、追い詰められるほど煌めき輝く~: Kapitel 111 – Kapitel 120

122 Kapitel

強敵再び

「アイツ……エルドレッドと一緒にいた、ヴィヴィアンって女だわ!もう一人のローブを被ってるヤツは誰だか解らないけど。アイツらがここに来たってことは」「目的は、ジャンゴ様とアメーリア様か。……ん?待て、ジャンヌもう一人いるぞ!」 ソロの言う通り、窓の外に立つ人影は全部で三つだ。ヴィヴィアンの他はローブを被っており、一人はやや小柄で、大柄な方の陰に隠れて見えなかったらしい。わずか三人で伯爵家に攻め入るのは無謀に過ぎるが、裏を返せばそれだけ彼女達の実力に自信があるということだろう。だが、彼らにとって不測の事態な事が一つある。それは、この場にジャンヌ達がいるということだ。「一体、何が……警備兵達は何をしている?」「いけない!窓から離れてっ!アイツらの狙いは……きゃっ!?」 近づいて外を確認しようとしたジャンゴを制止したのとほぼ同時に、応接室の窓に張られていた大きな|ギィス《ガラス》が轟音と共に割れた。咄嗟にジャンヌが止めていなければ、ジャンゴは巻き込まれて大怪我を負っていたかもしれない。その直後、巻き上がる埃の陰から、ゆらりと三人が室内へと侵入してきた。「あれあれぇ~?ジャンヌちゃんじゃ~ん。どういうコト~?ジャンヌちゃんってば虐待されてたパパママと仲悪くって出禁になってるって話じゃなかった~?もう、アネットちゃんの情報使えないなぁ~」「あんた……!そんな事までっ!」「ヤダヤダ、コワ~イ~!そんな顔で見ないでよぉ~、しょうがないでしょ~、カタストロフの封印を解くにはぁ、そこのパパママを始末しとかないとってエルドレッドサマが決めたんだからぁ~。邪魔しないでよね~っ!」「ふざけた喋り方して!……私の目の前でそんなこと、やれるもんならやってみなさいよ!」 勢いよくハバキリを抜いたジャンヌは、すぐさまヴィヴィアンへ斬りかかった。刀の峰を右肩に掛け、走り込んだ勢いそのままにそこから振りかぶるようにして上段への唐竹割りを放つ。この技は刀身が身体に隠れる為、刃の軌道が読めなくなる。つまり、防御を困難にさせるのだ。「あんっ」 気の抜けた声と共に、脳天から腰まで真っ二つになったヴィヴィアンは、血飛沫
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それぞれの実力

 緊迫した状況の中、最初に動いたのはソロだった。会話の最中から|槍杖《そうじょう》に魔力を溜めていて、そこから魔法を放ったのだ。「|吹き荒れる風の魔法《ウェントゥス ウィオレントゥス》!」「ぬぅ!?」 ソロの魔力が暴風に変わり、横方向の小型竜巻がゴーシュを飲み込む。敢えて範囲を狭めているのは、ジャンヌ達を巻き込まないようにしている為だが、それでも室内は目を開けているのも困難なほどの風が吹き荒れていた。竜巻はあっという間にテーブルやソファまで巻き込んでゴーシュを窓の外へと吹き飛ばした。 狭い室内で、他人を巻き込まないようにして戦うのは、前回と同じ轍を踏むだけだ。それが解っているからこその先手である。ソロはその竜巻を追って、|飛行魔法《ウォラーレ》で低空を飛び、高速でゴーシュへの追撃に入った。   「きゃっ!?なによぉ~!アブナイじゃない~。も~!風で髪がめちゃくちゃだよぉ」「髪の心配なんかしてる余裕、ないでしょっ!」 ジャンヌは隙だらけなヴィヴィアンに斬りかかり、一瞬でその胴を薙いだ。先程は縦に真っ二つにしたが、今度は上半身と下半身が分かれた形だ。ジャンヌはそこで止まらず、跳ぶように少し離れて、そこにいるはずのもう一人のローブの人物を探した。だが、そこには誰もいない。「アイツは、いないっ?どこへ……っと!」「えいっ!」 再び背後から現れたヴィヴィアンの攻撃を、今度はきちんと読んでいて肩越しに背中へ回したハバキリで受け止めた。同じように突いてくるかは賭けだったが、読みが当たったようだ。「あれぇっ!?なんでぇ~!」「ワンパターンなのよ、アンタはっ!」 ジャンヌは素早く振り返ると同時に袈裟斬りでヴィヴィアンを斬ろうとしたが、今度はヴィヴィアンもきっちりと双剣を十字に構えて受け止めた。互いに押し合う形になったが、力比べならジャンヌの方がヴィヴィアンより上だ。そのまま一気に押し切られることを察したのか、ヴィヴィアンは後ろへ跳んで避けた。「ちっ!もうちょっとだったのに!」「いったぁ~いっ!もうっ!ジャンヌちゃんの馬鹿力ぁっ!」
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友情の喧嘩仕草

「……さて、ここからだね。どう戦うか」 ローブを脱いだマーロは少年のような見た目をした男性だった。外見的には、まだ10代前半のジーナと変わらないような年齢に見えるが、彼はれっきとした成人で、なんならソロよりも実年齢は上である。マーロは幼さの残る顔立ちで、ソロの攻略法を考えているようだった。 (まさか、マーロがメタノイアに……しかし、いくら相手がマーロでも……た、戦えるのか?) 一方のソロは激しく動揺し、完全に攻撃の手が止まってしまっていた。何故ならマーロは、ソロがMIRAになるよりも前、魔法師団へ入団しようと田舎から帝都へ出てきた頃に知り合った友人だったのだ。当時はただの占い師として働いていたマーロだったが、この頃のマーロは今よりも人付き合いが苦手で、自身が経営する占いの館から一歩も出ない引きこもり状態だった。 そんな時、彼は偶然、帝都で暴れていた犯罪者集団の秘密を知ってしまった。犯罪者集団といっても、そいつらは半グレの集まりのようなものでNeckとも言えないような連中だったのだが、そういう連中だからか、かえって加減を知らず秘密を知ったマーロを殺してしまおうと考えたらしい。その襲撃現場に居合わせたソロが、見事に半グレ集団を撃退したのだ。そこから、二人の友人関係が始まったのである。 幼い頃から人を寄せ付けなかったソロにとっては、生まれて初めて出来た友人であり、何よりも話してみれば非常にウマが合うという無二の友人だったのである。そんなマーロが敵に回ってしまった事に、ソロはショックを隠し切れないようだった。「…………よし、やっぱり|あ《・》|れ《・》でいこう。ゴーシュ、準備を」「ふん!」 そんなソロを尻目に、どこか楽しそうなマーロがゴーシュに指示を出す。当のゴーシュはつまらなそうにしているが、マーロに逆らう事はしないようだ。それだけ、ソロが一人で立ち向かうには分の悪い相手だと認識しているということだろう。或いは既に、作戦を考えていたかのような手際の良さだ。 ゴーシュは紅い手甲を握り締め、拳同士をぶつけた。すると、そこから火花が散って、それが複数の火球へと変化する。先程のソロが放った炎の塊よりは小さいが、相当な熱量が感じられる
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相次ぐ決着

 ソロとマーロ達の戦いが決着を迎えた頃、室内ではジャンゴ達を守る警備兵達がちょうど全滅した所であった。「ハッ!この程度でワタシが止められるもんかよ。さぁて、あんた達、覚悟はいいかい?」「くっ!貴様ら、本当にカタストロフを……あ、アネットがそれを話したというのか?!」 ジャンゴは問い質すように疑問を投げ掛けた。彼が気にしているのは、一族の秘事であるカタストロフの秘密を、よりによって愛娘であるアネットが他人に話したということだ。誤解したままのジャンヌから漏れたのなら解るが、家を継ぐ事の無いジャンヌには敢えてカタストロフの情報を秘密にしていたので、彼女から漏れたという事はあり得ない。つまり、ヴィヴィアン達の情報源はアネットか皇帝一族かのどちらかなのだ。 だが、一族の秘事と表現したように、それは他言無用の秘密である。ジャンゴはあの優秀なアネットがそれを話したとはどうしても信じたくないらしい。かと言って、皇帝からそれが漏れたとも思えないのだから、結果は自ずと明らかだろう。結局の所、信じたくないからわざと聞いている。それだけなのだ。  しかし、ヴィヴィアンから返って来たのは予想外の答えだった。「アネットねぇ……おっさん、よっぽど娘を信じたいんだねぇ。ま、安心しなよ。うちらがカタストロフの事を知ったのはアネットに聞いたからじゃない。|も《・》|っ《・》|と《・》|前《・》、|ず《・》|~《・》|っ《・》|と《・》|前《・》|に《・》うちのボスが聞いてきたのさ」「なに!?どういう事だ、アネットではない、のか……?!」「さぁねぇ?自分で考えれば?あの世に逝ったら考える時間はたっぷりあるよ。答え合わせは出来ないけど。あ、ちなみにうちらがカタストロフの事を知ってると知ったら、アネットは喜んで詳しい事を話してくれたから。……結局、口が軽いんだよ!あの子はさ」 アハハ!と高笑いするヴィヴィアンの言葉の端には、アネットを見下す意図が透けて見える。いつものヴィヴィアンは誰に対しても不気味なほどフレンドリーだが、内心では他人をかなり見下しているのだろう。その侮蔑に満ちた笑いが、ジャンゴの心に怒りの火を灯した。「私の娘を……愚弄するなっ!下が
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地の底で

「ヴィヴィアン達が戻ってこない?……返り討ちに遭ったのか?まさか」 果てしなく続く、巨大な通路の真ん中で、エルドレッドが呟いた。通称、ベヘモトの|大顎《おおあぎと》と呼ばれるこの場所は、この|星《せかい》に造られた原初のダンジョンであり、かつてはこの通路も、強大なモンスター達がひしめき合う地獄のような場所であった。  しかし、今となってはモンスターなどどこにも見当たらない。この通路を歩いているのも、エルドレッド達だけだ。 エルドレッドの隣に立つ騎士風の姿をした大男——グレッグは、その威圧感たっぷりの四角い顔をさらにしかめて口を開いた。   「救援に向かいますか?」「ふ、今はそんな事にかかずらっている場合じゃないよ。マーロの占いは惜しいが、ここまで来ればもう必要ない。要済みだ。ヴィヴィアンも、|赤鬼《レッド・オーガ》もね」 エルドレッドはニヤリと笑って後に続く者達へ視線を投げた。ジャンヌの妹・アネットとその婚約者・レイモンド、そして、口枷と手枷をされたジーナの三人は、そんな彼の視線に驚き戸惑っているようだ。|赤鬼《レッド・オーガ》ことゴーシュはともかく、ヴィヴィアンはあれだけエルドレッドを慕い、また彼も目をかけていたのを全員知っている。そのヴィヴィアンを切り捨てる判断をエルドレッドがするとは思っていなかったらしい。 ゾッとするような冷たい視線に射抜かれたアネットは、身体を震わせつつ、エルドレッドの言葉を待った。「アネット君、この先の門を抜ければ最深部だ。カタストロフはそこにあるとみて間違いないね?」「は、はい、間違いありません。けれど、お父様やお母様が健在だとしたら、封印は……」「君達二人が出会った時点で、封印の管理者権限は君達に移譲されているんだろう?なら、そこまで心配する必要はないさ。僕が君らの両親を始末するよう命じたのは、念の為だからね」 エルドレッドは事も無げにそういうと、再び前を向いて歩き始めた。どうしてアネットやレイモンドが彼らと行動を共にしているのかと言えば、それはメタノイアの目的が、王侯貴族の廃滅にあるからだ。エルドレッドを始めとしたメタノイアの戦力は非常に高く、アネットやレ
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戦いの理由

「よし!これでいいわね。後は……|ア《・》|イ《・》|ツ《・》|ら《・》|次《・》|第《・》、か」 ジャンヌは新品の革鎧を身に纏い、姿見で確認すると窓の外へと視線を向けた。ヴィヴィアンの攻撃でボロボロになってしまった鎧の代わりに、ジャンゴとアメーリアが提供してくれたのは、魔獣の皮をふんだんに使った革の軽鎧だ。|ルイズベア《月熊》と呼ばれる熊の魔獣は、背中に三つの大きな白い斑点模様を持ち、青みがかった黒い毛が特徴だ。それが斑点が|大三連月《ルイーナ》に見えることからルイズベアと名付けられたらしい。ルイズベア自体も高い魔力を持っていて、革鎧としては最高級の防御力を誇る逸品である。 ヴィヴィアン達を退け、捕まえたジャンヌに、ジャンゴとアメーリアは土下座せんばかりに頭を下げた。二人はジャンヌの持つ魔力の凄まじさと、それを身体能力向上に全振りした驚異的な能力を全く知らなかったのだ。その力を目の当たりにして、二人はようやく自分達の過ちを完全に認めたらしい。せめてもの罪滅ぼしにと、高級宿にも匹敵する待遇で一晩ゆっくり休ませてくれた上、革鎧まで用意してくれたのである。お陰で、体力と気力は十分回復出来た。後は、ヴィヴィアン達からエルドレッドの情報を引き出すだけだ。 革鎧の下のシャツとパンツは、ジーナが用意してくれたものをそのまま使っている。ジーナの加護の力なのか、この服はどんなに汚れて傷ついても時間と共に再生する。正確に言えば、元の状態に戻るのだ。ほのかに魔力も宿っていて、ジャンヌの身体に完璧なまでにフィットするのだから、手放す気にはなれなかった。 割り当てられた客間から出て、階段を降りて行くと、リビングではジャンゴ達とソロ、そしてライナスとマーロが仲良く談笑している所だった。ジャンヌは思わずズッコケそうになった後、足音を強く立てながらそこへ乗り込んでいく。「ちょっと!なんで、マーロが牢から出てるのよ!?」「おはよう、ジャンヌ。情報を話してもらう為だ、仕方ないだろう」「だからって……!」「まあまあ、久し振りなのにつれないな、ジャンヌ君。ちゃんと話をするし、もうやり合うつもりはないんだから大目にみておくれよ」「何が大目によ!あのメタノイア
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ライナスの目

 ベヘモトの大顎……それは、パルテレミー領の北部に位置する巨大な地下洞窟を指す言葉である。 モンスター達が跋扈していた500年前には既に、その遥か昔からこの|星《せかい》の全てのダンジョンはここから生まれたのだと噂されていたらしい。それをいつ誰が言い出したのかは定かではなかったが、パルテレミー家の先祖・銀の魔女ジェニファーが、このダンジョンの最奥でダンジョンコアからカタストロフを創った為に、それが真実だと証明された形だ。    今そこへ足を踏み入れようとしているのは、ジャンヌ、ソロ、ライナスの三人だけだ。ダルクとメイヴァはそれぞれ帝都に残り、未だ襲撃の続く貴族達への攻撃を防ぐ為に指揮を執っている。マーロによると、現時点でメタノイアには力のある幹部はほとんど残っておらず、貴族への襲撃を行っているのは、ゴーシュやリリィのような|Neck《賞金首》を雇い入れて仕立てた雑兵達なのだそうだ。雑兵と言っても、彼らは幹部として祀り上げられていないだけで、実力はそこそこあるので油断は出来ない。Neckは元々が腕利きの犯罪者達なのだから、当然だ。 ちなみに、何故Neckを使うのかと聞いてみると、それは後腐れがないからだという答えだった。狙われている貴族達とは、いわゆる為政者だ。領民や領地を守る彼らにとって、Neckはそれらを食い物にしようと狙う悪質な捕食者なのだ。当然、権力者として放置することはないし、MIRAに頼らず官憲が直接捕まえて刑に処す場合もある。それはつまり、Neckから見れば、貴族はMIRAと同等以上の敵であるということだ。そうした彼らを勧誘して戦力に使うのは、貴族廃滅を謳う彼らにとって非常に都合が良かったのだろう。  仲間にするのが簡単で、しかも使い捨てにするのも問題ないとなれば、エルドレッドがNeckを利用しようと目を付けたのは、良い着眼点だったとも言える。 そういう訳で、ここに挑むのはジャンヌ達三人(とアーデ)だけなのだ。厄介な幹部クラスの駒が少ないのなら、こちらも少数精鋭で強襲をかけようというのがソロの立てた作戦であった。 「凄いわね。これが大昔に出来たダンジョン?とても信じられないわ。天井……は、高すぎてよく見えないけど、壁なんて全然風化
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倒れ逝く者達

「はああああっ!」 ライナスが裂帛の気合を込め、強く一歩を踏み出す。地面に小さな亀裂が走るほどの踏み込みは強烈な加速へと転化し、あっという間にグレッグの懐へと潜り込んだ。そして、右手に握った剣で、グレッグの胴へと斬り込んだ。「むぅっ!?」 強烈な斬撃が、グレッグの鎧に触れた瞬間、グレッグは大きく開いた手を下ろしてライナスの肩を掴もうとした。 (なんだ!?この感覚……マズいっ!) 既に加護を発動させていたライナスは、彼の身体が見せた異様な筋肉の動きと、その行動の先が読めない事に恐怖を感じ、攻撃の手を途中で止めて咄嗟にそこから離れた。そのせいで、傷がついたのは鎧の表面だけだ。きっちりと攻撃を叩き込んでいれば、鎧を抜けただろうが、その時にはあの異常な何かにやられていただろう。ライナスの頬に冷たい汗が落ちていく。  グレッグは舌打ちをして、ライナスの顔を睨みつけている。「小僧、よく躱したな。今の攻防、普通であれば何も感じずに終わりだったはずだが……これが勝負勘というものか?」「さぁ、な……いや、な予感がした……だけだ」 ライナスの先見は、発動するとまるでレントゲンやCTスキャンをしたかのように相手の鎧や服を透過し、筋肉の動きを視られるのだが、それで視た今のグレッグの動きはかなり奇妙だった。ライナスの肩をただ掴むだけのような動作だったというのに、わずかに|全《・》|身《・》|が《・》|沈《・》|ん《・》|だ《・》|よ《・》|う《・》|に《・》|見《・》|え《・》|た《・》のだ。それが何を意味しているのか、ライナスにはまだその答えが解らない。すると今度は、グレッグが動き出す。「ふん。今のを単なる運の良さで済ますのは愚か者のすることよな。小僧、貴様は我が力の本質を見抜いていると考えるべきだろう。ならば、手の内を隠す必要もない……!」「な、に……?っ!?」 グレッグはそう言い放つと、両手をダランと下げて構えを解いた。その直後、グレッグの身長がどんどんと縮んでいく。「背、が……いや、違うっ!身体が、沈んで……!?」「フハハハハッ!その目でとくと見ろ!そして味わうがいい、我が加護『|岩間《ガンマ》』の恐ろしさを!」    グレッグの巨体が縮んだように見えたのは間違いであった。グレッグの両足が、まるで水に沈んでいくように音もなく地面の中へと入っていくのだ。
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向き合う心

 ダンジョンの最奥へとひた走るジャンヌとソロ。二人はお互いに黙ったまま、ただ、前だけを見て走っている。先程のライナスの様子から、彼が敵を引き付けようと囮になったのは明らかだ。本来であれば一緒に戦ってやりたかったのだが、それこそがエルドレッドの目論見だと思うと、それに乗る訳にはいかなかった。「…………っ!今の、何の音?」「爆発音……ライナスか?無事でいてくれればいいが」 一瞬、足を止めるほどの轟音と地響きがして、二人はライナスの身に何かが起きたことを察した。しかし、今更戻って確認する訳にもいかないだろう。今はただ、彼が無事に追い付いてくるのを祈るばかりだ。ライナスとはさほど長い付き合いではなかったが、一緒に行動してみれば、そう悪い人間ではなかったと思える。シーザーのような気安さはなくとも、彼は黙って気遣いをするタイプだ。ソロはほとんど一緒に行動していないが、数日見ていただけでも、彼が根っからの悪人でない事は解った。出来れば、シーザーのようにはなって欲しくないというのが、ソロとジャンヌの共通する思いである。 少しの間立ち止まった後、二人は後ろ髪を引かれる思いで再び進み始めた。これ以上、仲間の命を失う訳にはいかない。この先で、ジーナが二人の助けを待っているのだ。その想いが、二人を先へを歩ませたようだった。 それから程なくして、ジャンヌ達は大きな広い空間に辿り着いた。広さとしては、一般的な運動場くらいはありそうだ。高さも十分にあって、ここが最奥と見て間違いないだろう。ちなみに、このベヘモトの大顎の中は、ある程度地下に入ると、それなりに内部が明るくなっていた。光源らしい光源は見当たらないので、どうやら洞窟自体が発光しているらしい。だいたい、曇天の夕方くらいの明るさである。 その広い空間の一番奥には、遠くからでもはっきりと解る大きな扉がそびえ立っていた。あれは一体、なんなのだろう。だが、その疑問は、扉の前に立つ人物の姿で消え去った。「エルドレッドッ!ジーナはどこ!?あの子は返してもらうわ!」「来たか、ジャンヌ・パルテレミー。それに、バーソロミュー・サマーヘイズか。君達がここへ来た、ということは、グレッグは敗れたようだね。しかし、この場所で戦う彼を
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ただ一人の勝利者

「ジーナ!ソロッ!」 ジャンヌは二人を闇が包むと同時に傍へ駆け寄りしゃがみ込んだ。外から見えているのはソロとジーナの顔だけだが、ジーナの方は意識を失っているものの、表情は安らかだ。ひとまず心配はいらなさそうだが、問題はソロの方である。彼は何度も、ジーナの攻撃を受けていたはずだ。心配そうな顔をしたジャンヌに、ソロは苦笑いを返している。「俺の傷なら大丈夫だ。このくらい、じっとしていれば魔法で治療できる。それと、ジーナの胸にあった宝石が砕けたようだ。これが彼女を操っていたんだろう、もう心配ないさ」「……そ。なら良かったわ。それにしても、どうしてあそこで私の名前を出すのよ。そこはあんたの名前だけでいいでしょ?女心が解ってないのね、ソロは。そんなだからイェルダ陛下とも拗れたんだからね」「冗談じゃない。あれは勝手に言い寄られただけで、俺に落ち度などあるものか。……まぁ、女心を理解しているかは自信がないが」 ソロはそういうと苦虫を嚙み潰したような顔で、眠っているジーナの顔を見た。まだ若干十三歳という子供だからと思い、ソロは彼女の気持ちを理解しようとしていなかったのは事実だ。だが、子供であっても、いや、無垢な子供だからこそ純粋な気持ちで人を好きになる事もあるだろう。流石に子供相手に付き合おうとは思わないが、彼女の気持ちを蔑ろにせず、正しく大人として向き合う事は出来るはずだ。むしろ、そうせねばならない。それは、彼女の傍にいる人間として、大切なことなのだから。 一瞬の間が空いて、ソロはジャンヌに視線を戻し、しっかりとした目で言った。「ヤツはまだ何かを隠している……気を付けろよ、ジャンヌ」「誰に言ってるの、心配いらないわよ。そっちこそ、ジーナを頼んだわよ」 ジャンヌはそう答えて、ソロの目を見返した。互いの視線が絡み、それ以上の言葉はなくとも十分に思いは伝わった。後は、エルドレッドを倒すだけだ。そうして見つめ合った後、ジャンヌは決意を秘めて立ち上がり、エルドレッドを睨んだ。すると、それまで黙って様子を見ていたエルドレッドの身体が震え出し、大声で笑った。「ぷっ、ククク……アハハハハッ!面白い、実に面白い見世物だったよ!これがくだ
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