Alle Kapitel von 光煌の逆転姫~その女、追い詰められるほど煌めき輝く~: Kapitel 101 – Kapitel 110

122 Kapitel

夜を待って

「あんたは、あの時のっ……!アネット、どうして」 どうしてこの女と一緒にいるのか?そう問い質そうとして、ジャンヌはその質問に意味がないことに気が付いた。レイモンドとの戦いで彼にトドメを刺そうとしたあの時、彼を救う為にこのヴィヴィアンとエルドレッド、そして、もう一人の大柄な男が割って入ってきた。その際、エルドレッドはレイモンドを友人と呼んでいたはずだ。つまり、彼らは元より仲間だったのだ。そのヴィヴィアンとアネットが一緒にいるのは、レイモンドとの繋がりだろう。それは、今更聞くまでもなく解り切ったことだった。「あら、ヴィヴィアンを知っているの?それに、ヴィヴィアンもお姉様を探していたって、どういうこと?」「まぁ、色々あってね~。うちらもジャンヌちゃんに用があったんだよ~。ここで会えるとは思ってなかったけどね~」    ヴィヴィアンは詳しく説明する気がないのか、アネットの質問を受け流すように答えた。ここで困ったのはジャンヌの方だ。あの時の借りを返したいところではあるが、最優先はソロの救出である。ここで暴れて騎士団や魔法兵が出て来るような事態になれば、城に忍び込むどころではなくなってしまう。だが、ジャンヌを探していたというヴィヴィアンがジャンヌをやすやすと逃がしてくれるだろうか。  だが、そんなジャンヌに助け舟を出す事になったのは、意外にもアネットの方であった。「ふん。こんな人に何の用があるのだから知らないけれど、今日のあなたは私の護衛なんですからね。勝手な真似はしないで頂戴。いくわよ、ヴィヴィアン」「……は~い。それじゃ、ジャンヌちゃん、また近い内にね~」「へ?」 ヴィヴィアンはアネットに命じられ、あっさりと身を引いた。とはいえ、ジャンヌを逃がすつもりはないと言わんばかりの捨て台詞だ。考えてみれば、女帝の結婚披露宴へ参加するつもりのアネットにしてみれば、ここで騒ぎを起こされて困るのは彼女の方なのだろう。そして、今の口振りからすると、アネットはヴィヴィアン達とそれほど深い付き合いがある訳ではなさそうだ。やはり、彼らの繋がりはレイモンドからの流れと見るべきだ。 去っていく二人の背中を見つめ、深く溜め息を吐いて肩の力を
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仕組まれた裏切り

「おいっ!オードブルに使う具材の数が予定と合ってねぇぞ!どうなってる!?」「すみません!すぐに確認しますっ!」「バカ野郎、こんな所に皿を置くな!一体誰の仕業だ!?」「来客数の変更が入りましたっ!メイン二種類追加になります!」「前日に追加ぁ!?……魚使ってなんとか仕上げるぞ、クソッタレ!」 女帝イェルダとソロの結婚披露宴を前日に控え、城の第二厨房は混沌の極みにあった。披露宴本番では他国からの来客も予定されており、通常のコック達では手が足りない為、近隣の領地や都市から、緊急で腕利きの料理人達が集められていた。ここはまさに戦場だ。ちなみに、第一厨房は今夜の前夜祭で提供される食事を調理しているので、こことはまた違う忙しさだ。「……私、|給仕役《メイド》で入ったはずなのに、何で皿洗いさせられてるのかしら?いやまぁ、手を動かしてる方が気は紛れるけど」    そんな厨房の片隅で、ジャンヌはひたすら皿洗いに専念していた。第二厨房では本番の仕込みに加え、予め通しで全体の料理を作って手順を確認する作業も行われている為、皿洗いの仕事もそれなりに多いようだ。 ライナスの案内してくれた水族館のようなバーで相談した結果、ジャンヌ達はそれぞれ別々に城内へ侵入する事になった。ライナスは皇国の刃が使う独自のルートから、ダルクは魔法を使って裏から入り、ジャンヌは臨時のメイドとして正面から入る作戦だ。前夜祭と明日の結婚披露宴の為に、臨時で働き手を募集していたのが渡りに船だったと言えるだろう。城の中へ入ってしまえさえすれば、ソロの魔法で逃げるのはどうとでもなる。恐らくは拘束されているだろうソロを、誰かが自由に出来れば勝ちという判断だ。なお、ジーナはまだ気を失ったままなので、店で寝かされたままである。  ジャンヌはメイド服の袖をまくり、たすき掛けをして皿洗いをするという奇妙な状態に不満を覚えながらも、自由に動けるようになるタイミングを待った。 それから二時間程した頃、いよいよジャンヌに休憩時間がやってきた。   「よし、そこの臨時のメイド。休憩入ってきていいぞ、一時間で戻って来い。くれぐれも、城の中をうろうろして迷子になるなよ
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女帝の企み

 コツコツという乾いた足音と共に、ズルズルと何かを引きずる音が通路に響き渡っている。既に前夜祭は終わり、参加者達は割り当てられた部屋か、外の宿へと移動しきっているようだ。そして、歴代の皇帝達が多くの賓客や部下達と顔を合わせた謁見の間で、女帝イェルダは玉座に座り、その時を待っていた。「連れてきたぞ、イェルダ陛下」「まぁ!よくやってくれたわね。バーソロミュー、ダルク。フフフ、その泥棒猫には、私自らの手で引導を渡そうと思っていたのよ。私の夫となるべき人を五年もの間連れ回して……ようやく罰を与える時が来たんだわ」 ソロとダルクは、意識の無いジャンヌをイェルダの前に差し出すと、ソロはイェルダの脇に移動し、ダルクはその場で片膝をついた。ややあって、それまで微動だにしなかったジャンヌの身体が微かに動き出す。どうやら、目が覚め始めたようだ。「う……うぅ、ぁ……ここは、私……」「お目覚めね、泥棒猫さん。気分はどうかしら?」「っ!?あ、あなたは……か、身体が!?」 声をかけられたジャンヌはすぐに起きようとしたが、それは叶わなかったようだ。両腕は魔法で作られたロープによって後ろ手に縛られていて、両足も同様である。しかも、起き上がろうにも身体に力が入らないのだ。どうやら、意識を取り戻せただけで、身体自体は眠らされているのと同じ状態であるらしい。紫色のドレスを身に纏い、金のネックレスや紫水晶で出来たティアラを被った目の前の女が誰なのか、ジャンヌは状況から察する事が出来た。「い、イェルダ……陛下」「そうよ、初めましてね。ジャンヌ・パルテレミー。会いたかったわ」 薄笑いを浮かべるイェルダとは対照的に、ジャンヌは緊張した面持ちでイェルダを見つめている。会いたかったと言われても、ジャンヌの方は全く彼女と面識がない。顔を合わせるのも初めてだし、声を聞いたのもこれが初だ。彼女がソロとの関係を誤解して自分を殺そうとしたことは解っているが、会いたかったというのはどういう意味なのかが解らない。どう返答したものかと困っていると、イェルダの方が先に口火を切った。「私の|夫《・》を誑かし、五年以上もの間連れ回した罪は償って貰わなくてはね
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ジーナの覚悟

「ダルクを使い、あえてバーソロミューに私への警戒心を植え付けたのは、私の行動で彼を動揺させる為だったわ。実際、彼は私を警戒し、私という存在を軽視出来なくなっていた。そうやって私に意識が向けば向くほど、私から逃れられなくなる。……頭の中が私で一杯になるのですもの、当然よね。それに加えて、彼は連日連夜のように複数の貴族から歓待を受け、精神を擦り減らしていた。あのまま行けば、彼を手に入れるのは確実だったのに」 イェルダがギロリとジャンヌを睨みつけると、ダルクが再びジャンヌの元へと移動し、その頭を踏みつけた。ギリギリと骨の軋む音がするほど強く力を込められて、ジャンヌの顔が苦痛に歪む。そんなジャンヌの顔を恍惚とした表情で見つめながら、イェルダはなおも語った。「貴女という泥棒猫を得たお陰で、彼の意識には一定のやすらぎが生まれてしまったわ。それでも、何か大きなショックを与えれば、彼は動揺して心奪を受ける隙が出来る……そう思っていたのだけれど。私が思っていた以上に、バーソロミューは優秀だった。彼は私の心奪に抵抗したばかりか、貴女と逃亡の旅に出てしまったのよ!なんて憎らしい……貴女さえいなければ、彼はもっと早く私のものになっていたはずだったのに!」「く、ううぅ……!」「あの時、この国の土台にまで踏み込んだことで、私は足元を固めるまで動けなくなってしまった……あれは失敗だったわ。けれど、いつか使える時が来ればと、私はダルクを辺境に配置しておいたの。それがようやく功を奏したわね。貴女はバーソロミューを取り戻そうと、あの皇国の刃の男を連れて辺境に現れた。ダルクから暗号が来た時、私は狂喜したわ!無事にバーソロミューを手に入れられただけでなく、貴女への復讐もこの手で果たせるのだから。その為に、私は貴女達をここへ連れて来るようダルクに命じておいたのよ!」 イェルダは玉座から立ち上がり、ツカツカと足音を鳴らしてジャンヌに近づき、頭を踏みつけられて固定されている顔面に蹴りを入れた。女帝らしく、力の入っていない狙いもあやふやな蹴りではあったが、固定されている分だけ衝撃を逃がせず、それなりに痛い。|つ《・》|う《・》と鼻血が垂れていくのが自分でも解る。そんな姿を見て、イェルダは高らかに笑った。「オーホッ
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強襲と罠

「さぁさ、ご来賓の皆様!遠路はるばるようこそおいで下さいました!本日は、我らが皇帝イェルダ・ディフ・エンデュミオンの結婚式、並びに披露宴にご参列賜りまして、誠にありがとうございます!司会は私、内務大臣のコルネオが勤めさせて頂きます。宜しくお願い申し上げます!」 やけに軽いノリの内務大臣による挨拶だが、参列している人々は特に気にも留めていないようだ。太陽が燦々と輝く最中、新郎新婦はにこやかに笑みを浮かべ、参列者達は二人の門出を少し困惑しながら祝福していた。  午後三時に始まった結婚式は、月を信仰の対象とするこの|星《せかい》では異例の時間帯である。永遠の愛を神に誓うのであれば、|大三連月《ルイーナ》が浮かぶ夜に行うべきなのだが、今回に限って昼に行われるということで、人々はこれが斬新な式であると考えているからだろう。「また、本日の披露宴では、我らがイェルダ陛下より直々に催し物がございます!皆様におかれましては、必ず最後までご参列頂き、よく目に焼き付けて頂きますことを!」 コルネオが頭を下げると、会場からは割れんばかりの拍手と歓声が上がり、客席の盛り上がり具合は最高潮となった。披露宴はともかく結婚式の時点でここまで盛り上がるのは珍しい。それだけ期待が高いのだろうが、|披《・》|露《・》|宴《・》|で《・》|行《・》|わ《・》|れ《・》|る《・》|催《・》|し《・》|物《・》という言葉に、会場の隅で聞いていたライナスは言い知れぬ不快感を覚えていた。 それでも結婚式自体は淡々と、つつがなく進んでいく。この|星《せかい》では、結婚式に誓いのキスというものはない。本来は夜間に行われる式の間、たっぷりと月の光を浴びた酒を盃に湛え、互いに飲み干すのが儀礼だ。今回はそれを昼に行うものであるが、イェルダたっての希望で順番を大きく変更し、式の途中で披露宴を行い、最後の締めにそれらの儀礼を行うこととなっている。 ソロとイェルダの入場から始まり、両家の挨拶や月に奉納する舞、そして、月に捧げる祝詞の読み上げ……それらが終わると二人は一旦高砂へと移動した。同時に、二人が座る席の奥に大きな杭のような棒が建てられた。それはかなりの高さがあり、会場の最後方からでもしっかりと見える大きさだ。その棒の先端には何か
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邪悪なるものども

「っ……あれ?なにも、ない……?今の音って」 衝撃に備えて目をつぶったジーナだったが、待てど暮らせど、一向に痛みも衝撃もやって来ない。何事かと恐る恐る目を開けた時、そこには一人の若い男が、ジーナとイェルダの間に立って、イェルダの剣を黒い刀で受け止めていた。「あ、あなたっ!?一体、何者!?」「……何者とはずいぶんだねぇ。君は、|僕《・》|ら《・》の事を恐れて身を守る力を望んだんじゃないのかい?君達、全ての王侯貴族を滅ぼそうとする、|メタノイア《僕ら》が怖かったんだろう?」「あ、あああっ!?まさか、まさかっ!」 黒髪の若い男――エルドレッドは、薄笑いを浮かべてイェルダの剣を払った。同時に、高砂の裏に隠れていた何人もの騎士や魔法兵達が飛び出してきて、エルドレッドを取り囲む。その先頭に立っているのは、騎士団長ギリアムであった。「……臆病なことだ。結婚式や披露宴にこれだけの兵を忍ばせておくなんて。まぁ、その臆病さが、人を操って安心を得ようとする加護に繋がったのかも知れないな。実に厄介な力だ」 エルドレッドは客席を睨みそこにいる不甲斐無い部下を見据えた。だが、既に心奪の影響を受けてしまっているヴィヴィアンは妄信するエルドレッドの睨みにさえ反応していないようだ。それだけ心奪が強い影響力を持つ証だろう。  エルドレッドは溜息を吐いて、男達の陰で震えるイェルダを睨んだ。   「やってくれたね。僕のかわいい部下までも支配下に置くとは。しかし、どの道、|目《・》|的《・》|の《・》|為《・》|に《・》|は《・》君を生かしておくつもりもなかったんだ。少し早いが、ここで退場してもらおうか」「なっ、何をっ……!この状況で、あなたたった一人なら、こちらこそ好都合よっ。ギリアム、他の皆もやっておしまいなさい!」    絶叫するような声で、イェルダの指示が飛ぶ。それを受けたギリアム達は、すぐさまエルドレッドへ襲い掛かった。まず背後から斬りかかった騎士の攻撃を、エルドレッドは気配だけで読み切って躱し、返す刀で半回転しつつ切り伏せる。包囲に一人分の穴が開き、そこへするりと入り込んだエルドレッドは次々に騎士達を斬り捨てた。踊
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エルドレッドの悪意

「不変……だと!?それに、狂王が父親?そうか、コイツは500年前から……っ!」 ソロはその答えに辿り着くと、すぐさまアーデを拘束している|捕獲する魔法《コンプレヘンド》を解き、ジャンヌを眠らせる魔法を解除した。しばらくすればジャンヌは目覚め、アーデも動き出すだろうがそんな事を気にしている状況ではない。エルドレッドの加護が本当に不変という永久不滅の存在であるならば、彼は文字通り500年もの昔から生きる不死身の怪物だ。ジャンヌのような超再生回復力とは違う、究極の不死性を持っている事になる。そんなものを相手に、魔力のリソースを他に使っていては勝てるはずもないだろう。 ソロは隣で腰を抜かしているイェルダを右手で抱え上げると、左手に|槍杖《そうじょう》を呼び出して構えた。エルドレッドの狙いは、王侯貴族を滅ぼすことであり、その後に自分が王として君臨する事のようだ。ならば、真っ先に狙われるのはイェルダだろう。彼女を死なせる訳にはいかなかった。「……ほう。君は確か、バーソロミュー君だったかな?中々に判断が速いね。なるほど、君は確かに優秀なようだ。だが、その足手まといを抱えた状態で、僕に太刀打ちできるかな?」「出来るかどうかじゃない。やるしかないんだ。……|飛行魔法《ウォラーレ》」 ふわりとソロの身体が宙に浮かび、とても手や足では届かない高さまで移動すると、ソロは槍杖に魔力を集中してそこから無数の稲妻を発生させた。一瞬にして5つの稲妻が、エルドレッドを狙う。  エルドレッドはニヤリと笑みを浮かべたまま、それらの落雷を素早く躱していった。稲妻の速さは途轍もないスピードで、常人には回避する事など不可能なはずだ。だが、彼はそれを苦も無く躱し続けている。対するソロは、躱されても決して動揺することなく、次々に稲妻を繰り出していく。一方的に見える攻防だが、それでもエルドレッドは表情を崩さない。「ふ、炎や氷ではなく稲妻を使うのは、その速さだけでなく、当たれば僕を無力化出来ると踏んでのことかな?不死身の僕を止めるにはマヒでも狙うしかないと。……面白い判断だ、だけどね」 高砂の檀上が無惨な変化を遂げる中、エルドレッドは魔力を込めたムラクモを構えて一発の稲妻を受け止め、|逸《・
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向き合う決意

「――今の所、被害状況はこのくらいだ。メタノイアか、奴ら思っていたよりもずっと大きな根を張っていたようだな」 テーブルの上に広げられた書類を見つめて、ダルクが呟く。正面の椅子にはソロが座っていて、同じように書類を見て、顔をしかめている。メタノイア首領、エルドレッドの襲撃から一週間、この間に彼らはその宣言通り、複数の国に対して激しい攻撃を始めていた。狙いはもちろん、各国の王侯貴族達だ。「以前、シーザーから聞いた話では、奴らは10年前から活動していたらしいからな。いや、そもそも|奴《・》が500年前から生きているのなら、時間は十分過ぎるほどあったはずだ。反王侯貴族を謳っていながら、自身が王になると言い切る……理解に苦しむよ」    二人がいるのは、ソロの私邸の一室だ。五年前、ソロはイェルダの魔の手から逃れるためにジャンヌを連れて国を出たのだが、その際、この家屋敷と財産は全て処分し、残された使用人達に現金を分配するよう筆頭執事のカムランに命じていた。しかし、カムランと彼を始めとする使用人達一同はそれを拒否し、一丸となってこの家屋敷を守ってきたらしい。いくつかの宝石などは処分して現金化したが、それを元手に事業や投資などをしてこの家だけは死守してきたというのだから、それを聞いたソロも驚いたようだ。それだけ、ソロが彼らに慕われる主であったということだろう。 結局、イェルダとソロの婚約と結婚披露宴は、騒動の影響で完全に流れてご破算となった。今回の一件で、イェルダが自らの加護により人々を洗脳していた事も明らかとなってしまい、皇国内には貴族達に対する不満や疑念がにわかに立ち始めたことも影響しているのだろう。今の時点ではまだ、反貴族階級の暴動などは起きていないが、既にメタノイアは動き出している。今頃、各国の貴族達は頭を悩ませているはずだ。   「それより、イェルダ陛下はどうしている?怪我の方は、まだ?」「相変わらず、自室に引き籠って姿をみせとらんよ。医師が言うには怪我はほぼ治っているはずだが、精神的に参ってしまってるようだ。まぁ、自信満々に集めた対メタノイアの戦力が、ああも役に立たなかった上に、自慢の心奪を打ち消す能力まで現れては無理もないだろう。陛下付きの侍女の話じゃ、ベッド
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告げられた罪

 ――パルテレミー邸。帝都に程近い場所にある、伯爵領としては小さな領地パルテレミー領。その中央に位置する領都パルテノに、その屋敷は存在する。 「パルテノ、か……家を飛び出して以来だわ」 ジャンヌはポツリと呟きながら故郷の街並みを見つめていた。だが、街の中を歩いたのは五年前に家を出たあの日だけである。生まれてから十五年間はこの街にいたはずなのに、ジャンヌには街の中を歩いた記憶がないのだ。当時はそれについて何も思っていなかったが、あれから五年間、ソロと共に旅をしてきた中で、それが異常な事だったと気付かされた。今更あの頃の暮らしについて文句を言うつもりはないが、あの時、もっときちんと不満を口に出せていたら、或いは違う人生もあったのではないか?そんな風に思うことはあるようだ。    前を歩くソロは、思い詰めた表情で街の中を進んでいた。伯爵邸があるにも関わらず、この街はどこまでも平和で、メタノイアがあれほど暴れていることなど微塵も感じさせない穏やかな空気が流れている。エンデュミオン皇国内でも貴族の屋敷がない村や街は襲撃の対象になっていない為、こうした平和そのものな場所も少なくないのだが、パルテレミー伯爵の屋敷があるというのに平和でいられるのは、やはり異常だ。ソロはジャンヌの見立て通り、パルテレミー家とメタノイアの間には何らかの繋がりがあるのは間違いないと感じていた。「ここが、パルテレミー家の屋敷か。確かに大きいな」 しばらく歩いて辿り着いたパルテレミー邸は、まさに白亜の豪邸と表現して差し支えない屋敷であった。流石に歴代皇帝から重用されてきただけあって、その威容と歴史を感じさせる佇まいは圧倒的である。貴族の屋敷はどれも立派なものだが、これは別格だ。伯爵よりも爵位が上な、公爵の邸宅に匹敵するほどの大きさと立派さである。大きな門の前には私兵が二人立っていて、門の向こうには背筋を伸ばした中年のメイド、メイド長のスーラが立ち、ソロ達を出迎えている。「ようこそおいで下さいました、バーソロミュー・サマーヘイズ様。主がお待ちでございます。」    恭しく頭を下げたスーラは、チラリと視線を二人に投げた。ソロはともかく、後ろにいるジャンヌが何者か疑問を抱いているのだろう。
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星を滅ぼす力

 どのくらいの時間が経っただろう?時間にすれば数十分だろうが、その場にいた全員にとっては永遠にも等しい時間が過ぎていたはずだ。そんな静寂が支配する空間で、最初に口を開いたのはソロだった。「……失礼。今のジャンヌの話を聞いて気付きましたが、お二人はアクシア公爵の事をご存じだったのですか?」「…………ご存じも何も、我がパルテレミー家とアクシアは……いや、そうか。そんな歴史さえも、先帝は無きものにしたのだったか」 ジャンゴは溜め息交じりにそう呟くと、天を仰いで硬く目をつぶった。そこから続く言葉が何なのか、ジャンヌとソロは固唾を呑んで見守っている。「サマーヘイズ君もジャンヌも、銀の騎士と銀の魔女の物語は知っているだろう?……あれは絵本などにもなっているからな、この国の人間なら、知らぬ者はいないはずだ」「ええ、私達の……いえ、パルテレミー家の先祖が、銀の魔女だと」「ふ、言い直さなくとも|私《・》|達《・》で間違っておらんよ。お前が本当に、アクシア家の血を引く人間であるならばな」「え?それって、どういう」「待て、ジャンヌ。銀の魔女がパルテレミー家の先祖で……まさか?!」「流石にサマーヘイズ君は察しがよいようだな。そう、そのまさかだ。……無数に生まれる怪物達の元凶、|星《せかい》を滅ぼす力と戦い、それを封じた銀の魔女と銀の騎士。その最初の銀の騎士が、アクシア公爵家の祖先だったのだ」「ええっ!?」 ジャンゴの発言にもっとも驚いたのは他でもないジャンヌ自身だった。あの真実を告げた時から、自分とこの家の繋がりは完全に断たれると信じていたはずが、予想外な所から再び繋がったのだ。ジャンゴやアメーリアとの縁を断ち切りたい訳でもなかったが、この期に及んでそれが切れないというのも蟠りが残る。そんなジャンヌの驚きを無視してジャンゴは話を続けた。「500年前、かつて狂王アグリッパがこの|星《せかい》の統一を掲げて戦乱を起こした頃。人々は心身ともに疲弊しきっていた。モンスターを生み出し続け、人類を存亡の危機に晒すダンジョンの存在と、|大三連月《ルイーナ》がもたらす魔力によって力を得た魔獣達……それに加えて、
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