シルクをふんだんに使った天使の衣のような純白のウエディング・ドレスは、私にとって死装束と同じだった。聖ロザリア大聖堂の高い天井から降り注ぐ光は、残酷なほどに美しい。だけど私の手を取る男――ロレンゾ――の指先は爬虫類の硬質な皮のようにざらつき、冷たく、どこか湿っていた。「リリー、笑え。さあ、笑えよ。お前の父親が作った借金は、この結婚で帳消しになるんだからな。くくくく……」ロレンゾが嘲笑を含んだ耳障りで汚らわしい声を、私の耳に注ぎ込んでいく。「今夜から三日間は寝かせやしないさ。俺無しじゃ生きられない身体に躾けてやる。娼婦のように悶え続ける女にな。ヒヒヒヒヒ……」「………」下卑た言葉がどんどんとつづられていく。だが、どれほど耳障りで汚らわしかろうと、私にはその汚された耳をぬぐうことが許されなかった。彼の言葉通り、この結婚で一族に科せられた莫大な借金が帳消しとなる。私は今日、家門を救うための「生贄」として、この男に売られた。彼は父を裏切り、我が家を没落させた成金のマフィアだった。騙されていたと言っても、証文もあり、借用書も存在している。まともに働いたとしても、借金の返済に何百年かかるかわからないし、当然、一族の臓器を売っても足りる金額じゃない。私は精一杯の反抗として、無表情を保とうと努めた。式を進める司祭の声が遠くから聞こえる。 「……汝、この男を夫とし、病める時も健やかなる時も――」司祭が言葉を紡げば紡ぐほど、私の魂が死んでいく音が心の中で響いていく。「――誓いますか?」私の魂を殺す、最後の言葉。この誓いが、私を永遠の檻に幽閉する契約の言葉となる……。 「……はい。誓い――」その時だった。重厚な大聖堂の扉が、凄まじい衝撃と轟音と共に吹き飛んだ。参列者の悲鳴が渦巻き、ステンドグラスの破片がダイヤモンドの雨のように降り注ぐ。薄れゆく爆煙の中、砕け散ったガラスの破片が煌めくウエディング・アイルを、一人の男がゆっくりと歩いてくるのが見えた。漆黒のオーダーメイド・スーツ。彫刻のように整った、しかし氷のように冷徹な顔立ち。その手には、男の眼差しと同じくらい冷たく黒い光を放つ細身のチェコ製自動拳銃が握られている。「き、貴様は……ダンテ!」その男が誰か分かったのだろう。ひきつった声を漏らしたロレンゾの顔から血の気
آخر تحديث : 2026-04-01 اقرأ المزيد