All Chapters of 大嫌いな幼馴染み魔女と許嫁になった: Chapter 11 - Chapter 20

33 Chapters

11話 使い魔として

「総司《そうじ》? 入るぞ〜」 「おう」 「って、お前まだ裸なのかよ……。服着ろよ」 「ん? おぉ……」 そういや裸のままだったわ。 ちっ……あのクソアマ。人の服を台無しにしやがって。あとで服代請求してやるからな。 「体調は大丈夫か?」 「一応な」 「花咲に感謝だな」 「不本意ながらな……」 まぁ確かに今回は助かった。あのままじゃ、やばかったもんな。 「ねぇ総司君」 「ん?」 「今回の件。何か心当たりないの?」 「まぁ……あるには、あるな」 俺の体調が悪くなったのは昨日の夜から。そんでもって、何か特別なことをしたかというと、思い当たるのは一つしかない。アヤメに血を吸わせたことくらいだ。 多分、原因はあれだろうな。 「それ、私達にも話して」 「断る」 「……何で?」 「約束があるからだ」 アヤメが吸血鬼だってのは、秘密にする約束だ。つまり、アヤメに血を吸われたことを話すことは出来ない。 「ふざけないでよ。誰との約束だか知らないけど、そんなこと言ってる時じゃないでしょ!」 「総司。俺も百合《ゆり》と同じ意見だ。流石に友達が死にかけたのに、事情を知らないってのは気分が悪い」 「……悪いな、翔《かける》。話せない」 翔達が、吸血鬼のアヤメを差別するとは全く思ってない。だけど、アヤメの事情を俺が勝手に話すわけにはいかない。 「あっそ。じゃあいい」 黒川はそう言うと、ポケットから黒い何かを取り出した。 「いって!」 黒川はそれを持ったまま、大きく振りかぶって、頭を思いっきりぶん殴ってきた。 「な、何すんだよ!」 「うるさいな。総司が悪いんだからね」 いや、確かに話さなかった俺も悪いと思うけどさ、だからって何かよく分からない物でぶん殴るか普通? めっちゃ痛かったんだぞ。絶対にコブになってるからな! 「え、えっと……百合? お前、何したの?」 「総司の記憶を抜いた」 「は? どういうことだ?」 「これ、私が作った魔法具」 ちょっと待て。俺を殴ったやつって、魔法具だったのかよ。 「USBメモリ? 何か、二人で一人の探偵が変身の時に使うあれみたいだな」 「まぁ、それっぽく作ったからね」 あぁ……通りで。やたら既視感あると思った
last updateLast Updated : 2026-04-02
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12話 魔女の落とし前

吸血鬼の魔力を辿って転移した先は、どこかの家の中だった。ここはリビングっぽいね。ありゃりゃ、ちょっと悪いことしちゃったなぁ。アタシ土足だわ。 リビングに居たのは三人。大人の男性と女性が一人ずつと、子供の女の子が一人。見た感じ親子ってところかな。 「見つけた」 間違いない。昨日今日とボケナスと一緒にいた子だ。魔力も一致している。 「だ、誰だお前は!」 「悪いけど、あなたには用はないから、ちょっと眠ってて」 父親らしき人が、アタシに向かって来たけど、睡眠魔法ですぐさま寝かせる。同時に母親らしき人にも同じ魔法をかける。そして、記憶改ざん魔法で、二人からアタシの記憶を消し去る。 「さて……」 「うぐっ!」 はなかっから逃がす気はないけと、念にはねんをだ。アタシは女の子に拘束魔法をかけて身動きを完全に封じる。 「場所、変えよっか」 転移魔法でホワイトルームに移動する。ここなら、誰にも邪魔されずに済む。例え、何があってもね。 「かなりむちゃくちゃするね。姫乃《ひめの》お姉ちゃん」 「何で、アタシの名前知ってるのかな?」 「にひひ。何でだと思う?」 「あうっ!」 ニヤリと意味ありげに笑う少女。アタシを試している、そんな感じの笑みだ。 気に入らないなぁ……。この子、自分の立場理解出来てないのかな? それともアタシのこと舐めてるのかな? たかが吸血鬼の分際で、それもこんな子供のくせに……。 アタシは重力魔法をかけて地面に押し潰す。 「答えて。何でアタシの名前知ってるの?」 「ち、血の……記憶を、読んだ……から」 「血の記憶?」 「きゅ、吸血鬼は……吸血すると……、吸血した人の記憶を、読むことが出来るの……」 なるほどね。だから、アタシの名前を知ったわけか。 「こ、答えたんだから……これ、何とかしてよ……。く、苦しいから……」 「まぁいいか」 重力魔法と拘束魔法を解除して、少女を一旦自由にする。どうせ、ここにいる限りどう頑張っても逃げられないんだし、無駄に魔力を使う必要もないしね。 「はぁ……はぁ……」 「さて、まずはあなたの名前を教えてくれないかな?」 「あ、アヤメ……。千早アヤメ」 「じゃあさ、アヤメちゃん。どうやって死にたい?」 「……え?」 アタ
last updateLast Updated : 2026-04-02
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13話 反省と明日の予定

「心配か?」 「そりゃあな……」 モナは殺したりはしないとは言ってたけど、それはあくまで、モナの予想に過ぎない。 ちくしょう。本当だったら、今すぐにでも飛び出して行きたい。だけどそれは無理だ。モナは今、黒川と一緒に下のリビングで部屋には翔《かける》しか居ない。ただモナは気配で俺がどこにいるか完璧に把握してる。だからこの家から出るのは不可能だ。 「花咲のこと信用してないのか?」 「そういうわけじゃない。ただ……」 「ただ?」 「俺はあいつのこと知らないんだよ」 なんせ、ここ何年もまともに会話してないからな。あいつがどういう人間で、何が好きで何が嫌いなのか、何を考えているのか、何もかも分からないことだらけだ。 だから、こうなった時、あいつが何をするか全く想像出来ない。 「翔はどう思う?」 「ん〜、まぁよく分からねぇけど、多分大丈夫なんじゃないか?」 「適当だな、おい」 「俺も花咲のことは、あんま知らねぇしな。でも、百合《ゆり》が大丈夫って言ってるから大丈夫だろ」 「黒川基準かよ……」 「おうよ。俺は百合の言うことは、どんなことでも百パーセント信用することにしてるからな」 その考えは危険だから改めた方がいいぞ……。 にしても、モナだけじゃなく黒川もそう言ってるのか。 「なぁ総司《そうじ》」 「ん?」 「この際だから、花咲のこと知ってみたら?」 「は? どういうことだよ?」 「そのまんまの意味だよ。知らねぇから不安なんだろ? だったら知ればいいだろ」 いやまぁ……言ってることは分からんでもないけどさ。だからって、どうすりゃいいんだよ。 今さらあいつのことを知れって言われても難しいぞ。 「どうだ?」 「どうだって言われてもなぁ……。そもそもあいつのことは、どうでもいいから興味無い」 「それを言ったら元も子もないだろ……」 「そりゃそうだけどよ……」 だって仕方ないだろ。本心なんだから。 つか、俺はアヤメのことが心配なだけで、あいつ自体はどうでもいい。つまり、あいつのことなんざ、知らんでもいいってことだ。 「ったく……お前ってやつは。まぁいいや。とりあえず、ほら。これやるよ」 「あ? なんだこれ?」 ケーキバイキングの無料招待券? 「それで花
last updateLast Updated : 2026-04-02
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14話 魔女のデート?

き、来てしまった……。ケーキバイキングに。 やっばぁ……どうしよ。ここまで来といてなんだけど、今すぐ逃げ出したいよ……。 いやね? 嫌ってわけじゃないのよ。単純に気持ちが追いついてないだけなのよ。 例えるなら、ソシャゲのガチャで天井寸前のところで、金欠なんだけど課金するかしないかで迷ってる感じ。 あーぁ……まじでどうしましょうね? でもなぁケーキ食べたいしなぁ。フルーツタルトケーキ、チョコケーキ、モンブラン。それを口いっぱいに頬張ってから、ガムシロップを大量に入れた紅茶で流し込む。これが最高なのよ。 うへへっ、想像しただけで、よだれが出てきた。 「何してんの、お前?」 「うえっ!?」 び、びびったぁ……。 こんの……ボケナス……。い、いきなり後ろから話しかけるなっての。心臓が止まるかと思ったでしょうが。 「べ、別に何でもないよ」 「だったら店の前で気色悪い笑いしてんなよ。営業妨害だろ。通報するぞ」 「き、気色悪くないし! てか通報するな!」 「はいはい。ほら、さっさと入るぞ」 「ムカつく……」 てか、何でそんなに落ち着いてるのさ。アタシなんて、昨日から色々と考えちゃって寝れなくて大変だったのにさ。 「はぁ……」 あーやめやめ。いったいアタシは何を期待してるんだろう。バカみたい。 アタシは嫌々を演じてるけど、ボケナスはガチで嫌なんだから。そりゃあ、あんな感じにもなるよね。 まぁ……いつものことだ。今さら気にしたって仕方ないことだ。 とりあえずまぁ、せっかく高木君が気を利かせてくれたんだし、今日のところはケーキバイキングを楽しむとしよう。 ―――― ―― 「食い過ぎだろ……」 「は? 何言ってんの。食べるでしょ。食べ放題だよ」 それにまだ、十個しか食べてないし。全然足りてないし元も取れてない。ここでやめるとかありえないっての。 それにしても、ここすごいね。ケーキがめっちゃ美味しいのもあるけど、何より種類が豊富。あれもこれも美味しそうで、次どれ食べようか迷っちゃうね。これはいっその事、コンプ目指しちゃおうかな。 いやはや、高木君にまじ感謝だね。今度ジュースの一本でも奢ってあげよう。 「デブるぞ」 「うるさいわっ! デブる言うな!」 せめて太るって言え。
last updateLast Updated : 2026-04-02
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15話 休日ホームラン

ゴールデンウィーク。実にいい響きだ。朝日が昇る直前まで起きてようが、昼過ぎに起きようが、誰にも文句を言われない。 こんな素晴らしい日々があっても良いのだろうか? いや、なくてはならない。人間、休みは必要なのだ。なんだったら、常に休みでもいいくらいだ。 働きたくない、学校に行きたくない。お布団と結婚したい。アイ・ラブ・休日。アイ・ラブ・ゴールデンウィーク! 要するに、だ! 俺はこのゴールデンウィークを余すことなく最大限に満喫する予定だ。具体的には、可能な限り家から出ず、お布団の上で、ぐーたらぐーたら、ごろごろ、ぐでぐてに、寝たい時に寝て、起きたい時に起きて、食いたい時に食う。怠惰の化身になる予定なのだ。 そう……その予定だったのだ。その予定を崩しやがったクソボケがいる。それが、こいつ……高木翔《たかぎ かける》だ。 「んで? こいつぁどういう了見だ? えぇ?」 「何でお前、そんなにキレてんだよ……」 「当たり前だろ。せっかくの休日、しかもゴールデンウィークにバッティングセンターなんざに呼び出しやがって。事と次第によってはぶっ殺すぞ」 「そこまで言うか!?」 当たり前じゃボケ。俺は昨日寝たのが朝の五時だ。それを七時に電話かけてきやがって。まじ許さん。こちとらクソ寝みぃんじゃ。 「まぁ落ち着け。どうせ暇だったんだろ? だったら軽く運動しようぜってことだ」 「……帰るわ」 「アタシも」 「いや何でだよ!」 「当たりめぇだろ! そんな下らん理由に付き合ってられるか!」 ったく、ふざけやがって。何が楽しくて、せっかくの休日に、ゴールデンウィークに、野郎とバッティングセンターで汗を流さなくちゃいかんのだ。そこまで暇じゃないわ! 「いいのか? 後悔するぞ」 「は?」 「今日のホームラン賞は、焼肉食べ放題券だ」 「なんだって?」 おい。おいおい。おいおいおい。そいつぁ聞き捨てならねぇな。そんな夢のような、ドリームチケットが、賞品とかまじか。太っ腹もいいところだぜ。 「どうだ、総司《そうじ》? 少しはやる気になったか」 「あぁ。そういうことなら話は別だ。全開バリバリだぜ」 ったく、このヤンキーもどきの赤髪リーゼントがよ。そういうことなら早く言えっての。 「さっすが。んじゃ、いっちょ行こうぜ
last updateLast Updated : 2026-04-02
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16話 魔女と吸血鬼少女

「ささっ、アヤメちゃん。好きなの頼んでいいよ。アタシの奢りだから」 「うん。ありがと、姫乃《ひめの》お姉ちゃん」 アタシは今、アヤメちゃんと二人でとある喫茶店に来ていた。知る人ぞ知る隠れた名店とまでは言わないけと、訳ありの人達が来る秘密の隠れ家的喫茶店だ。 と言っても、やばい系の人達ではなくて、主にアタシのような魔女やアヤメちゃんみたいな吸血鬼のような種族といった、普通とはちょっとだけ違う人達だ。 まぁようするに、アタシ達は普通に生きてるつもりでも、残念なことに色々とあるってことだね。そういう人達が、内緒話や近況報告などで使うのがこの喫茶店だ。因みに店名は、ミッション。ちょっとミステリアスな感じがしてかっこいいね。 「それじゃあ、イチゴパフェとパンケーキに、ショートケーキとオレンジジュース」 「ちょっとアヤメちゃん? 好きなの頼んでいいとは言ったけど、頼み過ぎじゃないかな?」 「私の家の家訓でね、奢ってもらう時は図々しくしよう。なんだよ」 「そ、そっかぁ……」 おっそろしいほど、クソみたいな家訓だね。流石のアタシもびっくりだよ。 って、うわっ高っ! え、嘘でしょ? こんなにするの? その辺のファミレスより倍ぐらいするじゃん。 まじかぁ……いつも来る時は、お母さんと一緒だったから、値段とか気にしたことなかったんだよね。お母さん、いつも好き勝手頼んでごめんなさい。次からはもう少し謙虚になります。 あー……アタシのバイト代がぁ。せっかくこの間、百合《ゆり》と作った魔法具で入ったバイト代が消えちゃうよぉ。 「はぁ……まぁいいや。とりあえず、本題に入ろっか」 「そうだね」 本題とはもちろん、ボケナスのことだ。昨日、アヤメちゃんはボケナスの血を吸った。つまり、血の記憶を見たったことだ。 「それで何か分かったの?」 「うん。魔法を解くための条件の一つが分かったよ」 「それ、本当?」 「嘘言っても仕方ないじゃん。本当だよ」 まじか。すごいよ。まさか、こんなにあっさり分かっちゃうなんて。アタシなんて何年もかけてやっとだったのに。天才魔女って言われてるけど、アタシもまだまだってことなのかな。 「それでその方法は?」 「好き」 「え?」 「総司《そうじ》お兄ちゃんが、姫乃お姉ちゃんに好きって
last updateLast Updated : 2026-04-02
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17話 ストライクアウト

「総司《そうじ》。お待たせ」 「おう」 至福のゴールデンウィークが終わって、日常が戻ってきた。そして今日は、前々から予定されていた三者面談の日だ。 と言ってもまぁ、俺は滞りなく終わった。 「三者面談どうだった?」 「まぁ、可もなく不可もなくって感じだな。黒川は?」 「私も似たようなものかな」 「だと思った」 三者面談の初日。一番最初は俺で次が黒川だった。お互いに十五分くらいで終わった。この時期の三者面談にしては、大分早い方だろう。 「ま、私も総司も、ほとんど進路は決まってるようなものだしね。特に話すことはないって感じだもんね」 「だなぁ」 俺も黒川も成績はそこそこ。平均点ブラブラって感じだ。だからまぁ、今まで通りやってれば留年することはまずない。卒業後の進路も、俺は料理の専門学校。受験に関しては面接だけ。何だったら形だけの面接だ。言ってしまえば、金を払えば誰でも入学出来るところだ。イージーである。黒川は家の魔法具屋を継ぐから、就職先が既に決まってるようなもんだ。 要するに、二人とも何かやらかして留年とかしない限り特に問題なしってことだ。 だからまぁ、特に話すこともなく速攻で終わったわけだ。 「おばさんは?」 「もう帰ったよ。この後、父さんと豪華なディナーに行くんだと」 「相変わらず、ラブラブしてるねぇ」 「少しは歳を考えてほしいけどな。黒川のところは?」 「お父さんも帰ったよ。仕事が溜まってるんだって」 「そうか」 黒川ほどじゃないけど、おじさんも魔法具職人としては一流だからな。いつも依頼で忙しそうにしている。そしてよく、黒川の実験に付き合わされて怪我してる。可哀想に……。 「んじゃまぁ、約束通りちょっと付き合ってよ」 「あいよ〜」 ―――― ―― 「またここかよ……」 黒川に連れられて来たのは、ついこの間来たばっかりのバッティングセンターだった。 ったく、このさっさと付き合っちまえよカップルときたら、思考回路同じなのかよ。ラブラブでいいことですね。鬱陶しいからさっさと付き合えよ。まじでさ。 「またって何?」 「ゴールデンウィークに来たんだよ。翔《かける》と」 「あー、なるほどね。でも安心して。今日やるのはピッチングだから」 「は? ピッチン
last updateLast Updated : 2026-04-02
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18話 魔女の占い

今日のアタシは機嫌が悪い。えぇ、えぇ、そりゃもう、とてもとても機嫌が悪いですとも。どのくらい悪いかというと、氷をゴリバリと噛み砕くくらいには機嫌が悪い。おかげで、頭がキーンっとなって、二割増ですよ。 「ねぇ姫乃《ひめの》お姉ちゃん」 「何?」 「姫乃お姉ちゃんって、バカなの?」 「いきなり酷い言いようなだね。何、反抗期?」 五歳にしては少しばっかり早すぎるんじゃないかな? アタシちょっと心配だよ。このままいったら、高校生になる頃にはギャル系ヤンキーになっちゃうよ。 「いや、だってさ。コンビニで買ったブロックアイスを齧りながら、店番してるって中々の絵面だよ……」 「だって仕方ないでしょ。氷でも齧ってないとやる気でないんだもん」 「意味わからないよ……。てか、何で私も呼ばれてるのさ」 「そんなの話し相手に決まってるじゃん。アタシの使い魔なんだからそのくらいはやってよ」 「えぇ……めんどくさぁ」 めんどくさぁとはなんだ。使い魔は主のために身を粉にして働くべきだろうに。まったくやれやれ、これだからお子ちゃまは甘いんだから。今のうちにアタシがしっかり教育しとかないとね。 「そもそも何で、姫乃お姉ちゃんは店番してるの?」 「お母さんにやれって言われたの。罰だって」 「罰? 何やらかしたの?」 「失礼だなぁ、やらかしてないよ。ただ、少しばっかり、学校の成績が悪くて、今日の三者面談で怒られただけだよ」 「よく分からないけど、多分それって、姫乃お姉ちゃんが悪いよね……」 うるさいうるさい。アタシは何も悪くない。アタシは天才魔女なの。だから、成績なんて小さいことは気にしないの。そもそもの話、たかが学校の成績程度で、大騒ぎする方が間違っているんだ。そう。つまり、世の中が悪い。 お母さんもお母さんだよ。何もあんなに怒らなくてもいいのにさ。しかもゲンコツまでしてくれちゃうし。おまけに魔力込みでさ。すんごい痛かったんだから。 まったくもう、嫁入り前の娘になんて事するんだ。 それにアタシは天才魔女なんだよ。その天才魔女の国宝的頭に何かあったら、どう責任取るつもりでなのかね? その辺をよく考えてほしいものだよ。 「はぁ……店番暇ぁ」 「確かに全然お客さん来ないね」 「もう閉めちゃおっか」 「勝手に閉め
last updateLast Updated : 2026-04-02
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19話 先輩のお願い

「おーい、総司《そうじ》。お客さんだよ」 「客?」 昼休み。購買の激しい戦いに勝利して、焼きそばパンとたこ焼きをゲットした俺は、意気揚々と教室に凱旋したら黒川が言ってきた。 ったく、客って誰だよ。俺は今から楽しいランチの時間なんだけどねぇ。 「おっす。待ってたぜ、総司」 「近藤先輩じゃないっすか」 俺の席にドカッと座って、黒川と話していたのは、近藤勇《こんどう ゆう》先輩だった。この人は、俺らが中学の時からの先輩だ。 てか、先輩が後輩の教室でくつろぐなよ。普通に周りのやつが気まずいだろ。 「何してんすか?」 「お前を待ってたんだよ。ちょっと頼みたいことがあってな」 「お断りします」 「即答かよ!?」 当たり前じゃないっすかぁ〜。あんたの頼みなんて、いっつもろくな事ないんですからぁ。 あと普通にめんどくさい。何だったらこっちが本命なまである。 「まぁそう言わずに、話くらいは聞いてあげたら? ほら、頭丸めてくれてるんだし」 「いや、それは野球部だから、強制坊主なだけだろ」 「お前ら言いたい放題だな……」 まぁ事実だからな。 てか、この人、坊主なうえに目付き悪いしガタイもいいから、シンプルに見た目が怖いんだよなぁ。 そんなんだから、女子がビビって彼女出来ないんだよ。 「まぁとにかくだ。総司、お前に頼みがあるんだよ」 「一応、聞くだけ聞いときますよ。あとそこ俺の席なんでどいてください」 「あ、あぁすまん」 「んじゃ、どうぞ」 近藤先輩を席からどかして、俺は今日の戦利品を食べ始める。 「頼みってのは、総司に野球部の助っ人に来て欲しいんだ」 「無理っすね」 「だから即答やめい!」 「いや、絶対に嫌っすよ」 「まぁまぁ総司。理由くらいは聞いてあげなよ。ほら、頭丸めてることだし」 「そのくだりさっきもやっただろ」 「じゃあ近藤先輩。眉毛を剃ってくださいよ。全剃りしたら、総司も話聞いてくれますよ」 「あぁ、それだったら話聞きますよ」 「分かった。じゃあ全剃りするから話聞いてくれ。黒川、眉毛剃りとか持ってないか?」 「ありますよ〜。あ、せっかくなんで、私が剃ってあげますねぇ」 おぉ、流石近藤先輩だ。思い切りがいいな。そういう所嫌いじゃないっすよ。
last updateLast Updated : 2026-04-02
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20話 魔女の野球部観察録

さてさて、この世には様々は訓練方法があります。例を挙げると、科学的根拠に基づいたもの、気合いと根性に全振りした精神論、オカルトっぽいもの。まぁどれもこれも、効果があったりなかったり……。最終的には指導者次第ってことろかな。 ただまぁ、アタシが思うに指導者にしちゃいけないダメな人ってのは必ずいると思うんですよ。 それが、はい。この人。アタシの友達、黒川百合《くろかわ ゆり》です。 「おらぁ! このウジ虫共! てめぇら誰の許可得て地べたに這いつくばってんだぁ! てめぇらのようなゴミクズのウジ虫以下の生物如きが、地べたに這いつくばるなんて、地球様に対する侮辱だぞ! おら、立て! 立ち上がりやがれ!」 こ、怖ァ……。アタシが直接言われているわけじゃないけど、聞いてるだけで涙が出そうになってくるよ。これを直接言われている、この人達は可哀想だよ。ほら、もう泣いちゃってる人いるじゃん。 「泣いてんじゃねぇぞ! 泣いていいのは人間だけだ! てめぇらが流すのは、涙じゃなく血反吐だ! 血反吐を吐いてその血反吐を飲み込め!」 「「「さー! いえっさー!」」」 「聞こえねぇぞ! 地球上の貴重な酸素をてめぇら、ゴミ虫が使わせてもらってるんだ! 返事は一回で決めて酸素の節約しろや!」 「「「さー!! いえっさー!!」」」 人間扱いしてない……。何て恐ろしいんだろう。アタシが知ってる百合とは、もう全然違うよ。完全に別人だよ。 何で百合がこうなってしまったかと言うと、今日の昼に遡る。どうやら百合は、中学の時の先輩に野球部のコーチを頼まれたらしい。それを引き受けた百合は、早速放課後に野球部のコーチをしている訳なんだけど、百合のとった指導者方法は、まさかの海兵隊式訓練法だった。確か何かの映画でやった訓練法なんだけど、まぁその内容は、ひたすら罵詈雑言を吐き散らして徹底的な人格否定をするものだ。相手の心をへし折って粉々に砕き、プライドをズタズタに引き裂いて踏みにじる。まさに悪魔の所業だ。 「おらぁ! 返事はどうした返事は!」 「「「さー! いえっさー!」」」 「聞こえねぇって言ってんだろうがぁ! 返事すらまともに出来ねぇのか、てめぇらは!」 「「「さー!! いえっさー!!」」」 「よぉし! 今からてめぇらゴミ虫共にノックしてやる! ただし! エ
last updateLast Updated : 2026-04-02
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