ANMELDEN高校二年生になったある日、斎藤総司は魔女の末裔である幼馴染みの花咲姫乃の許嫁になってしまった。 だけど二人の相性は最悪。毎日毎日喧嘩ばかりの日々。 そんな二人のちょっとマジカルな青春許嫁ストーリー。
Mehr anzeigen「ふっざけんなよ! こんなクソアマ無理に決まってんだろうが!」
「はぁ!? それはアタシのセリフなんですけど! こんなボケナス絶対に無理だからね!」 「誰がボケナスだ、こら!」 「そっちこそ、誰がクソアマよ!」 高校二年生に上がった今日。俺、斎藤総司《さいとう そうじ》に許嫁が出来た。相手はこいつ、花咲姫乃《はなさき ひめの》。俺の幼馴染だ。やや色素の薄い茶色の髪を左に結ったサイドテール。ちょっと切れ目のエメラルドグリーンの瞳に赤色のメガネを掛けている。肌は白雪のように綺麗で陶器のように滑らか。小柄で華奢だが、意外とメリハリのある体つきをしている。はっきり言って、そんじょそこらの女より圧倒的に美人でいい女だと思う。 ただ。ただ、だ。 「絶対にありえねぇから!」 「だからそれは、アタシのセリフだって言ってんでしょ!」 俺とこいつは、壊滅的に相性が悪い。俺とこいつを一言で表すなら、水と油。または、犬猿の仲というやつだ。顔を合わせれば喧嘩が始まり、口を開けばお互いに罵倒し合う。それが俺とこいつの日常。 そんなやつと、今日から許嫁だぁ? ふざけるのも大概にしてほしい。 「こら、総司。姫乃ちゃんと仲良くしなさい。これから末永く一緒にいることになるんだから」 「姫乃も、総司君にそんなこと言わない。そんなんじゃ仲のいい夫婦になれないわよ」 「だから俺はなる気ないっての!」 「だからアタシはなる気ないっての!」 「あらあら〜、息ぴったりじゃない〜」 「これはいい夫婦になれそうね」 全然話聞いちゃいねぇな、おい。本当にもう、母さんもおばさんも……。 「そもそもお母さん! なんでアタシがこのバカ男と許嫁にならなくちゃいけないのよ!」 「なんでって、そんなの姫乃が魔女だからに決まってるじゃない」 「うぐっ……」 そう。こいつ、花咲姫乃は魔女だ。魔法という不思議な力を使うファンタジーな人間だ。 世の中には、不思議な力を持ってるやつがちょいちょいいる。例えば、霊感が強いやつ、動物と話せるやつ。そんな感じの類いで、こいつは魔法が使える魔女だ。本当かどうかは知らんが、戦国時代から続く魔女の家系らしい。 「で、でも……こいつじゃなくても、他の人でもいいじゃん」 「じゃあ、総司君以上に適任な男の子を連れて来ることね」 「う、うぅ〜」 「総司君も、姫乃が居なかったら困るんじゃないのかなぁ?」 「……ちっ」 おばさん……相変わらずいい性格してる。確かにおばさんの言う通りだ。俺は体質的に、こいつは将来的に居ないと困る。それが分かってて言ってるんだもんなぁ。 魔力。魔女が魔法を使う時に必要とするものだ。まぁ、ゲームとかでよくあるMPみたいなものだな。その魔力ってのは、魔女にとっては必要なエネルギー源だが、俺みたいな普通の人間にとっては劇毒になる。んで、俺はその魔力ってのを無意識に体に取り込んでしまう体質だ。 どこから? っていうと、まぁその辺から、らしい。草木や川、風や土には魔力があって、それを吸ってしまっているとのことだ。 だから俺は、体に溜まった魔力を定期的にこいつに抜き取ってもらわないといけない。じゃないと命に関わる。 んで、こいつは、魔女の家系を残すために何がなんでも子孫を作らなくちゃいけない。ただ一つ問題があって、子供を作る過程で、こいつの持っている魔力が相手にも流れてしまう。そうなった場合、相手は即死してしまう。じゃあどうすればいいか? というと、俺のような魔力を取り込んでしまう体質のやつが必要になる。魔力を取り込めるということは、魔力に対して多少の耐性があるということだ。そんでもって、俺のような体質の人間はかなりのレアだ。 だからまぁ、俺とこいつはお互いに都合のいい関係ともいえる。好き嫌いを除けばな。 「ま、姫乃も総司君も諦めて許嫁になっちゃいなさい」 「…………」 「…………」 「てか、二人がなんと言おうが、拒否権はないんだけどねぇ」 ちっ、母さんめ……他人事だと思って、好き勝手言いやがって。自分の親じゃなかったらぶん殴ってやるところなのに。 「ごめん、お母さん。ちょっとこのボケナスと二人で話させて」 「えぇ、いいわよ」 「ほら、こっち来て」 「ちっ。分かったよ」 気に入らないけど、確かにこいつと少し話をする時間がほしい。 俺はこいつのあとに続いて庭に出てきた。 「で? どうすんの?」 「どうするもなにも。仕方ねぇだろ……」 「そうね……」 分かってる。俺らがどんなに嫌がったところで、この決定を変えられないことくらい。 「はぁ……ほんとに最悪。なんで、こんなボケナスと」 「それはこっちのセリフだ。クソアマ」 「ぶっ飛ばされたいの?」 「やってみろ。クソ魔女」 ほらな。俺とこいつはいつもこうだ。 相性は最悪。絶対に上手くいくわけがない。だけど、残念なことに俺はこいつをこいつは俺を必要としている。本当に最悪だ。 「はぁ……お前のことは大嫌いだけど、仕方ないから許嫁になってやるよ。バーカ」 「そうね。アタシも大嫌いだけど、仕方ないから許嫁になってあげるわ。バーカ」 ―――― ―― 「話はまとまったの?」 「まぁ……一応な」 あれ? おばさんどこ行ったんだ? リビングに戻ると、おばさんの姿はなく母さん一人だけだった。 「おばさんは?」 「あぁ、今鍵を取りに行ってるわよ」 「鍵?」 鍵って何の鍵だ? いや、そもそも何で今なの? 全く意味が分からんぞ。 「あ、二人とも戻ったんだ。思いのほか早かったね」 「お母さん、鍵って何?」 「ん? 二人の新居の鍵だよ」 「「……は?」」 新……居……? ちょ、ちょっと待て……。とてつもなく嫌な予感がする。自分で言うのもあれだが、俺はバカではないつもりだ。その俺の頭が、今の会話から出たピースを一つ一つはめていく。そして一つの答えが導き出された。 それは考える限り最悪の答えだ。 「な、なぁ……おばさん。ま、まさかと思うけど……」 「うん、そうだよ。今日から姫乃と総司君は、一緒に暮らしてもらいます」 ま、まじかよ……。「なるほどな。そういうことか」 「うん。中々いいアイディアでしょ?」 「まぁ、そうだな」 「ふふん。もっと褒めてくれてもいいんだよ」 「調子のんな」 アタシが花火を見るために用意したのは、空の上。 つまり、魔法で空を飛んでいるってことだ。いつもは、箒で飛んでいるんだけど、流石に箒に乗ってだと、ゆっくり花火を見ることは出来ないから、代わりに絨毯に乗っている。あの有名な魔法の絨毯みたいな感じだ。 「でもまぁ、確かにこりゃいいな。遮るものもないし、見上げるんじゃなくて、ほぼ同じ目線で見ることが出来るからな」 「気に入った?」 「あぁ」 「なら、良かった」 ほう? 珍しく総司《そうじ》が上機嫌だね。これは本当に気に入ったっぽいね。うんうん。我ながらよくやったって感じだね。 「そういえばさ」 「ん?」 「百合《ゆり》達もお祭りに来てるのかな?」 「あー……多分来てねぇぞ」 「え? そうなの?」 意外だ。百合って結構お祭りとか好きだから、てっきり、高木君と来ているのかと思ってた。 「黒川と翔《かける》はあれだ。今頃、ホテルでお楽しみ中だ」 「え? ホテルって……あの、アダルティの?」 「あぁ。アダルティなホテルだな」 わぁお……。 おいおい、二人ともお盛ん過ぎないかな? 「いや、実はな。今日の午前中に翔ん家でゲームしてたんだが、昼くらいに黒川がいきなり来てさ。何かすっぽんとかマムシが入った、精力料理を翔に食わせて、そのまま出ていったんだよな」 「な、なるほど……。た、確かにそれはもう間違いないね」 「だろ?」 百合ってば、マジでやってんなぁ。流石自分で、ここ掘れワンワンの如き性欲が溢れてくるとかどうとか言ってただけのことはあるね。まさに有言実行だよ。 てか、大丈夫なの? 一応、高木君って病み上がりのはずだよね。最近、百合の魔法具の実験に付き合わされて入院して、退院したばっかりのはずだよね? 「まぁあれだ。翔も何だかんだで、ノリノリだったから、まぁ何とかなるんじゃね? 知らんけど」 「まぁそうだね。何だかんだで、高木君ってタフだしね。何とかなるよね。知らんけど」 うん、まぁ。結局のところは、二人のことだし二人がいいなら別にいいか。どうなっても、知らないけど。
「あー……、うざいだるい疲れた暑い眠い帰りたい……」 夕方の五時だってのに、何でこんなにクソ暑いんだよ。しかも、無駄に人がごった返しているせいで、暑いのとは別に気持ち悪さもある。 ちくしょう……やっぱり来るんじゃなかったぜ。 これも、姫乃《ひめの》を祭りに誘えって言った黒川のせいだ。まじでギルティだ。 「つーか、あの女全然来ねぇし……」 とっくに待ち合わせの時間は過ぎてるぞ。何やってんだよ、あのクソ女が。 「総司《そうじ》〜、お待たせ〜」 「死ね」 「いきなり何!?」 「あ? 時間を守れんやつは、世のため人のため、俺のために死んだ方がいいんだよ」 「いくらなんでも言い過ぎだからね!?」 言い過ぎなことがあるか。時間ってのは、大事なんだよ。タイムイズマネーって言葉があるくらいなんだ。場合によっちゃ、時間は金よりも重いことがあるんだよ。 「ごめんって。準備に色々と手間取ったの。あとで何か奢るから許してよ」 「ちっ。たこ焼きな」 「うん。分かった」 にしても、準備に手間取ったねぇ。確かに今日の姫乃は、いつものだらしない格好ではなくて、浴衣を着ている。まぁ多分、そのせいだろうな。 「それよりも、どうよ?」 「何が?」 「浴衣だよ、浴衣! 見たら分かるでしょ!」 「あぁうん。いいんじゃない? 知らねぇけど」 「いや、適当! めっちゃ棒読みだし!」 「んじゃ、浴衣は綺麗だな」 「何で浴衣に限定してるのかなぁ? 普通に似合ってるとか言えないの!」 ちっ……めんどくせぇやつだな。つーか、大声出してんじゃねぇよ。めっちゃ見られてんだろうが。 こりゃ、さっさと移動した方がよさそうだな。 「もう何でもいいから、早いとこ行くぞ」 「はぁ……もぅ。はいはい、分かりましたよ」 ―――― ―― 「うげぇ……」 「うっわぁ……」 何だこれ? 気持ち悪いくらいに人が居るな、おい。病気かってくらい人口密度高ぇじゃねぇかよ。 姫乃も同じこと思ってるのか、苦虫を噛み潰したような顔している。 まぁこいつも、どちらかというと陰キャよりの人間だしな。本能的に人混みを嫌ってるんだろう。 「どうする? 帰るか?」 「いや帰らないし! てか、そんなこと言わないでよ。本当に帰りた
「にゃあ、ヒメノ。ついに妄想と現実の区別がつかなくにゃったのかにゃ?」 「言い過ぎだよ、モナちゃん。もしかしたら、さっきまで寝てたから、都合のいい夢を見てたって可能性もあるよ」 「にゃるほどにゃ」 「いや、にゃるほどにゃじゃないよ! 夢でも妄想でもなくて現実だから!」 まったく、なんて失礼な使い魔達なんだ。モナはともかく、アヤメちゃんまでこんなことを言い出すなんて。完全にモナの悪い影響を受けてるね。 「え? 姫乃お姉ちゃん、マジで言ってるの?」 「マジだよ。大マジ。マージ・マジ・マジーロだよ」 「まーじまじまじーろ……?」 「ジェネレーションギャップ!」 マッジかぁ……伝わらないのかぁ。いや、うん……まぁそうだよね。何年前のニチアサヒーローだって話だよね……。 って、いやいや。今はそんなことどうでもいいんだった。 「にゃあいいにゃ。一旦信じてやるから、話してみるにゃ」 「ちょっと〜、モナ〜? そろそろアタシ怒るよ? おこだよ、激おこだよ。激おこプンプン丸だよ?」 「激おこプンプン丸って何?」 「うっそぉん! これも通じないのかぁ〜」 なんてこった。これが華の高校生と五歳児の差なのか。正直辛いんだが……。 「さっさと話せにゃ」 「うっさいわ! このクソ猫!」 「やっかましいにゃ! 魔法しか取り柄のないバカ魔女!」 「モナのくせに調子のるなぁー!」 「ヒメノの分際でワガハイに意見するにゃ!」 本当にもう怒った。このクソ猫。今日という今日は絶対に許さないんだから! ここらで一発絞めて、アタシがご主人様だってこと分からせてやるんだから! ―――― ―― 「ごめんって、アヤメちゃん……」 「ごめんにゃ……」 「むぅ〜」 アタシとモナに正座をさせて、リスみたいに頬を膨らませながら、腕を組んで仁王立ちしているアヤメちゃん。私怒ってるんだからねオーラを漂わせている。 ただなぁ……全然怖くないんだよね。むしろちょっと可愛いまである。 「姫乃お姉ちゃん?」 「あ、うん。ごめんって」 「とりあえず、背筋伸ばせよ」 「は、はい……」 やっぱり、可愛くないわ。 まぁ……何でこうなったかと言うと、アタシとモナの喧嘩が原因である。あの後、モナとは取っ組み合
「アヤメ。邪魔するにゃ」 「いらっしゃい。モナちゃん」 ちょうどお昼になったくらいに、モナちゃんがやってきた。やっぱり、姫乃《ひめの》お姉ちゃんの転移魔法は便利だね。 姫乃お姉ちゃんの使い魔である、私とモナちゃんは、何個か姫乃お姉ちゃんの魔法を使うことが出来る。転移魔法もその一つなんだよね。 「今日はどうしたの?」 「お腹空いたにゃ」 「姫乃お姉ちゃんにご飯貰えなかったの?」 「珍しく朝から出かけていて、居ないんだにゃ」 「総司《そうじ》お兄ちゃんは?」 「ソージも同じだにゃ」 「なるほどね」 へぇ、二人して居ないんだ。もしかして、二人でお出かけしてるのかな? ……いや、流石にそれはないか。だってあの二人だもんね。まぁ、色々と事情があるけど、それをなしにしても二人でお出かけはしないね。 「そんな訳で、何か食べさせてにゃ」 「うん、いいよ。ちょうど私もお昼ご飯にしようと思ってたしね」 「ゴチになるにゃ」 と言ってもまぁ、大したものはないんだけどね。お母さん達はお仕事で居ないから、昨日の残りを温めて食べるくらいだ。 「そういえば、アヤメ?」 「ん? どうしたの?」 「ここ最近、ヒメノが妙にご機嫌なんだにゃ。何か知ってないかにゃ?」 「えー? 何だろう? それっていつからなの?」 「確か一週間くらい前からにゃ」 一週間前だと、確か総司お兄ちゃんの試合があった日だよね。ってことは……。 「多分だけど、総司お兄ちゃんの魔法が一つ解けたからじゃないの?」 「んにゃ? ソージの魔法が解けたのかにゃ?」 「え? 聞いてないの?」 「聞いてないにゃ……」 「えぇ……」 嘘でしょ、姫乃お姉ちゃん……。何でそんな大事なことモナちゃんに伝えてないの。あーでも、姫乃お姉ちゃんって、そういうところ適当そうだもんなぁ。 「にゃったく……ヒメノのやつ」 「あはは……苦労してるね」 「本当だにゃ。あいつは昔っからホウレンソウが出来ないんだにゃ。人として大分クズな部類にゃ」 すんごい言われようだなぁ。そこまで言わなくてもいいと思うけど。 でもまぁ、姫乃お姉ちゃんはもうちょっと色々と報告とかしてくれてもいいのは、確かなんだけどさ。 例えば、私のお母さん達を記憶改ざんし