All Chapters of 大嫌いな幼馴染み魔女と許嫁になった: Chapter 21 - Chapter 30

33 Chapters

21話 体育館裏のブルペン

「なぁ、近藤先輩」 「ん? なんだよ、総司《そうじ》」 「いくらなんでもさ、肩身狭すぎやしないか? おたくの野球部」 「やめろやめろ。気にしてるんだからよ」 あ、一応は気にしてたんだ。 にしてもまぁ……まじで可哀想だな野球部。同情しちゃうよ。 だってさ、グランド使わせてもらえないんだぜ? いやさ、全くありえない話ではないけどよ、完全に追い出されちゃってるんだもん。グランドに踏み入ることすら許されてないんだぜ。どんだけ酷い扱い受けてんだよ。 ちなみにグランドは、サッカー部とソフトボール部が占領している。どっちも全国大会常連の激強部だ。方や人数すらギリギリの弱小部。 まぁ……うん。パワーバランスは明白だわな。 しかもこれで、野球部は全員坊主っていう悪しき伝統があるんだから可哀想なもんだ。この際、その悪しき伝統を取っ払っても誰も文句は言わないと思うぞ。 そんなこんなで、俺と近藤先輩は練習場所を求めて、体育館裏のほっそくて小さな通路に来ていた。若干でこぼこしてるし、雑草だらけだけど、投球練習するにはギリギリなんとかなるレベルかな。 「ま、とりあえず始めようぜ」 「了解です」 んっと、だいたいこのくらいかな。十八.四四メートル。マウンドからホームまでの距離だ。完全に感覚だよりだから、正確ではないけどまぁ、だいたい合ってるだろ。 「んじゃ、とりあえず軽く投げてくれ。特に意識はしなくていいから、まずは硬球になれることだけ考えろ」 「うっす」 ―――― ―― 「よし。少し休憩にするか」 「そうっすね」 だいたい百球くらい投げたかな。中学の頃に比べると大分少ないけど、まぁ初めての硬球でだし、久々だからこんなもんだろ。 「どうだった?」 「やっぱ違いますね。狙ったところにいかないし、スピードも全然出てないっすね」 「いや、最初にしては十分過ぎるくらいだぞ」 「そうっすかね?」 「あぁ」 まぁ、そう言ってくれるなら、ありがたく受け取っておくか。何だかんだ言っても、近藤先輩はキャッチャーとしては、かなり優秀な人だからな。ちゃんとした野球部がある高校に行っても、余裕でスタメンになれるはずだ。 「そういや、河川敷組は大丈夫かな?」 「あー……どうでしょうね……?」 まぁ……多分
last updateLast Updated : 2026-04-02
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22話 魔女の野球部観察録2

さてさて。百合《ゆり》がコーチをしている野球部がついに、来週から大会がスタートします。 百合の地獄のような指導によって、野球部員はそれはもう立派な軍隊に仕上がりましたよ。これはあれだね。見事な手腕と褒めるべきなのかもしれないね。多分だけど、今の野球部員達は卒業した後に自衛隊になってもやっていけると思うよ。 「よぉし! ゴミ虫共、三十分休憩だ! その後はバッティング練習だ!」 「「「イエス! マム!」」」 あ、ちなみに返事は、さー! いえっさー! からイエス! マム! に変わりました。 何でか? そんなのアタシの知ったことじゃないですよ。知りたくもないね。気がついたらこうなってたんだよね。まぁ、本人達はノリノリだし勝手にやらせとけばいいよ。うん。 「マイエンジェル姫乃《ひめの》様。お飲み物をお持ちしました」 「あ、うん……ありがと……」 「ふぉー! エンジェル姫乃様から感謝のお言葉を頂いたぞー!」 「「「うおぉーー!!」」」 あ、はい。現状こんな感じです。 もうアタシには意味が分からないよ。何で、どうして、こうなったのか理解出来ない。てか、したくない。普通に怖いよ。最早変な宗教になってるよ。 「あ、姫乃」 「なぁに百合。あ、それともマムって呼んだ方がいい?」 「呼んでもいいけど、そうなったら姫乃もあっち側だよ」 「ごめんなさい。勘弁してください」 無理無理。あーなりたくないよ。 てか、そもそもアタシは運動苦手なんだから、百合の扱きを受けたら、冗談抜きで死んじゃう。 「それでさ、この後手伝って欲しいんだけどいい?」 「別にいいけど、何するの?」 「えっとね。監督を捕まえに行く」 「はい?」 ―――― ―― あーはいはい。なるほど、そういうことですか。いやまぁ……うん。確かに大事なことだったかもね。 「は、離せぇー! 俺をどうするつもりだぁー!」 「どうする? あはは、面白いこと聞くんですね。そんなの決まってるじゃないですか。その腐った根性、私が叩き直してあげるんですよ」 百合の魔法具の一つ、拘束の鎖でぐるぐる巻きにされて転がっている、野球部の監督の頭を踏んずけながら、悪い顔で笑っている百合。 あー怖い怖い。もう完全に悪役だね。 「な、何で俺がそんなことさ
last updateLast Updated : 2026-04-02
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23話 試合開始

いよいよ試合当日がやってきた。 俺達はすでにベンチに入っていて、間もなく試合開始というところだ。 一回戦の相手は、薩長《さっちょう》高校。この辺じゃ一番強い高校だな。んで、俺ら壬生狼《みぶろ》高校は最弱であると。まぁ昔はめっちゃ強かったらしいけどな。過去の栄光ってやつだ。 「総司《そうじ》。そろそろ始まるぞ」 「そうっすね」 「まぁなんだ。気楽にいけよ」 「俺はそれでいいっすけど、近藤先輩はいいんすか? 勝ちたいっすよね?」 「そりゃ勝ちたいさ。でもなぁ、相手が悪過ぎるからな。最悪、コールドにならなければいいさ」 確かに、勝つのはかなり難しいだろうな。だったらコールド負けだけは避けるように頑張るか。 「総司《そうじ》お兄ちゃん〜。頑張って〜」 「ん?」 お、アヤメじゃん。来てたのか。それに隣にクソアマも居るし……。結局あいつも来たのかよ。ってことは、アヤメに今日のこと教えたのはあいつか。まぁいいけどさ。 「あの子供知り合いなのか?」 「友達っすよ」 「幼女なのに?」 「まぁ色々あって。あ、別にロリコンじゃないっすよ」 「そこは疑ってねぇよ」 そりゃよかった。 別にロリコンをバカにするつもりはないが、断じて俺はロリコンじゃない。 「頑張ってね〜」 アヤメの声援に手を振って応えてやる。 うん。何か元気出たわ。 「小さな勝利の女神ってやつか?」 「ま、そんなところっすね」 「許嫁も応援してくれることだし、完璧だな」 「あっちは疫病神っすよ。いや、疫病魔女の間違いか」 「お前なぁ……」 「集合!」 「よし。集合だ。行くぞ」 「うっす」 「てめぇら! 死ぬ気で行ってこいや!」 「「「イエス!! マム!!」」」 こっちはこっちで元気だなぁ……。まぁこんだけやる気があった方がいいけどさ。 ―――― ―― 「しまっていこうー!」 「「「しゃー!」」」 試合が開始した。 まずは相手の攻撃からだ。 「うしっ。いっちょやってみますか」 後はどうにでもなれってやつだ。俺は俺のやれることを全力でやってやるよ。 まずは、外角低めにストレート。 「っ!」 カーンッ! 「ショート!」 「アウト!」 第一打者はショー
last updateLast Updated : 2026-04-02
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24話 黒川鬼監督の采配

二回の裏。打席に入った五番の武田は、バントの構えをする。 「セーフティーバント?」 「そ。私の見立てでは、あのピッチャーからまともに打てるのは、総司《そうじ》と近藤先輩くらいだからね。だったら、バントさせるのがいいと思ったの」 「まぁ分からんでもないが、それだけ進塁は出来ねぇだろ」 「いや、案外そうでもないかもよ」 「は?」 「まぁ見てなって」 「ボール!」 あ、なるほどな。 「分かった?」 「あぁ。揺さぶるのか」 「そういうこと」 ヒットじゃなくて四球狙いか。本当はランナーがいた方がもっと効果的だけど、居なくても十分効果はある。 「それにあのピッチャー、球は速いけど、総司と違ってコントロールはそんなんでもないっぽいからね」 「なるほどな。総司の球でバッティング練習してた俺らなら、多少際どいところでも見極められる」 確かに練習でも、実戦を意識して際どいところに投げてた。それがここで生きたのか。 「ボールフォア!」 「よっし!」 フルカウントまで追い込まれたけど、黒川の狙い通り四球を取ることが出来た。 「井上続いていけよ」 「イエス! マム!」 六番の井上も同じようにバントの構えを取る。相手は当然、送りバントを警戒しての守りにシフトする。 「ボール!」 よし、上手い。 一塁に行った武田は、大きくリードをして走る振りをする。そのせいで、ピッチャーは盗塁を警戒して固くなる。それプラスのセーフティーバントの揺さぶりだ。さっきよりも、コントロールが乱れてるぞ。 「ストライク!」 二球目は、途中までバントの構えで、ピッチャーが投げた瞬間に戻してバットを振る。バスターってやつだ。ちなみに今のバスターは黒川の指示だ。 「何でまたバスター?」 「多少は打つ気があるって思わせるため。それに井上は、結構パワーあるからまぐれ当たりでも外野まで飛ぶと思うからね」 「それが凡打で、ゲッツーとかだったら笑えないぞ」 「そんなの分かってるわよ。でも、多少のリスクを承知でやらないと勝てないでしょ。相手の方が圧倒的に格上なんだから」 「まぁ……そう、だな」 そうか。黒川は本気で勝つ気なんだな。こりゃ反省だな。相手が強豪校だから勝てないって思って諦めてた。コールド負けしないよ
last updateLast Updated : 2026-04-02
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25話 アクシデント

さて、これから四回の表だ。打順は三番からだな。前の打席は上手い具合にセンターフライに打ち取ることが出来た。今回も上手くいってくれればいいんだが。 まずは初球。内角いっぱいにストレート。 「っ!」 「ストライク!」 次は外角低めにカーブ。 「ボール!」 う〜ん。少し外れたか。 次は……同じところにストレートね。了解。 「っ!」 カンッ! 「ファール!」 あっぶねぇ……。打球はライト方向に飛んでいって切れた。あれ切れてなかったら、ツーベースは確実だったな。 流石三番打者ってところだな。さっきのセンターフライは運がよかっただけだな。 カウントはツーストライク、ワンボール。近藤先輩の要求は、内角高めのボール半個分外したところ。なるほど。少しビビらせて振らせる感じね。仮に振らなくても、球審によっちゃストライクもありえる。了解です。 「っ!」 カンッ! ちっ……打つのかよ。 打球はサードとショートの間を抜けていった。バッターは一塁でストップ。 くそ。ランナーを背負っての四番か。あいつにはさっきホームラン打たれてるんだよなぁ。嫌な場面で出てきやがって。 初球、外角低めいっぱいにストレート。 「っ!」 カーンッ! 「ファール!」 サード方向にライナー線に飛んでいく。ちっ……今のは初めっからファールって分かってたけど、それでもあの打球かよ。 やっぱこの四番やべぇな。俺の球じゃ全く通用しない。 「ちっ、くそがよ……」 二球目。内角低めギリギリにストレート。 「っ!」 「ボール!」 三球目。内角やや低めにカーブ。 「っ!」 「ボール!」 振らない、か……。どっちもストライクゾーンギリギリのところだ。どっちかはストライクにしてほしかったんだけどな。まぁしゃあない。 四球目。外角高めにストレート。 「っ!」 カーンッ! 「ファール!」 打球は後ろに飛んでいって、バックネットに当たる。 今のは若干外れたところだったな。カットされた? いや、もしかして。 近藤先輩も同じこと思ったようで、俺が投げようとしていたところにミットを構える。球種はストレートの指示だ。 「っ!」 カンッ! 「ファール!」 打球は大きく上がって一塁ベンチ
last updateLast Updated : 2026-04-02
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26話 絶対絶命と最後の手段

『四番。キャッチー、近藤君』 俺がデットボールになったことで、ノーアウト一塁。上手い具合にいけば一点返せる。いや、近藤先輩がホームラン打てば二点だな。とにかくまぁ、チャンスであることには変わりない。 ここは、無理をしてでも点をとる場面だ。 「っ……」 くそ……痛みがどんどん増してきやがった……。頼むから、少し大人しくしててくれよ。今大事なところなんだよ。 カキーンッ! 初球打ち! 近藤先輩が打った打球は、ライト方向に飛んでいって、そのままフェンスに直撃する。 俺は二塁を蹴って三塁へ走る。 「くっ……」 あーくそ! 手が痛くて思ったよりスピードが出ねぇ……。 でも、そんなこと言ってる場合じゃねぇ! チラッと後ろを見て状況を確認すると、ショートがライトから中間でボールを受け取って、サードに返球するところだった。 間に合えっ! サードへ、ヘッドスライディング。 「うぐっ……!」 「アウト!」 判定はアウト。一歩遅かった……。 「君、大丈夫か?」 「あ、あぁ……大丈夫っす……」 アウトになっても、しばらく起き上がれなかった俺を見て、塁審が声をかける。 俺はすぐに立ち上がって、自分のベンチへ戻る。 くそ……今のタッチプレーの時に、よりにもよって左手に当たっちまった。 「総司《そうじ》、あんた大丈夫なの?」 「ん? 何が?」 「何って、手のことよ。デットボールくらったでしょ」 「大丈夫だって」 「……本当に?」 うわぁ、こりゃ完全に疑ってるな。てか、信じてねぇだろ。 何だったら、今からシャドーボクシングでもしてみるか? いや、無理だろ。バカか俺は。そんなことしたら、余計に悪化するわ。 でもなぁ……今にも手を見せろとか言い出しそうな雰囲気だな。 「ねぇ、ちょっと手を――」 ほら来た。よし、逃げよう。 「あー悪い。ちょっと便所行ってくるわ」 「あ、ちょっと総司!」 「うんこだ。漏れる漏れる」 「もうっ!」 ―――― ―― あっぶねぇ……。かなり無理矢理だったけど、何とか逃げられたな。ったく……あいつ、無駄に勘がいいんだよな。 とにかく……ここなら、誰も居ないし手の状態だけ確認しとくか。 「うわぁ……」 バッティンググロ
last updateLast Updated : 2026-04-02
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27話 魔女の治療

「ふぅ〜ん。なるほどねぇ」 百合《ゆり》に電話で呼び出されてベンチまで来たけど、そういうことだったんだ。 「一応確認なんだけど、本当に君は魔女でいいんだよね?」 「はい。正真正銘の魔女ですよ〜。それもすごくすごい魔女ですよ〜」 「そ、そうか……」 えぇ、えぇ、そりゃもうね、そんじょそこらの魔女とは比べ物にならないくらいのね。だってアタシは超天才魔女ですからね。スーパーでスペシャルなの。SSMってやつですよ。 「それより姫乃《ひめの》。総司《そうじ》の怪我、治せるの?」 「骨折でしょ? 余裕余裕。よゆーのよしのちゃんだよ」 やれやれ、一体全体誰にものを言ってるんだかね。たかが骨折如きを治すのなんて、朝飯前だよ。 「だったら、早く治してくれ」 「えぇ〜、どうしよっかなぁ」 「てめぇ、ふざけてんじゃねぇぞ!」 「別にふざけてはないよ」 「だったら、さっさと治せって言ってんだろうが」 「それが人にものを頼む態度なの? くっそ腹立つんですけど」 「ちっ……」 ったく、そっちから呼び出しといて、何でそんなに上からなのかな。まぁ、これでもボケナスなりに譲歩してるんだろうけど。 「ごめん、姫乃。総司の態度に腹立つのは分かるんだけど、治してあげてくれないかな?」 「ま、百合の頼みならいいよ」 「ありがとう。姫乃」 まぁ、元々治してあげるつもりだったしね。 ただまぁ……一つだけ問題があるんだよね。そのためには、この審判が邪魔かな。 「ま、そういうこと何で、今からこのボケナスの治療をしますんで、審判の方は戻ってていいですよ」 「そうか。分かった」 そう言って審判の人はベンチから出ていった。よし、これで大丈夫かな。 「ほら……さっさと治してくれ」 「その前に一ついい?」 「何だよ?」 「治すことは出来るよ。ただ問題がある」 「問題?」 「うん。それを治したら下手したら死ぬよ」 「は?」 冗談に聞こえるかもしれないけど、本当のことだ。 「姫乃、どういうこと?」 「忘れたの? ボケナスは魔力を体に溜め込む体質だって」 「あ……」 「魔力は普通の人にとって毒。体に取り込んだら即死。魔法ってのは、魔力を変換したものだから普通の人に使っても影響はない。ただ
last updateLast Updated : 2026-04-02
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28話 魔女と一本目

「で? 何でベンチ裏なんだよ」 「あのねぇ、こっちにも色々あるの」 「色々って何だよ。治すくらい、お前なら一瞬だろ」 「治すのはね。ただ、魔力を抜くのは別なの」 「は?」 あー、こいつ忘れてるわ。ほんとにもうさ、そういうところだよ。 「あのさぁ、前に死にかけた時にアタシはどうやったか忘れたの? 忘れたなら今すぐ思い出して」 「前……? あ、あぁー」 「いや、あーじゃないからね?」 「はいはい。悪かったよ」 本当に悪いと思ってるのかね、この人は? まぁいいけどさ。いや、良くはないかな。 だってあれじゃん。中々すごいシチュエーションだったよね。 半裸のボケナスと下着のアタシ。ベットの上でくっついている。エロいやん。どエロいやん。最早エロスの要素しかなくない? それを普通忘れるかな? いやいや忘れないでしょ。いくらボケナスがアタシのこと嫌いでも、性欲という欲望が体に刻みこんでいてもおかしくないでしょうよ。それともなにか? アタシの体には魅力がないってか? ぶち殺すぞこんちくしょう! 「まじで死ね! ボケカス唐変木!」 「いきなり何だてめぇ!」 「うっさい! ボケナスが悪い!」 「意味わかんねぇんだよ! このクソアマが!」 分かれ! 分かれよ! アタシにとっては大事なことなの! 性欲マシマシでどエロい目で見られるは嫌だけど、お前なんて全く魅力ないぜって、エロスを感じられないのも問題なの! ほどよくエロい目で見ててほしいの! それが女子! 乙女! 女の子なの! 「ったく、もう何でもいいからさっさと治してくれ。いい加減時間もやばいから」 「まぁそうだね」 確かに治療するって言ってから、何だかんだで三十分くらいは経ってる。流石に怒られてもおかしくはないか。 「んじゃ、上を脱げばいいのか?」 「あ、その前に」 「何だよ」 「ギャラの話をしよっか」 「は? ギャラ?」 「そう。大事でしょ?」 「ふざけんなよ。何でお前にギャラを払わなくちゃいけねぇんだよ」 「は? 逆に聞くけど、何でアタシはタダでやってあげなくちゃいけないのさ」 あーあ。アタシって本当に性格悪いなぁ。自分で言ってて嫌になる。 別に治療くらい、ボケナスの為ならいくらでもやってあげる
last updateLast Updated : 2026-04-02
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29話 打ち上げとお誘い

「お疲れ様でした〜! 乾杯〜!」 「「「乾杯〜!!!」」」 近藤先輩の音頭で俺達は乾杯をする。 今日は野球部の打ち上げだ。場所は学生の味方、まんぷく太郎。肉、寿司、カレーなどなどが食べ放題の太っ腹なお店だ。お値段も中々のリーズナブル。金のない学生がする打ち上げにはもってこいの場所だ。 「んじゃ改めて、総司《そうじ》、黒川。今回は協力してくれてありがとうな」 「結局負けちゃいましたけどね」 「それもド派手にねぇ……」 そう。俺らは結局負けた。 姫乃《ひめの》に手を治してもらって、意気揚々とマウンドに行ったはいいものの、これでもかってくらいに、バカスカ打たれた。そりゃもうトラウマになるレベルで。 最終的には、十五対一のコールド負け。完敗ってやつだ。 「ま、仕方ないさ。相手の方が強かったのは事実だしな」 「それもそうっすね」 悔しいか悔しくないかと言われれば、当然悔しい。でも、今から野球部に入って、来年リベンジしてやる! って気持ちは全く起きない。つーか、普通にもう投げたくない。だって、あんなにボコスカ打たれたんだもん。 「それで、今後は野球部どうするんすか?」 「来年に期待だな」 「ですよね」 近藤先輩は引退。助っ人で入った俺は、この間の試合で終わり。現状野球部は、七人しかいない。つまり、秋の大会には当然間に合わない。それに来年入部希望者がいなければ、廃部だってありえる。 「まぁ、その辺はおいおい考えていくさ」 「そうっすか。陰ながら応援してますよ」 「私も」 「ありがとうな。んじゃまぁ、あとは好きなだけ食っていけよ。二人の分は俺の奢りだからよ」 「うっす」 「ゴチになります」 そう言って、近藤先輩は他の部員のところに行った。 「黒川はあっちに行かなくていいのか?」 「別にいいわよ。特に思い入れないし」 「どの口が言ってんだよ……」 つい最近まで、鬼教官やってて部員達を立派な兵士にしてたじゃねぇか。 まぁ……今はその洗脳? が解けて、ごく普通の青少年達に戻ってるけど。 「それにさ、私があっちに行ったら、せっかく近藤先輩に席を二つ取ってもらった意味がなくなるでしょ」 「それもそうだな」 今回、近藤先輩に無理を言って、野球部と俺と黒川だけの席を取って
last updateLast Updated : 2026-04-02
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30話 使い魔達の会話

「アヤメ。邪魔するにゃ」 「いらっしゃい。モナちゃん」 ちょうどお昼になったくらいに、モナちゃんがやってきた。やっぱり、姫乃《ひめの》お姉ちゃんの転移魔法は便利だね。 姫乃お姉ちゃんの使い魔である、私とモナちゃんは、何個か姫乃お姉ちゃんの魔法を使うことが出来る。転移魔法もその一つなんだよね。 「今日はどうしたの?」 「お腹空いたにゃ」 「姫乃お姉ちゃんにご飯貰えなかったの?」 「珍しく朝から出かけていて、居ないんだにゃ」 「総司《そうじ》お兄ちゃんは?」 「ソージも同じだにゃ」 「なるほどね」 へぇ、二人して居ないんだ。もしかして、二人でお出かけしてるのかな? ……いや、流石にそれはないか。だってあの二人だもんね。まぁ、色々と事情があるけど、それをなしにしても二人でお出かけはしないね。 「そんな訳で、何か食べさせてにゃ」 「うん、いいよ。ちょうど私もお昼ご飯にしようと思ってたしね」 「ゴチになるにゃ」 と言ってもまぁ、大したものはないんだけどね。お母さん達はお仕事で居ないから、昨日の残りを温めて食べるくらいだ。 「そういえば、アヤメ?」 「ん? どうしたの?」 「ここ最近、ヒメノが妙にご機嫌なんだにゃ。何か知ってないかにゃ?」 「えー? 何だろう? それっていつからなの?」 「確か一週間くらい前からにゃ」 一週間前だと、確か総司お兄ちゃんの試合があった日だよね。ってことは……。 「多分だけど、総司お兄ちゃんの魔法が一つ解けたからじゃないの?」 「んにゃ? ソージの魔法が解けたのかにゃ?」 「え? 聞いてないの?」 「聞いてないにゃ……」 「えぇ……」 嘘でしょ、姫乃お姉ちゃん……。何でそんな大事なことモナちゃんに伝えてないの。あーでも、姫乃お姉ちゃんって、そういうところ適当そうだもんなぁ。 「にゃったく……ヒメノのやつ」 「あはは……苦労してるね」 「本当だにゃ。あいつは昔っからホウレンソウが出来ないんだにゃ。人として大分クズな部類にゃ」 すんごい言われようだなぁ。そこまで言わなくてもいいと思うけど。 でもまぁ、姫乃お姉ちゃんはもうちょっと色々と報告とかしてくれてもいいのは、確かなんだけどさ。 例えば、私のお母さん達を記憶改ざんし
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