ゲホッ――極度のショックが胃の古傷を激しく締め付け、弦夜の口から真っ赤な鮮血が噴き出した。目の前が暗転し、体から力が抜けて崩れ落ちる。そのまま、意識が闇に沈んだ。……再び目を開けた時、鼻を突くのは消毒液の強い匂いだった。窓の外は、もう深い夜闇に沈んでいる。弦夜はがばっと起き上がり、点滴を引き抜いてベッドから降りようともがいた。紬希と澪璃を探しに行かなければ。二人はきっと、まだ俺を待っている。「弦夜、何をしているの!」物音を聞きつけた両親が駆け寄り、弦夜を押さえにかかった。母の志乃(しの)は、顔中に心配をにじませている。だが弦夜は何も聞こえていないかのように、制止する手を振り払おうと暴れた。「離せ!探しに行くんだ!俺がいなかったら、紬希も澪璃も不安がるぞ!」時厳は、正気を失ったように取り乱す息子を見て、顔を強張らせた。「誰か!こいつを押さえろ!」ドアの外に控えていたボディーガードが飛び込み、暴れる弦夜をベッドに押さえつけた。身動きが取れなくなってなお、弦夜は声が枯れるまで叫び続けた。涙が額の包帯から滲む血と混じって頬を伝い、見るも無残な姿だった。――乾いた音が響き、弦夜の顔が横に弾かれた。時厳が、怒りに震えて彼を平手打ちしたのだ。「死んだ女ひとりのために、黒川家の面目まで捨てるつもりか」弦夜はゆっくりと顔を戻し、血走った目で父を見た。「妻と娘を失って、面目に何の意味がある」「死んだものは死んだ。だがお前は生きて、黒川家を支えなければならん」その一言が、最後の希望を粉々に砕いた。弦夜はベッドの上で崩れるように脱力し、凄絶な笑みを浮かべた。「……これが、あんたたちの望んだ結末か」時厳は血相を変え、胸を激しく上下させた。「望んだだと?あの子は私の実の孫だぞ!」志乃がそばで涙を拭いながら、時厳の腕をそっと引いた。「あなた、もうやめて。これ以上は……ゆっくり休ませてあげましょう」時厳は乱暴にその手を振り払った。「間違ったことを言っているか。家と縁を切ると言い出したのはこいつだ。政略結婚に同意したのもこいつだ!最初から最後まで、全部自分で選んだ道だろう。誰を恨む筋合いがある」弦夜の目から、堰を切ったように涙が溢れた。そうだ。全部、自分で選んだ道だ。黒川家
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