奈緒はそのまま一気に車へ駆け込み、ドアを閉めた。その瞬間、こみ上げてくる感情を抑えきれず、奈緒は必死に顔を上げる。窓の外から強い日差しが差し込み、まぶしいほど真っ直ぐ顔を照らしていた。頭の中はぐちゃぐちゃで、胸が塞がり、息がしづらい。こんな感覚がたまらなく嫌だった。奈緒は何度も深く息を吸い、この感情に呑まれまいとした。これから先、充のことで一秒だって傷つかないと、もう決めたのだ。何度か呼吸を繰り返し、ようやく少し落ち着いてきた頃、コンコン、と車の窓が軽く叩かれた。奈緒が視線を上げると、潤んだ瞳の先に仁哉の顔が見えた。次の瞬間、助手席のドアが開き、ほのかなウッディ系の香りと外の陽射しの気配をまとった仁哉が乗り込んでくる。「大丈夫?ごめん。さっき取引先に囲まれてて、ようやく抜けて君を探しに行ったら、ちょうど外へ出ていくところが見えたから」仁哉の目が奈緒の顔に止まり、その瞳には隠しきれない心配が滲んでいた。奈緒の唇から、自嘲めいた笑みが零れる。「さっき、充に何を言われたと思う?」仁哉は穏やかな声で、慎重に尋ねる。「何だった?」奈緒の目から光が薄れた。「個人名義で借金が400億円あるんだって。だから庄野グループとの仕事は、絶対に手放せないって言われたの」仁哉の表情が一気に険しくなる。「そんなのおかしい。よほど意図的に資産を動かしてない限り、そんな状態にはならないから」奈緒は薄く笑う。「でしょ?結局、最初から私は他人だったってことなんだよ。結婚したときからずっと、あの人は私に予防線を張ってた。青木家だって同じ。なのに私の前ではずっと愛してるみたいな顔をしてたなんて、本当……馬鹿みたいだよね」仁哉の手に力が入る。「つまり……離婚するなら君に借金まで背負わせるつもりってことか?」その瞬間、奈緒の目に鋭い光が宿った。「でもね、そんなもので私を脅せると思わないでほしい。向こうがそこまでやるなら、私だって容赦しないもの。もう青木家に逃げ道を残すつもりはないよ。私が持ってる青木グループの証拠……全部、出すつもりだから」奈緒は携帯を取り出し、真司に電話をかける。「坂本さん、前に送った青木グループの本当の財務資料、覚えてる?あれ、今すぐ国税局に提出してほしいの」その頃、真司はち
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