ドアを開けると、すでに身支度を整え、仕立てのいいスーツを身につけた充が立っていた。昨夜の酒はすっかり抜けたらしく、いつもの落ち着きを取り戻している。「佳乃、もう用意させてあるから、下で朝食にしよう。食べ終わったら一緒に会社へ行って、提携の具体的な話を詰めたい。役員たちにも会議室で待つよう伝えてあるから」青木グループで失いかけている立場と信用を立て直すために、充にとって、庄野グループとの提携は今どうしても必要だった。そのため朝早くから渉へ連絡し、契約締結に向けた準備と、役員全員への招集を指示していた。さらに麟太郎にも、この話がまとまりそうだと報告している。麟太郎もそれを聞くと、久しぶりに声を和らげた。だが佳乃は、充を睨むように見上げた。「提携の話はまた今度にして。今日はそんな気分じゃないから行かない」そう言って彼女は眉をひそめ、怒気をはらんだ声で続けた。「それより、この家に隠しカメラが仕掛けられてないか、ちゃんと調べたほうがいいわ。さっき奈緒さんから電話が来て、青木グループとの提携をやめて自分たちと組めって脅されたの。それに、昨夜の私たちの映像を持ってるとも言ってた。充、この件はきちんと対処してちょうだい。納得できないなら、提携の話はなしだから」これほど追い詰められては、さすがの佳乃も充への熱が少し冷めていた。心は乱れ、昨夜のことを思い出すたび後悔に苛まれる。もしこれが父にでも知られれば、自分はもう終わりだ。かといって奈緒の要求をのみ、あの小さな組織と組むなど到底受け入れられなかった。資金を用意できるとしても、あれほど大きな利益を奈緒に渡すなんて耐えられない。だが今の佳乃に、主導権はなかった。乱雑に服を整えるとバッグを掴み、充の肩を押しのけるようにして、そのまま振り返りもせず水鏡ヶ丘を出ていった。充はその場に立ち尽くした。佳乃の言葉が、頭の中で大きく響く――隠しカメラ。すぐに人を呼び、家の中を調べさせる。その間にも、会議室では麟太郎と幹部が待っているという渉からの催促が絶え間なく携帯に届いていた。次々と届くメッセージに、充の頭はぐちゃぐちゃになった。頭へ一気に血が上ったかと思うと、視界が暗くなり、充はそのまま力を失って倒れ込んでしまったのだった。……一方、奈緒が身支度を終えた頃
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