充の顔が一気に険しくなった。「……」奈緒はそんな充をまっすぐ見つめる。「引き延ばすのが好きなんでしょ?だったら付き合ってあげるから、どっちが先に根を上げるか、最後までやってみようよ。充、あなたが400億円の借金を作るなら、私は800億円作ってもいい。どっちが最後に相手を巻き込むか、勝負しよう。だって、あなたに向ける情けは、もう全部使い果たしたから」それだけ告げると、奈緒は席を立ち、そのまま店を出ていった。充は呆然と取り残された。奈緒の言葉の意味が分かったような、分からないような……頭の中では耳鳴りが続き、胸には言いようのない息苦しさが広がっていく。仁哉もすぐに立ち上がった。店を出る直前、一度だけ足を止めて充を振り返る。何か言いかけたものの、結局は小さく首を振っただけで、そのまま外へ出た。もう仁哉でさえ、充に何を言っても無駄だと思っていた。まして奈緒なら、なおさらだった。奈緒は振り返ることなく、足早に店を離れた。あと少しでもこの場所にいたら、息ができなくなってしまう気がする。仁哉は奈緒に追いつくと、先回りして助手席のドアを開けた。奈緒が腰をかがめて乗り込む時には、とても自然な流れで、彼女が頭をぶつけないように、ドアの上へ手を添えた。車はいつの間にか遠隔でエンジンがかけられていたらしい。車内に満ちた冷房の涼しさが、奈緒の中に残っていた熱を少しずつ冷ましていく。奈緒は柔らかなシートへ深く身体を沈め、長く息を吐いた。仁哉も乗り込むと、車載冷蔵庫から小さなマンゴームースを取り出して奈緒へ差し出した。「気分が落ちてるときは、甘いものを食べると少し楽になるよ」奈緒は少し呆気に取られ、驚いた顔で仁哉を見つめる。「仁哉さんって、マジシャン?」仁哉は笑い、優しく奈緒の頭を撫でた。「ギルの代わりに面倒を見てるって思ってくれればいいから。ギルはしょっちゅう電話してきて、君がどうしてるかって僕に聞くんだ。だから、ちゃんと面倒見てないと、あとで僕が怒られるだろ?」仁哉は、またしても奈緒が断りにくい、もっともらしい理由をつけてくる。奈緒はムースを受け取り、一口すくって口へ運んだ。甘さが舌に広がり、そのまま全身に染み渡っていく。さっきまで胸の中に残っていた冷たいものが、少しずつ溶けていくようだっ
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