All Chapters of 水の精霊 ~もっと光り輝いて~: Chapter 1 - Chapter 10

39 Chapters

第1曲 約束は守るもの

 ハッピーエンドを迎えたからと言って、人生という名の物語が終わることはない。 * * * わたし史上初のコンサート。 アーティスト憧れの聖地でデビューを飾ることが出来たけど、ツアーはそこで終わりじゃない。 東京の次は北海道。次に名古屋、大阪。最後は福岡で締める日本縦断コンサートツアーはこれからだ。「相変わらず慌ただしいやつだな。リハビリが済んだと思ったらもう家を空けるのかよ」「そんなこと言わないでよ。寂しい想いをさせるのは悪いと思ってるからさ」 北海道に立つ前日の朝食の席。より姉が拗ねたような顔で不満を漏らしたので、思わず苦笑いをしてしまった。「バ、バカ! 寂しいとかそんなんじゃねーよ! ただいくらリハビリが終わったと言っても少し心配なだけだ!」 ムキになって否定するのはいいけれど、そんな真っ赤な顔をしてたら意味がないよ。「ぷぷ。より姉寂しいんだ~」 案の定ひよりに突っ込まれてるし。「違うって言ってんだろ!」「ムキになるのが答え」 あか姉にまで。「なんだとぉ! おまえら少しは長女を敬いやがれ!」「長女ですけど、ゆきちゃんの正妻という立場では同列ですよ」 かの姉がトドメをさす。「……」 より姉、撃沈。 なんでもいいけど、その正妻という呼称はやめて欲しいな。「みんないつからわたしのお嫁さんになったのさ」「何言ってんだ。あれだけ固く将来を誓い合ったんだから、そんなのもう事実婚と変わらんだろ」 事実婚という響きがこれまた……。「四人も正妻がいるとか、それだけ聞いたらいかにもクズっぽいし。それに全員と婚姻届けを出せるわけじゃないでしょ」 みんなと添い遂げることに関して異議があるわけではない。 だけど実際に結婚するわけではない以上、正妻というのは少し違う気もする。「なんだ、そんなことにこだわってるの? あんなの所詮紙切れじゃん」「そうだな。形なんてどうでもいいんだよ。要は中身があればそれでいい。元々日本のルールからは逸脱してるんだから、今更そこだけルール通りにする必要もねーだろ」 確かに。始まりからして特異なんだから、型にはまる必要はないのかも。「それで、ウェディングドレスはいつ着せてくれるんですか?」 形はどうでもいいんじゃなかったの?「より姉、急がないと」「どういう意味だ、茜」 より姉も二十七だもんなぁ。
last updateLast Updated : 2026-04-14
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第2曲 弱点が増えることもある

「相変わらず仲良いですね」 グレーのタイトスーツにサングラスでばっちり決めた五代さんが、口元を緩ませてそう言って来た。「見てたんですか?」「えぇ。元気そうに出てくるゆきさんの後ろで、笑顔ながらも心配そうにしている四人の健気な姿に心を打たれました」 あの一瞬でそんなところまで見てるとは。  出来る女は恐ろしい。「そりゃ一か月半も家を空けるなんて入院してた時以来ですから。寂しく思うのもしかたないんじゃないですか?」「愛されてますねぇ」 うっさい。ニヤニヤすんな。「それにしても車で来るとは思いませんでしたよ。北海道まで運転するんですか?」「まさか。さすがに飛行機を予約してありますよ。これは空港で乗り捨てられるレンタカーです」 なるほど。北海道と言えど遠いし広いし、さすがに車では行けないか。北海道でっかいどー。  考えてみたら飛行機に乗るのなんてアメリカから帰った時以来だな。「それにしても、ハンドルを握る姿が異様に様になってますね」「かっこいいでしょ」 わたしよりも男前なのがちょっと癪に障るけど、確かによく似合っている。「普段から琴音ちゃんの送迎とかもしてるんですか?」「そんなことありませんよ。琴音には琴音のマネージャーがいますから」 そういえばこの人プロデューサーだった。「昔はわたしもマネージャーをしてましたけどね。ただプロデューサーに昇格してからマネジメントからは遠ざかっていました」 マネージャーとして現場での経験を通じて制作プロセスの理解を深め、クライアントやスタッフと太いコネクションを築いたり、担当アイドルの売り込みの際に企画や演出の才能を発揮していないとなかなかプロデューサーへと昇格することはないらしい。 五代さんがいくつなのかは知らないけれど、この若さで昇格してるということはやはり見た目通りに相当出来る人なんだろう。「昔は、ってことは今他に誰も担当してないんですか?」「してませんよ。わたしはゆきさん一筋ですから」 急に一筋とか言うんじゃないよ。  照れるでしょうが。「だけどプロデューサー業務と両立させるのも大変そうですね」「そこはわたしの趣味の範疇ですから。ゆきさんを上層部に売り込む際、わたしにマネージャーをさせないと紹介しないって脅しましたから」 愉快そうに言ってるけど、上層部を脅迫するなんて相当な胆力
last updateLast Updated : 2026-04-14
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第3曲 現地を満喫したいのに

「ゆきさん大丈夫?」 空港に降り立ったわたしは虫の息。「す、少しだけ時間をください」 まだなんか空中をフワフワと漂っているような感覚が残っている。 おかしい。アメリカへの行き帰りは平気だったのに。「でもゆきさんの意外な弱点を発見できて、以前より親しみが持てましたよ」 ニコニコと機嫌の良い五代さん。 ご満悦そうな顔してるけど、わたしはダメージが大きくてそれどころじゃないんですよ。「さぁゆきさんにしてもらうことをゆっくり考えましょう」 ロクでもないこと考えてた。 しばらくして回復したので、そのままコンサート会場近くのホテルに移動。 今回の会場は5万人規模のドーム。二日間の公演予定にもかかわらずチケットは即日ソールドアウトだったらしい。 北海道でもそれだけの人が待ってくれていると思うと、東京での公演規模は少し小さすぎたのかもしれないなと思う。初めてのコンサートはアーティスト憧れの場所でやりたかったのもあったけど、次回はもっと大きい場所でやっていいのかもしれない。できるだけたくさんの人にこの歌声を届けたいもんね。「今日はこのままゆっくりしておいてください。わたしは打ち合わせに行ってきますので、自由に過ごしてもらって大丈夫です。明日は進行についての打ち合わせに参加していただきます。明後日はリハーサルで、その翌日にいよいよ本番です」 打ち合わせでは演奏やスタッフの皆さんと楽曲の演奏順や舞台装置についての最終打合せ。 リハーサルでは実際の会場やサウンドステージで、ステージング、照明、音響のバランスを調整し、本番の感覚を掴む。「わかりました。ホテルでじっとしてるのも退屈なので、少し観光をしてきてもいいですか?」「かまいませんが、本番を数日後に控えてるので騒ぎにならないように気を付けてくださいね」 まぁわたしが素顔でうろついていたところで誰も気づいたりしないでしょ。 テレビに出てるわけでもないしね。「テレビに出てないから誰も気づかないとか考えてるでしょう」
last updateLast Updated : 2026-04-19
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第4曲 視線は常に先を見て

 北海道でのコンサートは東京にも負けず劣らず盛り上がり、二日間の予定はあっという間に過ぎ去ってしまった。 北の大地でも熱狂的なファンがこんなにもいるんだということに、日本中に見てくれている人がいるんだという実感が湧いてくる。 チャンネル登録者数は現在3000万人に迫る勢いで増えていて、中には外国の方だっている。  日本だけでなく世界にも歌声を届けられていることがとても嬉しい。ネットで活動していることの利点が最大に出ているなぁ。「ゆきさんの知名度は今ではもうワールドクラスですからね。いずれ世界中からお呼びがかかるようになるんじゃないでしょうか。まずはアメリカに凱旋ライブなんてどうですか?」 五代さんが気の早い提案をしてくる。「まだ日本縦断ツアーの最中なのにもう先の話ですか?」「当然。まだまだこれからですよ。お姉さん方もおっしゃってましたけど、わたしもゆきさんはいずれ世界に飛び出していくと思っていますから」 世界か。  確かに憧れはある。一度アメリカでは失敗してるけど、あの頃よりも語学力はあがっているし、表現力や技術力も全然違うつもりだ。  もちろんリベンジをしたいという気持ちはあるから、いずれ再挑戦しようとは思っていた。「まずはアメリカのランキングで一位を取るところからでしょうね」 いきなり大きく出たな。 いろんな国のアーティストが集まるアメリカでトップを取るというのは並大抵のことではない。  しかもそれが「まずは」って。五代さんの目はどこを見てるんだろうか。「アメリカの次はヨーロッパ。そしてアフリカ中東インドにアジア。ロシアと南米まで行けば全大陸制覇ですよ!」 うわぁ。  ヨーロッパ、アジア、ロシアまでは分かるけど、中東やアフリカまで入ってくると言語を覚えるのが大変だ。「南極も大陸ですよ」「ペンギン相手にコンサートするんですか?」「冗談です。それにしても全大陸制覇って。トレジャーハンターみたいですね」「そうなんです! 人々の熱狂的な視線と声援というお宝を世界各
last updateLast Updated : 2026-04-20
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第5曲 星の輝きはどこまでも

 名古屋、大阪でのコンサートも大盛況に終わり、いよいよ最後の公演地である福岡へと到着した。 福岡でもドームを使うことが出来ず、15000人収容できるメッセを使用することに。 ドームを使えば5万人の人にわたしの歌を聴いてもらうことが出来るんだけど、それは求め過ぎというものか。 チケットが完売しているということは今回買えなかった人もいるということだから、できれば全員に会ってみたかったわたしとしては残念な気持ち。「売れ残るよりも完売した方が利益率も全然違いますから」 五代さんはそう言うけれど、インターネット配信で全ての人に歌声を届けられる環境に慣れてきたからか、あぶれた人がいるというのはどうにも落ち着かない。「できればみんなと会いたかったなぁ」 ぽつりとこぼした言葉。「相変わらずゆきさんは優しすぎるくらいファンを大事にしていますね。でもね、ゆきさんのファンを全員集めようと思ったらどんなコンサートホールを借りても無理ってものですよ」 言われてみればその通りか。 今回全国の五都市でコンサートを行ったけど、延べ動員人数で言えばせいぜい数十万。 対してわたしのチャンネル登録者数は日本国内だけでも一千万を超えているんだから。たとえ分割したとしても全ての人に生で会うというのは不可能だろう。「やっぱりインターネットって便利ですね。いつでもどこでも、リスナーさんに会うことが出来るんだから」「ネットにはネットの、コンサートにはコンサートの利点がそれぞれありますよ。コンサートでチケットを買えない人のことを憂うゆきさんの優しさも分かりますが、逆に言えば簡単に手に入らないからこそ、そこにありがたみが生まれるんですよ」 なるほど。 確かに、簡単に会えるアイドルというのもありがたみが薄れてしまうか。 昨今ではそれを売りにしているグループもいるけれど、あれはグループだから通用する商法であって、ソロで活動しているわたしが真似するとただの地下アイドルになってしまう。「ゆきさんのブランディングも行っている以上、今よりもっと価値を上げていく必要がありますか
last updateLast Updated : 2026-04-21
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第6曲 一日千秋

「わざわざ家まで送っていただきありがとうございました」 ハプニングはあったものの、どうにか無事にツアーを終えた翌日、空港で五代さんが借りてくれたレンタカーに乗っていた。「いえいえ。一刻も早く帰りたかったでしょうから」 悪戯な笑顔でウィンク。こういう仕草も似合うのが羨ましい。 そうこうしているうちに愛しの我が家に到着。玄関先につけてくれたので、もう一度お礼を言う。「これも仕事で推し活の一環ですから。推しを送迎できるなんて他のファンからすれば垂涎ものですよ」 趣味と実益を兼ねているのはある意味羨ましいものがある。それを言えばわたしもそうか。「それより早く帰ってあげた方がいいんじゃないですか? みなさん首を長くして待ってる様子ですよ」 そう言われて後ろを振り返ると、姉妹たち全員が玄関の外にまで出てきていた。「うぉ。びっくりした。それじゃ、帰ります。どうもありがとうございました。あと、例の件、こちらから連絡しますのでその時はよろしくお願いしますね」 それだけ告げると人差し指と中指をピッと立てて走り去ってしまった。 あんな気障な行動も似合うのが憎らしい。 車を見送った後はお待ちかね。さっきからまだかまだかと言った様子で待ち構えている姉妹の方へと向き直る。「みんな、ただいま!」「「「「おかえり(なさい)!」」」」 四人の弾ける笑顔を見て、あぁ、返ってきたんだという実感が湧いてくるな。 と思う間もなく一斉に飛びかかってきた。 か、狩られる! 「ゆきちゃん! 寂しかったよぉ!」「やっと会えた」「待ってましたよぉ!」「おせーんだよ!」 別に襲い掛かってきたわけではなく、全員がそれぞれわたしにしがみついてきた。「どうしたのみんな? 毎日ビデオ通話はしてたじゃない」「バカやろ! それとこれとは話が別だ!」「そうですよ。ゆきちゃんは女心というものがわかっていません!」「見た目は女の子なのに!」
last updateLast Updated : 2026-04-22
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第7曲 姉妹たちの人生

「そのことでみんなに話があるんだけど」「話って? 飛行機に乗るときは手をつないでて欲しいとか?」 つないでて欲しいけど、今はそうじゃない。「実はね。海外でもコンサートを行うって話が出てて。ついでにアメリカではテレビにも出演しようかなぁって」 恐る恐る切り出すと、みるみるうちにみんなの表情が険しくなった。「日本縦断したと思ったらもう海外!? わたし達はどうなるのさ!」 最初に詰め寄ってきたのはひより。思ったことがすぐ口に出る彼女らしい。「そうだぞ! まだ新婚なのにいきなり嫁をほったらかして海外を飛び回るとか、社畜かお前は!」「単身赴任と変わりませんよ!」「父親不在。不憫」 批難ゴウゴウ。 子供もいないのに不憫もへったくれもないでしょ。父親ちゃうし。「ちょちょちょ! ちょっと落ち着いてってば! わたしからもうひとつ提案があるんだからさ!」「提案?」 ちょこんと首を傾げるひより。あら可愛い。 じゃなくて。「提案というかお願いというか。わたしはみんなとずっと一緒にいたいんだけど、そのことでお話があります」 姉妹たちの将来を決めてしまう提案だから、やっぱり緊張してしまう。 愛する人たちの人生を変えてしまうんだから、わたしの肩にかかる責任も重大だ。「なんだよ、ハッキリ言えよ」 せっかちなより姉が結論を催促する。そんな急かさないで。「あのね。わたしのチャンネルにけっこうな収益があるのは知ってると思うけど、それで税金対策のために法人化したらいいって五代さんに教わって。そうしたらもう会社でしょ? だからみんなもね、その……」 やはり簡単に頼めるようなことではない。みんな一生懸命勉強して、就職活動も頑張って今の会社に就職なり内定なりしたんだ。 わたしの都合で振り回してもいいものなんだろうか。 逡巡していると、より姉が優しく問いかけてきた。「どうした? 怖がらなくていいから、最後まで話して
last updateLast Updated : 2026-04-23
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第8曲 新しい門出

 三か月後、スタジオに姉妹たちとわたし、五人が集まった。「それでは、新会社『Fairy's Kin』の設立を祝って、かんぱーい!」『Fairy's Kin』は妖精の眷属という意味でつけた。みんながわたしに力を貸してくれるのだから、これ以上相応しい名前はないだろう。 わたしの音頭でそれぞれがグラスを掲げる。 株式会社の設立と、福利厚生の充実、姉妹たちの仕事の引継ぎなどで必要な期間を過ぎて、今日ようやく起業へとこぎつけた。 代表取締役社長はわたし。副社長にひより。専務はより姉。常務があか姉。映像技術部長にかの姉が就任。 税理士や弁護士、社労士などは五代さんに紹介してもらった。「自分たちで起こした会社となると、自分の城って感じがして気が引き締まるな!」「正真正銘、わたし達の牙城だよ! これから発展させていくのも、先しぼみになるのもわたし達次第なんだからね」 より姉とひよりはご機嫌でこれから先の展望を語っている。「これで四六時中、ゆきちゃんと一緒にいられるんですね」「私生活もカメラに収められる」 かの姉とあか姉は私欲全開だ。 プライベート時間にカメラを回すのはやめてね。どこぞの自主製作映画じゃないんだから。カメラを止めろ。 全員晴れて成人を迎えているので、堂々とお酒を飲んでいる。 みんなそんなに強くはないけれど、お酒を飲んで騒ぐのは好きな方だ。お祭り騒ぎが好きなわたし達らしい。 でもそれくらいの遊び心がないと配信者というエンタメ業界ではやっていけない。「あたし達の夢の第一歩! ゆき一人でもここまで来れたんだ。これからはあたしらもそばにいるから、さらなる発展を遂げていかないとな!」 すでに顔を赤くしたより姉が、希望に満ちた言葉を口にする。「あんまり無茶なことをしても負担がかかるのはゆきちゃんなんだからね。その辺のかじ取りをするのもわたし達の仕事だよ」 ひよりもお酒が入っているはずなのに、言っていることは随分しっかりしている。 末っ子にしては随分たくましく育ったものだ。
last updateLast Updated : 2026-04-24
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第9曲 祝い酒もほどほどに

「なんでそんなひどいこと言うんですかー!」 より姉の言葉に憤慨する琴音ちゃん。さすがにわたしもそれは言い過ぎだと思う。 彼女だって芸能界のトップに君臨しているのだから、全く役に立たないということはないだろう。 これから何かでお世話になるかもしれない。「いんや。ゆきはあたしらがいれば十分だ。内助の功というやつを見せつけてやる」「まぁた! 正妻の余裕を見せつけてー!」 弱いくせにお酒が好きなより姉。もうどれくらい飲んでるんだろう。 すっかり出来上がってしまっている。 まだそんなに時間たってないんだけどな。「わははは。所詮愛人候補は正妻には勝てんのだ!」 どういうマウントの取り方だよ。 愛人候補ってことは認めてるんじゃないか。「あら、愛人一号はわたしですよ」 五代さんまで参戦してきた!「いつの間に! ちょっとゆきちゃん、わたしというものがありながら、何あちこちに手を出してんの!」 出してません。しかもあちこちて。「ちょっと落ち着いて。愛人なんて作らないから。五代さんも悪ノリしないでくださいよ」「あら。わたしは冗談のつもりなんてありませんよ」 ええぇ。この場でそういうこと言っちゃう?「ほほう。さすがはゆきといったところかぁ」 ほら、より姉がダル絡みしてきたよ。「そこに反応しなくていいから。愛人なんて作ったりしないよ」「そりゃ、ゆきのことは信用してるけどよぉ。でもその気になったら愛人の千人や二千人、簡単に作れちまうだろぉ」 どういうやつだそいつは。 いくらなんでも桁がおかしい。「ちゃんと順番は守りますよ」「あ、わたしもちゃんと守るよ!」 五代さんと琴音ちゃんはちょっと黙っててくれる?「あぁ、ゆきの後ろに列をなして並んでる愛人どもがぁ!」 なんで天を仰いでるのかなぁ。より姉ちょっと飲みすぎじゃない?「ゆきちゃんは自覚がなさす
last updateLast Updated : 2026-04-25
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